相手の立場に立って物事を考える。パースペクティブ・テイキングとは?

2023.09.03
こんにちわ。組織開発がミッションの人事グループ・組織開発室に所属しているてぃーびーです。
仕事において、他者との関わりは欠かせません。相手が自分に伝えた言葉が、自分の価値観・前提・常識の範囲から発している言葉とは限りません。こういったとき、他者の視点で物事を理解する姿勢、能力が重要になってきます。
こういった他者の視点に関わる概念がパースペクティブ・テイキングです。
今回は
  • パースペクティブ・テイキングとはどのような概念か?
  • パースペクティブ・テイキングがなぜ大切か?
  • パースペクティブ・テイキングの習得方法
についてまとめます。

パースペクティブ・テイキングとは?

パースペクティブ・テイキング(Perspective-taking)は、他者の視点や感情を理解し、他者の視点から物事を考える能力やプロセスのことです。日本語だと「視点取得」や「視点獲得」などと呼ばれます。
パースペクティブ・テイキングには
  • 知覚的(Perceptual)パースペクティブ・テイキング - 物理的に他者の視点を理解すること
  • 概念的(Conceptual)パースペクティブ・テイキング - 概念的にに他者の視点を理解すること
の2種類があります。今回は、概念的パースペクティブ・テイキングのみを扱います。

パースペクティブ・テイキングがなぜ大切か?

仕事は上司、同僚、部下、顧客など様々な人との関わりの中で行います。
こういった他者との関わりにおいて、パースペクティブ・テイキングは以下のように役立ちます。

憶測で他者を疑いにくくなる

他者視点で物事を捉えることに慣れてくると、他者の意思決定が自分が考える理想と異なっていたとしても、まず
  • 自分は知らない「相手だけが知っている前提」があるかもしれない
  • 自分が知らない「相手特有の価値観や考え方」があるかもしれない
などに考えが巡ります。
こういった考えができると、いきなり衝突をせず、相手が持つ背景を確認することからスタートできるようになります。
結果として、ついネガティブに想像できそうな出来事が起こっても、事実を確認するまでは判断を保留にし、憶測で他者を疑いにくくなります。

問題を整理しやすくなる

他者が抱える前提に対して想像力を持っていると、それを確認する質問がうまくなります。
組織、チームが抱える問題は複数の人が関わる中で相互の理解の違い、価値観の違いなどから発生する事が多くあります。
これらの違いを整理することは解決への糸口となります。
逆に、他者視点が不足すると自分の視点で正論をぶつけ、相手の都合を加味せずに「自分の理想通りになっていないのは、相手が悪いから」という目線で衝突してしまいかねません。衝突しない場合も「どうせ相手が悪いし、どうにもならないから問題の解決は諦めよう」という方向になってしまうこともあります。

他者への協力をしやすくなる

他者視点で物事を捉えることに慣れてくると、他者が抱えている問題が見えやすくなります。
結果として、相手が困っている部分に気づき、それを助けたり、困りそうな部分を把握し、先回りして助けることができます。

視野・視座・視点の拡張につながる

他者視点を理解できるということは、視野の広がり、視座の高まり、視点の拡張につながります。
  • 同僚はどのような前提の中で、どのような価値観を元に、どのように物事を考えているのか?
  • 上司はどのような前提の中で、どのような価値観を元に、どのように物事を考えているのか?
  • 経営陣はどのような前提の中で、どのような価値観を元に、どのように物事を考えているのか?
  • 逆に経営者やマネージャーからみて個別の社員はどのような前提の中で、どのような価値観を元に、どのように物事を考えているのか?
多様な背景、多様な価値観、多様な考え方を知ることで会社・同僚・顧客との関わりの中で、視座の高低を調整し、視野を広げ、必要な箇所に視点を定めて物事を考えることができるようになります。

顧客視点で物事を考えやすくなる

仕事の中の重要な対象として顧客がいます。他者視点で物事を考えることができれば、顧客視点でも物事を考えられることになります。
結果として、それは顧客理解につながり、成果の質に影響していきます。
顧客要望への先回りができるかどうかについてもこういった部分が影響するでしょう。

パースペクティブ・テイキングの習得方法

パースペクティブ・テイキングを強化する方法としては、大きく分けて2つあります。
  1. 他者が置かれている状況について考える
  2. 他者が置かれている状況を聞いてみる

他者が置かれている状況について考える

他者の言動の背景をできるだけ詳細に考えてみましょう。
仕事の文脈であれば、
  • 相手の役割は?
  • 相手の主業務は?
  • 相手の業務負荷の状況は?
  • 相手の私生活は業務への影響があるのか、ないのか?
  • 相手は今心身ともに健康か?
  • 相手はその業務を始めて担当するのか?慣れているのか?
  • 相手は自分に何を求めているのか?
  • 相手はその業務を起案した人だろうか?誰かから依頼されているのだろうか?
など様々な要素があります。

他者が置かれている状況を聞いてみる

他者が置かれている状況、背景、価値観などをできるだけ多様な立場、考え方、職種などの人から聞いてみましょう。
自分には見えていなかった様々な前提や、考え方の違いが見えてくるはずです。
結果として
  • 自分からみて暇そうに思っていた人が実は他部門の業務も兼任していてめちゃくちゃ忙しい人だった
  • 自分から見て暇そうに思っていた人は、家庭の都合で業務量を抑えていただけで、公私双方を踏まえると非常に多忙な人だった
  • 自分からみて仕事の質に不満を持っていた相手は実はまだジュニアで育成中の人だった。一人前レベルの人だと思って不満を持ってしまっていた
  • 他部門の業務に不満を持っていたが、いざ他部門の人たちに背景を聞いてみると難しい制約がたくさんあり、仮に自分が担当したとしたら解決が難しい問題ばかりだった
などのような出来事につながってくることもあるでしょう。
グループの対話を促すようなイベント、ワークショップ、レクリエーション、合宿などはこういった他者視点の理解を強化するよい機会です。他者視点の獲得のようなふわっとした能力の向上は自覚がしにくいため、こういったイベントの価値を実感しにくいかもしれませんが、「パースペクティブ・テイキングがなぜ大切か?」の部分でまとめたようにとても大切なことです。
逆に、個人の作業効率の追求だけをしていると他者と交流しないため、他者視点の理解度が高まりにくくなります。結果として、他者からみて連携しにくい上司・同僚・部下になってしまいかねません。

まとめ

他者の視点や感情を理解し、他者の視点から物事を考える能力やプロセスであるパースペクティブ・テイキングについてまとめました。
今回、パースペクティブ・テイキングの利点や取得方法についてまとめましたが、そもそもパースペクティブ・テイキングの取得に最初から前向きな人は元々ある程度他者視点にも関心や目線がある人が多いかもしれません。
その意味では、パースペクティブ・テイキングの強化が必要な人に、パースペクティブ・テイキングの重要性を伝えることができる上司・同僚がいると好ましいのでしょう。その場合、自身の経験や実際に現場で起こっている出来事を元に重要性を説明できるとよさそうです。

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