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キャリアパスに悩んだときに考えるポイント集

キャリアパスを構築するための考え方の一例
2021.10.27

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最近、エンジニアの方のキャリアパス相談に乗る、ということをやっています。

https://meety.net/matches/wjnqyJbQFaaD

かなりの引き合いをいただき、社内外含めて 10 名ほどの方とお話しさせていただきました。

また、立場はときどきで変わりましたが、業務としての 1on1 でこういった話しをすることもかなりの回数ありました。

その中で、考えるポイントをあらかじめ伝えることでみなさんが悩む時間を最小化できるのでは、と感じたので、この記事で共有します。

エンジニアだけでなく、どのような職種の方にも応用できる考え方です。

will / can / should を意識する

そもそも自分が何をやりたいのかわからない、という相談内容の方も多くいらっしゃいます。その場合はまずここからはじめます。

一言で説明すると、 will は「将来の夢」、 can は「今できること」、 should は「期待されている責務」です。これらを重ね合わせることで将来の夢を叶えることが可能なキャリアパスを自然と構築しよう、という話しです。

will

叶えたい夢を明らかにする

ここで重要になる問いは次のようなものです。

  • 将来の夢はなんですか?
  • この世を去るときはどのような状況でありたいですか?
  • 20 年後の自分は何をしていると幸せだと思いますか?
  • 10 年後の自分は何をしていると幸せだと思いますか?
  • 5 年後の自分は何をしていると幸せだと思いますか?

複数の質問がありますが、すべてタイムスパンが変動しているだけです。一番最初は「あなたが考える将来」というタイムスパンにおける問いとなっています。それでは答えづらい、というときに、極端なタイムスパンで、さらに想像しやすいタイムスパンで問いを投げかけていく、という順番となっています。

これらの問いは「あなたの幸せや最も重視する価値観はなんですか?」という問いを内包しています。そのためか少し答えづらいようです。

私自身、この問いを先輩から投げかけられたときは即答できませんでした。ただ「ずっとプログラムを書いたりなどして、何かを作っていたい」と、しどろもどろになりながら答えた記憶があります。こういった曖昧な答えでもいいので、ぜひ自分にとっての幸せを考えてみてください。

今までキャリアパス相談に乗った方のおこたえは、大きく次のふたつに分類できます。

  1. まわりの状況も含めてはっきり答えられる方
  2. 方向性や条件など、いくつかの価値観を示される方

どちらが良いということはありません。目標設定と達成計画を重視される方か、現在の状態が好ましいか否かを重視される方か、という価値観の違いです。前者は未来を見ており、後者は現在を見ている、と言い換えても良いですね。私は後者です。

夢を叶えるためのステップを明らかにする

続けての問いは次になります。

  • その夢を叶えるために必要なものはなんですか?
  • その夢を叶えるために今、何をすればいいですか?
  • その夢を叶えるために、何をいつまでにやればいいですか?

ここは先ほど見つけた will から逆算していきます。経験上、一般的な回答として「お金」と「健康」が必要というところに落ち着きやすいです。その場合、そのために年収をあげたり生活習慣を見直していきましょう、という方向で相談が進みます。

特定の経験は若いうちにしかできないこともあるため、経験を積むフェイズだとわかった場合はどうすれば望む経験を積めるか、を考えます。

優先度的に、今やるべきことを明らかにし、すぐに着手してもらいます。その後の計画は着手後にご自身でたてていただいたり、またお時間をいただいて一緒に作っていったりします。

複数の夢を同時に追う

夢が複数ある、という方もいらっしゃるでしょう。まったく関係ない複数の夢を挙げた方への問いはこうです。

それらの夢のつながりはなんですか?

世の中つながっているので、まったく関連がないものはありません。私は間に何ステップか挟むことで、すべて実現することは可能だと考えています。ただし、この問いの答えを出すためには専門的な知識を必要とすることが多いため、悩んだ場合はロールモデルとなる方を探して相談してみたり、関連分野の書籍にあたってみると良いでしょう。

私の場合

ここまでの問いに対して、私の答えを例として書いてみます。

私の夢は、喫茶店のマスター ( will ) です。昔からコーヒーが好きというのもあるのですが、喫茶店巡りが趣味なので、様々な喫茶店にお邪魔してお店の雰囲気を楽しんでいました。自分も将来、お店を出せたら幸せだろうなあ ( 価値観 ) 、という夢を持っています。また、エンジニアとしてそういったお店では集中して作業することが難しいこともわかっているので作業スペースのようなものを設けて思い思いの時間を過ごしてもらえればもっといいなあ、とぼんやりと考えています。

さて、この夢を実現するためにはまず開店資金が必要 ( 夢の実現のために現在やるべきこと ) です。なので貯金が可能な年収と生活レベルの維持が必要となってきます。その前のステップとして、コーヒーの淹れ方や仕入れルートなど、喫茶店に弟子入りして身につけるべきものもあるでしょう。ひとりでお店を回すのは無理なので、家族の協力を得るために信頼を得ていく必要もあります。お客さん候補である現在の友人や同僚ともうまくやっていかなければなりません。

私は現在 40 歳、 2021 年時点の健康寿命が 74.1 歳なので、少なくとも 60 歳くらいには夢を叶えたいと考えています。となると開店資金を 60 歳までには貯める必要があります ( やるべきことといつまでにやるべきかの明確化 ) 。さらに、一人前のバリスタになるための修行として 5 年は見込まないといけないでしょうか。 55 歳には現在の職に区切りをつけて転職する準備が必要です。つまりあと 15 年、現在の職で目標額を貯金していく、というかなり地道な結果となりました ( 地道とは言え子育てがこれから本格化しますので、退屈でないことは約束されています ) 。

can

持っているスキルセットや知識を確認する

ここではまず、ご自身が持っているスキルセットや知識の棚卸しをしていただきます。エンジニアであれば職務経歴書の形でまとめていることも多いので、それらで代用することも多いです。

強みの種を発見する

Meety では 1 時間という区切りがありますので、ここをやってしまうと時間が足りなくなってしまいます。その際は「強みの発見」にフォーカスを絞っています。ここでの問いは次です。

  • 周りの方々からよく感心されたり感謝されることはなんですか?
  • その中で、あなたはそれほどコストを支払っていないと感じるものはなんですか?

強みとはその名のとおり、他者との比較の中で相対的にあなたが強い特性のことを指します。ということは、自分の内部だけを見つめていてもわからないものです。同僚やご友人、ご家族などまわりの方に「私がやったことで、すごいな、と思ったことは何?」と聞いてみましょう。

その中に「そんなにコストかけてないんだけど…」と感じたものがあれば、それが強みの種となります。ここで自分がかけたコストとは、時間、体力、お金、まわりの方々との信頼値などを指しています。具体的に、他の方より素早く達成できることや、何回でも連続でできること、材料費を節約しながらできることなどです。また、ご家族など大切な方との時間を犠牲にせずにできることも条件となっています。

この問いは今まで考えたことがないという方も多く、難しいようです。その際にヒントとなるのは「自分が熱中できること」である可能性が高い、ということです。熱中できることは自分の普段の行動を可視化することで見えてきます。

  1. やっているといつの間にか時間が経っていること
  2. やるためのコストをコストだと思わないこと
  3. それをやろうとするとモチベーションが上がること

強みを考察する

見つかった強みの種を出発点として、本当のあなたの強みを考察していきましょう。たとえば、よく「あなたの書くコードが読みやすい」ことが強みの種として見つかったとしましょう。「読みやすいコードを書ける」ことがあなたの強みではなく、抽象化や概念の整理が得意だったり、適切な表現を短時間で探すのが上手だったりすることが強みである可能性があります。前者の場合は設計など、後者の場合はドキュメント執筆などへ強みを活かすことが可能です。

私の場合

1on1 など、深い対話をすると感謝されることが多かったのですが、私の場合 1 日中喋っていてもプライベートの開発ができたりなどあまり疲れを感じたことはありませんでした。むしろモチベーションをみなさんからもらい、非常にいい気分でコードを書けているという状態です。さらに、その後を聞いてみると課題を自分の力で解決できていたり、状況が改善したりしていました。

ここから、強みを類推します。 1on1 以外の打ち合わせや会議については連続すると疲れてしまうなど、コストが低いとは言えない状況でした。また、 Slack などでアドバイスを求められることも多く、そのまま文字で割と深い話しをすることも度々ありました。こういったことから 1on1 が強みなのではなく、チャンネル問わず対話を通してその方のポテンシャルを引き出すことが強みなのではないか?と仮説をたてました。

実際に教育の本やコーチングの本など読んでみると、以前からやっていた事柄が多かったことや、知らないことも時間をかけずに飲み込めたことから、私の強みは仮説のとおり、個人のブーストであることがわかりました。

should

ここが具体的なキャリア選択のフェイズとなります。 will と can に should を重ね合わせていきます。次の図の、すべての円が重なり合っている部分を最大化するイメージです。

can と will を重ね合わせる意味

will から逆算して得た、自分が現在やるべきことをさらに具体化していきます。知識やスキルセットを得るために何らかの方法で学習、経験を得るためにキャリアチェンジや転職など、ここはひとによって変動が大きい部分です。希望する内容によっては私が適切な相談役でないこともありますが、その場合は調査しながら一緒に考えたり、適切な方を知っていればご紹介します。

can が活きる領域ではあなたはひとより高いパフォーマンスをひとより低いコストで出すことが可能です。つまり経済活動の基本である、他人への価値提供を低い原価で提供し続けることが可能となります。

肝心なのは必ずしも両方を重ね合わせる必要はない、ということです。 will を追うために can がまったく関係ないことをしなければならないこともあるでしょうし、 will がまったく見えないので can としか合わせられないということもあるでしょう。

私の場合

私の場合は can 寄りの合わせ方をしています。そもそも will を自覚したのが 5 年ほど前で、その頃にはエンジニアとしてのキャリアが確立されてしばらく経ったあとでした。また、当時は強みも把握しておらず、エンジニアの平均年収が高めであることからそのまま will に繋げやすいという程度の考えしかなかったのです。

さらに、自分の強みがわかったのもここ数年のことですので、エンジニアからエンジニアリングマネージャーへキャリアチェンジしたのも最近です。それもクラスメソッドに入社してから大橋にコーチングしてもらい、キャリアチェンジを投げかけてもらうことでようやく実現したことでした。

年収の上げ方

あるていど経験をお持ちの方に多い相談内容がこちらです。これはエンジニア特有の事情が絡みます。また、その方がお持ちのスキルセットを考慮しなければならないため、相談の中身は千差万別となります。

ここではある程度、一般化してお伝えできる考えるポイントを 2 つほど挙げます。

現在の延長上で目標を達成できるか?

まず、お仕事をされている方は現在の延長上に will があるのかを考えてみてください。

経験やスキルセットを欲しい場合は、望むものが得られるかどうかを業務内容から判断しましょう。大きな企業に勤めていらっしゃる方は転籍など有効活用するのも良いでしょう。

年収を上げることが次のステップだという方はそのレンジを確認してみましょう。自由業などではご自身が最大限に頑張っていくら稼げるかを試算してみると良いでしょう。就職されている方はお勤めの企業の最大レンジを上長や人事部などに確認してみましょう。

転職

現在の延長で will を達成できないとわかった場合に転職など、環境を変えることを検討しましょう。もちろんリスクがある行動なので慎重に決定する必要がありますが、エンジニアとしてはそんなに特別でないことかもしれません。

得たい経験によっては転職をするしかないこともあります。例えばデータアナリストやデータエンジニアとしてのキャリアを積みたい場合、そもそもデータ分析できるほどのデータは大企業やデータ分析を専門とする企業などでしか扱えません。

また、転職は市場によって改めて自分を評価してもらう機会です。現在所属されている企業やフリーランスでは、慣習やこれまでの付き合いもあり、再評価してもらう機会はそうそう訪れません。強制的に市場に評価してもらい、適正な価値を認めてもらうことができるチャンスが転職だと言えるでしょう。その点で、年収が向上する可能性があります。

まとめ

以上、キャリアパスを組み立てる際に私が考えることを文字にしてみました。

引き続き、キャリア相談は受け付けていますが、基本的に私は状況の整理をして、この記事の中の問いから適切なものを発する形となります。それでも興味のある方はぜひお声がけください。

https://meety.net/matches/wjnqyJbQFaaD

おまけ

よくいただく質問をこちらで答えてしまいます。

なぜキャリア相談を無料でやっているのか?

半分は社外の方とのコネクションを作るためです。この業界で長く働いているので、縁が非常に重要なことを実感しています。私が諸先輩方から受け取ったものを恩送りという形で今悩んでいる方に渡そうという意図です。

もう半分は社内の方が悩む時間を最小化したいという想いからです。クラスメソッドは従業員が 500 名を超えており、さらに毎月入社される方がいます。そういった状況ではきめ細かい対応が難しい場合もあるため、私の強みということも相まってはじめました。

また、私自身がエンジニアリング統括室という部署で、エンジニアに「クラスメソッドにいてよかった」と思ってもらえる活動を普段しているのですが、後者の理由は業務の一環という形です。

クラスメソッドの採用活動じゃないんですか?

まず先に相談させていただいた上で、クラスメソッドでの経験があなたの will の手助けとなると判断した場合に、いくつか選択肢とともに概要をお話しする形としています。

また、社内の方は業務時間中に相談を受けることもありますが、基本的に社外の方とはプライベートの時間でやっています。先に述べたように恩送りの一環です。

もちろん、クラスメソッドにこういった人間がいる、ということや相談が役に立ったと思っていただいた方がクラスメソッドの名前をアピールしてくださる、ということもあるとは思いますが、認知度向上の手段としてはあまりに非効率的なため、意図的に狙いから除外しています。

まわりの方にバレないようにしたいんですが…

伺った話しは原則、誰にも共有しません。私よりその方の問題解決に貢献できる方をご紹介するときに、概要をその方にお伝えする程度です。

逆に、積極的に共有したい方がいる場合は一緒の場にいていただいて大丈夫です。議事録などは取らない形式でやっていますので、記録が欲しい場合はご自身でとっていただく必要があります。