LiteLLMとLangMemのprompt_optimizerでエージェントをオンライン学習・自己改善させてみる

LiteLLMとLangMemのprompt_optimizerでエージェントをオンライン学習・自己改善させてみる

2026.05.26

はじめに

データ事業本部のkobayashiです。

LiteLLM × LangGraph シリーズ20回 + Recap で挙げた「シリーズで扱わなかったトピック」の続編シリーズ3本目として、エージェントの オンライン学習・自己改善 を扱います。1本目(LangGraph Functional API)・2本目(Ragas)と合わせてご覧ください。

https://dev.classmethod.jp/articles/python-litellm-functional-api/

https://dev.classmethod.jp/articles/python-litellm-ragas/

シリーズ本編は静的な構成(system prompt はデプロイ時に確定し、運用中は変化しない)が中心でした。本記事では、エージェントが 対話のフィードバックから自分の振る舞い(= system prompt そのもの)を継続的に書き換えていく やり方を、LangMem の create_prompt_optimizer を中心に4つのサンプルで紹介します。シリーズ第9回 LangMem 記事ではプロシージャル記憶の最小例だけ扱いましたが、本記事はそこから一歩踏み込んで「kind 比較・多ターン会話の集約・thumbs フィードバック・反復学習」といった実プロダクトで使う形に近づけます。

https://dev.classmethod.jp/articles/python-litellm-langmem/

オンライン学習・自己改善とは

「オンライン学習」という言葉は機械学習の文脈ではモデルの重みをミニバッチで逐次更新する手法を指しますが、LLM アプリケーションの文脈では モデルの重みは触らず、system prompt や long-term memory を運用中に書き換えて振る舞いを更新する アプローチが主流です。LoRA や SFT のようにモデル本体を再学習するのは GPU・データ・運用負荷が高く、API 経由のフルマネージドモデルでは採用しにくいためです。

本記事で扱う プロシージャル記憶(procedural memory) は LangMem の3種類の長期記憶(セマンティック・エピソディック・プロシージャル)の1つで、エージェントの「振る舞い方」を記憶として更新します。具体的には system prompt そのものを更新対象とし、create_prompt_optimizer がフィードバック(自由文・スコア・トラジェクトリ)を読み取って 新しい system prompt を生成します。

アプローチ 更新対象 必要なもの 本記事の対象
強化学習 (RLHF/DPO) モデルの重み 大量のラベル付きデータ・GPU ×
LoRA / SFT モデルの重み(軽量) データセット・推論基盤 ×
プロシージャル記憶(LangMem prompt_optimizer) system prompt フィードバック付き会話履歴
静的なプロンプト改善 system prompt 開発者が手作業で書き換え △ (比較用)

LoRA や RLHF と比べてプロシージャル記憶は「エージェントを デプロイしたまま 振る舞いを更新できる」「判断ロジックがプロンプト として可視化されている」という運用上の利点があります。一方で、効果はプロンプトに収まる範囲に限られ、複雑な分布シフトには弱いという制約も残ります。

prompt_optimizer の主要 API

langmem.create_prompt_optimizer はトラジェクトリ(過去の会話 + フィードバック)と現在のプロンプトを受け取り、新しい system prompt 文字列を返すシンプルな関数です。

from langmem import create_prompt_optimizer

optimizer = create_prompt_optimizer(
    "anthropic:claude-sonnet-4-6",
    kind="prompt_memory",
)

new_prompt = optimizer.invoke({
    "trajectories": [(messages, feedback), ...],
    "prompt": "あなたは...",
})

引数は3つ:

  • モデル指定: 第1引数。"openai:gpt-5-mini""anthropic:claude-sonnet-4-6" のように provider:model 形式
  • kind: 最適化アルゴリズム。下表の3種類から選ぶ
  • config: kind="metaprompt" / kind="gradient" のときに max_reflection_steps などを渡す
kind LLM 呼び出しの目安 特徴
prompt_memory 1 回 1 LLM 呼び出しで一気にプロンプトを書き換える軽量版。素早く反映したい用途に最適
metaprompt 1〜5 回 改善仮説の生成 → 適用までを複数ステップで行うバランス型。max_reflection_steps(デフォルト 3)で上限を制御
gradient 2〜10 回 反省ループを max_reflection_steps 回まで回す高品質版(デフォルト 3)。学習データが多く丁寧に練り込みたいとき向け

invoke の入力フォーマットは {"trajectories": [...], "prompt": "..."}trajectories(messages, feedback) のタプルのリスト です。タプル 1 個が 1 セッション(1 つの独立した学習事例) に対応し、複数セッションをまとめて渡したいときはタプルを並べます。

trajectories = [
    (セッション1の会話履歴, セッション1のフィードバック),
    (セッション2の会話履歴, セッション2のフィードバック),
    ...
]
  • messages: LangChain Message 形式または {"role": ..., "content": ...} のリスト。1 セッション分の会話履歴(複数ターンを含む 1 本の会話列)。1 メッセージだけを渡すのではなく、HumanMessage / AIMessage を時系列で並べたリストになる点に注意
  • feedback: dict / str / None。LangMem 内部では文字列化して LLM optimizer に渡されるだけで、特定のキー名(user_score 等)を特別扱いするロジックはありません。よく使うパターンは {"user_score": 0.3, "feedback": "もっと簡潔に"} のように 数値スコアと自由文フィードバック を任意で並べる書き方で、LLM がこれを自然に解釈して改善の強さに反映してくれます

feedback 引数は LLM への入力テンプレートにそのまま埋め込まれるため、明示的に書いた方が結果が安定します。

環境

今回使用した環境は以下の通りです。

Python 3.13
litellm 1.83.14
langgraph 1.1.10
langmem 0.0.30
langchain-litellm 0.6.4
langchain-core 1.3.2
$ uv pip install litellm langgraph langmem langchain
$ export OPENAI_AlangchainPI_KEY="sk-..."        # 応答役の gpt-5-mini 用
$ export ANTHROPIC_API_KEY="sk-ant-..." # optimizer 用 / サンプル4の judge 用

各サンプルの先頭で litellm.modify_params = Truelitellm.drop_params = True を入れています。前者は Anthropic 経由でツール呼び出しや空メッセージの整形を補正するため、後者は gpt-5 系で未対応のパラメータを LiteLLM 側で自動的に落とすための保険です。また langmem 0.0.30 は起動時に langchain_core 系の DeprecationWarning を出すため、warnings.filterwarnings("ignore", category=DeprecationWarning) で抑制しています。

採用モデルの方針はシリーズ既存記事と揃え、応答役は openai/gpt-5-mini、optimizer / judge は anthropic/claude-sonnet-4-6 としています。プロンプトの繊細な書き換えや採点には文章生成が得意なモデルを使うほうが結果が安定するためです。

サンプル1: kind 比較(prompt_memory vs metaprompt

最初のサンプルは、create_prompt_optimizerkind パラメータの違いを観察するものです。同じトラジェクトリ(過去の会話 + 自由文フィードバック)に対して prompt_memorymetaprompt の2種類を走らせ、生成されるプロンプトと最適化後の応答を比較します。

compare_optimizer_kinds.py
"""create_prompt_optimizer の kind を比較するサンプル。

LangMem の prompt_optimizer は内部実装によって 3 種類の `kind` を選択できる。
このサンプルでは `prompt_memory`(1 LLM 呼び出し)と `metaprompt`(1〜5 LLM 呼び出し)
の 2 種類を同じトラジェクトリに対して走らせ、生成されるプロンプトの差異と、
最適化後プロンプトを使った応答の変化を観察する。

`gradient` は最大 10 回程度の LLM 呼び出しを行う高コスト版なので、本サンプルでは
コメントだけ残して実行は省略する。
"""

import warnings

# langmem 0.0.30 起動時に langchain_core 系の DeprecationWarning が出るため抑制する。
warnings.filterwarnings("ignore", category=DeprecationWarning)

import litellm
from langchain_core.messages import AIMessage, HumanMessage
from langchain_litellm import ChatLiteLLM
from langmem import create_prompt_optimizer

# Anthropic 経由で空メッセージや tool_calls 整形が必要なケースに備えて modify_params を有効化。
litellm.modify_params = True
# gpt-5 系で未対応パラメータを LiteLLM 側で安全に落とすための保険。
litellm.drop_params = True

# 応答用は安価な GPT、最適化(optimizer)は文章生成が得意な Claude を割り当てる。
responder = ChatLiteLLM(model="openai/gpt-5-mini")
OPTIMIZER_MODEL = "anthropic:claude-sonnet-4-6"

INITIAL_PROMPT = (
    "あなたは Python 初学者向けのプログラミングアシスタントです。"
    "ユーザーの質問に丁寧に答えてください。"
)

# 過去の会話 + フィードバック(trajectory)を 2 件作る。
# trajectory のフォーマットは [(messages, feedback), ...]。feedback は自由形式の dict で、
# `user_score` のような数値だけでなく自由文での要望も渡せる。
TRAJECTORIES = [
    (
        [
            HumanMessage(content="リスト内包表記の基本を教えてください"),
            AIMessage(
                content=(
                    "リスト内包表記は反復処理を簡潔に書くための構文です。"
                    "for 文の代わりに使うと短く書けます。"
                )
            ),
        ],
        {
            "user_score": 0.3,
            "feedback": "説明が抽象的でした。具体的なコード例を最低1つ載せてほしい。",
        },
    ),
    (
        [
            HumanMessage(content="dict の get メソッドの使い方を教えてください"),
            AIMessage(
                content=(
                    "dict.get(key) はキーが存在しない場合に None を返します。"
                    "デフォルト値も第2引数で指定できます。"
                )
            ),
        ],
        {
            "user_score": 0.4,
            "feedback": "コード例がほしい。あと、なぜ d[key] ではなく get を使うかの判断基準も知りたい。",
        },
    ),
]

def show_response(prompt: str, question: str) -> str:
    """与えられた system prompt で `question` に応答させ、先頭部分を返す。"""
    response = responder.invoke(
        [
            {"role": "system", "content": prompt},
            {"role": "user", "content": question},
        ]
    )
    return str(response.content)

if __name__ == "__main__":
    print("=== 元のシステムプロンプト ===")
    print(INITIAL_PROMPT)

    # kind="prompt_memory": 1 LLM 呼び出しで一気にプロンプトを書き換える軽量版。
    pm_optimizer = create_prompt_optimizer(OPTIMIZER_MODEL, kind="prompt_memory")
    pm_prompt = pm_optimizer.invoke(
        {"trajectories": TRAJECTORIES, "prompt": INITIAL_PROMPT}
    )
    print("\n=== kind='prompt_memory' での最適化後プロンプト ===")
    print(pm_prompt)

    # kind="metaprompt": 内部で改善仮説の生成 → 適用までを複数ステップで行う。
    # max_reflection_steps を絞って LLM 呼び出しを抑える。
    mp_optimizer = create_prompt_optimizer(
        OPTIMIZER_MODEL,
        kind="metaprompt",
        config={"max_reflection_steps": 1, "min_reflection_steps": 1},
    )
    mp_prompt = mp_optimizer.invoke(
        {"trajectories": TRAJECTORIES, "prompt": INITIAL_PROMPT}
    )
    print("\n=== kind='metaprompt' での最適化後プロンプト ===")
    print(mp_prompt)

    # 最適化後プロンプトを実際の応答に使ってみる。
    question = "for ループでリストを2乗にしたいです。最短で書く方法は?"
    print("\n=== 質問 ===")
    print(question)

    print("\n=== prompt_memory 版プロンプトでの応答 ===")
    print(show_response(str(pm_prompt), question))

    print("\n=== metaprompt 版プロンプトでの応答 ===")
    print(show_response(str(mp_prompt), question))

    # `gradient` kind は反省ループを `max_reflection_steps` 回まで回すモード(デフォルト 3)。
    # 設定次第で LLM 呼び出しが 10 回近くに膨らむため、本サンプルでは実行を省略する。
    # 利用シーンとしては「学習用評価データが大きく、丁寧にプロンプトを練り込みたい」場合に向く。
    print("\n(gradient kind は LLM 呼び出しが膨らむため、本サンプルでは実行を省略)")

実行結果は以下のとおりです。

$ python compare_optimizer_kinds.py
=== 元のシステムプロンプト ===
あなたは Python 初学者向けのプログラミングアシスタントです。ユーザーの質問に丁寧に答えてください。

=== kind='prompt_memory' での最適化後プロンプト ===
あなたは Python 初学者向けのプログラミングアシスタントです。ユーザーの質問に丁寧に答えてください。

回答する際は以下のガイドラインに従ってください:
1. **必ずコード例を1つ以上含める**: 概念を説明する際は、具体的な動作するコードを示してください。
2. **実践的な判断基準を示す**: 「なぜこの方法を使うのか」「どんな場面で使うのか」という観点も説明してください。
3. **段階的に説明する**: 基本的な使い方から始め、必要に応じて応用例も示してください。
4. **初学者に配慮した言葉を使う**: 専門用語を使う場合は簡単に補足説明を加えてください。

=== kind='metaprompt' での最適化後プロンプト ===
あなたは Python 初学者向けのプログラミングアシスタントです。ユーザーの質問に丁寧に答えてください。

回答する際は、以下のガイドラインに従ってください:

1. **必ずコード例を含める**: Python の文法・メソッド・概念について説明するときは、必ず最低1つの具体的なコード例(実行可能なコードスニペット)を示してください。
2. **「なぜ使うか」を説明する**: 機能の使い方だけでなく、「なぜその機能を使うのか」「どんな場面で役立つのか」「他の方法との違い」も合わせて説明してください。
3. **初学者向けに丁寧に**: 専門用語を使う場合は簡単に補足し、ステップごとに説明するよう心がけてください。

【回答の構成例】
- 簡単な説明(何ができるか)
- コード例(コメント付きで読みやすく)
- いつ・なぜ使うかのポイント
(以下略:最適化後プロンプトを使った応答が続く)

両者ともフィードバックの2要素(コード例必須・判断基準を示す)を取り込みつつ、metaprompt 版は 「回答の構成例」というテンプレ化したセクション を追加しているのが特徴です。prompt_memory は「素直にフィードバックをルール化する」傾向、metaprompt は「振る舞いの形まで言語化する」傾向が出やすいという感触が掴めます。コストとのバランスでは、まずは prompt_memory で運用し、改善が頭打ちになったら metapromptgradient に切り替えるのが現実的です。

サンプル2: 多ターン会話を集約してプロンプトを更新する

実プロダクトでは「ユーザーがその場で『こう答えてほしい』と要望を伝え、次回以降のセッションでその要望が反映される」という流れが自然です。サンプル2では1セッション3ターンの会話を 会話全体まとめて 1 つのトラジェクトリ に変換し、prompt_memory で system prompt を更新したあと、同じ最初の質問を新プロンプトで再応答 して挙動の差を観察します。

multi_turn_feedback_loop.py
"""多ターンの会話履歴を集約して system prompt を更新するサイクル。

1セッションで 3 ターンの会話を行い、各ターンでユーザーから自由文フィードバックを受ける。
セッション終了時に **会話全体を 1 つの trajectory にまとめ**、各ターンのフィードバックを
連結した1つの feedback として prompt_memory に渡し、同じ最初の質問を新プロンプトで
再応答して挙動の差を観察する。

このパターンは「ユーザーがその場で『こう答えてほしい』と要望を伝え、次回以降の
セッションでその要望が反映されるよう振る舞いを書き換える」という、
オンライン学習の最小単位を表す。
"""

import warnings

warnings.filterwarnings("ignore", category=DeprecationWarning)

import litellm
from langchain_core.messages import AIMessage, HumanMessage, SystemMessage
from langchain_litellm import ChatLiteLLM
from langmem import create_prompt_optimizer

litellm.modify_params = True
litellm.drop_params = True

responder = ChatLiteLLM(model="openai/gpt-5-mini")
optimizer = create_prompt_optimizer(
    "anthropic:claude-sonnet-4-6",
    kind="prompt_memory",
)

INITIAL_PROMPT = (
    "あなたは献立提案アシスタントです。"
    "ユーザーの希望に沿ってレシピを提案してください。"
)

# (ユーザー質問, 直後にユーザーが投げる自由文フィードバック) の 3 ターン分。
TURNS = [
    (
        "今晩の献立を考えています。10 分で作れる和風の主菜を1つ提案してください。",
        "もう少し短く要点だけにしてほしい。所要時間と難易度を最初の1行で見せて。",
    ),
    (
        "副菜も1品ほしいです。",
        "材料は箇条書き、手順は番号付き、調理時間は最初の行に書いてほしい。",
    ),
    (
        "デザートに簡単なものはありますか?",
        "最後に栄養面の一言コメントも添えてほしい。",
    ),
]

def run_session(prompt: str, label: str) -> list[tuple]:
    """1 セッション分の会話を実行し、会話全体を 1 つの trajectory にまとめて返す。

    返り値は `[(messages, feedback)]` の形(要素 1 つだけのリスト)。
    optimizer に渡せばよいので、こうしておくとそのまま `trajectories` 引数に流し込める。
    """
    messages: list = [SystemMessage(content=prompt)]
    print(f"\n--- {label} (system prompt: {prompt[:40]}...) ---")
    # trajectory に積むのは Human/AI のみ(SystemMessage は prompt 引数で別途渡す)。
    trajectory_messages: list = []
    feedback_lines: list[str] = []
    for idx, (question, feedback) in enumerate(TURNS, start=1):
        human_maeeage = HumanMessage(content=question)
        messages.append(human_maeeage)
        response = responder.invoke(messages)
        ai_message = AIMessage(content=str(response.content))
        messages.append(ai_message)
        print(f"\n[user] {question}")
        print(f"[ai] {ai_message.content[:160]}")
        print(f"[user feedback] {feedback}")
        trajectory_messages.append(human_maeeage)
        trajectory_messages.append(ai_message)
        feedback_lines.append(f"ターン{idx}: {feedback}")
    # 1 セッション = 1 trajectory。会話全体と、ターンごとのフィードバックを連結した文字列を持たせる。
    return [
        (
            trajectory_messages,
            {"feedback": "\n".join(feedback_lines)},
        )
    ]

if __name__ == "__main__":
    print("=== 1 セッション目: 元のプロンプト ===")
    trajectories = run_session(INITIAL_PROMPT, "session-1 (initial prompt)")

    print("\n=== 会話履歴 + フィードバックを optimizer に渡す ===")
    updated_prompt = optimizer.invoke(
        {"trajectories": trajectories, "prompt": INITIAL_PROMPT}
    )
    print("\n=== 最適化後プロンプト ===")
    print(updated_prompt)

    # 同じ最初の質問を、最適化後プロンプトで再応答してみる。
    print("\n=== 同じ最初の質問を最適化後プロンプトで再応答 ===")
    response = responder.invoke(
        [
            SystemMessage(content=str(updated_prompt)),
            HumanMessage(content=TURNS[0][0]),
        ]
    )
    print(response.content)

設計上のポイントは2点です。

  • 会話全体を 1 つの trajectory に集約する: 3ターンの Human/AI メッセージをそのまま並べ、各ターンのフィードバックは feedback_lines で連結して 1 つの文字列にしている。これによって optimizer 側の LLM が「会話の流れの中で何が要望されたか」を順序込みで読み取れる
  • messages には HumanMessageAIMessage だけを含め、SystemMessage は trajectory には含めないprompt 引数で別途渡すため

実行結果は以下のとおりです。

$ python multi_turn_feedback_loop.py
=== 1 セッション目: 元のプロンプト ===

--- session-1 (initial prompt) (system prompt: あなたは献立提案アシスタントです。ユーザーの希望に沿ってレシピを提案してください...) ---

[user] 今晩の献立を考えています。10 分で作れる和風の主菜を1つ提案してください。
[ai] いいですね。手早く作れて和食らしい味の主菜を1品提案します。

豚こまの生姜焼き(2人分・約10分)

材料
- 豚こま切れ肉 200g
(中略)
[user feedback] もう少し短く要点だけにしてほしい。所要時間と難易度を最初の1行で見せて。

[user] 副菜も1品ほしいです。
[ai] では、主菜の豚こま生姜焼きに合う、手早く作れる和風の副菜を1品提案します。

ほうれん草のおひたし(2人分・約5分)
(中略)
[user feedback] 材料は箇条書き、手順は番号付き、調理時間は最初の行に書いてほしい。

[user] デザートに簡単なものはありますか?
[ai] いいですね。和風でさっぱり、しかもすぐ作れるデザートを提案します。

ヨーグルトの黒みつきなこがけ(2人分・約2〜3分)
(中略)
[user feedback] 最後に栄養面の一言コメントも添えてほしい。

=== 会話履歴 + フィードバックを optimizer に渡す ===

=== 最適化後プロンプト ===
あなたは献立提案アシスタントです。ユーザーの希望に沿ってレシピを提案してください。

## 回答フォーマットのルール
1. **最初の1行**に料理名・所要時間・難易度を必ず記載する(例:「豚こまの生姜焼き|約10分|難易度:★☆☆」)
2. **材料**は箇条書き(- )で簡潔に列挙する
3. **手順**は番号付きリストで簡潔に記載する(1ステップ1〜2文以内)
4. **ポイント**は必要な場合のみ、2〜3行以内に絞る
5. **最後に栄養面の一言コメント**を添える(例:「栄養メモ:たんぱく質が豊富で、野菜も摂れるバランスの良い一品です。」)
6. 全体的に**簡潔・要点重視**で、冗長な説明は避ける

=== 同じ最初の質問を最適化後プロンプトで再応答 ===
豚しゃぶのねぎぽん酢|約10分|難易度:★☆☆

材料
- 豚薄切り肉(しゃぶしゃぶ用)200g
- 長ねぎ 1本
(中略)

手順
1. 長ねぎは斜め薄切りにし、ボウルでポン酢とごま油と和えておく。
2. 鍋に湯を沸かし、豚肉を一枚ずつ入れて色が変わるまで30〜60秒ほどゆでる。
(中略)

栄養メモ:たんぱく質が豊富で、ねぎの香味で食欲をそそる低カロリーな主菜です。

3つの自由文フィードバック(要点だけにする / 材料は箇条書き・番号付き / 栄養コメントを添える)が optimizer によって 6項目のフォーマットルール に整理され、再応答ではそのルールに沿った構造に変わっていることが確認できます。「最初の1行に料理名・所要時間・難易度」という指示も忠実に守られていて、ユーザーの要望が 次回以降の応答に永続的に反映される 様子が見えます。

サンプル3: thumbs up/down フィードバックを構造化して渡す

実プロダクトのチャット UI では「👍 / 👎 + 自由コメント」の組み合わせがフィードバックの定番です。サンプル3では3件の記事要約タスクに対して thumbs フィードバックをモックし、それを {"user_score": 1.0, "feedback": "..."} の形に変換して optimizer に渡します。update 後に同じ記事を再要約し、不評だったポイントが改善されるかを確認します。

thumbs_feedback.py
"""thumbs up / down フィードバックを構造化して prompt_optimizer に渡すサンプル。

実プロダクトのチャット UI でよくある「👍 / 👎 + 自由コメント」フィードバックを
trajectory に変換し、prompt_memory で system prompt を更新する。
update 後に同じ質問群を再応答して、不評だったポイントが改善されるかを確認する。
"""

import warnings

warnings.filterwarnings("ignore", category=DeprecationWarning)

import litellm
from langchain_core.messages import AIMessage, HumanMessage
from langchain_litellm import ChatLiteLLM
from langmem import create_prompt_optimizer

litellm.modify_params = True
litellm.drop_params = True

responder = ChatLiteLLM(model="openai/gpt-5-mini")
optimizer = create_prompt_optimizer(
    "anthropic:claude-sonnet-4-6",
    kind="prompt_memory",
)

INITIAL_PROMPT = (
    "あなたは技術記事の要約アシスタントです。"
    "渡された記事本文を要約してください。"
)

# 3 件の記事サンプル(要約対象)。
ARTICLES = [
    {
        "id": "article-1",
        "title": "LiteLLM 入門",
        "body": (
            "LiteLLM は OpenAI 互換のインターフェースで 100 を超える LLM プロバイダーを"
            "統一的に呼び出せる Python ライブラリです。"
            "OpenAI / Anthropic / Gemini / Bedrock / Vertex AI / Ollama などをモデル名の"
            "文字列を切り替えるだけで横断的に扱えます。"
            "ストリーミング・非同期呼び出し・フォールバック・コスト追跡といった本番運用で"
            "必要な機能も標準で備えており、アプリケーションロジックとモデル選定を疎結合に保てます。"
        ),
    },
    {
        "id": "article-2",
        "title": "LangGraph の基礎",
        "body": (
            "LangGraph は LangChain チームが提供するグラフベースのワークフロー記述ライブラリで、"
            "状態を持つエージェントを宣言的に組み立てられます。"
            "ノードとエッジを add_node / add_edge で組み、`StateGraph` で状態スキーマを定義します。"
            "Checkpointer による永続化や HITL(Human-in-the-Loop)の interrupt 機構など、"
            "本番運用に必要な機能が揃っています。"
        ),
    },
    {
        "id": "article-3",
        "title": "LangMem 概要",
        "body": (
            "LangMem は LangGraph の Store 上で動く長期メモリライブラリで、"
            "セマンティック・エピソディック・プロシージャルの 3 種類の記憶モデルを扱えます。"
            "セマンティックは会話から事実を抽出して保存、エピソディックは経験を要約して残し、"
            "プロシージャルは prompt_optimizer で system prompt を直接書き換える形で振る舞いを更新します。"
        ),
    },
]

def summarize(prompt: str, article: dict) -> str:
    response = responder.invoke(
        [
            {"role": "system", "content": prompt},
            {"role": "user", "content": f"以下の記事を要約してください。\n\nタイトル: {article['title']}\n本文: {article['body']}"},
        ]
    )
    return str(response.content).strip()

def make_trajectory(article: dict, summary: str, thumb: str, comment: str) -> tuple:
    """thumbs up/down + 自由コメントを optimizer 向けの (messages, feedback) に変換する。

    feedback dict は文字列化されてそのまま LLM optimizer に渡されるため、`user_score` は
    LangMem 内で特別扱いされるキーではなく、LLM が自然に解釈してくれる便宜上のラベル。
    数値スコアに加えて自由文の `feedback` を一緒に持たせると、低スコアの trajectory に対して
    「具体的に何を改善したいか」まで optimizer が拾いやすくなる。
    """
    return (
        [
            HumanMessage(content=f"以下の記事を要約してください。\n\nタイトル: {article['title']}\n本文: {article['body']}"),
            AIMessage(content=summary),
        ],
        {
            "user_score": 1.0 if thumb == "up" else 0.0,
            "feedback": comment,
        },
    )

# 3 件の評価(実 UI ではユーザー入力。ここではモック)。
EVALUATIONS = [
    ("up", "短く要点だけになっていて読みやすい。このトーンを継続してほしい。"),
    ("down", "要点が薄い。3 行の箇条書きで、必ず『主用途』『主要機能』『ユースケース』の3観点を入れてほしい。"),
    ("down", "文章が長すぎる。120 文字以内の箇条書き 3 点に絞ってほしい。"),
]

if __name__ == "__main__":
    # ===== 1 ラウンド目: 初期プロンプトで要約 + フィードバック収集 =====
    print("=== Round 1: 初期プロンプトでの要約 ===")
    trajectories = []
    for article, (thumb, comment) in zip(ARTICLES, EVALUATIONS, strict=True):
        summary = summarize(INITIAL_PROMPT, article)
        print(f"\n[{article['id']}] {article['title']}")
        print(f"summary: {summary[:160]}")
        print(f"thumb: {thumb} / comment: {comment}")
        trajectories.append(make_trajectory(article, summary, thumb, comment))

    # ===== prompt_optimizer で system prompt を更新 =====
    print("\n=== thumbs フィードバックを反映してプロンプトを更新 ===")
    updated_prompt = optimizer.invoke(
        {"trajectories": trajectories, "prompt": INITIAL_PROMPT}
    )
    print("\n--- 元のプロンプト ---")
    print(INITIAL_PROMPT)
    print("\n--- 更新後のプロンプト ---")
    print(updated_prompt)

    # ===== 2 ラウンド目: 更新後プロンプトで同じ記事を再要約 =====
    print("\n=== Round 2: 更新後プロンプトでの要約 ===")
    for article in ARTICLES:
        summary = summarize(str(updated_prompt), article)
        print(f"\n[{article['id']}] {article['title']}")
        print(f"summary: {summary}")

ポイントは make_trajectory での 構造化フィードバックの組み立て方 です。user_score0.0/1.0 の二値にしておくと、optimizer 役の LLM が「スコアが低い trajectory = 改善ヒントが強い」と自然に解釈してくれます(LangMem 側で user_score を特別扱いしているわけではなく、文字列化された feedback を LLM が読み解いている形です)。さらに自由文コメントを feedback キーに添えることで、「具体的に何を変えてほしいか」までプロンプトに反映できます。

実行結果は以下のとおりです。

$ python thumbs_feedback.py
=== Round 1: 初期プロンプトでの要約 ===

[article-1] LiteLLM 入門
summary: LiteLLM Python製のライブラリで、OpenAI互換の単一インターフェースから 100以上の LLMプロバイダー...(中略・thumb: up)

[article-2] LangGraph の基礎
summary: LangGraph LangChain チームの、グラフベースで状態を持つエージェントやワークフローを宣言的に組み立てるライブラリです...(中略・thumb: down)

[article-3] LangMem 概要
summary: LangMem LangGraph Store 上で動く長期メモリライブラリで、以下の3種類の記憶モデルを扱います...(中略・thumb: down)

=== thumbs フィードバックを反映してプロンプトを更新 ===

--- 更新後のプロンプト ---
あなたは技術記事の要約アシスタントです。渡された記事本文を、以下のルールに従って要約してください。

【出力ルール】
- 必ず箇条書き3点で出力する
- 各点は以下の観点に対応させる
  1. 主用途(何のためのツール・技術か)
  2. 主要機能(代表的な機能・特徴)
  3. ユースケース(どんな場面で使うか)
- 全体で120文字以内に収める
- 余分な説明・まとめ文は不要

=== Round 2: 更新後プロンプトでの要約 ===

[article-1] LiteLLM 入門
summary: ・LLMプロバイダーを統一して呼べるOpenAI互換Pythonライブラリ
・ストリーミング・非同期・フォールバック・コスト追跡など本番機能
・モデル名切替で複数サービスを横断、アプリや運用に適合

[article-2] LangGraph の基礎
summary: - 主用途: 状態を持つエージェントの宣言的ワークフロー定義
- 主要機能: add_node/edgeで構築、StateGraph、Checkpointer、HITL中断
- ユースケース: 本番運用ワークフローや人手介入が必要な自動化で利用

[article-3] LangMem 概要
summary: - LangGraph上で動く長期メモリライブラリ
- セマンティック抽出・エピソード要約・プロシージャルでsystem promptを書換
- 経験要約保持・振る舞いの動的更新に利用

注目すべき点は2つあります。1つ目は thumbs down で寄せられた具体的な要望(「3 観点の箇条書き」「120 文字以内」)が 更新後プロンプトの出力ルールに完全に取り込まれている こと。2つ目は thumbs up が付いた article-1 のスタイル(短くて要点だけ)も同じトーンで保たれていること。スコアが高い trajectory はベストプラクティスとして温存し、低い trajectory は改善対象として吸収する、というのが optimizer の振る舞いとして読み取れます。

サンプル4: 評価セットで反復自己改善

最後のサンプルは「ユーザーフィードバック無し」で自己改善するパターンです。評価セット(質問 + ルーブリック)を3問用意し、各ラウンドで以下を繰り返します。

  1. 現在の system prompt で各問に応答
  2. LLM-as-judge でルーブリックに沿って 0.0〜1.0 で採点
  3. スコアが満点未満の trajectory だけ集めて prompt_memory で最適化

3ラウンド回して平均スコアの推移を観察します。

iterative_self_improvement.py
"""反復学習: 評価セットで自己採点しながら system prompt を磨くサンプル。

3 問の評価セットに対して、
  1. 現在の system prompt で各問に応答
  2. LLM-as-judge で 0-1 のスコアを採点(rubric を渡す)
  3. スコアが低い trajectory を集めて prompt_memory で system prompt を更新
を 3 ラウンド繰り返し、ラウンドごとの平均スコアの推移を観察する。

オンライン学習の最も「学習らしい」形で、評価データセットさえあれば
人間のフィードバック無しでも prompt が継続的に改善されていく。
"""

import json
import re
import warnings

warnings.filterwarnings("ignore", category=DeprecationWarning)

import litellm
from langchain_core.messages import AIMessage, HumanMessage
from langchain_litellm import ChatLiteLLM
from langmem import create_prompt_optimizer

litellm.modify_params = True
litellm.drop_params = True

# 応答役は安価な GPT、judge と optimizer は文章評価が得意な Claude。
responder = ChatLiteLLM(model="openai/gpt-5-mini")
judge = ChatLiteLLM(model="anthropic/claude-sonnet-4-6")
optimizer = create_prompt_optimizer(
    "anthropic:claude-sonnet-4-6",
    kind="prompt_memory",
)

# 評価セット: SaaS のサポート Q&A 想定。
# 各 rubric は 4 条件で構成し、満たさない条件 1 つにつき 0.25 ずつ減点する形にする。
# (4) を「質問と無関係な情報を含めない」とすることで、過剰一般化(質問と関係ない案内文の混入)も
# 採点で捕捉できるようにしている。
EVAL_SET = [
    {
        "question": "請求書の支払い期日が過ぎてしまいました。どうすればいいですか?",
        "rubric": (
            "回答が以下を全て満たすか採点せよ:"
            "(1) 支払い遅延時の連絡先(サポートメール support@example.com)を案内している、"
            "(2) 期日超過後の延滞料金の有無に触れている、"
            "(3) 200 文字以内に収まっている、"
            "(4) 質問と無関係な情報(質問されていないトピック)を含めていない。"
            "全て満たすなら 1.0、欠けるごとに 0.25 ずつ減点せよ。"
        ),
    },
    {
        "question": "プランを Pro から Team にアップグレードしたいです。差額はどうなりますか?",
        "rubric": (
            "回答が以下を全て満たすか採点せよ:"
            "(1) 日割り計算で差額が請求される旨を述べている、"
            "(2) アップグレードが即時反映される旨を述べている、"
            "(3) 200 文字以内に収まっている、"
            "(4) 質問と無関係な情報(質問されていないトピック)を含めていない。"
            "全て満たすなら 1.0、欠けるごとに 0.25 ずつ減点せよ。"
        ),
    },
    {
        "question": "API キーを失くしてしまいました。再発行できますか?",
        "rubric": (
            "回答が以下を全て満たすか採点せよ:"
            "(1) ダッシュボードの「API キー」画面から再発行できる旨を案内している、"
            "(2) 古いキーは即時無効化される注意を入れている、"
            "(3) 200 文字以内に収まっている、"
            "(4) 質問と無関係な情報(質問されていないトピック)を含めていない。"
            "全て満たすなら 1.0、欠けるごとに 0.25 ずつ減点せよ。"
        ),
    },
]

INITIAL_PROMPT = (
    "あなたは SaaS 製品のサポート担当です。ユーザーの質問に答えてください。"
)

ROUNDS = 3

def answer(prompt: str, question: str) -> str:
    response = responder.invoke(
        [
            {"role": "system", "content": prompt},
            {"role": "user", "content": question},
        ]
    )
    return str(response.content).strip()

def score(question: str, response: str, rubric: str) -> tuple[float, str]:
    """LLM-as-judge で 0.0〜1.0 のスコアと講評を返す。"""
    judge_prompt = (
        "あなたは厳格な採点者です。以下のルーブリックに従って、回答を 0.0〜1.0 で採点してください。"
        "出力は必ず以下の JSON 形式のみ:"
        ' {"score": <number>, "comment": "<短い講評>"}\n\n'
        f"ルーブリック: {rubric}\n\n"
        f"質問: {question}\n\n"
        f"回答: {response}"
    )
    raw = str(judge.invoke([{"role": "user", "content": judge_prompt}]).content).strip()
    # ```json で囲まれた応答や前置き文に対応するため、最後に出てくる { ... } を取り出す。
    # `\{.*\}` は欲張りマッチなので、judge が複数 JSON を返してもブロック全体を拾える一方、
    # 不正な JSON だった場合のフォールバックも兼ねる。
    payload: dict = {"score": 0.0, "comment": "parse error"}
    m = re.search(r"\{.*\}", raw, re.DOTALL)
    if m:
        try:
            payload = json.loads(m.group())
        except json.JSONDecodeError:
            payload = {"score": 0.0, "comment": f"parse error: {raw[:80]}"}
    return float(payload.get("score", 0.0)), str(payload.get("comment", ""))

def run_round(prompt: str, round_idx: int) -> tuple[float, list[tuple]]:
    """1 ラウンド = 評価セット全件に応答し、スコアとフィードバック付き trajectory を返す。"""
    print(f"\n===== Round {round_idx} =====")
    trajectories: list[tuple] = []
    scores: list[float] = []
    for item in EVAL_SET:
        response = answer(prompt, item["question"])
        s, comment = score(item["question"], response, item["rubric"])
        scores.append(s)
        print(f"\nQ: {item['question']}")
        print(f"A: {response[:120]}")
        print(f"score={s:.2f} / comment={comment}")
        # 採点 < 1.0 のものだけ trajectory として optimizer に渡す
        # (満点の事例は prompt 改善ヒントを含まないため)。
        if s < 1.0:
            trajectories.append(
                (
                    [
                        HumanMessage(content=item["question"]),
                        AIMessage(content=response),
                    ],
                    {
                        "user_score": s,
                        "rubric": item["rubric"],
                        "feedback": f"judge コメント: {comment}",
                    },
                )
            )
    avg = sum(scores) / len(scores)
    print(f"\n[Round {round_idx}] 平均スコア: {avg:.3f}")
    return avg, trajectories

if __name__ == "__main__":
    prompt = INITIAL_PROMPT
    history: list[tuple[int, float]] = []
    for r in range(1, ROUNDS + 1):
        avg, trajectories = run_round(prompt, r)
        history.append((r, avg))
        # 最終ラウンドは最適化しない(次に使う場面が無いため)。
        if r == ROUNDS:
            break
        if not trajectories:
            print("全問満点だったため最適化スキップ")
            continue
        prompt = str(
            optimizer.invoke({"trajectories": trajectories, "prompt": prompt})
        )
        print(f"\n--- Round {r} 終了時に更新したプロンプト ---")
        print(prompt)

    print("\n===== ラウンド別平均スコア =====")
    for r, avg in history:
        bar = "#" * int(avg * 20)
        print(f"Round {r}: {avg:.3f} {bar}")

設計上のポイントは3点です。

  • judge には ルーブリック(採点基準)を毎回渡す: 単に「良い・悪い」ではなく「4条件のうちいくつ満たしたか」で機械的にスコアを出すことで、judge 自身のブレを抑える。(4) 質問と無関係な情報を含めていない を入れているのは、後述の「過剰一般化」を採点側で捕捉するため
  • 満点未満の trajectory だけ optimizer に渡す: 満点の事例は改善ヒントを含まないため、optimizer のコンテキストを節約
  • 最終ラウンドは最適化しない: 次に使う場面が無いため、無駄な LLM 呼び出しを避ける

実行結果は以下のとおりです。

$ python iterative_self_improvement.py
===== Round 1 =====

Q: 請求書の支払い期日が過ぎてしまいました。どうすればいいですか?
A: ご連絡ありがとうございます。支払期日を過ぎた場合の対応を分かりやすくまとめます。まずは落ち着いて、以下を順にご確認ください。
(中略)
score=0.50 / comment=延滞料金への言及(2)はあるが、サポートメール support@example.com の案内(1)がなく、200文字以内(3)も大幅に超過しており、質問と無関係な情報(自動支払い設定・分割払い相談・再発防止策など)(4)も多数含まれている。欠けている要件が3つのため0.25×3=0.75減点。

Q: プランを Pro から Team にアップグレードしたいです。差額はどうなりますか?
A: 短くお答えします:一般的には「未使用期間に応じた差額を日割りで計算して、アップグレード時に差額分を即時請求」する形になります。
(中略)
score=0.50 / comment=(1)日割り計算で差額が請求される旨と(2)即時反映の旨は述べられている。しかし(3)回答が200文字をはるかに超えており、(4)税金・通貨・年払いの詳細・アカウント操作手順・メールアドレス確認依頼など質問と無関係な情報が多数含まれている。

Q: API キーを失くしてしまいました。再発行できますか?
A: はい、可能です。状況に応じて対応方法が2パターンあります。まずダッシュボードにまだログインできるか教えてください。
(中略)
score=0.50 / comment=ダッシュボードの「APIキー」画面から再発行できる旨(1)は満たしている。古いキーの即時無効化の注意(2)も一部言及あり。しかし200文字以内(3)を大幅に超過しており、安全対策やサポート連絡手順など質問と無関係な情報(4)も多数含まれている。

[Round 1] 平均スコア: 0.500

--- Round 1 終了時に更新したプロンプト ---
あなたは SaaS 製品のサポート担当です。以下のルールを厳守してください。

【回答ルール】
1. 回答は必ず200文字以内に収めること。
2. ユーザーが質問した内容のみ回答すること。質問されていないトピック(再発防止策、他の機能説明、操作手順の詳細など)は含めないこと。
3. サポートへの連絡が必要な場合は support@example.com を案内すること。
4. 簡潔・明確に、要点だけを伝えること。

===== Round 2 =====

Q: 請求書の支払い期日が過ぎてしまいました。どうすればいいですか?
A: まず速やかに請求額をお支払いください。支払いが難しい、または請求内容に疑問がある場合は support@example.com へご連絡ください。
score=0.50 / comment=サポートメール案内(1)・200文字以内(3)・無関係情報なし(4)は満たすが、延滞料金の有無(2)に一切触れていない。さらに「請求内容に疑問がある場合」という質問外の案内(4)も加わったため減点。

Q: プランを Pro から Team にアップグレードしたいです。差額はどうなりますか?
A: アップグレード時の差額は請求サイクルや残日数で変わります。正確な金額はここでは確認できないため、アカウント情報を添えて support@example.com 宛にご連絡ください。
score=0.50 / comment=「日割り計算で差額が請求される」(1)と「即時反映される」(2)が明示されておらず、サポートに丸投げしている。要件(1)(2)が欠けるため減点。

Q: API キーを失くしてしまいました。再発行できますか?
A: はい、再発行可能です。再発行をご希望の場合は support@example.com までご連絡ください。
score=0.25 / comment=再発行可能である旨は伝えているが、(1)ダッシュボードの「APIキー」画面からの案内がなく、(2)古いキーの即時無効化の注意もなく、(4)質問に無関係なサポートメール情報が含まれている。3項目が欠落。

[Round 2] 平均スコア: 0.417

--- Round 2 終了時に更新したプロンプト ---
あなたは SaaS 製品のサポート担当です。以下のルールと製品知識を厳守してください。

【回答ルール】
1. 回答は必ず200文字以内に収めること。
2. ユーザーが質問した内容のみ回答すること。質問されていないトピック(再発防止策、他の機能説明、操作手順の詳細など)は含めないこと。
3. サポートへの連絡が必要な場合のみ support@example.com を案内すること。自己解決できる場合はサポートメールを案内しないこと。
4. 簡潔・明確に、要点だけを伝えること。

【製品知識】
- 請求・支払い:支払い期日を過ぎると延滞料金が発生する場合があります。支払いに関する問い合わせは support@example.com へ。
- プランアップグレード:差額は日割り計算で請求され、アップグレードは即時反映されます。
- API キー:ダッシュボードの「API キー」画面から再発行できます。再発行すると古いキーは即時無効化されます。

===== Round 3 =====

Q: 請求書の支払い期日が過ぎてしまいました。どうすればいいですか?
A: 支払い期日を過ぎると延滞料金が発生する場合があります。支払方法や延滞料金の確認・対応については support@example.com までご連絡ください。
score=1.00 / comment=連絡先(support@example.com)の案内、延滞料金への言及、200文字以内、無関係な情報なし、の4条件を全て満たしています。

Q: プランを Pro から Team にアップグレードしたいです。差額はどうなりますか?
A: アップグレード時の差額は日割り計算で請求されます。アップグレードは即時反映されます。
score=1.00 / comment=4つの条件を全て満たしている。日割り計算・即時反映の両方を明記し、200文字以内(41文字)に収まり、無関係な情報も含まれていない。

Q: API キーを失くしてしまいました。再発行できますか?
A: はい。ダッシュボードの「API キー」画面から再発行できます。再発行すると旧キーは即時無効化されます。
score=1.00 / comment=4つの条件をすべて満たしています。「APIキー」画面からの再発行案内(1)、旧キーの即時無効化の注意(2)、文字数は約50文字で200文字以内(3)、余分な情報なし(4)。簡潔で的確な回答です。

[Round 3] 平均スコア: 1.000

===== ラウンド別平均スコア =====
Round 1: 0.500 ##########
Round 2: 0.417 ########
Round 3: 1.000 ####################

3ラウンドで 平均スコアが 0.500 → 0.417 → 1.000 と推移し、最終的に評価セット全問満点に到達しました。注目すべきは Round 2 で一度悪化している点です。

ラウンドごとの挙動を順に追ってみます。Round 1 では「200文字以内」「質問と無関係な情報を含めない」という制約が破綻しており、応答が長く脱線しがちでした。Round 1 → Round 2 のプロンプト更新で「200文字以内」「質問内容のみ回答」「サポートへの連絡が必要な場合は support@example.com を案内」という4つのルールが追加された結果、文字数と関連性は改善しました。しかしルール追加に対する 過剰反応 として、エージェントが「自分で答えずサポートメールに丸投げする」挙動に振れてしまい、製品知識(延滞料金・日割り計算・再発行手順)を出さなくなって減点されました。

Round 2 → Round 3 のプロンプト更新では、optimizer が低スコアの trajectory から「サポート任せにせず製品知識を回答に含める必要がある」と読み取り、新しく 「製品知識」セクション をプロンプトに追加しました。Round 3 ではこれが効いて全問満点に到達しています。

このように、prompt_optimizer は 「ルール追加 → 別の側面で問題発生 → 知識補強で巻き取り」 という人間がプロンプトを練り込むときの試行錯誤と同じ流れを自動で踏みます。経路は単調増加とは限らず、振り返って見直すと「ルール追加→過剰反応→是正」という波があるのが特徴です。評価データさえ準備できれば、人間が張り付かなくてもプロンプトが継続的に改善されていく仕組みが組めます。なお実行ごとに LLM の確率的揺らぎでスコア推移は変わるため、安定運用するときは複数試行の平均を取るのが無難です。

どんなときに使うか

シリーズ既存記事でも触れたように、LLM アプリケーションの品質改善には複数の選択肢があります。本記事のプロシージャル記憶アプローチが向く場面・向かない場面を整理しておきます。

プロシージャル記憶(prompt_optimizer)が向く場面

  • ユーザーごと・テナントごとに 振る舞いをパーソナライズ したい(例: 各ユーザーの好みのトーンに合わせる)
  • ユーザー UI に thumbs up/down フィードバック を持っていて、それを定期的にプロンプトへ反映したい
  • 評価データセット + LLM-as-judge を組んで CI ループでプロンプトを練り込む 用途(Ragas / DeepEval との組み合わせ)
  • システムの振る舞いの変化が必ず人間の目で読める(プロンプトが文字列として残る)状態を保ちたい

向かない場面

  • LoRA / SFT が必要な モデル本体の能力底上げ(プログラミング能力・多言語能力など)
  • 数千件規模 のデータからのパターン学習(プロンプトに収まらない)
  • リアルタイム性 が要求される更新(optimizer 呼び出し自体に数秒〜十秒オーダーかかる)

実プロダクトでは「プロシージャル記憶でユーザー個別の振る舞いを担当 + RAG / セマンティック記憶で知識を担当」という分担が現実的です。LangMemの3種類の長期記憶(セマンティック・エピソディック・プロシージャル)をLiteLLM経由で使い分けてみるで扱ったセマンティック・エピソディック記憶と組み合わせると、エージェントの「何を知っているか / どう振る舞うか」を別軸の長期記憶として運用できます。

https://dev.classmethod.jp/articles/python-itellm-langmem/

注意点

実運用で気になる点を3つに絞って挙げます。

  • プロンプト肥大化を抑える: optimizer は更新ごとにルールや知識を追加していく傾向があるため、放っておくとプロンプトが数千文字に膨れ上がります。サンプル4の Round 1 → Round 2 → Round 3 のように 「ルール追加 → 別側面で問題発生 → 知識補強で巻き取り」 という経路を辿ることもあります。定期的に人間がレビューし、不要になったルールを削るか、再起動時に初期プロンプトに戻して再学習するか、運用フローを決めておくのが安全です
  • LLM-as-judge のバイアス: サンプル4のように judge を使う場合、judge と responder が同じプロバイダー(同系統のバイアスを持つモデル)だとフィードバックの質が下がります。LiteLLMとLangGraphで3層のGuardrailsを組み込んでLLMの入出力を守ってみる Guardrails でも触れたように、Worker と Judge を別プロバイダー にするのがクロスチェック効果として効きます
  • 永続化と読み込み戦略: 本記事のサンプルは1スクリプト内で完結していますが、実運用では更新後プロンプトをどこに保存するかが重要です。LangMemの3種類の長期記憶(セマンティック・エピソディック・プロシージャル)をLiteLLM経由で使い分けてみるで紹介したように LangGraph StoreInMemoryStore / PostgresStore)に ("instructions",) のような namespace で put / get するパターンが LangMem 公式のドキュメントでも推奨されています

まとめ

LangMem の create_prompt_optimizer を使ったオンライン学習・自己改善の実装パターンを4つ紹介しました。kind でコストと品質をトレードオフしつつ、(messages, feedback) の trajectory を渡して system prompt を継続的に書き換えていけることが確認できました。

最後まで読んでいただきありがとうございました。


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