企業も不合格にされている。採用は一方的な場ではなくマッチングの場
こんにちわ。従業員体験( EX ) の向上がミッションのエンジニアリング統括室に所属しているてぃーびーです。
我々は従業員体験を向上させるのがミッションなわけですが、従業員体験は入社前からはじまっています。
従業員体験は従業員が組織に持つ期待とそれに対する満足度の影響を受けます。そしてその期待は入社前から形成されます。この期待のことを従業員体験の分野では契約( Contract )と呼びます。詳しくはこちらの記事にあります。
Employee Experience における Contract とは
この記事では採用における候補者さん目線、企業目線それぞれの期待についてまとめます。
採用は相互マッチング
採用は候補者さんの期待と企業の期待の相互マッチングの場です。
そのため、候補者さんから見ると
- 自分の期待を叶えてくれる企業かどうか選ぶ立場
- 企業からの期待に応えることができるかどうか選ばれる立場
であり、企業からみると
- 企業の期待に応えてくれる候補者さんかどうか選ぶ立場
- 候補者さんからの期待に応えることができるかどうか選ばれる立場
になります。
採用活動における選考は企業が選ぶ場、という目線が目立ちますが実際には候補者さんによる企業を見定める選考も暗黙的に行われ、
- 選考不参加
- 選考辞退
- 内定辞退
によって事実上の不合格判定を行っています。企業もお見送りされているのです。一昔前では企業が選ぶ側というケースも多かったかもしれませんが、人口が減少し、限られた優秀な人材の採用競争は激しく、特にITエンジニアリングに関わる技術職の採用はその需給バランスが崩れ、競争が激化しています。
doda さんが定期的に公開している求人倍率が参考になります。例えば、 2021年7月のデータだと
- 営業系の求人倍率 - 1.92倍
- 技術系(IT・通信)の求人倍率 - 9.17倍
です。技術系(IT・通信)の中でもレアな職種や並以上の人材を狙うとさらにハードルはあがります。
以上を踏まえ、候補者さん・企業それぞれの目線で求めているものを以下にまとめます。
候補者さんの期待
候補者さんの期待を大きく分けると
- 動機づけ要因 - 満足要素
- 衛生要因 - 不満要素
になります。
動機づけ要因
動機づけ要因は満足に関わる要素です。キャリア軸、転職軸にあたるものです。
例えば
- 個人の将来の目標につながるキャリアにつながる経験機会が得られる
- とにかく自分の専門領域のスキルを磨きたい
- 優秀な同僚と働きたい
などです。特にこのうち、重要視する上位3つくらいが特に大事だと思っています。ちなみに、この部分が明確な候補者さんは全体の半分いるかどうか、というのが経験から思うところで、選考での確認時には掘り下げて明確化するお手伝いも必要になるでしょう。
衛生要因
衛生要因はこれがないと不満という要素。最低限希望する年収や、福利厚生などです。
Must / Better があり、 Must は企業の足切り条件になり、 Better は加点要素になります。
例えば
- リモートワーク
- フレックス
- 副業できる
- 学習・資格取得支援
などです。
候補者さんと企業のやりとり
- 候補者さん
- 動機づけ要因、衛生要因を Public に公開しておく
- 動機づけ要因、衛生要因を明確に伝える
- 動機づけ要因、衛生要因に対して企業がどの程度マッチしているのか確認する
- カジュアル面談はこの部分の確認の場として活用しやすい
- 企業
- 動機づけ要因、衛生要因を確認する
- 動機づけ要因、衛生要因に対して自社がどの程度マッチしているのかお知らせする
選考は企業が一方的に選ぶ場、と考えている企業の場合、候補者として求めるものを説明すると「随分わがままな候補者だ」というような反応があるかもしれませんが、それは採用がマッチングであるという理解がないまま立ち遅れている環境でしょうから、その確認ができたという意味でよしとしましょう。
企業の期待
企業が候補者さんに求める期待は大きく分けると
- カルチャーマッチ
- スキルマッチ
です。
カルチャーマッチ
組織文化に合うかどうかの確認です。多くの企業の場合、 Mission / Vision / Value として言語化されているものの確認になります。
また、全社以外に部門やチーム単位でのカルチャーがある場合は、全社文化との差分に関して別途確認をします。この内容は情報共有ツール等に言語化されていることが好ましいです。なんなら社外にも見えていると候補者さんにも見えて嬉しいところです。
カルチャーマッチをきっちり、どの候補者さんにも等しく確認しようとすると各カルチャーの項目を元に構造化面接を作成することになるでしょう。
スキルマッチ
職務に必要となるソフトスキル、ハードスキルを持っているかどうかの確認です。ソフトスキルはリーダーシップやコミュニケーションスキルなどで、ハードスキルは個別のプログラミングスキルなど、専門領域に関わるスキルが典型です。
これらは、面接で確認することもあれば、実技で確認することもあります。実技の場合は、できるだけ実務に近い WST(Work Sample Tests) という形式が精度が高く、好ましいとされています。
候補者さんと企業のやりとり
- 候補者さん
- ポートフォリオサイトに自身のスキル、経験などをまとめて公開しておく
- 求人票に記載されている必須要件、推奨要件、求める人物像から求められる内容を把握する
- コーポレートサイトや求人サイトに記載されている Mission / Vision / Value などから、組織文化を確認する
- 選考過程で必須要件、推奨要件、求める人物像、文化などについてより詳しい内容を確認する
- カルチャーマッチ、スキルマッチそれぞれの選考を受ける
- 不採用時にアンマッチだった部分のフィードバックを求める
- 企業
- 求人票に必須要件、推奨要件、求める人物像を明確に記載する
- 応募者が選考参加する前に、選考ステップとそれぞれの選考で何をチェックするためのどのような選考をするのかを共有する
- カルチャーマッチとして確認する観点を決め、その観点を確認する選考を実装する
- スキルマッチとして確認する観点を決め、その観点を確認する選考を実装する
- カルチャーマッチ、スキルマッチの選考を実施する
- 選考結果としてマッチした部分とアンマッチした部分に関して可能な範囲でフィードバックをする
まとめ
採用における候補者さん、企業それぞれが求めるものについてまとめました。つまるところ、採用・転職はお互いが求めるところを相互に満たせるかを確認するマッチングの場です。
そして従業員体験の目線でいえば、この段階でしっかりと候補者さんが求めるものを把握しておくことで期待を把握し、それに対してどの程度応える事ができるかでアトラクト度合いが変わります。また、仮にマッチしない部分があったとき、盛らずに正直に伝えることで入社後のアンマッチを防ぐことができます。仮に正直に説明した結果、内定辞退になるのであればそれは健全で、その後不足していた組織の魅力を磨いていくことになるでしょう。