[リアルタイム更新] A Special Closing Keynote with Dr. Werner Vogels #AWSreInvent #KEY005

[リアルタイム更新] A Special Closing Keynote with Dr. Werner Vogels #AWSreInvent #KEY005

2025.12.05

あしざわです。

AWS re:Invent 2025に現地参加しています。

本記事では、Amazon.com CTO Werner Vogels 氏の基調講演をまとめます。

今年は現地時間夕方に時間枠が調整され、re:Invent 2025 の締めくくりをより印象付ける基調講演になりそうです。今年はどのようなエモーショナルな話が聞けるのでしょうか?

※本記事は、基調講演聴講中にリアルタイムで更新されます

基調講演概要

基調講演概要

Werner Vogels氏は冒頭で、今回が自身にとって最後のre:Invent基調講演となることを発表しました。全14回の基調講演に参加してきましたが、後進のエンジニアに道を譲り、異なる声が聞けるようにしたいと述べました。

基調講演のテーマは「AIは自分の仕事を奪うのか?」という世界中で聞かれる質問への回答です。Werner氏は「多分ね」と答えつつ、正しい質問は「AIが自分を古い人間にしてしまうのか?」であり、答えは「皆さんが進化すれば、そうではない」と強調しました。

Werner氏は、現在の時代をルネサンス期になぞらえました。ルネサンス期には活版印刷や顕微鏡などの新しいツールが登場し、ガリレオやダヴィンチといった人物が芸術と科学を共に進化させました。彼らは好奇心旺盛で、失敗を恐れず挑戦し続けた人々でした。

重要なのは、なぜこれらのツールが人々にとって効果的だったのかという点です。Werner氏は3つの理由を挙げました。彼らは好奇心旺盛であったこと、異なる領域の間に橋をかけたこと、そして失敗を恐れず挑戦し、その過程で学び続けたことです。ツールは変わりましたが、それを使いこなす人々の姿勢こそが重要でした。

そしてルネサンス開発者のフレームワークを提唱し、6つの資質が紹介されました。これはAI時代という新しいルネサンス期において、我々開発者がどのように振る舞うべきかを意味します。

1つ目は 好奇心(Curiosity) です。常に学び続け、実験し、失敗する意欲が必要です。Werner氏は「失敗は学びの反対ではなく、その意欲になる」と述べました。ドキュメントをいくら読んでも、実際に失敗して学ぶことでシステムの振る舞いを理解できます。

2つ目は ソーシャルであること です。お互いに話し合うことで学びが深まります。Werner氏はアフリカとラテンアメリカを旅し、様々な企業から学んだエピソードを紹介しました。ペルーの飲料会社AJEはAmazonコミュニティを支援し、都市移住ではなく村に残れる支援をしています。オランダのOCEAN CLEANUPは、AIカメラとGPS付きダミープラスチックで海洋プラスチックの流れを可視化し、クリーンアップに貢献しています。ルワンダでは保険証のヘルスインテリジェンス施設が医療データを可視化し、医療施設の最適配置に活用されています。ケニアのKOKOは、ATMマシーンで5セントからガスを購入できる仕組みを提供し、日銭で暮らす人々を支援しています。

3つ目は システムで考えること(Think System) です。システムは繋がっており、一つの変化が新しいパターンを生みます。Werner氏はイエローストーン公園の狼の例を挙げました。狼がいなくなったことで生態系全体が変化し、再び狼が増えたことで循環が回復したという事例から、システム全体を理解することの重要性を説きました。

4つ目は コミュニケーション です。考えを明確に伝えることはエンジニアにとって極めて重要です。Werner氏は2年前のFrugal Architectureの話を引用し、AmazonではシステムをTier1(検索など)、Tier2(お客様に必要なもの)、Tier3(あったらいいもの)に分けていることを紹介しました。ビジネス上いつまでに必要なのかを明確にすることが不可欠です。

ここでAWS Principal Software EngineerのClare氏が登壇し、Kiro IDE での開発経験を共有しました。AIでコードを生成する際、短いプロンプトだと数百万の結果に繋がってしまい、Vibeコーディングでは延々と反復することになります。そこで スペック駆動開発というアプローチが紹介されました。Kiroではまず要件と設計を生成し、その仕様を通じてAIとコミュニケーションします。通知システムの実装では、Vibeコーディングよりスペック駆動開発の方が早く、より正確な結果が得られました。

5つ目は オーナーシップ です。品質に責任を持ち、所有することが重要です。AIは多くのアイデアを生み出しますが、Vibeコーディングに対していいものが出てくると祈っているだけではギャンブルです。役割は変わりつつあり、マシンがコードを書き、開発者がレビューする時代になります。

AIの時代には2つのチャレンジがあります。1つ目は ベリフィケーション(検証) です。コードは瞬時に作られますが、理解はついていきません。本番環境に行く前に誰かが検証しなければなりません。2つ目は ハルシネーション です。AIは最もらしいが不適切なものを提案することがあります。

Werner氏はAmazonのメカニズムの重要性を強調しました。Exectiveがカスタマーサービスで電話を受け、Jeffもやっていたというエピソードや、トヨタの行燈カードを導入して製造ラインの欠陥が治される前に出荷しない仕組みを作ったことを紹介しました。AIの世界ではコードレビューがより重要になり、レビューがバランスを取り戻す制御ポイントとなります。

最後に POLYMATH(博学者) の重要性が語られました。ダヴィンチのように、一つの領域に深い理解を持ちながら、幅広い知識も持つ T字型のスキル が理想です。チューリング賞を受賞したエンジニアのエピソードが紹介され、彼はデータベースのサーバールームでコードも見ずにレイアウトの間違いを指摘しました。深さと広さを持つことでトレードオフを理解できるようになります。

Werner氏は最後に「自分の仕事に誇りを持って欲しい(Have Pride in your work)」というメッセージを送りました。誰も見ていない時でさえ正しくやることが大事であり、そのようなコミットメントがあらゆるところに見えるようになると締め括りました。

発表された新サービス

発表された新サービス・アップデートはありませんでした

まとめ

AI時代においてもエンジニアとして働く上で大切にしなければならないことは変わっておらず、自分の仕事に責任を持って進めなければならない、と気が引き締まりました。

最後のメッセージが「Have Pride in your work. (自分の仕事に誇りを持て)」だったところに、Werner氏の人格や優しさが詰まっているな、と感じました。

これまで14回Keynoteで登壇をしてきたDr. Wernerですが、来年以降のre:Inventでは後進に道を譲るためKeynote登壇を勇退するそうです。これまでありがとうございました。

初回開催であるAWS re:Invent 2012でのWerner氏の登壇で締めます。

https://x.com/sato_shi/status/1996756494189281612?s=20

以上です。

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