【report】 データで描く、持続可能な未来 #SUS201 #AWSreInvent #Sustainability
こんにちは。AWS 事業本部の Yoshi です。
re:Invent 2024 でラスベガスに来ています。
昨今、サステナビリティは組織にとって戦略的に不可欠な要素となっています。しかし、多くの企業はサステナビリティ関連のデータを効果的に活用する方法に困っているらしい。
そんななか、Sustainability Data Fabric (SDF) という AWS が提供する持続可能性データ管理のための包括的なソリューションフレームワークに関する面白そうな session があったので参加してみました。
セッションの概要
タイトル
SUS201 | Data-driven sustainability with AWS
説明
Many AWS customers are working through core sustainability challenges such as reducing emissions, optimizing supply chains, and reducing waste. However, some face challenges such as data availability, manual data collection processes, and a lack of data standardization. In this session, learn about Sustainability Data Fabric (SDF), which provides best practices for streamlined enterprise data management, prioritizing data quality, security, cataloging, and data governance. Also hear from AWS customer Cargill, who shares their data journey and how they built Jarvis, which helps optimization of carbon emissions associated with ocean transportation and uses gen AI to enable faster decision-making.
スピーカー
- Senior Sustainability Specialist, Amazon Web Services
- Data and Digital Lead , Ocean Transportation, Cargill International SA
概要
顧客が直面するサステナビリティの様々な課題に対する解決策についての説明や、事例の紹介。
レポート
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- 持続可能性のトレンドとデータの課題
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- AWS の Sustainability Data Fabric による支援
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- Sustainability Data Fabric フレームワーク全体図
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- Cargill 海運での革新事例
セッション中に気になった点をご紹介。
1. 持続可能性のトレンドとデータの課題
データ品質の深刻なギャップが明らかに
Salesforce とグローバルコンサルティング企業の最新の調査で、企業のサステナビリティデータ管理における深刻な課題が浮き彫りになった。調査によると、企業幹部の 95% がサステナビリティデータの重要性を認識し、93% が商業的成功に不可欠だと回答。しかし、実際に高品質なデータを保有している企業はわずか 27% に留まり、データの統合に成功している企業も約 30% 程度という結果となった。
- 95% の経営者が重要性を認識
- 高品質データ保有は 27% のみ
手作業による管理が依然として主流
特に注目すべき点は、86% もの企業が依然として手作業のスプレッドシートでデータを管理している実態だ。この状況により、以下のような深刻な問題が発生。データを手作業で集めたり、分散していたり、品質管理が難しく、レポート作成に時間もかかっているようだ。
- 86% の企業が手作業のスプレッドシートに依存
- 部門ごとに異なるデータセットの使用
- データ変換時の品質低下
- 手作業による人的エラーのリスク
- データの一貫性と信頼性の欠如
2. AWS の Sustainability Data Fabric による支援
Sustainability Data Fabric とは?
AWS が提供する持続可能性データ管理のための包括的なソリューションフレームワーク。
AWS では、組織全体のサステナビリティデータを効率的に収集、管理、分析するための統合プラットフォームとして機能。
データの一元管理・自動収集・処理・品質管理の標準化・レポート作成効率化を支援。
フレームワークとしては 4 つの機能レイヤーがある。
3. Sustainability Data Fabric フレームワーク全体図
フレームワーク全体図を見ると、様々なソースから様々な形式のデータを自動抽出、抽出データの一元化と統合、データ品質の管理、分析用のデータ準備とクレンジング抽出データから各種計算・レポーティング・可視化・連携・共有、将来的なユースケース向けに拡張できるようだ。
① 異なるデータソースへの接続・収集
様々なソースから様々な形式でアクティビティデータの抽出を自動化。生成 AI を活用してデータソースをクエリし、洞察を得ることができる。
- 公共事業会社
- ERP システム
- ファイル転送
- API
- Web フォームやアンケート調査
- センサー、IoT デバイス
- サードパーティーデータベース
- サプライヤーデータ
② Porpose-built サステナビリティデータマネジメント
サステナビリティデータの一元化と統合、データ品質の管理、分析用のデータ準備とクレンジング、透明なリネージュによる精度と監査可能性の確保。
- メタデータ管理
- データリネージュ
- アクセス制御
- データ品質
- データ検索性
- データプロファイリング
③ 社内とパートナソリューションを用いたデータ統合
独自のダッシュボード作成か、KPI の計算とレポート用に選択したパートナー SaaS アプリケーションを統合。
- KPI 計算とレポート
- 内部レポート用 BI ツール
- サプライヤーおよび顧客とのデータ交換
- 組織間でのデータ共有
- 高度な分析(一般的的な洞察、予測モデリング、シミュレーション)
④ 将来的なユースケース向け拡張
新しいユースケースやビジネスアプリケーションの構築
- carbon および ESG 規制報告
- 製品の二酸化炭素排出量
- 資源の最適化(水、廃棄物、エネルギー)
- 生物の多様性監視とリスク
- バリューチェーンの透明性
- 物理的機構のリスク評価
主なメリット
- 効率性の向上
- データ品質の改善
- コンプライアンスの強化
- 意思決定の支援
業界での主なユースケース
4. Cargill 海運での革新事例
世界規模の海運事業を展開
Cargill Ocean Transportation は、年間2億2,000万トンの貨物を世界中で輸送する大手海運企業。1956 年にジュネーブで設立され、現在はジュネーブ、シンガポール、マイアミを主要拠点として、グローバルな海運ビジネスを展開。
野心的な環境目標を設定
同社は 2050 年までにゼロカーボン海運の実現を目指す野心的な目標を掲げ、以下のようなマイルストーンを設定している。
- 2017年:目標達成に向けた戦略策定開始
- 2021年:既存船舶への排出削減技術の導入
- 2024年:初の無排出船舶の就航予定
- 現在:風力推進システムとバイオ燃料の導入により最大 20% の排出削減を実現
当時の課題
2020 年に初期の課題分析を実施。
- スケーラブルでないプロセス
- Excel ベースの手作業が多数
- 低い自動化レベル
- 3ヶ月ごとの規制報告に時間を要する
- 複雑な分析プロセス
改革アプローチ
当時の課題に対して Cargill が実施したアプローチは、AWSとの協働、段階的にプロセス実装、継続的な改善をおこなった。
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データ管理改革プロジェクトの立ち上げ
- AWS とのデータドリブンワークショップの実施
- 全プロセス、ペルソナ、KPI、ビジネス課題の分析
- 12 の潜在的プロジェクトを特定
- 段階的な実装のため 1 プロジェクトを選択
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段階的な実装プロセス
- 4ヶ月目:炭素強度計算機の導入(MVP)
- 5ヶ月目:「Jarvis」システムの導入
- 構造化/非構造化データの統合
- 35 万以上の文書の処理
- 機械学習・AI 機能の追加
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継続的な改善
- 3-4ヶ月ごとの新製品リリース
- プロセス自動化の段階的実装
- 1 年後に排出量フットプリントの完全な可視化を実現
データに基づいた意思決定
- プロセスを完全自動化
- 年間最大 2800 時間の労働時間を節約
- ほぼリアルタイムでデータを生成
- 予測分析を実行して意思決定者にタイムリーな情報を提供
- 場投入までのスピード向上 5 倍
AIチャットボットの導入
- データアクセスを簡素化
- データに基づく意思決定を加速
- 効率を最大 90% 向上
AI Laytime の使用
- プロセス自動化
- AI モデルの制度向上
- 船舶の保管期間最適化
- 年間最大 2800 時間の労働時間を節約
驚きの成果
- データコスト 60% 減
- 市場投入までのスピード向上 5 倍
- AI モデルの制度向上 >80%
おわりに
AI は単なるツールではなく、人間の意思決定を支援し、新たな洞察を提供する「知的パートナー」となりつつある。この関係性をどう構築するかが、成功の鍵を握っているのかも。
地球上の様々な企業がサステナビリティデータを効率的に収集、管理、分析しながら、frugality を意識してクラウドリソースを最大限活用できれば、地球規模の課題も解決可能なのではと感じた。
このブログがどなたかの参考になれば幸いです。
以上、Yoshi でした!