[イベントレポート]九州AWS若手の会 #九州AWS若手の会
こんにちは、AWS事業本部@福岡オフィスのべこみん(@beco_minn)です。
AWSにまつわる面白そうなオフラインイベントが私の住む福岡市で開催されたので行ってきました。
本記事はそのイベントに参加した際のセッションレポートです。
イベント概要
日時: 2024/08/21(水) 19:00 〜 20:20
会場: 株式会社Fusic オープンオフィス 福岡県福岡市中央区天神4-1-1 第7明星ビル1F
先日、2024 Japan AWS Jr. ChampionsがAWSから選出されました。 社会人3年目以内のエンジニアの中から、AWSに関する実績やアウトプットを続けた人材が選出され、AWSに関して情報発信を実施していきます。
本イベントは、九州に拠点を置く 2024 Japan AWS Jr. Champions が主催する勉強会です! AWS について登壇して発信し、技術に対する知見を深めることを目的とします。 また交流を図り、九州という地で AWS を盛り上げていくことも目的としています。
今回は第1回ということで 2024 Japan AWS Jr. Champions が登壇を担当しますが、次回以降では他の方の登壇も予定しています。 「AWS 完全に理解した」方も「AWS チョットワカル」方も、ぜひ参加をお待ちしています!
タイムテーブル
時間 | タイトル | 登壇者 |
---|---|---|
19:00 | オープニング・会場説明 | |
19:05 | AWSの基本 | 九州日立システムズ 木屋楓太 |
19:20 | 保守品質向上!?CloudWatchからの通知をレベルアップさせてみた | NTTデータ九州 小薗貴寛 |
19:35 | サービス新規利用終了!? Cloud9の代替選択肢 | 伊藤忠テクノソリューションズ 近藤隆太 |
19:45 | 休憩 | |
19:50 | CloudFrontの機能、カテゴリ分けすると理解しやすい説 | クラスメソッド 小野山翔大 |
20:05 | SageMaker Studio で始めるローコード ML | Fusic 瓦祐希 |
20:20 | AWSの日本に対する投資計画について触れてみた | 九州日立システムズ 中村稜晟 |
20:35 | 懇親会 |
セッションレポート
オープニングでは「九州AWS若手の会とは?」について話されていました。
- 若手でAWSに興味がある人たちの集まり
- 知識を共有することで技術力向上
- 2024 Japan AWS Jr. Champions が発起人
- 今回が初開催
次回開催にも意欲満々のようで、これからも楽しみですね。
それではセッションを見ていきましょう。
AWSの基本
登壇者: 株式会社九州日立システムズ 木屋楓太
- 普段はオンプレのサーバーを立てたりする部署にいる
- 会社として最近AWSを扱い始めた
- 木屋さんが最近社内でAWSの講習を行った
- しかし、そもそもAWSの基礎を知らない人が多くあまり知識が定着しなかった
- そこで、今回の発表を行おうと思った
- AWSの主要カテゴリ
- 今回はコンピューティング、ストレージ、データベース、ネットワークとコンテンツ配信に絞って話す
- コンピューティング
- 現在37サービス存在する
- EC2(Amazon Elastic Compute Cloud)
- 仮想サーバー
- スケーラブルな仮想サーバーを提供し、必要な時に必要なだけの計算能力を利用可能
- EC2を物理的なサーバーで考えてみた
- OS, CPU, Memory disk
- Lambda
- サーバーレスコンピューティング
- イベントに応じて自動的にコードを実行可能
- 物理的なサーバーで考えるOSやCPU, Memory, diskについては考える必要が無くなる
- ストレージ
- 現在19サービス存在する
- EBS
- ブロックストレージ
- EC2用の永続的なブロックストレージを提供
- EBSを使うことでスナップショットを作成可能
- S3
- オブジェクトストレージ
- 大量のデータを安全に保存し、簡単にアクセス可能
- 耐久性がイレブンナイン(99.999999999%)
- データベース
- 現在20サービス存在する
- RDS
- スケーラブルなリレーショナルデータベース
- 対応DB
- Amazon Aurora, MySQL, MariaDB, Oracle Database, SQL Server, PostgreSQL
- ネットワークとコンテンツ配信
- 現在16サービス存在する
- CloudFront
- クラウドを象徴するサービスだと思う
- 普通オンプレだとクライアントは1つのコンテンツサーバーに求める
- CloudFrontではエッジサーバーがあるため、クライアントは世界中のエッジサーバーからコンテンツを取得することが出来る
- クラウドを象徴するサービスだと思う
- Route 53
- DNSサービス
- パブリックでもプライベートでも利用可能
- まとめ
- 今回紹介した以外にも様々なサービスがある
- このようなサービスを使うことで全国のIT企業は様々なサービスを展開することが出来る
- QA対応
- Q. どうやったらJr.Championになれるのか?
- A. まずパートナー企業である必要がある。その上で、入社3年以内、AWS認定を3つ以上取得などの条件がある。
- Q. どうやったらJr.Championになれるのか?
感想
基本に立ち返ってAWSの主要なサービスをまとめられていました。こういう基本への立ち返りは忘れないようにしたいですね。
なぜこのセッションを行おうと思ったのか?という背景も非常に共感出来る内容でした。
保守品質向上!?CloudWatchからの通知をレベルアップさせてみた
登壇者: 株式会社NTTデータ九州 小薗貴寛
- 所属部署ではパブリッククラウドを推進している
- 現在は法人システムのAWS基盤保守や製造業のデータ分析基盤の高度活用か技術支援を行っている
- 今回は上記業務に沿った話を行う
- AWS基盤の保守について
- そもそも保守って?
- 品質、納期が求められる
- SLAを維持し続ける必要がある = 保守品質が高い(システムの稼働率が高い)
- AWS基盤の保守って何から始まる?
- AWSサポートからの通知に対応
- リソース監視による通知に対応
- 今回はリソース監視による通知について話す
- AWSのリソース監視通知(デフォルト)は英語ばかりでぱっと見よく分からない
- たくさんのAWSアカウントがある環境だと、何をすれば良いか、の特定が難しい
- 異常対象や状況を把握するには何が必要か?
- 顧客名
- システム名
- インスタンス用途(EC2など)
- 通知メール内にメトリクスの時系列グラフがあると傾向も読める
- 通知内容を頑張って改善した
- 上記の内容を分かりやすく記載するようにした
- 具体的には、CloudWatchのAlarmを一度Lambdaで整形し、SES経由でメール通知するようにした
- 低コストで実装出来るので是非試してみて欲しい!
- そもそも保守って?
- Lambda周辺のサービス連携を実装したことにより様々なサービスに対する理解が深まった
- みなさんも是非挑戦してみて欲しい
感想
システムの運用・保守でCloudWatchの通知を見やすくしてみた、という内容でした。
具体的に「どういった情報があると使いやすいか、実際に対応しやすいか」を考えた上での通知整形は非常に大事ですよね。
個人的にはLambdaのコード内容など、今日のセッション内容より更に深い部分を知りたくなった最高のセッションです。
サービス新規利用終了!? Cloud9の代替選択肢
登壇者: 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社 近藤隆太
- 約1年前からAWSを触り始めた
- 元々オンプレのネットワークをしていた
- 突然のサービス終了(新規利用終了)
- 2024年7月にCloud9やCode Commitなどの新規利用が終了した
- そもそもCloud9とは?
- アプリケーション開発などをクラウドベースで利用出来るIDE
- 超簡単に言うと、環境構築なしで開発が始められる最高のサービス
- メリット
- ターミナルからAWSサービスに直接制御・操作が出来る
- ブラウザのみで開発が出来る
- ローカル端末をスペックを気にしなくて良い
- Cloud9の代替案
- ローカル環境のIDEでAWS IDE Toolkitを使用
- CloudShell
- SageMaker Studioコードエディタを使用する
- ローカル環境のVS CodeとRemote SSHを組み合わせて使用する
- code-server on EC2
- など
- それぞれについて考えてみる
- 微妙だと思ったもの
- ローカル環境はそもそもブラウザ上で行えないため、Cloud9のメリットが損なわれる
- Cloud Shellもやりたいことと違う
- SageMakerとcode-server on EC2について調べてみた
- SageMaker Studio
- AWSのToshiki Watanabeさんが構築するためのテンプレートをCloudFormationで用意してくれていた
- やってみた
- スタックを作成すると出力タブにSageMaker StudioのURLが表示されるため、超お手軽に利用可能
- Cloud9にそっくりな環境が出来上がる
- code-server on EC2
- Code ServerはCoder社のツール
- こちらはクラスメソッドの柴田さんがCloudFormationでテンプレートを公開してくれていた
- やってみた
- CloudShellで手順を実施
- スタックを作成するとEC2が立ち上がり、ログインするとコードエディタが使用可能
- 比較してみた
- 作成の所要時間
- SageMakerは12分、code-serverは6分
- コスト
- SageMakerは0.05USD/h(ml.t3.medium), code-serverはEC2なので無料枠利用可能
- セキュリティ
- SageMakerはIAMでの認証やSSl/TLSでの暗号化、code-serverは認証がパスワード認証でSSL証明書が自己署名証明書
- 作成の所要時間
- SageMaker Studio
- 微妙だと思ったもの
- まとめ
- 個人的にはSageMaker Studioを推奨
- ただ、コスト面ではcode-serverに軍配が上がる
- セキュリティ面を考慮するとSageMaker
- 個人的にはSageMaker Studioを推奨
感想
かなりタイムリーな内容ですね。
自分もX上で様々な代替案を見ましたが、実際に手を動かしてはいなかったので学びの多いセッションでした。
最後の比較結果を見ていて、code-server on EC2でも接続元のIPアドレスを絞るなどセキュアに使うことは出来そうだな、と思いました。
CloudFrontの機能、カテゴリ分けすると理解しやすい説
登壇者: クラスメソッド株式会社 小野山翔大
- 初学者の時に混乱したAmazon CloudFrontについて整理してみようと思った
- Amazon CloudFrontとは
- AWSが提供するマネージドなCDNサービス
- インターネットとALBやS3の間において、コンテンツ配信を高速化したり、通信を暗号化したり出来る
- コンテンツをキャッシュすることでオリジンへの負荷を軽減する
- CloudFrontで出来ること
- HTMLやCSS、JavaScript、画像、動画などのメディアファイルのキャッシュ
- リクエストのパスに応じて振り分け
- HTTPS化
- カスタムドメインの設定
- CloudFrontを触る機会があったので、BlackBeltで学習してみた
- 横文字だらけで理解が進まなかった
- そこで、実際に環境を触ってみて理解を進めた
- 自分なりの考え方(理解の仕方)をまとめてみた
- ビューワー、ビヘイビア、ディストリビューション、オリジン
- ビヘイビアとオリジンをまとめて管理するのものがディストリビューション
- これらを「外」「そのもの」「中」というカテゴリに分けて理解を進めた
- ただし、これらは技術的に正しいかどうかではなく、あくまでも理解の補助としてのカテゴリ分け
- 改めてCloudFrontのキャッシュ設定について考えてみた
- キャッシュ自体は「そのもの」の設定
- オブジェクトが無い場合は「中」(オリジン)に取りに行く
- オブジェクトを取りに行く動作はビヘイビア
- パスパターンの設定
- CloudFront経由の「中」へのアクセスをパスによって制御
- 「中」へのアクセスにパスを設定する(設定自体は「そのもの」)
- HTTPS化の設定
- CloudFrontはグローバルなサービスなので、「外」からCloudFrontへの通信にはバージニア北部リージョンでACM証明書を作成する必要がある
- この考え方を始めてみて
- CloudFrontのとっかかりとして非常に役に立った
- まとめ
- カテゴリ分けは概念的・ざっくりとした理解に役立った
感想
新しい技術を学ぶ際、自分の理解しやすい概念に置き換えて理解の足掛かりにする、という内容でした。
登壇者自身も「技術的に正しいかどうかは置いておいて」としっかり前置きをしていた通り、エンジニアとしては正しい技術理解をした方が良いものの、最初のとっかかりとして自分の理解しやすい概念に置き換える方は多いのではないでしょうか。
SageMaker Studio で始めるローコード ML
登壇者: 株式会社Fusic 瓦祐希
- 甲賀忍者検定初級
- ビール検定三級
- 目次
- SageMaker Studioって?
- SageMaker JumpStartって?
- まとめ
- SageMaker Studioって?
- GUIベースで機械学習に必要な機能を使えるサービス
- データの処理、モデルの訓練、モデルのデプロイなど
- 画面の紹介
- 出来ること
- 開発環境が簡単に用意できる
- チーム間でデータの処理プロセスなどの共有が出来る
- モデルの選択、デプロイ、訓練、評価が出来る
- 既存のモデルを簡単にデプロイ出来る
- GUIベースで機械学習に必要な機能を使えるサービス
- SageMaker JumpStartって?
- 既存のモデルを簡単に使えるように出来るサービス
- 音声認識、画像生成、テキスト生成など
- ノーコードで機械学習モデルをデプロイ可能
- 実際にデプロイしてみる
- どう言うモデルを使うか選択出来る
- よく使われるのはHuggingFace
- HuggingFaceで音声認識のモデルをデプロイしてみる
- モデルを選択し、画面右上のデプロイボタンを押すだけ
- かなり簡単にデプロイ可能
- デプロイが完了すると、APIのURLが発行される。これをプログラムから実行可能
- boto3経由で簡単に叩ける
- どう言うモデルを使うか選択出来る
- メリット
- ノーコードで機械学習モデルが使える
- リソースの管理に力を入れなくていい
- デメリット
- 対応していないモデルは使えない
- カスタマイズしたモデルの使用には向いていない
- 削除を忘れると大変(コストが嵩む)
- 既存のモデルを簡単に使えるように出来るサービス
- まとめ
- SageMaker Studioを使うことでローコードで機械学習の開発が出来る
- JumpStartを使えばノーコードでモデルのデプロイが可能
感想
私があまりSageMakerを触る機会が無く、特にJumpStartというサービスは使ったことが無かったので学びの多いセッションでした。
ノーコードでもモデルのデプロイが出来るのは凄く良いですね。
AWSの日本に対する投資計画について触れてみた
登壇者: 株式会社九州日立システムズ 中村稜晟
- 普段はインフラ周辺の設計、構築を行っている
- AWS歴は10ヶ月
- 好きなAWSサービスはTransit Gateway
- 大学時代は経営学を専攻
- 今回が初めての社外登壇
- AWSの日本でのこれまでの活動
- 2009年に最初のオフィスを開設
- 2011年に東京リージョン開設
- 2021年に大阪リージョン開設
- 2024年1月19日に「AWSの経済効果に関するレポート」が発行
- 2023年-2027年にかけて、日本に対して2兆2,600億円の投資
- どれぐらい凄いの?
- よく分からない
- 他社の似たような事例
- Googleは2022年に日本のネットワークインフラにに1000億円を投資と発表
- Oracleも似たような事例あり
- 2024年にトヨタ自動車株式会社も未来を見据えて自社に2兆円を使うことを発表
- これらを考えると、AWSは結構な額の投資をする予定だと考えられる
- どれぐらい凄いの?
- 2兆円で何が出来るか?
- 何でも出来る
- 東京ドームが57個作れる
- 企業の買収や不動産投資など?
- 費用対効果は?
- 経済学的には良くも悪くも無い
- ROIで考えてみた
- 5兆5,700億円の経済効果があると考えられているため、ROIは246.46...となる
- ROIは100を下回ると悪い、300を超えると良い
- 経済学的には良くも悪くも無い
- 2023年-2027年にかけて、日本に対して2兆2,600億円の投資
- 所感
- 率直に2兆円以上の投資を受ける日本はすごい
- 投資計画という視点で見ることでAWSの規模の大きさを感じた
- Jr.Championのようなコミュニティ活動も投資のおかげで出来ているのでは?
- 今後のAWSの活動に注目
- この1年間はしっかりAWSに貢献出来るように活動していきたい
感想
AWSの勉強会というと技術の話も多いですが、経験の話だったりこのセッションのようにビジネス面に触れる話も新鮮で面白かったです。
特にROIという指標は普段意識することが無いため勉強になりました。
最後に
AWSの勉強会というとJAWS-UGのイメージが強いですが、地方の若手が中心となって盛り上がる今回のようなイベントが地元で開催されるのは非常に嬉しいです。
懇親会で色々な方からお話を伺ったところ、参加者の中には「普段オンプレを触っていてこれからAWSを触ろうとしている人」や「最近AWSを触り始めたばかりの人」も多かった印象です。
タイトルに「若手」と入っていることもあり、初学者の参入ハードルも低そうですね。最高です。
福岡でAWSが盛り上がることは個人的に非常に嬉しいので、今後の開催も楽しみにしています。
以上、べこみんでした。