【レポート】中部電力グループにおけるAlteryxの導入による組織変革の成果と未来への可能性 #Alteryx
2023年7月20日(木)に、ANAインターコンチネンタルホテル東京にて Alteryx Inspire On Tour Tokyo というイベントが開催されました。
本記事では、中部電力株式会社 水野様による「中部電力グループにおけるAlteryxの導入による組織変革の成果と未来への可能性」というセッションについてレポートします。
セッション情報
- セッションタイトル
- 中部電力グループにおけるAlteryxの導入による組織変革の成果と未来への可能性
- スピーカー
- 中部電力株式会社 水野 勝史氏
- DX推進グループにて、中部電力グループにおけるデータ利活用の促進を実施
- 中部Tableauユーザー会 会長
- 中部電力株式会社 水野 勝史氏
- セッション概要
中部電力では、Alteryxの導入により組織変革が加速しました。これまでの軌跡と成果、今後の方向性について、データ利活用推進リーダーとしての目線でご紹介します。具体的には、組織としてのデータ活用意識の変化、業務プロセスの高度化や効率化などの実現方法について取り上げます。また、これらの実現を支える支援体制とマインドについてもご紹介します。そして、今後の展望やAlteryxが当社にもたらす未来の可能性についてもお話しします。
※Alteryx Inspire On Tour Tokyo アジェンダ より引用
セッション内容
1.中部電力の概要と戦略
- 中部電力株式会社の概要
- 中部地域を拠点とする総合エネルギー企業グループ
- 2019, 2020年に、事業ごとに会社を分割
- 2019年4月:既存の火力発電事業を「株式会社JERA」へ統合
- 2020年4月:送配電事業を「中部電力パワーグリッド株式会社」、販売事業を「中部電力ミライズ株式会社」として分社化
- 本セッションは、中部電力株式会社・中部電力パワーグリッド株式会社・中部電力ミライズ株式会社 の3社における取り組み事例のご紹介
- 中部電力株式会社の戦略
- 以下の3軸による戦略・活動を基本方針としている
- DX戦略
- 人財戦略
- かいぜん活動
- 以下の3軸による戦略・活動を基本方針としている
- DX戦略
- お客様サービス・業務変革の双方での実現を目指す
- いずれにおいても、デジタル技術・データ利活用が重要
- データ利活用による働き方改革によってワークライフバランスの充実を目指す など
- 参考:DX(デジタル・トランスフォーメーション)の取り組み | 中部電力
- 人財戦略
- 先輩社員の成長の軌跡にとらわれず、社員一人ひとりが成長・活躍することで、DX戦略にもつながるという考えのもと、それぞれの社員が自らのキャリアを考え、成長・活躍機会を獲得することが可能な状態を目指す
- そのためには、社内でデータ利活用できる状態にある必要があるという点を社としても認識し、データ人財としてのキャリア開発可能な環境を整備している
- →Alteryx の導入につながる
- かいぜん活動
- 事業環境・社会情勢の変化に強い企業となることを目標に、社員一人ひとりが変革を進めることができる組織づくりを進めている
- 2017年4月からは、トヨタ生産方式を導入し、安全・品質の確保を前提とした業務プロセスの効率化に向けた変革も進めている
- かいぜん活動の成果は事例としても出てきている
2.Alteryx の導入経緯
- 中部電力の戦略のために、社内ユーザー一人ひとりが、社内の多様なデータ利活用による業務効率化・高度化、新たな価値創出を目指していた
- そのためには、様々なデータを利活用可能な状態にある必要があった
- しかし当初は以下のような課題も
- データがすぐ使える状態ではない
- ユーザーのアイデア・ニーズを検証する方法や機会がない
- そこで、ユーザーがストレスなくデータに触れる環境づくりと、ユーザーによるデータ活用を支援する方針とした
現在では Alteryx Server も導入し、システム開発にも Alteryx を活用。
ここに至るまでの具体的な活動内容は以下の通り。
- 2018年頃:データ利活用可能な環境づくりに着手
- データ利活用手順を「(データの)収集・蓄積~可視化・分析」と定義
- 当初はデータがサイロ化された状態であったため
- 各システム部門でデータの収集を・蓄積を行い、BIツールによる可視化・分析を始める
- しばらくすると、社員自らデータの準備から行いたいというニーズも
- Alteryx の存在を知り、社員がユーザー開発で集約・加工する際に有効なツールと知る
- データ利活用手順を「(データの)収集・蓄積~可視化・分析」と定義
- 2019~2020年頃:Alteryx の導入・社内標準ツールとして選定
- Alteryx のライセンスを購入し、社内導入のための勉強会を実施
- はじめは IT部門を対象
- Alteryx のライセンスを購入し、社内導入のための勉強会を実施
- 2021~2022年頃:一般社員向けに導入・システム開発にも Alteryx を活用
- 一般社員向けに、説明会や実現したいことのヒアリングを実施
- Alteryx Server を導入
- 社員自らデータ利活用できるように Server 利用時は、あえて厳しい制限は設けない方針とした
- はじめはユーザー向けの導入であったが、その後、システム開発にも Alteryx の活用を開始
3.Alteryx の導入成果と事例
- 導入成果
- 「ユーザー開発」の実現による、社員一人ひとりの業務範囲の拡大
- Alteryx の比較的容易にデータ活用の処理を作成できるという特徴により、ユーザー・IT部門双方に以下のようなメリットが出てきた
- ユーザー
- データ利用時の調整業務の軽減(IT部門へ依頼せずとも自身で作業できるため)
- 本当に必要なシステムの厳選
- IT部門
- より付加価値のある業務への専念
- システム開発費の抑制
- ユーザー
- Alteryx の比較的容易にデータ活用の処理を作成できるという特徴により、ユーザー・IT部門双方に以下のようなメリットが出てきた
- データフローの「見える化」による組織での活用と属人性の排除
- データ集約・加工の過程がワークフローによって可視化され、組織で活用できる集合知となる
- 見える化により、これまで属人性のあった業務の引継ぎが容易になり、一時的な DX ではなく持続可能な変革に
- 扱いやすいツールであることによる、トラアンドエラーの考え方の定着
- ワークフローという形式で、比較的容易にデータ活用の処理を作成できることで、まずはフローを作成し、その後修正を加えていくというアジャイルに近い活用が進む
- これにより、作業工程で必要な業務側・IT部門間での連携も容易に
- 「ユーザー開発」の実現による、社員一人ひとりの業務範囲の拡大
- 事例
- ユーザー開発による事例
- あるデータの集約・可視化結果を意思決定層と議論したい場面で、タイムリーに必要なデータを提供可能に
- Alteryx の導入初期段階の事例であったが、トライアンドエラーで構築を進め、ワークフローは数日で実装
- ワークフローとして見える化されているので、一時的なものではなく、この業務の継続も可能なものに
- あるデータの集約・可視化結果を意思決定層と議論したい場面で、タイムリーに必要なデータを提供可能に
- システム開発への応用例
- 社内のシステム開発に必要なデータフローを Alteryx で提供することで、システム開発工程に要する時間を大幅に短縮
- 要件定義の終了段階で、具体的な仕様の大部分がワークフローとしてできている状態
- データ移行を含むシステム開発であったが、データ移行部分も、ユーザー開発により実施でき、コストも削減
- 社内のシステム開発に必要なデータフローを Alteryx で提供することで、システム開発工程に要する時間を大幅に短縮
- ユーザー開発による事例
4.Alteryx の導入のための準備と苦労
Alteryx 導入のための準備
- Alteryx の活用も含めたデータ利活用の支援チームの結成
- 社内ポータルでの情報提供
- メール・チャットによるユーザーの相談・質問受付
- 対面でもサポートを実施
- ユーザーの自走を目指した支援を行う
- 単なるQA対応ではなく、ユーザーが実現したいことをヒアリングし、ユーザーの自走を促すような支援を実施
- 社内で得られたベストプラクティスをまとめ、公開
- 積極的な Alteryx の利用を支援チームから働きかけるといった方針ではなく、目的の実現に向けて、課題を抱えているユーザーへの手厚いサポートを特に重視
苦労したこと
- システム開発における手戻りの発生
- 機能別に担当分け・ワークフロー開発の先行着手など、アジャイルに近い形でのワークフロー構築の重要性を実感
- Alteryx Server のリソース
- 当初は、ユーザー開発での利用を想定していたため、システム開発にも用いるようになった際に、Server のリソースが不足する場面も
- システム開発で使用する処理については、Server 運用のポリシーを定めておくことの必要性を実感
5.今後の課題
- ユーザー開発とシステム開発の境界線
- それぞれをわけて今後も考えるべきか など
- Alteryx の導入による定量評価可能な KPI の検討
- 現場に負担をかけずに測れる指標を探している
- ライセンスの効率的な運用
- ユーザーごとに、利用頻度や成果がでたのか など
- 使いこなせていない機能の利用
- 特に分析関係のツール
- 支援チームとしても、ユーザーがより Alteryx を使いこなせるような機会の創出に注力したい
6.未来の可能性
- 中部電力グループは、インフラを支える中核として社会の変革に貢献することを目指している
- そのためには、データ利活用の促進による社員の活躍の幅を広げていく必要があると認識
- 社内のコミュニティ活動や新たな事例展開も進めていきたい
- Alteryx はそのための重要な役割を果たす考え
さいごに
グループの基本方針に基づき、社員の成長・活躍の機会を広げるためのツールとして、Alteryx を選定・導入されたという背景から、ツールの導入に終わらない継続的な DX のための支援チームの工夫など、とても勉強になる内容でした。
この取り組みの結果として、当初のユーザー開発からシステム開発という Alteryx の活用範囲の拡大、システム開発時の期間・コスト削減といった成果も出されています。部門間(業務側と IT 部門など)の連携を行うという考え方の定着といった、組織の姿勢に変化が表れてきたという点は個人的に一番驚いた点でした。
Alteryx の比較的に容易に扱える点や、ワークフローという形式によって、業務のデータフローの可視化ができるという特徴は、他のセッションでも言及されていましたが、中部電力様においては「データ人財としてのキャリア開発可能な環境を整備する」という方針に特にマッチしたツールであったのかなと感じました。
最後には、今後新たな事例展開も進めていきたいというお話もあったので、今後も気になる事例です。
以上、中部電力株式会社様のセッションレポートでした。