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我々はどう向き合い、何をしていくべきか? 『ChatGPT元年 〜ChatGPTで変わるエンジニアリング〜』 パネルディスカッション完全レポート #devio_day1 #main

2023.04.17

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アライアンス統括部 サービスグループの しんや です。

先日2023年04月11日に弊社新オフィスとなる日比谷オフィス(in 日比谷フォートタワー)にて開催された久々の全社イベント『DevelopersIO Day One』。

その中のセッションで、現在話題沸騰中、IT業界に留まらず世の中的にも様々な影響を与えている『ChatGPT』に関するパネルディスカションが企画され、イベント当日の裏番組無し、全ての参加者がこのセッションを聴講したという破格(!)の扱いで発表が為されました。

当エントリではそのパネルディスカッションの内容をほぼ全編文字起こしでお届けします。

目次

登壇者自己紹介

濱田孝治(以下"ハマコー"):
こんばんは〜!(参加者一同拍手)
いやー本当今日は皆さんお越し頂きありがとうございます。唯一、このセッションだけ裏番組がなくてここに全員集合するという、凄い機会を頂いた訳なんですけれども、リアルな会場にお集まり頂きありがとうございます。
今日2つ目のメインセション、DevelopersIO Day One、ChatGPT元年〜ChatGPTで変わるエンジニアリング〜というタイトルでお話をさせて頂ければと思います。皆さんよろしくお願いしまーす!!
申し遅れました、わたくし司会のハマコーと申します。よろしければTwitterフォロー頂けますと嬉しいです。


(※ハマコーさんのTwitterアカウントは @hamako9999です。皆フォローしよう!)

そして今日こちらに登壇頂いている皆様と一緒に、ディスカッション形式でChatGPTに関するあれやこれやを聞いていければと思っております。
ではまずはじめに、増井さん自己紹介をお願いします。
増井 雄一郎氏(以下"masuidrive"):
今日はよろしくお願いします。増井 雄一郎といいます。


(※masuidrive氏のプロフィール)

ネットではずっと masuidriveという名前で活動しています。私元々文系で、数学も微積分とかやったことなかったんですけれども、去年から機械学習の勉強を真面目にはじめています。
そんな時にちょうどChatGPTが出てきて、そこから色々どっぷり浸かって、最近ではオープンソースでSlackのサマリをするツールを作ったり、今年は月に1本、年間10本アプリを作って出そうと思っています。
今日は色々と面白い話が出来るなと思って楽しみにしてます。よろしくお願いします。
ハマコー:
このアイコンを見たことがある人めっちゃ居ると思うんですけれども、風呂グラマとしても有名な増井さんですね。
続いて2人目の登壇者です。向さんお願いします!
Findy 向晃弘氏(以下"向"):
皆さんこんにちは。ファインディの向と申します。元々エンジニアではあったんですけれども、今はプロダクトマネージャーをしています。先日も出したんですけれども、ChatGPTを使って、エンジニアのキャリアをどう良くしていくかという機能を2つリリースしました。
私はこの先AIの時代が来ると思っています。生存戦略としてはChatGPTには敬語を使って話してるので、みなさんも是非敬語で接して頂けますと(笑) 本日はよろしくお願いします。


(※向晃弘氏のプロフィール)

ハマコー:
確かになんか、使っててあれですよね。あんまし汚い言葉を使うのは普通に躊躇われる感じはありますね。
masuidrive:
たぶん、綺麗な言葉でやった方が正しい答えが返ってくる率が上がるはずなので(笑)、仕組み的に。
向:
その辺は人間と同じ感じがしますね。
ハマコー:
3人目の登壇者はクラスメソッドから金城さんです。よろしくお願いします。
金城秀哉(以下"きんじょー"):
はじめまして。クラスメソッドでサーバーサイドエンジニアをやっています。金城と申します。


(※きんじょー氏のプロフィール)

普段はLINEミニアプリのバックエンドの開発をしていて、ChatGPTとLINEを組み合わせて何か面白いことが出来ないかと思い、AIと英会話雑談出来るアプリを作ってみたり、あとはプロンプトエンジニアリングですね。最近出て来た面白い概念なのでそのガイドについて解説記事をだしてみたりしています。
私自身バックグラウンドとして機械学習周りの素養があるというわけではないのですが、今出てきているLLM(Large Language Models:大規模言語モデル)というものをサービスにどう組み込んでいくか、アプリケーションの開発者の視点でお話が出来ればと思います。よろしくお願いします。

ハマコー:
そういえばきんじょーさんが書いたプロンプトエンジニアリングに関するブログ、めっちゃバズりました(はてなブックマークだけで1000超!)よね。

 

参加者の傾向アンケート

本題に入る前に、当セッション参加者の属性的な部分の傾向がどのようなもなのかについて挙手によるアンケートが行われていました。

ハマコー:
今日は折角のリアル開催イベントなので、皆さんに質問・アンケートを取ってみたいと思います。是非皆さん積極的に挙手頂く形でお願いします。
1つめの質問です。今日ChatGPTと何かしら喋った人ってどれくらい居ますでしょうか?手を挙げてください。

…いや凄いな!思った以上に多いですね。8割位いるんじゃないですかね?
masuidrive:
この中に「人間と喋ってない」人も入ってるんじゃないですかね?(笑)
ハマコー:
いやそんなことないんじゃないですかねぇ(笑) いやぁでも素晴らしいですね。ChatGPT熱の凄さを感じました。
2つ目の質問です。今日のディスカッションのテーマとしては「エンジニアリングがどう変わっていくか」というのがテーマではあるんですけれども、皆さんどんな形でエンジニアリングに関わっておられるか、というところを聞いていきたいと思います。
エンジニアの方はどれくらいいらっしゃいますでしょうか。(※多くの参加者が挙手)
プロダクトマネージャーやスクラムマスタの方。(※1割位の方々が挙手)
ビジネスサイドの方、営業とかコンサルをやられている方。(※これもそれなりの割合の方が挙手)
ありがとうございます。今日は会場の参加者の皆さんの属性も踏まえつつ、進めていければと思っております。
改めて事前連絡です。今日はせっかくのリアルイベントなので、是非皆さんと一緒に盛り上げていきたいです。イベントハッシュタグを用意してますので、遠慮なくつぶやいて頂ければと思います。今この瞬間、手元のTwitterクライアントツールで「ChatGPTわっしょい」等とつぶやいて頂き、イベント盛り上げに御協力ください。
あとですね、せっかく皆さん来て頂いているので今日はSlidoでQAを受け付けたいと思います。「今日こんなことを聞いてみたいな」というものがあればQRコードからアクセス頂き、質問をして頂ければと思います。よろしくお願いします。


(※当日の質問はSlidoを使って行いました)

 

パネルティスカッションその1「ChatGPT(LLM)によりエンジニアに求められるスキルはこれからどう変化していくのか?」

ハマコー:
では本編参りましょう!1つ目のディスカッションテーマは「ChatGPT(LLM)によりエンジニアに求められるスキルはこれからどう変化していくのか」です。このテーマについて皆さんとお話して行きたいと思います。
ChatGPT、もっと広義の意味で言えばLLMですね。これによってエンジニアに求められるスキルはどういう風に変化していくのか。......増井さん既に喋る気まんまんじゃないですか(笑)


(※ハマコー氏)

masuidrive:
はい!(ドヤ顔
ハマコー:
(笑) では増井さんからお願いします!
masuidrive:
エンジニアに求められるスキルは、GitHub Copilotみたいに「自分たちがコードを書くのにどう使うのか」という部分と、プロダクトやコードを書く中で「ライブラリとしてどう使うか」という2つの側面があると思っています。今日話したいのは2つめの方ですね。
この「LLMの使い方」って、大きく3つに分かれると思っています。
1つ目は「ナレッジベース」。要するに聞いたら答えてくれるものですね。例えば「ChatGPTの使い方を教えてください」って聞くと使い方が返ってくる、みたいな「知ってる事を教えてくれる」ものです。
2つ目は「プロセッサー」。知っていることではなく、何か情報を与えて、やってもらいたいことを指示するとそれを処理してくれる。例えば「英訳して」「翻訳して」「うまくリライトしてくれ」などです。処理をするプロセッサ的能力。
3つ目は「ユーザーインタフェース」。今まではGUIとかボタンとかしか無かったものがテキストになるという側面ですね。
エンジニアじゃないとわからない、試してみないとわからないことが沢山あるので、まず試してみてそれらがどういう風に使えるのか、ただ何か、ChatGPTが聞かれたことを答えられるようにしましょう、プロンプトで面白いことを考えましょう、ではなくて、そういった分解作業を経て「どういう局面でどういうことに使えるのか」という部分を考えていくスキルが少なくともあと2〜3年は必要になるのではと思います。それ以上先の話になると正直どうなっているかはわからないですね。僕はそれがまず一番最初に「使い方を自分で探す」というのが一番の変化かなと思います。
向:
私も増井さんの話と近いのですが、「より一層、エンジニアの拡張が出来るようになった」と思っています。
我々プロダクトマネージャーは若干ピンチというか、エンジニアリングをやりつつもプロダクト側への越境がすごくスムーズになっていくと思ってるので、そういう意味だと「エンジニアの定義って何だ?」っていう問いが次にやってくると思っているので、その辺りをすごい今気にしています。
今後は、今までエンジニア(のもの)じゃないと思われていたスキルがエンジニアに求められてくる、含まれてくるので、スキルの変化でいうとすごい「エンジニアの定義が変わる」。とにかく越境が出来るようになってくるので、そのへんは大きく変わってくるのかなと思っています。
masuidrive:
それって、逆も有り得ますよね?プロダクトマネージャとかビジネスの人がコードが書けるようになる、みたいな。
実際に、僕が一緒にやっている友達で医者の人がいるんですけど、その人は自分でPythonが書けるようになって、自分でゴリゴリプログラミングを覚えていってるんですよ。今までエンジニアリングが出来なかった人がエンジニアになっていく、というのも、このLLMが出来てから進んでいくという感じがしますよね。


(※masuidrive氏)

向:
仰る通りです。
やっぱりTwitterとかを見ていても、コードを書けない人が(ChatGPTに)教えてもらいながら…というのを沢山見ているのであれは衝撃だな…というのはありますね。
ハマコー:
今まで色々アイデアはあるけれども実装方法が分からない、みたいな人達がChatGPTを使って色々試してみて1週間で出来た、みたいなのを見るようになってきたのでそれこそYouTuberみたいな人達が出てくるのかも知れないですね。
どちらかというと危機感持つのってエンジニアの方が多いんじゃないかな、というのは何となく感じますね。
masuidrive:
僕ら「DXする側」かと思っていたら真っ先に「DXされる側」に...みたいなことですよね。
ハマコー:
何となく今はそういう雰囲気がありますよね…では最後、金城さんよろしくお願いします。
きんじょー:
そうですね。増井さんはLLMをサービスに組み込む上でどう考えるか…というお話をされていたと思うんですけれども、私としてはどちらかというとLLMを使って、自分たちの、エンジニアが越境するとかエンジニアじゃない人達がサービスを作っていくとか、「ChatGPTをどう使いこなしていくか、使いこなしていくスキル」が明確に求められてくるのかな、と思っています。
具体的なスキルとしては、1つは「正しくLLM(ここではChatGPT)に対して、タスクをこなしてもらうための命令を出す」というものだと思います。これまで求められていた「人に対して指示を出す」「部下に対して物事を依頼する」というスキルとあまり変わらないかなと思っています。ただ、先程増井さんが仰っていた「お医者さんがChatGPTを使えるようになる」というのって、結構、出て来たアウトプットをどう評価するのかという、そこの(エンジニアの)専門性の部分は残っていくと思っています。一方ですごいなと思うのはChatGPTが専門性を獲得するパートナーとして成り得る状況にもなっているので、体系的に学びたい学問に対してプランを考えてもらったりだとか、本当にいつでもなんでも聞けるパートナーがそばにいるのでそれを使いこなしていく、自分のインプットも加速させていく、アウトプットも加速させていく、というのがこれから求められていくのかなと考えています。
ハマコー:
なるほど、ありがとうございます。
masuidrive:
この前GitHub Copilot Xを見せてもらったんですが、あれは凄いなと思います。
何が凄いかって言うと「ソースコードを読まなくて良くなる」んですよね。ソースコードについてチャットで「これってどういう風に呼び出せばいいの?」「どういう処理をしているの?」って聞くと、全部答えてくれるようになったり、ドキュメントと対話が出来るようになったりするんです。Developer Experienceって意味ではエンジニアも非エンジニアも凄い変わっていくんだろうな、って思いましたね。

ハマコー:
そういう文脈で良く出てくるのは「こういう処理をしたい」って聞くと何かしらコードが返ってくる、ただそれらの「返答」を判断するためのスキルは変わらず必要になってくる、っていうポイントですよね。そういうときってこれから先も「最終的には公式ドキュメントを参照して大丈夫かどうかを確認する」というプロセスはまだ残っていくものなんでしょうか。
きんじょー:
私自身、今の段階では勿論必要であると考えます。
先程増井さんが仰っていた「Copilot xのドキュメントの検索」ですね、あれはドキュメントに基づいた回答なので、それに対して「この部分を更に詳しく知りたい」とかを自然言語で回答が得られるようになっていくので…
ハマコー:
あ、じゃあもう全然…
masuidrive:
ドキュメントを書かなくてもソースコードからドキュメントを生成される感じですね。
ハマコー:
であればもうあれですか、例えばコードの確からしさであったり、コードの動作判断を人間がしなくても…
masuidrive:
こういうコードを、こういう入力をした時にどういう風に処理されますか、というのが聞けるようになってくるので、その辺の質問もエージェント機能で多分そのうち出来るようになってくると思います。(※増井さんがこの日確認した限りではまだの模様)
本当にこの先、「僕らが出来ることとして何が残っていくんだろう?」というのは思います。
ハマコー:
そうですねぇ…….僕ら何しましょ?(笑)
masuidrive:
LLMの周辺技術は結構必要なものがあるように思います。
 
例えば皆さん使っているのでおわかりかと思いますが「プロンプト」の長さって無限にはいけないですよね。APIでも基本的には3000文字位が限界だし(めっちゃ高い料金払えば32000文字までいけるけど)、その制限の中にどうやって情報を圧縮して詰め込んでいくかとか、先程出て来た「マニュアルを読んで答える」のも、マニュアルのページ部分をプロンプトの中に入れなきゃならない時にそれらを要約して入れるとか、どこを切り出していくとか、その辺りはデータベースとかベクトルとか数学的な要素が凄い増えるんですね。
 
で、そういうライブラリも出てきてるんですけど、ここ1〜2年は評価するのに数学とかエンジニアが、私は文系だったので分かるんですけれども別に文系でもエンジニアとしてはあんまり困らなかったんですね。数学もあんまり必要無かったし。論文を読むなんてこともいままでは全然無かったので。そこは何かすごく変わってきて、一番最初に出てくるのは論文になっていて、どう実装されているのか、どういう評価が出来るのかは数学的知識を持っている人が伸びやすくなった、というのはエンジニアの変化として結構大きくあるんじゃないかなと思います。

ハマコー:
なるほど。だからもう、いわゆるひとつの「ビジネスロジック」を動くために実装するみたいなのはどんどんなくなっていくと。
masuidrive:
そうですね。その代わり、こういうのに使えるように周辺技術を作るというのは暫くこの先伸びるんだろうな、というのはあると思います。

 

パネルティスカッションその2「ChatGPT(LLM)により、プロダクト開発のプロセスはどう変わっていくのか?」

ハマコー:
ありがとうございます。では次のテーマに移ります。次のテーマは「ChatGPT(LLM)により、プロダクト開発のプロセスはどう変わっていくのか?」です。
エンジニアの実装プロセスとしては今出たような話があると思うんですけど、実際のプロダクト開発って最初にそもそも「何を作るのか」を考えて、マーケ要素もあったりして、その上で実装します、テストします、更にそれを保守していく….みたいなプロセス全体があると思うんですけれども、そういう部分とか全体的にChatGPTとかLLMとか出てくると変わってくるものなのでしょうか?
向:
そうですね、今も弊社で作っているプロダクトを見てても、SlackのチャンネルにGPTボットとかを入れてるんですけど、やっぱりもう「居る」んですよね、って話になってくると思うんですよね。『あれ、今日は(プロジェクトメンバーにAIが)いないの?』みたいな。それが普通になってくると思います。使わない選択肢はない、という状況がやってくるというのは大きな変化かなと。


(※向氏)

masuidrive:
LLMを会社で使っていて中長期的に一番変わることは「コミュニケーションや対話に対する価値が激下がりする」ことだと思います。
 
今まで、中でロジックは出来ていたけど説明する、対話して教えていくっていう「対話のコスト」がすごい高かったんです。実際プロダクト開発の中、特にスクラムとか組んでいると「対話をするコスト」ってすごい高いじゃないですか。教えていく、理解していることを引き取って調整していく...みたいな部分が。GPTはさっき言ったようなインタフェースという意味では対話のコストを劇的に下げるので、そういう意味でスクラムのやり方とかも多分この先変わってくる。
 
常に横にスクラムマスターが耳元にいて色々指示をしてくれたり教えてくれたり、足りないことを調整してくれたりってのがあった時に、プロダクト開発の今のワークフローが、スプリントを組んでやっていく、朝にスタンドアップミーティングをやっていく、ああいったものがどんどん変わっていってもっと非同期とか、それも実際は僕はAIと話すんだけど、AIはエージェント同士でチューニングしてくれて、やり取りを行うっていう「時間差」を超えてできるようになっていって、特にリモートで働きやすくなる、リモートで働いていると「対話のコスト」がリモートだとすごい高いんですよ。
 
で、それがLLMで代替することによって実はリモートでは出来なかったことがAIを介してリモートで出来るようになっていく。そうなることでリモート開発がかなりスムーズに進むようになるんじゃないかな、と思っています。プロダクト全般として、コードを書くだけじゃなく企画をしてリリースをして、カスタマーサクセス対応を行って...という流れの部分ですごい軽くなってくるんじゃないかなと思っています。
ハマコー:
ありがとうございます。それこそ何か「そこに人が居る」という感じがしますね。
masuidrive:
今まではコンピュータがやれなかった「対話」が出来るようになる、ってのが変わった部分かなと。今まで人間の価値って「対話」をしていた部分もあって「結局人と人で話さないとわからないよね!」という意見が出てくるんですよね。この話をすると営業の人も 「最終的に営業は人だから!」って言うんですけども、そうじゃなくなってくる可能性が結構高まってきてるのかな、という気はします。
きんじょー:
開発者目線で言うと、開発プロセスも様々あると思うんですけれども、例えばビジネスロジックの実装とか品質保証とかですね。その部分でLLMを使って実装していくことになると思うので、そこのやり方ってのは変わるのかなと。
具体的には入力のバリデーションとか。これまでバリデーションスキーマをちゃんと書いてましたけど、そこをプロンプトを上手く駆使してチェックをしたり、あとはLLMから返ってきた出力に対してもポリシー違反をしていないか、有害なコンテンツが無いかという部分を「アプリケーション側の責任」として実装していく必要はあると思います。
あとは、これまで品質担保の方法として自動テストを書いてテスティングフレームワークを使っていたと思うんですけれども、その部分でも同様にモデルの入力と出力が合っているかという確認をしていく必要があると思っています。
これについては結構色々な課題があって、確認をするためのデータが無い(モデルとしては既に学習済みなので)状況です。あとはアウトプットもLLMからテキストで出てくるものに対してどのように評価するのか、という指標が無くて難しいと思うんですね。
その辺りをちゃんと自動化して組み込んでいって、開発プロセスを回していく必要があると思います。

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(※きんじょー氏)

 

Q&A

セッションの最後は、会場にお越し頂いた皆様から募った質問にパネラー陣が答えていくQ&Aタイムが展開されました。

 

Q. エンジニアが参考にしたい「プロンプトが学べるサイト」などがあれば教えてください。

masuidrive:
プロンプトはバージョン毎に変わります。少なくともGPT-4は二ヶ月くらいでバージョンアップがなされ、モデルもそのタイミングでアップデートされます。基本的にはGPTシリーズは3ヶ月に1回モデルチェンジがあるという公式のアナウンスもあるので、そのタイミングでそのモデルが使えなくなります。年末にはGPT-5も出るんじゃないかと言われていますし、そもそもプロンプトエンジニアリングが存在するのか?というのもあったりします。なのであまり今日明日やっても明後日にはそれが役に立たなくなる、という可能性も十分ありえます。公式以外で「このサイトが良い」というのは個人的にはあまり知らないですね。
向:
逆に言うと「試しまくる」いうのが重要になるのかも知れません。体験しないと分からない、やってみよう!というのが重要だと思います。

 

Q. GPTに「コードなぞなぞ」みたいなのを出してもらって、リファクタリング力を上げる...みたいな使い方ってアリだと思いますか?

きんじょー:
これは凄い面白いなと思います。GPTの使い方として「自分から出てくる言葉だったり、自分が考えた事によって自分が経験値を得る」というものがあります。英会話だったりとか、対話を通じてのコーチングだったりとか、「壁打ち」という意味で凄い良いと思っています。自分でリファクタリングを考えるということ、それを評価してもらうということは凄く良い使い方だと思います。
masuidrive:
本当、勉強の仕方って変わりますよね。
ハマコー:
今って、ChatGPTに何かしょぼそうなコードを書いて渡して、「こういう観点でリファクタリングをしてください」と指示したら何か返ってきたりするんですか?
masuidrive:
はい。今のGPT-4でも出来ますし、CopilotXはそれ専門にチューニングされているのでかなり高度なことをやってくれます。日本語も理解してくれてますね。

 

Q. SQLのような、ChatGPT(AI)向けの問い合わせ言語が生まれてくると思いますか?

masuidrive:
言語モデルなので、最終的には普通に今のプロンプトみたいな形で、(GPTでは無いけれども)GPTをチューニングしたもので「こういうフォーマットで聞くとこういう感じで返ってきます」みたいなのは来ると思います。でもそれにはGPTがAPIだけじゃなくてモデルを公開する必要があります。LINEも日本語用のLLMを作っているという話も聴きますし、あの辺がオープンソース展開してくれると一気にその辺りの展開が進むんだけどなぁ、と期待しています。
ハマコー:
今あれですよね、使い方でいうとビジネス側の人がSQLを考える時にChatGPTを使う、みたいなのは普通にありますからね。

 

Q. エンジニアよりもプロジェクトリーダーやスクラムマスターの役割をChatGPTに任せる方がシステム構築にとっては適切なのでは?と思いますがいかがでしょうか?

ハマコー:
すごいですねこの質問。この「人間要らなくね?」感じがありますが...
masuidrive:
長期的には、そうなりそうな気もしますね。
向:
「誰も自分の言葉で語らないんだけれども、うまく行く」みたいな、SFの世界みたいなのは来ると思います。
ハマコー:
これ僕たまに思うんですけれども、例えば今クラスメソッドでは受託開発やってるんですけれども、お客さんがそもそも何を求めているか分からない、みたいなところに我々として思考の整理だとか、コンサルタント的なアプローチをすることもあったりするんですけれども、そういうような「壁打ち役」をベンダーがやってたりすると思うんです。そういうのももう要らなくなってくる感じなんですかね?
向:
これは「人間次第」な部分もあるかと思います。相手にどこまで感情移入するか次第かだと僕は思っていて、サム・アルトマン(OpenAI 最高経営責任者)は「ツールとして使え」と言ってますけど、僕は本当に「人間と同じ扱い」をしていった方が結果的に良いのではないかと思っています。

ハマコー:
そこは「機械だから/AIだから」みたいに一線を引くのでは無く、「そこに人間が居るものとして扱う」方がポテンシャルを引き出せる、と。
masuidrive:
(ChatGPTが)チームメンバーに入る、ということですね。
向:
(ChatGPTに)絶対的な信頼を置いてしまうと。逆に人間は鏡と言いますか、そういう見方も出来るのかなと思います。
ハマコー:
なるほど、だから「常に正しい答えを出してくれる機械」というよりは、そこに相談役として一人居て、たまに間違った答えを言うこともあるかもしれないけど、ちゃんとそこは評価しつつ一緒にやっていこうね、と。
向:
そういうスタンスを取った方が結果的に早いのかなと思います。
masuidrive:
なぜか我々もChatGPTに対して「ありがとう」と書きますもんね。でも書いたほうが、ベクトルをそっちの方向に向けた方が良いのではと思っていて、学習モデル自体が「良い言葉で聞いたものは良い言葉で返す」みたいなのはあると思います。
きんじょー:
それは本当にそうだと思います。例えばタメ口な口調で「箇条書きで何か考えて」 と書いても何か1つしか返ってこなかったりするんですが、丁寧に敬語を交えて「箇条書きで何か考えてください」って書くと10個くらいすごい丁家に考えてくれたりするんですよね。
masuidrive:
その様子が感情っぽく見えるところが面白いですよね。
ハマコー:
そのへん慣れるまでは気持ち悪いですけれども、その流れは確かにありますね。

 

Q. 弁護士、会計士、税理士などの士業の仕事をChatGPTが代替するような時代は何年後に来そうでしょうか?

masuidrive:
これ弁護士.comで発表がありましたね。過去の情報を学習して答えるという。これを踏まえると士業はかなりこの先厳しくなるんじゃないですかね。

米国でGlass AI っていう、チャットベースの内科医の相談が出来るやつがあるんですけれども、前述した医者の友達に聞いたら「ほぼ完璧だ。これ以上言うことはない」と言っていて、ほぼほぼこの辺は取って代わっていくんだろうなと思います。

ハマコー:
時期で言うと何年後くらいになりそうですか?
masuidrive:
いやもう来年くらいには来るんじゃないですか?GPT-5とかの時代になったら普通に回るような状況になると思います。あとはその状況を人間が受け入れるかどうか、ですね。
向:
その勢いで確定申告、早くやりたいですね。
masuidrive:
いやー本当に。来年末くらいにはもうAIがやってるんじゃないですかね。

 

Q. コーディングの悩みまで解決出来たら、あとは社内政治を解決出来たら、完璧...?

ハマコー:
社内政治ってChatGPT側で変えていけるんですかね?
向:
「あいつ(ChatGPT)にみんなが文句を投げまくって、解決してくれるっていう世界」はあるんじゃないかなぁと思っています。
masuidrive:
その辺りの調整すらしてくれる。
向:
「リアル調整くん」みたいな。
きんじょー:
1つあるな、と思ったのが「ロールプレイ」ですかね。調整ごとの前にあなたはこういう状況でこういうロールの人です、っていう条件設定をする。
masuidrive:
ですね。「向こうの気持ちになって答えてください」と指示すると過去のデータを踏まえて振る舞ってくれる。

 

Q. この先生き残っていくには、僕達は何を学べばいいと思いますか?

ハマコー:
時間もそろそろなのでこれが最後の質問となります。皆さん一言ずつコメントお願い出来ますでしょうか。
masuidrive:
ここからもう1回、数学を学ぶべきだと思っています。去年僕はYouTubeを通じて微積分や行列について学びました。LLMの周辺技術は数学で構成されているので、学んでおいて損は無いですし2〜3年はそれで行きていけると思います。
向:
歴史かな、と思います。これくらい大きな(ChatGPT/生成系AIの盛り上がりの)波って過去にも何度か来ていると思っていて、その時に職を失った人達のことを考えると、「今の波にどう乗っていくか」の答えが出るんじゃないかなと思っていて、それがチャレンジし続けることにも繋がってくると思います。
きんじょー:
もう少し機械学習の知識を付けていくべきだな、と考えています。「ゼロから作るDeep Learning ―Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装」を読み始めました。理由としては、APIを使うとかだけだと出来ることが限られて来る部分がこの先出てくるのかなと思っていて、概念的なものと含めて体系な部分も身につけていくことで見えてくる世界も変わってくると思っています。

ハマコー:
皆さんあっという間の時間でしたが楽しんで頂けましたでしょうか。ChatGPTの盛り上がりを受けて本日このイベントでこの企画を行いました。改めまして今日パネラーとして登壇頂いた皆さん、会場にお越し頂いた皆さん、QAに質問を挙げて頂いた皆さんに感謝の気持ちを伝えさせて頂きたいと思います。本日はありがとうございました!

 

まとめ

という訳でDevelopers Day Oneパネルディスカッション『ChatGPT元年 〜ChatGPTで変わるエンジニアリング〜』の完全版レポートの紹介でした。

久々のオフラインイベント、パネルディスカッションでテーマが『ChatGPT』という事で期待値も非常に高かった当セッション。同じくこの日に発表があった下記ChatGPTのセッションに関しても発表後即再演が行われ、また発表後/ブログ公開後に多くの問い合わせを頂いたということを踏まえると注目度・関心の高さもその期待値以上のものであったと言えるかと思います。

現地及び参加者の熱量の高さも感じられて非常に楽しめたパネルディスカッションでした。登壇頂いた皆様、また御参加頂いた皆様ありがとうございました!