[レポート] 医療ビッグデータ活用を推進する分析プラットフォーム構築 – Looker: BEACON Japan 2020 #BeaconJapan
Looker社によるロードマップ、顧客事例、パートナー企業によるセッションが堪能出来るデジタルイベント『BEACON Japan 2020』が2020年09月03日から2020年09月24日までの毎週木曜日、計4日間に渡り開催されています。
当エントリでは、その中から2020年09月17日に発表された「医療ビッグデータ活用を推進する分析プラットフォーム構築」のレポートをお届けします。
セッション概要
公式ページで紹介されているセッションの概要情報は以下の通りです。
登壇者:
久野 芳之 氏 - インシュアランス事業本部 部長, 株式会社JMDC
発表内容:
JMDCは医療ビッグデータを活用し、保険者の医療費抑制、健康増進支援や製薬企業によるデータ活用支援、保険会社の商品・サービス開発などのサービス提供を実現している。各業界でのデータ活用事例や分析プラットフォーム構築事例から、今後更に拡がりが期待される医療ビッグデータ活用の展望をご紹介します。
セッションレポート
ここからは、当日に公開されたセッションの内容についてレポートします。
イベントのセッション動画については下記リンクにてアクセス可能です。
JMDCについて
データが持つ可能性を追求し、持続可能なヘルスケアシステムの実現を使命として、健康増進事業とデータ事業を通じて、健康で豊かな人生をすべての人に届けている会社です。
JMDCのデータの概要
- 約250の健康保険組合の加入者・家族のレセプトデータ
- 健康保険組合の加入者台帳データ
- 健康診断データ
JMDCのデータベース化の取り組み
- 取り込み
- 匿名化名寄
個人を特定する項目を暗号化 - 標準化
医療機関ごとに異なる医療方言を統一して前処理を実施。傷病、医薬品、診療行為と言ったマスタを付与 - データセンター
データベース構築までの工程は約800、データを標準化するための医療辞書は1000万件に上り、さらにデータベース化後も正確性の担保のため日次と週次のチェックをしているそうです。
JMDCのデータでできること
消費者全体に近い母集団のデータを持つことで、特定の傷病に罹った人が入院して手術を受けたのか、または通院して治療を受けたのかといった、その傷病に対する受診データを発生率として捉えることができます。
さらに時系列による分析も行えるので、ある総合病院で手術を受けた患者の入院前の受診状況や退院後の受療状況を、医療機関を横断して分析をすることが可能です。
JMDCのビジネスの強み
- ヘルスケアデータの量と質
- データ活用実績と経験
- アプリ・サービスの開発力
データを予測モデルや分析サービスといった形に置き換えてサービスを提供 - 企画・解析の専門人材
社内に医師や薬剤師ら専門知識を持った人材やアクチュアリや生物統計を実施する解析のプロも在籍
解析領域の強みを生かしたデータベースの提供に留まらないより付加価値の高いサービスの提供をしたい
JMDCのデータ活用における課題 Looker導入前
解析環境の整備
Looker導入以前は、営業担当がクライアントからヒアリングした課題から、アウトプットを出すための解析定義書に落とし込み、さらに必要なデータを取り出すためのデータ抽出定義を作成し、それをもとにエンジニアが都度SQLで抽出し、複数の解析担当が成果物の検証をして成果物の品質を担保してクライアントに提供と、分析結果を出すまでのステップが多くスピード感にかけ、さらにクライアント側が直接JMDCのデータに触れないため、解析ノウハウがクライアント側に溜まらないというのが課題でした。
データ収集・加工・理解
50を超えるデータベスの中身と背景の理解をしなければ必要な情報を取り出すこともできず、取り出す方法にも専門的なスキルが必要で、簡単にデータにアクセスできる環境がなかったそうです。
データサイエンティストや分析活用できる組織の育成
クライアント企業内に、JMDCのデータの膨大で複雑な背景を理解できる人材、そしてそのデータを解析できる人材、そしてそのデータを活用する企画力のある人材の集まるチーム作りをしてもらう必要がありましたが、それぞその人材は部署を横断しており、一朝一夕で組成できるチームではありませんでした。
こちらの課題は、クライアント企業のチームにJMDCからも外部スタッフとして参加することでチームを組成しているとのことでした。
Lookerを導入することで課題を解決
JMDC側とクライアント企業側のデータサイエンティストがLooker上でやりとりをできる環境を提供できるようになり、JMDC側であらかじめモデリングした分析環境をLookerで用意することで、解析担当は必要な項目を画面上で選択するだけで欲しいデータを取り出すことができるようになりました。
また、JMDC側であらかじめモデリングした分析環境をLookerで用意することで、解析担当は必要な項目を画面上で選択するだけで欲しいデータを取り出すことができるようになり、Lookerの画面上で選択した項目をもとに生成されたSQLを確認することができるので、分析の結果だけでなく、データの抽出方法まで提供できるようになりました。
JMDCのデータにアクセスしやすくなったことで、Looker導入前の課題であった、クライアント企業内の分析のノウハウの蓄積も解決し、さらに、クライアント企業側のデータサイエンティストも自分たちで様々な解析を実施することができるようになり、社内の各部門に解析結果を共有することができるようになり、データを様々な領域で活用することが可能になりました。また、分析結果を可視化することで、分析担当者だけでなく、社内全体のビッグデータ活用の文化を醸成することに成功しました。
今後の展望
Lookerの組み込み機能を利用してJMDC独自の分析ツールへの組み込みを予定しており、これにより、より高度な分析を手軽に提供できる環境を目指すそうです。
まとめ
『JMDCによる医療ビッグデータ活用を推進する分析プラットフォーム構築』レポートをお届けしました。
JMDCが課題として感じていたデータ活用のスピード感と分析ノウハウの蓄積の問題を、Lookerを導入することでいかに解決したかについてご紹介いただきました。
さらに、Lookerの強みであるデータモデリングによって、データの価値を高めることに成功されていると感じました。社内にデータはあるが、一部の人しかアクセスできていないという課題をお持ちの方には参考になるセッションだったのではないでしょうか。