人間と Gemini と Deep Research による複合的調査

人間と Gemini と Deep Research による複合的調査

この記事では、人間と Gemini と Deep Research による複合的調査の連携についてまとめます。
2025.10.26

こんにちは。組織開発室に所属し、組織開発を担当しているてぃーびーです。

多段階で大量の情報源を必要とする複雑な調査をする場合、 Deep Research が便利です。一方で、 Deep Research だけで完結する場合もあれば、 Gemini が人間による調査と併用することで効果を発揮する場合もあります。

この記事では、人間と Gemini と Deep Research による複合的調査の連携についてまとめます。

Deep Research について

Deep Research は、調査のためのツールで、特にウェブ上で公開された情報に基づく多段階・複雑な調査が得意です。

ただし、判断軸が曖昧な点が残っていたり、ウェブで公開されていない情報が必要とされる場合は、思ったような結果が得られません。特に調査の初期〜中間段階でそういったステップが含まれていると、調査の序盤で失敗が確定するにもかかわらず、結果が出るまで時間を要してしまうという結果になります。判断軸の曖昧さ、ウェブで公開されていない情報の2つが障壁になるわけです。

Gemini の併用について

Deep Research で調査を開始する際に Gemini に相談し、曖昧な点を整理できます。これにより、判断軸が曖昧な点が残らないようにすることで障壁の1つ目を解決できます。

また、 Deep Research で調査した結果を元に、個別の要素を深堀りしたり詳細の理解を補足したりする場合も便利です。

人間の役割

ウェブでは公開されていない個人的な交流や経験から得た知識が必要な場合、人間の出番です。

また、個人の交流・経験からすでに答えがわかっている部分や、部分的に自分が調査したほうが公開情報以外の前提を踏まえて調べることができる場合、該当部分を人間が担当するのがよいでしょう。これにより、 Deep Research が不要な調査に時間をかけたり、調査した結果既知の答えとはズレた答えを出してしまう懸念を回避できます。

ただし、 AI と比較した場合の人間の弱点は時間的なコストが大きいということです。また、疲労もするため最大のパフォーマンスで長時間の調査を継続することもできません。その点を踏まえて、介入すべき場所を切り分ける必要があります。

調査の例

以下の架空のケースを元に、人間と Gemini と Deep Research の連携調査の例をまとめます。

あなたは、自社の新規事業として「特定の地域に特化した、クローズドなコミュニティ型 SNS」を立ち上げることを検討しています。事業化に向け、成功のための鍵となる要素を深く調査する必要があります。

なお、以下の内容は調査全体の流れを理解することを優先していて、実際の入出力結果ではありませんし、人間の判断の部分も実態とは関係のない架空の内容です。

人間 : 前提・課題の整理

競合の地域 SNS がいくつか存在するが、成功事例は限定的です。ターゲットは「子育て世代の母親」に絞る予定。

初期の調査テーマ設定として、以下の内容とした。

  1. 地域 SNS 市場の規模と成長性(定量)
  2. 競合サービスの機能と価格(定性)
  3. 成功・撤退事例のコアなインサイト(定性/非公開情報)

Gemini : 調査内容の整理

人間が設定したテーマを元に、 Deep Research が実行可能な具体的な調査項目に落とし込むため、 Gemini に相談します。

入力

「子育て世代の母親をターゲットにした地域特化型 SNS の成功要因」について、ウェブ情報だけで調査できる項目と、人間にしか調査できない項目に分類し、 Deep Research 用の調査計画案を作成してください。

出力
※実際の出力ではありません。利用法の説明をするための最小の出力サンプルです

[Deep Research担当項目] 
1. 競合10社のサービス概要・価格・公開レビュー分析
2. 地域SNS市場に関する過去3年のニュース・レポートの要約
3. 他国における地域SNSの成功要因(公開論文等から)

[人間担当項目]
1. 既存競合の創業者・元社員へのインタビュー(撤退の裏側)
2. ターゲット層(子育て中の母親)へのデプスインタビュー(生の声、本音)

人間 : 人間による調査

Deep Research の精度を高めるため、人間による調査を先行させます。

既存の競合 SNS のうち、特に有名なA社の「本当の強みは技術力ではなく、地元の行政との強い連携にある」という、ウェブでは得られない個人的な経験から得た前提として整理します。
また、過去に撤退した地域SNSの元開発責任者と個人的なつながりを利用し、「ユーザー離れの真の原因はマネタイズの失敗ではなく、匿名による誹謗中傷と運営コストの増大だった」という非公開のインサイトを入手します。

Deep Research : リサーチの実施

Gemini でまとめた調査計画と、人間が先行調査したインサイトをすべて盛り込み、 Deep Research に調査させます。

入力

「子育て世代の地域SNSの成功要因」について多角的に調査せよ。

【重要な前提・補足】:撤退事例の真の原因は「匿名による誹謗中傷と運営コスト」にあることを踏まえて分析せよ。
また、競合A社の強みは行政連携にあるため、他競合の行政・地域コミュニティとの連携状況に焦点を当てて調査せよ。

これを元に結果が出力されます。

競合サービスの詳細な機能比較レポートに加え、匿名性・運営コスト・行政連携の3つの観点からみた多角的な市場分析レポートが出力されます。従来の機能比較だけでは見えなかったコミュニティ運営の持続可能性が成功要因である可能性を示唆したとします。

人間 : 結果の確認

Deep Research の結果を、人間の知見を加えて批判的にレビューします。

レポートの内容について、『子育て世代の母親がSNSで何を恐れているか』という感情的な側面についての記述が薄い。また、誹謗中傷のリスクをどう技術的に防いでいるかという技術的解決策についても掘り下げが足りなかった。

Gemini : 結果の深堀り

人間が抽出した疑問点について、 Deep Research を再度かけるほどの複雑さではないため、 Gemini で深掘りします。

入力

子育て世代の母親の匿名 SNS 利用における恐れや不安に関するウェブ上の口コミや専門家の見解を要約してください。
また、SNSにおけるユーザー認証技術(本人確認)の最新動向を分かりやすくまとめてください。

これを元に、例えば以下のような結果が出力されます。

「詮索されることへの恐れ」「他者との比較によるストレス」など、定性的なインサイトが抽出されます。本人確認技術について、コストと導入の容易さを軸に比較表が作成されました。

人間 : まとめ

Deep Research の網羅性と、人間による非公開インサイト、そして Gemini による補完情報をすべて統合し、最終提言を作成します。

調査結果をそのまま使わず、『成功要因は高い収益性ではなく、安全性の担保にある』という、非公開情報に基づいた独自の解釈を主軸に置く。最終提言は、マネタイズを急ぐより、行政連携と厳格な本人確認による安心感を最優先すべきというものになった。

なお、サンプルとして最小の内容になっていますが、実際はもっと文章量があると思います。その際に、最終的なまとめを Gemini にサポートしてもらうのもよいでしょう。

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