チームビルディングでドラッカーエクササイズとロールセッションを組み合わせてみた
CX事業本部で組織開発/ワークショップデザイナーをしている長南です。
4月某日に開催されたプロパゲート合宿で、90分のチームビルディングワークショップを担当しました。この記事では、なぜチームビルディングワークショップをしたのか?なぜドラッカーエクササイズとロールセッションを組み合わせたのか?ワークショップをどうやって進めたのか?やってどうだったか?について紹介します。
ワークショップは対面で実施、ツールにMiroを使いました。
読み手の想定
- チームの関係性に課題があり、チームビルディングを検討している
- ドラッカーエクササイズをやったことがあるが、どうもしっくり来ない体験をしている人
- ドラッカーエクササイズをやってみたいけど、やり方がいまいちわからない人
- チームビルディングで、チームメンバーの役割や期待値をすり合わせたい人
- ロールセッションをやってみたいけど、やり方がいまいちわからない人
記事の狙い
- 読み手がチームビルディングを検討する際の参考に
- ドラッカーエクササイズのおもしろさを改めて日本国内の人に伝える
- ドラッカーエクササイズを実施する人を増やす
- ロールセッションのおもしろさを日本国内の人に伝える
- ロールセッションを実施する人を増やす
なぜチームビルディングワークショップをしたのか?
プロパゲートチームで、帆船の振り返りとStarfishのふりかえりフレームワークを使って、四半期のふりかえりを行ってみました
プロパゲートの合宿では、両事業で本格的な議論に入る前に、個人間の価値観を交換しあう場を設けています。チームで大きな成果を生み出し、議論で活発な意見を引き出すには、まずはお互いの信頼関係を醸成する必要があります。そのため、プロパゲートのチーム外からゲストメンバーとして、Day Oneイベントでも登壇されていた、CX事業本部のワークショップデザイナーの長南に今回の合宿に関わるメンバーの価値観や立ち位置を理解し合う場を作っていただきました。
今回のワークショップは、プロパゲート合宿の企画を担当していた本間さんからのお声がけで実現しました。「価値観を交換しあう」というところからか、相談の時点で「ドラッカーエクササイズ」というキーワードが出ていました。
なぜドラッカーエクササイズとロールセッションを組み合わせたのか?
本間さんから「なぜチームビルディングをするのか?現場でどのような問題が起きているのか?」と伺っている内に、相互理解のための価値観共有の他に、役割や期待値のすり合わせがうまくできていない課題も見えてきていました。またプロゲ(プロパゲート)には、デベキャンとパートナーズという2つのチームがあり、チームの特徴や課題も異なるようでした。
価値観共有ならドラッカーエクササイズ、役割と期待値のすり合わせならロールセッション。ニーズに対して提供価値となるアクティビティを考える上で、ドラッカーエクササイズとロールセッションの比較を進めました。
比較をした上で、「価値観共有」と「役割と期待値のすり合わせ」2つのニーズを満たすには、「ドラッカーエクササイズ」と「ロールセッション」2つの提供価値(アクティビティ)が必要なのではないか?と考え、2つのアクティビティを実施する提案をさせていただきました。
参考にした記事
- ドラッカーエクササイズ(The Drucker Exercise)作者の記事
- Managing Oneself by Peter F. Drucker:ドラッカーエクササイズの元ネタであるドラッカーの論文
- 未来の展望と仮説:ロールセッション
ワークショップの進め方:ドラッカーエクササイズ
ドラッカーエクササイズは、チーム立ち上げ時などにチームの関係構築を進めるワークショップです。4つの質問への回答を共有することによって、一緒に働く最もいい方法を見つけ出すヒントが得られます。
前提として、ドラッカーエクササイズの設問は、ドラッカーのパフォーマンスを最大化させるための自己管理についての論文をベースとしており、自己認識を問う設問で構成されています。
- 自分は何が得意なのか?(what am I good at?)/あなたの強みトップ3は?
- この設問の狙いは、「自己認識のレベルを上げる」「他者に期待できるポイント(Can)を伝える」「他者に輝ける場所(Will)を伝える」といったものになります。
- 作者のブログには、「聞き上手」、「天性の外交官」、「物事を成し遂げる」、「約束を守る」、「細部へのこだわり」、「混沌に秩序をもたらす」、といった例が紹介されています。
- どういう風に仕事をするか?(how do I perform?)
- この設問の狙いは、「自分が最もパフォーマンスが発揮されるやり方を伝える」というものになります。
- 作者のブログには、「朝の人」、「リストメーカー」、「無駄を省くのが好き」、「ミニマリスト」、「細かく管理されるのが嫌」、「社内政治が嫌い」、といった例が紹介されています
- 自分が大切に思う価値は何か?(what do I value?)
- この設問の狙いは、「重要なものや関心のあるものを伝える」「期待を想像しやすく、行動の理由を想像しやすくする」というものになります
- 作者のブログには、「正直」「質の高い仕事をする」「楽しむ」「他者への敬意」「継続的改善」「信頼される」といった例が紹介されています
- チームメンバーは、自分にどんな成果を期待していると思うか?(what contribution can be expected from me on this project)
- この設問の狙いは、「他者から自分への期待の自己認識」「他者に自分がやりたいこと(Will)を伝える」「このプロジェクトでやらないことを伝える」といったものになります。
- 作者のブログには、「素晴らしいユーザー体験」、「現実的な計画」、「機能する品質のコード」といった例が紹介されています
問いだけだと回答を考えるのが難しいと思われたので、作者ブログの例を参考にMiroボードの一番上の行に、ガイドとなる例を入れていました。回答の数が多すぎると共有が進めづらくなってしまうので、作者ブログの例を参考に回答は3つとしました。Miroの付箋を設問に対して3つずつ配置して、回答が3つまでであることを示唆。
プログラムは以下のような流れとしました。
- 自分は何が得意なのか? 所要時間:5分(バッファ込み)
- 1分で設問の説明、3分程度でMiroへの記入を進める
- どういう風に仕事をするか? 所要時間:5分(バッファ込み)
- 1分で設問の説明、3分程度でMiroへの記入を進める
- 自分が大切に思う価値はなにか? 所要時間:5分(バッファ込み)
- 1分で設問の説明、3分程度でMiroへの記入を進める
- チームは自分にどんな成果を期待していると思うか? 所要時間:5分(バッファ込み)
- 1分で設問の説明、3分程度でMiroへの記入を進める
- シェアタイムは、ロールセッションの設問を含め6つの設問を回答したあとに。
反省点/改善点としては、各設問の狙いも設問の説明パートで含められると、より狙いにフィットした回答に向けたがお度ができると思います。また強みなど資質を回答するワークなので、ストレングス・ファインダーの診断結果などを手元に置いておくのもいいと思います。
ワークショップの進め方:ロールセッション
ロールセッションは、チームメンバーの役割と期待値のすり合わせのために行われるワークショップです。4つの設問で構成されているところは、ドラッカーエクササイズと似ています。ただ他者に対するフィードバックや、アサイン先のない期待を扱うなど、より変化するチームに対応したアクティビティが盛り込まれています。
前提としてロールセッションは、プロジェクト推進のためのフレームワーク(Project Sprint)で扱われるワークショップとなっています。ロールセッションは、単体のワークショップでも有用なため、今回は単体利用しています。
Project Sprint は、プロジェクトチーム自らがプロジェクトの主体となり、小さな成果を繰り返し確実に生み出すことを通じて、環境の変化を捉えつづけながら自律的にプロジェクトを推進するためのフレームワークです。Project Sprint は、プロジェクトチーム自らがプロジェクトの主体となり、小さな成果を繰り返し確実に生み出すことを通じて、環境の変化を捉えつづけながら自律的にプロジェクトを推進するためのフレームワークです。
- 自分がやるべきこと(ロール/役割)
- この設問の狙いは、自分の役割と自己認識しているものを共有すること
- ドラッカーエクササイズで回答した得意なもの、仕事のやり方、価値観、チームからの期待を踏まえて考えを促す
- サポートしてほしいこと
- この設問の狙いは、苦手なこと、助けてほしいことなど、言いづらいことを自己開示すること。弱さを自己開示することで、周囲を巻き込むことができる。
- 他の人への期待
- この設問だけ、他者の行に記入する形となります。アサイン先がわからないものは、ミスターXへ。
- この設問の狙いは、外的な期待値を見えるようにする、外的な期待値と内的な役割のギャップを意識する。ミスターXにより、アサイン先不明な期待を洗い出すことができる。
- 最終的に自分がやるべきだと納得できたこと
- この設問の狙いは、これまでの回答やフィードバックを通して、自分の役割をアップデートする。
Miroの上部は以下のようなつくりにしました。ドラッカーエクササイズに対して、付箋が3つ以上必要となりそうだったので、スペースは広くとっています。特に他の人への期待は、複数人が書き込むものなので広めに。
プログラムは以下のような流れとしました。
- 自分がやるべきこと 所要時間:5分(バッファ込み)
- 1分で設問の説明、3分程度でMiroへの記入を進める
- サポートしてほしいこと 所要時間:5分(バッファ込み)
- 1分で設問の説明、2分程度でMiroへの記入を進める
- グループごとにシェアタイム 所要時間:30分(バッファ込み)
- 「ひとり3分で書いたものをシェア、2分でQ&Aタイム」を人数分繰り返す
- グループメンバー数に応じて時間は調整
- シェアタイムのタイミングで、グループごとに席替え
- 他の人への期待 所要時間:5分(バッファ込み)
- 3分程度で、グループ内の他のメンバーに対して期待を書いていく
- ここは実際は8分程度かかった
- 最終的に自分がやるべきだと納得できたこと 所要時間:5分(バッファ込み)
- 1分で設問の説明、3分程度でMiroへの記入を進める
- グループごとにシェアタイム 所要時間:5分(バッファ込み)
- 「ひとり1分で書いたものをシェア」を人数分繰り返す
反省点/改善点としては、ドラッカーエクササイズと同じく、ロールセッションも回答例があると記入をガイドしやすくなると思います。グループごとのシェアタイムだけだと、ミスターXに触れられないので、ミスターXに割り当てられた期待を読み上げる時間があってもいいでしょうか。
チームビルディングワークショップをやってどうだったか?
Miroへの書き込み具合から、参加してくれた方々がどれくらい場に参加していたかが見えるでしょうか。
ドラッカーエクササイズは、自分に対する自己認識を自己開示すること自体がとてもパワフルな体験です。強みや価値観を言葉にする機会はあっても、自分の仕事スタイルや、自分への期待の認識を言葉にして開示する機会って日常にあまりないように思います。人により回答に詰まる問いもあったようで、言葉にするのが難しいものに触れるいい機会にもなったのではないでしょうか。
ロールセッションは、サポートしてほしいことの開示や、期待を直接チームメンバーに伝えられるのが、とてもパワフルな体験です。チーム内にどういったニーズがあって、自分にはどういった期待がされていて、自分が何を提供することができるのか?チーム内で見えていないものが見えるだけで行動は促されます。ミスターXのようなアサイン先不明の期待には、チーム内の関係性などの問題が表れます。
ドラッカーエクササイズとロールセッションを組み合わせるおもしろさは、一人ひとりの自己認識を自己開示した後に、自分への期待という形で他者から見た自分をフィードバックとして受け取れること。1度のワークショップで、自己認識や相互理解を十分に進めるのは難しい。ドラッカーエクササイズとロールセッションは継続的に更新し続けることで、チームビルディングやチーミングを促進させることができるんじゃないかと思います。