
散在する社内ドキュメントをNotebookLMで「話せるマニュアル」に変える
利用されにくい社内ドキュメント
社内ドキュメントが十分に活用されない背景として、多くの場合、以下の2つの要素がありえます。
- 情報の散在による視認性の低下 歴史的経緯でPDFやドキュメントが継ぎ足され、どのファイルが最新の情報なのか判別しにくい状況です。
- キーワード検索のハードル リモートワークについて調べたいのに、規程に含まれる語句が「在宅勤務」であるためにヒットしないなど、同義語や類義語では目的の情報に辿り着けないケースがあります。
こうした課題へのアプローチとして、GoogleのNotebookLMを 情報の統合 および 対話型の検索エンジン として利用してみたので、その方法についてまとめてみます。
NotebookLMを用いて資料を一本化する

NotebookLMを用いて、散在している資料を整理し、運用のベースとなる正本を作成します。
人間が気づきにくい不備については、NotebookLMに手助けしてもらいながら洗い出します。
情報の集約
既存の資料をNotebookLMに読み込ませ、統合されたドキュメントの目次を作成させます。その後、その目次に即して章ごとに内容を出力させ、Googleドキュメントに転記して一つのドラフト版を作成します。
内容のチェックと修正
矛盾の検知
作成したドラフト版を、新しいノートブックに唯一のソースとして読み込ませます。ここで「このドキュメント内で、論理的に矛盾している箇所や不明瞭な点をリストアップして」というように指示し、文書内部の整合性をチェックさせます。
単に全体の矛盾点を抽出させるよりも具体的な観点を指示した方が、成果物の品質を担保しやすくなります。
実用性のテスト
続けて、同じノートブック上でユーザー視点で質問を投げかけます。ここで意図通りの回答が返ってこない場合、ドキュメントの記述に不足や曖昧さがないかを確認することになります。ソースの内容の質が、回答の質に直結します。
人手による修正と確定
AIが指摘した矛盾点や、テストでうまく回答できなかった箇所をもとに、ソースファイルの本体に対し人間が手動で加筆・修正を行います。
公開
第1段階で作成したノートブックの共有URLを社員に伝えます。
導入によるメリット
この環境を構築することで、社員と管理者の双方にメリットが期待できます。
社員のメリット:検索体験の向上
AIが文脈を解釈するため、正確なキーワード検索に頼らない情報アクセスが可能になります。
- 「いつもの言葉」で検索が可能に 例えば、ドキュメントに「台風」という語句がなくても、「台風が来ているので早退したい」と入力すれば、「災害時の就業規則」などを参照して回答します。
- 個別の状況に応じた回答 「入社1年目の営業職ですが、資格手当は出ますか?」といったような、複数の規定にまたがる条件であっても、AIがドキュメントの全ての内容を参照して回答するため、長いドキュメントを読み解く手間が減ります。
管理者のメリット:メンテナンスコストの削減
- 更新作業の一元化 運用が定着すれば、管理者は一つの正本を更新するだけで済みます。散らばった資料を個別に修正して回る手間から解放されます。
- 問い合わせ対応の減少 社員が自己解決できる範囲が広がることで、総務や担当部署への直接的な問い合わせ件数の減少が期待できます。
おわりに
NotebookLMを用いた資料統合と検索環境の構築について紹介しました。
今回のポイントは、NotebookLMを単なる回答ツールとして使うのではなく、情報の整合を保つための整理ツールとして利用する点です。AI特有の誤回答リスクを理解し、原文確認のルールとセットで運用することで、業務効率化の選択肢の一つとなるでしょう。






