
【セッションレポート】プロダクトセッション:Twilio Conversation Relayで実現するVoice AI #SIGNALCONF
はじめに
SIGNAL World Tour Tokyo で聴講したセッションのレポートです。
前半は Twilio Japan の Nakamura 氏によるライブデモ、後半は株式会社うるるの国本氏への Q&A という 2 部構成でした。本レポートでは、デモで AI が実際にどう振る舞ったかを順に追い、そのあとで少人数で電話代行サービスを育ててきたうるるの取り組みを紹介します。
セッションの概要は次の通りです。
- タイトル: プロダクトセッション:Twilio Conversation Relayで実現するVoice AI
- 登壇者:
- Mitsuharu Nakamura 氏 (Twilio Japan Sales Engineer)
- 国本 保廣 氏 (株式会社うるる プロダクトマネージャー)
- モデレーター (後半): Kazuki Goto 氏 (Twilio Account Executive)
- 日時: 2026 年 10 月 8 日 18:10 から 18:30
デモの狙い
中村氏はまず、「子どもが熱を出した」「車の中に鍵を閉じ込めた」といった困りごとは、決まって休日や真夜中に起き、どこに電話してもつながらないと切り出しました。AI は時間帯を問わず働けます。そこで、緊急の電話を AI が受け、完璧ではなくとも、例えば水漏れを止めるところまでは会話だけで導けるようにしたいというのがデモの狙いでした。
ライブデモの流れ
デモは、ブラウザーから電話をかけて AI と話す形で進みました。
- 着信と同時に、AI が「中村さま」と名前を呼んで応答しました。事前に登録された顧客情報を使っています。中村氏は、名前を呼ばれるだけでも、かけた側はまず少し安心できると述べました
- 「蛇口から水が勢いよく漏れている」と伝えると、AI は通話を続けたまま、登録済みの LINE に、蛇口に貼られた型番シールの写真を送るよう依頼を届けました
- 写真を送ると、AI が型番を読み取り、その型番に合った止水栓の位置を示す図を LINE で返し、止水栓を右いっぱいまで回すよう案内しました
- 「水が止まった」と伝えると、AI は翌日の 9 時と 13 時の訪問枠を示し、9 時で修理を手配しました
- 通話のあと、会話の要点が LINE に届きました
中村氏は、洗面台の下にもぐって栓を回すような説明は、声だけではなかなか伝わらないと指摘しました。画像を併用すれば、どの栓を閉めればよいかが一目で分かります。また、大まかに撮っただけの写真から小さな型番の文字を読み取れる点にも触れました。最後の要点の送付は、慌てて電話している人が「何時に誰が来るのか」を聞き漏らしても後から確かめられるようにするためです。画面の下部には、会話の内容を即時に分析した結果も表示されていました。
すべての困りごとを解決できるわけではないものの、水が止まり、翌朝には業者が来ると分かれば、その人はひと晩安心して眠れると中村氏はデモを締めくくりました。
デモを支える Twilio の機能
このデモの土台は Twilio Conversations です。中村氏の説明を、デモの中での役割に対応づけると次のようになります。
| 機能 | デモの中での役割 |
|---|---|
| Orchestrator | 通話の途中に LINE で届いた写真を、同じ相談の続きとして AI に渡す |
| Memory | 着信時に「中村さま」と呼びかけるための登録情報と、最後に LINE へ送る要点を保持する |
| Intelligence | 水が止まったかなどを会話から判定する |
| Agent Connect | 下記の ConversationRelay を介して、会話を進める AI につなぐ |
デモでは、Agent Connect を構成する ConversationRelay が、「中村さま」という呼びかけ音声を生成しました。ConversationRelay では、相手の声を文字にして利用者が選んだ LLM に届けて LLM の返答を再び声に戻す役割を 1 つの製品で担います。
うるるの事例: 少人数のまま広げた fondesk
後半では、Twilio の Kazuki Goto 氏がモデレーターを務め、うるるの国本氏に話を聞きました。
fondesk と fondesk IVR
fondesk は、会社にかかってきた電話をオペレーターが代わりに受け、内容を Slack や LINE、Teams などで知らせる電話代行サービスです。fondesk IVR は、応答の流れを利用者が自分で組み立てて変えられる自動応答サービスです。料金は fondesk が月額 12,000 円から、fondesk IVR が月額 2,980 円からで、Web で 5 分ほど手続きすればその場で電話の受付を始められます。電話番号の取得、オペレーターの在席管理、着信の振り分け、通話、SMS の送信といった機能を、いずれも Twilio で実装しているそうです。
少人数で業界トップシェアへ
fondesk は 2019 年に始まり、3 年で電話代行サービスの業界トップシェアになりました。現在は fondesk IVR と合わせて 7,500 社を超える企業が使っています。それでも運営は、開発と営業を合わせて 10〜20 人ほどのままだそうです。
国本氏によると、fondesk はもともと社内で期待されていたわけではなく、現場の思いつきから始まった小さな試みでした。国本氏を含む 4 人が本来の仕事と掛け持ちで始めたもので、「開発に 5,000 万円出してほしい」と会社に頼める状況ではありませんでした。国本氏が 1 人で少しずつ作るしかないなかで製品にできたのは、初期投資なしに電話番号や回線を必要な分だけ使え、事業の伸びに合わせて自動で規模が広がる Twilio があったからだと述べました。契約が 10 件ほどだった頃と、基盤の構成はほとんど変わっていないそうです。開発チームは今では 5 人に増えましたが、公衆電話網に詳しいメンバーは国本氏を含めて 1 人もいないと述べました。
AI オペレーターを 2 週間で
2026 年の春、fondesk IVR に AI オペレーターという機能が加わりました。人が受ける fondesk、機械が決まった流れで応える fondesk IVR に続く、AI が応対する 3 つ目の選択肢という位置づけです。利用者が設定するのは「お電話ありがとうございます。〇〇でございます」という名乗りの部分だけで、ほかの準備なしに使い始められます。
AI オペレーターは ConversationRelay で実装され、国本氏が 1 人で、着手から 2 週間ほどで提供にこぎ着けました。同じものを自前で作るなら、音声まわりの処理を個別に用意してつなぎ合わせ、全体の制御やインフラの構築まで自分たちで抱えることになります。国本氏は、それに比べて非常に短い期間で出せたことを高く評価していました。
fondesk はこれまで、需要の多い基本的な応答に的を絞ってきました。今後は一歩踏み込み、利用企業の業務に関する専門的な知識を備えた応答を目指すそうです。電話をかけてきた相手の過去の用件も踏まえて答えられるよう、Conversation Intelligence と Conversation Memory を活用していきたいと述べました。
感想
デモは、AI に完璧を求めるのではなく「ひと晩眠れるところまで」と目標を絞っていたことで、電話と LINE を行き来する流れの意味が分かりやすかったと思います。うるるの事例では、兼務 4 人から始まった製品が少人数のまま事業を広げ、新機能も 1 人で短期間に出していく様子から、基盤を任せることの効果が具体的に伝わる内容でした。











