
ユーザーインタビュー 手法とコツ
はじめに
先日、リリース後のクライアントのヒアリングに同行しました。
それをきっかけに、「ユーザーインタビューで大切なことってなんだろう?」と思い勉強してみました。
※この記事では、ヒアリングも含めて、「インタビュー」と呼びます。
この記事で分かること
- ユーザーインタビューで、相手の「話したいこと」を引き出すための基本
- オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンの使い分け
- 質問を分解して、思い出す手助けをする方法
- 深掘りするときの、ちょっとした工夫
ユーザーインタビューとは
ユーザーインタビューとは言葉の通り、インタビュー(面談)を通してモノやコトを作るプロセスでユーザーを理解するために用いられる手法の一つです。
ユーザーを理解する手法には、他にアンケートやNPS(ネット・プロモーター・スコア。「友人や同僚に薦める可能性」を0〜10で聞く指標)などがあります。
ユーザーインタビューでは、アンケートのように決められた質問以外に、その場で受けた返答や印象・空気感に応じて、柔軟に質問を進めていける利点があります。
また、記述では言語化することが難しい、ちょっとしたモヤモヤなど、明確に質問しなかったことについての情報を拾うことができます。
ただし、数人の話から全体の割合は分かりません。
割合を知りたいときは、アンケートなどと使い分けます。
また、インタビューで聞けるのは、本人が「言ったこと」です。
実際の行動とずれることもあるので、可能なら、実際の作業を見せてもらうなどして補う必要があります。
インタビューで一番大切なこと
聞きたいことではなく、話したいことを引き出す
インタビューで一番大切にしたいのは、聞きたいことではなく、話したいことを引き出すことです。
そして、聞けばOKではなく、品質向上など、目的を忘れないこと。(話していると忘れがちです)
この2つを実現するために、まず、次の3つを決めておきます。
| 決めること | ポイント |
|---|---|
| 目的 | 何をするために、何を理解したいのか。調べれば分かることは、聞かない |
| 誰に聞くか | 聞きたいことを、よく知っている人。実際に使っていない人、困っていない人には聞かない |
| 質問 | 事前に用意する質問と、その場で生成する質問に分けて考える |
事前に用意する質問は、「目的に直結するもの」「それをサポートするもの」「比較や定量化するための標準化されたもの」の3つ。
その場で生成する質問は、「相手や流れで調整するもの」「深掘りするもの」「こちらの理解を確認するもの」「関心を示し、関係を構築するもの」の4つです。
話しやすい場をつくる
インタビューでは、お互いの信頼構築が重要です。
高圧的な態度や、反応やリアクションがなければ、回答者は思ったことをリラックスして答えられません。
回答者には素直な気持ちを話して欲しいので、言われたことに対して嫌な顔をしたり、怒ったりするのはNGです。
「何を伝えていただいても大丈夫です」ということを相手に伝え、言われたことを真摯に受け止める姿勢が大切です。
たとえば、最初に、こんなふうに伝えます。
「今日は、評価をするためではなく、備品の管理を、使いやすくするために、伺っています。うまくいっていないことも、何を伝えていただいても、大丈夫です」
共通の話題でリラックスできる環境作りも重要です。
自分の話も少しだけしてあげると、相手も安心し、遠慮せずに答えてくれるようになるかもしれません。
聞き方のコツ
ここからは、聞き方で学んだことを、3つ紹介します。
質問の投げ方を使い分ける
質問の仕方には種類があります。
オープンクエスチョンとクローズドクエスチョンです。
オープンクエスチョン:自由に答えるもの
クローズドクエスチョン:はい、いいえや、A、B、Cなど、選択肢の中から答えるもの
質問の投げ方によって、得られる回答が変わってくるため、状況に応じた使い分けが重要になってきます。
使い分けの目安は、次のとおりです。
話を広げたいときや、背景や理由を知りたいときは、オープンクエスチョンが向いています。
たとえば「借りるときは、どんなふうに登録しますか?」のような聞き方です。
事実や、こちらの理解を確認したいときは、クローズドクエスチョンです。
たとえば「会議のあとに、まとめて登録することが多いですか?」のような聞き方です。
相手が答えに詰まっているときは、クローズドで入り口をつくってから、オープンにつなげます。
たとえば「最近、借りましたか?」と聞いてから、「そのとき、どうでしたか?」と聞きます。
基本は、オープンで広く聞いて、クローズドで絞ったり、確認したりする流れです。
いきなりクローズドな質問を投げてしまうと、選択肢が用意されている分、答えを誘導してしまう可能性もあります。
「〇〇ですか?」と聞かれると、「(たまに違う場合もあるけど)そうです」と答えてしまったりします。
こうした、否定するほどではないものを拾えなくなるため、注意が必要です。
聞き手: 「貸出の登録は、借りる前にするのが、ふつうですよね?」
回答者: 「そうですね」
本当は、「借りたあと、使い終わってから、まとめて登録する日もある」としても、否定するほどではないので、わざわざ言いません。
もし聞き方に失敗したときは、
「いつも〇〇ですか? 違うときもありますか?」と、質問を追加してフォローしていく必要があります。
聞き手: 「いつもそうですか? 違うときもありますか?」
回答者: 「うーん、急いでいるときは、借りたあとに、登録することもありますね」
聞き手: 「借りたあとに登録するのは、どんなときですか?」
回答者: 「会議の前とか、人が並んでいるときですかね」
「違うときもありますか?」の一言で、「ちょっと違う」を言っていい、という合図になります。
答えが出たら、オープンクエスチョンで、「どんなときですか?」と深掘りすると、例外の背景まで拾えます。
同じ考え方で、こちらの理解を確認するときも、「違っていたら遠慮なく言って欲しい」という前置きが大切です。
ちょっと違うことも、言いやすくなります。
質問は、分解して、思い出す手助けをする
回答者が答えを思い出す手助けをします。
いきなり「返し忘れについて、どうしていますか?」と聞かれたら、「どこまでのこと?」「毎回のこと? たまに?」のように、聞きたいことと違うことを考えさせてしまいます。
そのため、順を追って、思い出す作業を手助けします。
- 「直近で、返却が遅れた備品を、1つ思い出してもらえますか?」
- 「それは、どんな備品でしたか?」
- 「借りたのは、いつで、何のためでしたか?」
- 「返そうと思ったのは、いつでしたか?」
- 「返すまでに、何がありましたか?」
つまり、質問単独で投げるのではなく、分解して質問してあげます。
「いつも」ではなく、「直近の1回」を思い出してもらうのが、コツです。
深掘りは、5W2Hと「やらなかったこと」で
深掘りは、5W2Hをベースに聞くとよいです。
なぜそれを始めたのか、いつ? きっかけは? その時どう思った? など、合いの手を入れながら、本質を探ります。
5W2Hは、いつ(When)、どこで(Where)、誰が(Who)、何を(What)、なぜ(Why)、どのように(How)、いくらで(How much)の7つです。
インタビューでは、時間や回数など、「どれくらい」も数字で聞くと、具体的になります。
回答者: 「最近は、借りるときに、写真を撮るようにしています」
聞き手: 「なるほど。それは、いつ頃から始めたのですか?」
回答者: 「先月くらいからです」
聞き手: 「きっかけは、何かありましたか?」
回答者: 「借りたプロジェクターが、もともと壊れていて、私が壊したと思われたことがあって」
聞き手: 「それは大変でしたね。そのとき、どう思いましたか?」
回答者: 「もう、借りるときの状態は、記録に残そうと思いました」
聞き手: 「なぜ、写真にしたのですか?」
回答者: 「アプリには、備品の状態を書く欄がなくて」
最初は「写真を撮る」という行動の話でしたが、深掘りすると、「アプリに状態を書く欄がない」という、本当の困り事を明らかにすることができるかもしれません。
もう1つ、やらなかったことも行動として考えます。
なぜそれをやらなかったのか、なぜそれを今までやってこなかったのか(できなかったのか)を深掘ることで、回答者を取り巻く環境や困り事が見えてくるかもしれません。
回答者: 「アプリの『予約』機能は、使ったことがないです」
聞き手: 「使ってみようと思ったことは、ありますか?」
回答者: 「あまり…。そもそも、会議の直前に決まることが多いので」
「予約を使わない」という行動から、「予定が直前に決まる」という、仕事の進め方が見えてくることがあります。
試してみたいこと
学んでみて、いいインタビューをすることは特別な才能ではなく、準備と、ちょっとした一言の積み重ねなんだと感じました。
自分がインタビューをする際は、次のことを試してみたいと思います。
- 「〜ですよね?」と聞いたら、「違うときもありますか?」を足してみる
- 直近の1回を思い出してもらう聞き方で、質問を分解してみる
- 「やらなかったこと」も聞いてみる
あと、インタビューが終わったら、毎回、振り返ることも大切です。
セッションごとに振り返り、後続の行動へスムーズに移せるようにしていくことも必要だと思います。
まとめ
- ユーザーインタビューで一番大切なのは、聞きたいことではなく、話したいことを引き出すこと。目的も忘れない。話しやすい場をつくる。
- クローズドクエスチョンは、答えやすい反面、誘導しやすい。失敗したら、「違うときもありますか?」でフォローする
- 質問は、分解して、直近の1回から思い出してもらう
- 深掘りは、5W2Hと、「やらなかったこと」で、本質を探る
参考
- 『ユーザーインタビューのやさしい教科書』(マイナビ出版、2021年)









