[基調講演レポート] Lookerの目指す『データプラットフォーム』の将来 – Join:the Tour Tokyo 2019 #looker

2019.07.10

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世界各国の会場で開催されてきたワールド・ツアーイベント「JOIN:The Tour 2019」。日本国内では「Join:the Tour Tokyo 2019」という形で2019年07月09日(火) ホテルニューオータニ 麗の間にて開催されました。

当エントリでは、その中から「基調講演」セッションについてレポートしたいと思います。

目次

 

イベントレポート

セッションの登壇者情報は以下の通りです。

  • Nick Caldwell 氏(Looker 最高製品責任者)

 

イベント開催の挨拶
(Looker Japanカントリーマネージャー 小澤正治氏)

まずはじめに、イベント開始に先立ってLooker Japanカントリーマネージャー 小澤正治氏よりイベント開会の挨拶がありました。


(Looker Japanカントリーマネージャー 小澤正治氏)

当初イベントの枠としては100人規模を予定していたらしいのですが、登録者数はその規模を早々に超えてしまい(登録者数は400名超え!)、結果として会場キャパシティを拡大。Looker Japanとしては昨年日本法人が立ち上がり、ここまで約10ヶ月。グランドオープニングセレモニー的な位置付けのイベントも開催されていなかったというのもあり、今回このイベントが開催される運びとなりました。

「ここまで日本で事業を広げてきた中で、今回のイベントを通じてお知らせしたい事も数多くあります。なので、今日のイベントは色々詰め込んでます!」とは小澤氏。実際今回のイベントは様々切り口、企画でLookerの事例や技術トピックを見ることが出来、内容的にも多岐に渡るものであったと思います。(※その辺りの内容については当エントリ及び以後のレポートで言及していければと。)

イベント開始に先立って、小澤氏からスポンサー企業各社の紹介もありました。(※弊社もロゴスポンサーとして今回のイベントに協賛させて頂いておりました!)

 

基調講演(Looker 最高製品責任者 Nick Caldwell氏)

次いで登場したのは Looker 最高製品責任者、Nick Caldwell氏。「The Future of BI」と題して、Lookerの概要説明やビジョン等について語りました。

Looker社は現在1700以上の顧客を抱え、社員数も750人を超える規模となっています。オフィスもグローバルに世界各国に拠点を構えており、Amazon,Google,Microsoft等主要クラウドを抱える企業ともパートナーシップを結んでおり、5社のうち1社は米国外の新規顧客である、ということで急速に世界展開を行っているという側面も見えてきます。

Lookerのミッションは「データをスマートに活用することによってユーザーがより多くのことを行えるようにする」。これを実現するためにLookerは以下にあるようなテーマを掲げ「Lookerデータプラットフォーム」を構成しています。

  • トータルな柔軟性
  • データエクスペリエンス
  • 堅牢なデータ分析
  • ガバナンスと統一された指標
  • データ基盤の共有

Lookerデータプラットフォームの特徴としては「柔軟なモデリングレイヤー」「インデータベース」「拡張可能なウェブアーキテクチャ」という3つのポイントが挙がりました。これらを実現する仕組みとしてLookMLという専用の言語を用いて仕組みを作り上げていくこと、また「データをプラットフォーム上に持ってこない」という部分がLookerが他とは違うところである、と説明される事が多いです。

Lookerは現在、業種分野を問わず幅広い顧客層に展開されています。

Nick氏は「BI市場には大きな変化が起きている」とし、変化が起きた要因を3つ掲げました。

1.すべての人にとってデータが必要なものとなった

世界中のデータ量は2025年までに175ゼタバイトに達すると予想されています。そして昨今、分析を行うアナリストやエンジニアだけで無く、文字通り「すべての人」がデータを見るようになりました。ショッピングをする時、ポケットからスマホを出してアプリを介してオススメグルメを見る時、家でネットサービスを介して映画を見る時。このように、「データ」は既にパーソナルな部分、生活に密着する形でデータは身近なものとなっているのです。

そしてIT企業の中でも、データを扱う職種は広範囲に拡大しています。データを有効に活用している企業は収益が拡大する傾向が強く、また持続可能な競争優位性を獲得する傾向が強い、というデータも出ています。今や「データはビジネスの共通語」となっており、文字通りの「データドリブン」な形でアクションを推し進めていくことが重要となってきています。

一方で、企業におけるすべての人々が、BIを利活用出来ているか?と言われるとそうとはなっていないというのが現状です。BIは広がりつつあるものの、69%の企業がデータを十分に活用出来ていないと感じている、という調査結果も上がっています。66%の企業が、BIの大部分を占めるものとして「EXCEL」をいまだに使い続けているというのも興味深いポイントではあります。

2.Saasアプリケーションの普及

では、データの増加はどこで起きているのでしょうか。Nick氏は「皆さん、今日ここに来るまでに"Saasアプリケーション"をどれだけ使っていましたか?」と問い掛け、Saasアプリケーションの爆発的な増加、熾烈な競争がデータ増の要因となっていることについて言及しました。

Saasアプリケーションを介してBIダッシュボードの熾烈な競争は激化し、現在ほとんどのデータはBIツールの外部で使用され、ユーザーワークフローに提供されています。平均的な企業では1100以上のSaasアプリケーションを使用して事業を運営しています。「2018年から2023年までの間に5億個の新しいビジネスアプリケーションが作成される」という予測も出ています。

これだけのデータ量を、多様性が拡大していく現状の中でどうやって扱っていけばいいのでしょうか。

既存の手法では、部門ごとにデータの孤立を生みがちです。ビジネス・インテリジェンスの基本として「意思決定がデータサイロの制約を受けてはならない」というものがありますが、現状こうした変化に既存のアナリティクスはついて行けていません。(80%の構造化データは分析されていないという調査結果も出ているようです)

データラングリング(データを加工する)の局面からも見てみます。従来の手法では以下のような形で数多くのワークブックやSQLスニペット、ETLコードが存在する状況だと「何が正確で何が真実なのか」を見極めることが非常に困難となり、また管理・維持コストも膨大なものとなってしまいます。

また、部門毎に個別の分析を行っている場合も、結果としては「意識決定がデータサイロの制約を受けてしまう」形となってしまいます。

「組織全体の需要に応えることの出来る、且つ、何千人ものデータ専門家を必要とせず、膨大な量にのぼるETLスクリプトの生成と維持が付与なデータプラットフォームをどのように作成出来るか。Lookerならば可能です。」とNick氏は切り出しました。

3.データインフラの進化

この一見困難とも思えるハードルは、近年のデータインフラの進化によって実現可能となった、とNick氏。

近年のデータエンジニアリングのトレンドとしては

  • データベースはよりスケーラブルに、早く、安価に
  • ELTは反復的でよりシンプルに
  • SQLは今も、これからも標準言語

というポイントが挙げられますが、「クラウドデータベースがすべてを変えた」とその理由について言及しました。

現状、LookerではAmazon Redshiftが一番の成長率を記録しており、BigQueryやSnowfrakeも後を追う形です。(Looker社でも現状半数近くがお客様がAmazon Redshiftを利用されているのだそうです)

Lookerではパイプラインアプローチを従来のものからよりシンプルに、柔軟性を持たせた形に変化・対応させています。SQLを使い、変更が発生した場合でもセマンティクスなディスクリプションを、LookMLを使って局所的に変更。その変更が関連するすべてのメトリクス、指標に即座に反映される...という流れです。

さいごに

ビジネス・インテリジェンスの将来はどうなるのか。Nick氏は「将来のための指針」として「データドリブンな従業員」「Saasアプリケーションの浸透」「最新のデータウェアハウス」の3点を挙げました。

Lookerはこれらの点を念頭におき、プラットフォームとして単なる探索やダッシュボードだけで無く、全ての人をデータドリブンにするべく製品をアップデートしています。Nick氏は「BIの将来は単なるBIツールではない」とし、数多くの事例を紹介しながらLookerで実現出来ることを幾つか紹介しました。

Nick氏は下記まとめを掲げながら「ビジネスを差別化し、他社に勝つにはどのテクノロジー分野が最も重要だと思いますか?BIは進化しています。今後はアナリストのみならず、全員がデータドリブンで動いていけるようにシフトしていかねばならないのです」とコメントしてセッションを締めました。

 

まとめ

という訳で、「Join:the Tour Tokyo 2019」基調講演セッションのレポートでした。

イベントレポートはこの後も様々なセッションが展開されており、内容も盛り沢山なためそれぞれのセッション毎に小分けする形でレポートをしてきたいと思います。関連エントリについては下記シリーズで公開していきますので合わせてお読み頂けますと幸いです。