【レポート】AWS Summit Tokyo 2017:Day3 基調講演(キーノート) #AWSSummit
2017年05月30日(火)〜2017年06月02日(金)の計4日間に渡り、グランドプリンスホテル新高輪 品川プリンスホテル アネックスタワーで行われている『AWS Summit Tokyo 2017』。
当エントリでは2017年06月01日に行われた『Day3 基調講演(キーノート)』に関する内容をレポートしたいと思います。
なお、今回もこれまで同様『PRESS(プレス)』での参戦となります。現地開催会場の雰囲気を捉えた写真と併せてご紹介します。
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目次
セッション概要
当セッションの登壇者・スピーカーは以下の通り。
- ホストスピーカー: Werner Vogels氏(Amazon.com CTO)
- ゲストスピーカー: 安川 健太氏(株式会社ソラコム 最高技術責任者)
- ゲストスピーカー: 中村 浩氏(東日本電信電話株式会社 取締役 ビジネス開発本部 副本部長 兼 第一部門長)
- ゲストスピーカー: 川西 泉氏(ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社 取締役 EVP)
- ゲストスピーカー: 藤本 真樹氏(グリー株式会社 開発・人事統括 取締役 執行役員常務 CTO)
セッションレポート
オープニングトーク
基調講演自体のオープニングについては、Day2のミニライブセッション的なものが無い以外は同じ映像だったと思います。
イベント紹介映像が流れ終わったタイミングでWerner Vogels登場...と思いきや?
忘れ物をしていたようで、慌てて受取りに戻るWerner。という訳で改めてDay3 基調講演、開演です。
オープニングパートでは、主に以下の様な内容について語っていました。
- 強調したいのは今回のイベントはセールスでは無く"教育"のイベントと考えて欲しい。AWSを長く利用されてるお客様(の事例)からも色々学んで欲しい。
- 140億ドル以上の売上(ランレート) ※2017年第1四半期時点での12ヶ月で
- 43% YoY成長 ※2016年第1四半期と2017年第1四半期の比較
- AWSは10億ドル以上のIT企業の中でも成長率はTOP
- 毎月アクティブユーザーは増加、日本では10万以上/月。
- ガートナーのMagic Quadrant for Cloud Infrastructure as a Service, WorldWideでリーダーのポジション
- リージョン/AZ/エッジロケーションの紹介
ちなみにこの日の基調講演:Wernerのパートに於いては、新しく発表された機能やサービスについてのアナウンスは特にありませんでした。トピックに対応した直近発表があった新機能や新サービス等を改めておさらいする内容という感じでしたので、本文は簡潔な形とし、関連するリンクを整理するに留めたいと思います。m(_ _)m
事例紹介:株式会社ソラコム
Day3 基調講演1人目のゲストスピーカーは株式会社ソラコム様から安川 健太氏が登場。
IoTを使った共通課題の解決に取り組む際の手助けを行っているソラコム。ワールドワイドなインフラをどのように構築し、利用しているのかについて解説・紹介がなされました。
(株式会社ソラコム 最高技術責任者 安川 健太氏)
SORACOMではAWSクラウド上に3G/LTEコアネットワークを構築し、デバイスとクラウドの直接接続を行っています。2015年09月のローンチ以来、 お客様のご利用は6000を超える状況となっています。このような飛躍的な躍進を、なぜ小さなスタートアップが実現出来たのか?その理由は『AWSの上に、AWSのベストプラクティスを適用して構築をしているから』と安川氏は語ります。
SORACOMのシステム内部アーキテクチャはマイクロサービス化されたコンポーネント群がAPIを通して連携する構造となっています。IoTデバイスの増加に従ってサーバ台数を増やし(=Horizontal Scalability)、SPOFのない構成で障害箇所を自動で置き換える(Built-in Resilience)構成を実現しています。
SORACOMでは疎結合及び非同期化のアーキテクチャも採り入れています。デバイスから直接クラウドサービスにデータを転送するFunnelではこの構成を取っており、新しいサービスに対応させる際はパートナー様にLambda functionを開発してもらい、そのfunction呼び出しを追加する事で完了するという非常に容易なものとなっています。
新サービス&リリースはこれまでに12個、新機能発表については計38回とAWSのそれらを彷彿とさせるような短期間でのハイペース・広範囲なリリースラッシュを重ねてきたSORACOM。AWSならばGlobalな展開も同じ構成で成長をさせて行くことが出来、現在では世界で120以上の国と地域でSORACOMが利用可能となっています。
SUPER POWERS(スーパーパワーズ) - SUPERSONIC SPEED(超音速)
AWSを『最も堅牢で、万全の機能を搭載した、テクノロジインフラストラクチャプラットフォーム』と語るWerner。
また、これらの機能を有するAWSを、『SUPER POWERS(スーパーパワーズ)』と題してちょっとしたアメコミヒーロー風の紹介を行いました(このテイストはセッション最後まで続きました)。まぁこれはモロにスー◯ーマンですねw
また、このパートでは『SUPERSONIC SPEED(超音速)』というワードも出てきました。このセクションで紹介された新機能・新サービスは『F1インスタンス』。
- Amazon EC2 F1 インスタンス | AWS
- FPGAを搭載した EC2 F1インスタンス – 一般提供開始 | Amazon Web Services ブログ
- AWS F1インスタンス向けのFPGA Developer AMIで開発ツールvivadoを動かしてみました #awssummit | Developers.IO
事例紹介:NTT東日本
事例発表2つ目はNTT東日本様から。取締役 ビジネス開発本部 副本部長 兼 第一部門長 中村 浩氏による取り組みの紹介です。
(東日本電信電話株式会社 取締役 ビジネス開発本部 副本部長 兼 第一部門長 中村 浩氏)
NTT東日本といえば真っ先に浮かぶのは電話ですが、デジタルサイネージに高画質の音声映像を配信する事業も行っています。AWSを利用したNTT東日本のサービスとしては以下2つが代表的なものになります。
- サービス詳細 / アカデミックソリューション | NTT東日本のひかりクラウド スマートスタディ | フレッツ光公式
- ひかりクラウド スマートビデオ - NTT東日本の映像配信プラットフォームサービス
オンプレサーバからAWSに移行を行う際に必要となるのは広域且つセキュアな環境。NTT東日本では社内でクラウドゲートウェイの仕組み(これはAWSと非常に似ている)を構築し活用していましたが、社外でも利用出来るように推し進め、サービスとして発表しました。それが以下の『CloudGateway』です。
このサービスを実現するにあたりAWSを選んだ理由について中村氏が挙げたのは『機能と価格のバランスが取れているコスト感』『タイムリーな市場投入が行えるスピード』『変化に柔軟に対応可能なアジリティ』の3点。ここにFLETS光の高速・閉域という要素が合わさる事で、『閉域でのAWS利用』というセキュリティ面での安心感を得る事が出来、結果としてこの組み合わせがあることでAWSがNTT東日本で普及した、と中村氏は振り返ります。
『このサービスを使う事により、AWSと直結して金融業界、IoT等の分野にも広がって行けるのではないか?尚一層、AWS利用環境を良くしていき、エンジニア達の悩みを共に解決していきたい』と意気込みを語りつつ、紹介セッションを締めました。
SUPER POWERS - INVISIBILITY(目に見えない)
次いでWernerが掲げたフレーズは『INVISIBILITY(目に見えない)』。
インスタンスを使わなくても良いようになる、即ち"サーバーレス"をこのフレーズになぞらえ、以下の機能群を紹介して行きました。
- AWS Lambda
- AWS Step Functions
- AWS X-Ray
- Amazon DynamoDB Accelerator(DAX)
事例紹介:ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社
事例発表3つ目はソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社様から。取締役 EVP 川西 泉氏よりIoT事業への取り組み内容の紹介が為されました。
(ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社 取締役 EVP 川西 泉氏)
IoTの取り組みポイントについては『デザイン』『デバイス』『ネットワーク&クラウド』『A.I.』『システム・インテグレーション』を組み合わせた”リカーリングビジネスの実現”を推進。
この取り組みの成果の1つである『スマートホーム』については、以下の様な形で構成図を交えてその内容を紹介。図の真ん中の赤枠部分がAWS IoTを活用している部分となります。AWS IoTを活用する事で以下記載の3点について利用メリットを得ることが出来ました。
SUPER POWERS - FLIGHT(飛び立つ)
直前のソニーモバイルコミュニケーションズ様のIoT紹介を受ける形でWernerからAWS IoTに関する機能・構成紹介がなされ、
- AWS IoT (IoT (モノのインターネット) テクノロジーをクラウドで活用) | AWS
- AWS IoT プラットフォームの仕組み – アマゾン ウェブ サービス
- IoT | 特集カテゴリー | Developers.IO
次に出て来たフレーズは『FLIGHT(飛び立つ)』。
旧来のデータベースからの様々な制約や障害から"飛び立って"AWSのデータベースに乗り換えて行こう!という意味合いなのでしょう。以下のDB移行及び各種OSS由来のデータベースサービスに関する紹介がなされました。
- AWS Database Migration Service
- Amazon Aurora(MySQL/PostgreSQL)
事例紹介:グリー株式会社
事例発表最後の4つ目はグリー株式会社様。開発・人事統括 取締役 執行役員常務 CTO 藤本 真樹氏より、"取り組んで来て良かった事の1つ"という『数千台のオンプレミスサーバをAWSへ移行』した際のお話について紹介頂きました。
(グリー株式会社 開発・人事統括 取締役 執行役員常務 CTO 藤本 真樹氏)
移行作業に掛かった期間はおよそ1年。プランニングを含めるとプラス1年近く掛かったそうです。実現の経緯についてはDirect ConnectによるL3接続やレプリカ構築を行った上で移行を実行、実行の際には10年超の運用経験を元にした運用設計や豊富なシミュレーション、プロダクトサイドの協力無くしては出来なかった...と、藤本氏は仲間を称える台詞を繰り返し述べつつ振り返りました。
移行の際の技術選択については、藤本氏は数多くの要素を挙げつつも『判断には色々な軸があり、(その軸における)パラメータを出したとしても実際のところ評価は難しいと思う。未来を正しく予測する事に他ならないので』とコメント、『敢えて1つだけ挙げるとするならば』として以下のポイント:"is that faster?(速さは裏切らない)"を挙げました。シンプルに考えるのが大事であり、藤本氏曰く『AWSを使う事で、こういった期待には応えられるのかな、と思う』という事でした。
SUPER POWERS - X-RAY VISION(透視),PRECOGNITION(予見),IMMORTALITY(不朽)
Wernerパート最後の部分も、これまでの展開と同じくフレーズが登場します。『X-RAY VISION(透視)』というフレーズでAthena/EMR/Redshift/Redshift Spectrumについての紹介を行い、
- Amazon Athena
- Amazon EMR
- Amazon Redshift
- Amazon Redshift Spectrum
『PRECOGNITION(予見)』ではAmazon Machine Learning及び人工知能サービス群について言及しました。
- Amazon AI – 人工知能サービス – AWS
- Amazon Machine Learning
- Amazon Rekognition
- Amazon Polly
- Amazon Lex
そして最後に掲げたフレーズは『IMMORTALITY(不朽)』。スタートアップ企業が生き残っていくには『デジタルトランスフォーメーション』がその鍵となります。
AWSのイノベーションのペースは、そのまま、日々追加される機能の規模に比例します。Wernerが『ビルドするなら絶好のタイミングだ、Go build!!』と参加者に呼び掛ける形でDay3 基調講演セッションは幕を閉じました。
まとめ
という訳でAWS Summit Tokyo 2017、Day3の基調講演セッションレポートは以上となります。
ちなみに、これは本編の技術的な内容とは全く関係無いのですが、『SUPERPOWER』の"スーパーマンの"ロゴそのまま使い"、『SUPERSONIC SPEED(超音速)』の雷マークはフラッシュを彷彿とさせるし、『FLIGHT(飛び立つ)』の鳥のマークはワンダーウーマンのロゴっぽいっちゃロゴっぽい。『もしかしてAWSはマーベル派では無くDCコミックス(ジャスティス・リーグ)派なのかな?』とどーでも良い事をセッション中に登場してきたロゴを見ながら思っていたのでした。