[アップデート] Amazon Redshift の RG インスタンス予約に All Upfront / Partial Upfront が追加されました
クラウド事業本部の石川です。Amazon Redshift の RG インスタンス向け予約インスタンス(Reserved Instance)に、新たに「All Upfront(全額前払い)」と「Partial Upfront(一部前払い)」の支払いオプションが追加されました。これまでの「No Upfront(前払いなし)」と合わせて、3 種類の支払い方式から選べるようになっています。
定常的に RG インスタンスを稼働させている方にとって、前払い額を調整することでさらにコストを最適化できる選択肢が広がるアップデートです。
Amazon Redshift の RG インスタンスと予約インスタンスとは
Amazon Redshift は、フルマネージドのクラウドデータウェアハウスサービスです。コンピュートノードを束ねた「クラスター」単位で稼働し、ノードはオンデマンド料金または予約(リザーブド)料金で課金されます。
RG インスタンスは、2026 年 5 月に一般提供が開始された AWS Graviton ベースの最新世代ノードタイプです。従来の RA3 と比較してデータウェアハウスワークロードで最大 2.2 倍、データレイク(Apache Iceberg)ワークロードで最大 2.4 倍高速で、vCPU あたりの価格は 30% 低価格とされています。さらに、クラスター自身のコンピュート上で動作する統合データレイククエリエンジンを備え、Apache Iceberg / Parquet を直接クエリできる点が特徴です(詳細は GA 時のブログを参照してください)。RG インスタンスには rg.xlarge と rg.4xlarge の 2 サイズが用意されています。
予約インスタンス(Amazon Redshift では「予約ノード」とも呼ばれます)は、1 年または 3 年の利用を事前にコミットすることで、オンデマンド料金より大幅な割引を受けられる課金モデルです。定常稼働する本番ワークロードに適しています。なお、予約はあくまで課金上の概念であり、予約を購入してもノードが自動作成されるわけではない点に注意してください。
アップデート内容
今回のアップデートにより、RG インスタンスの予約インスタンスで以下の支払いオプションが利用可能になりました。
主な変更点は以下のとおりです。
- All Upfront(全額前払い): 予約期間分を開始時に全額支払う方式が新たに追加。3 つの中で最も割引率が高い
- Partial Upfront(一部前払い): 一部を前払いし、残りを月額で支払う方式が新たに追加。割引と初期負担のバランスを取れる
- これらは既存の No Upfront(前払いなし) に追加される形での提供
- いずれも 1 年・3 年 の予約期間に対応
これにより、RG インスタンスでも RA3 などの既存ノードタイプと同様に、3 種類の支払いオプションから財務状況に応じて選択できるようになりました。
3 つの支払いオプションの概要
各支払いオプションの性質は以下のとおりです。前払い額が大きいほど、また予約期間が長い(3 年)ほど割引率が高くなる、という Amazon EC2 や RA3 の予約と同じ考え方です。
| 支払いオプション | 前払い | 月額 | 割引傾向 |
|---|---|---|---|
| No Upfront | なし | あり | 最も小さい |
| Partial Upfront | 一部 | あり | 中間 |
| All Upfront | 全額 | なし | 最も大きい |
支払いオプション選びの考え方を図にすると、次のようになります。
東京リージョンの料金例(1 年契約)
東京リージョン(ap-northeast-1)における RG インスタンス予約インスタンスの料金は以下のとおりです(1 年契約・オンデマンド比)。1 年契約での割引率は約 30〜34% となります。3 年契約を選ぶと、さらに大きな割引が適用されます。
No Upfront
| インスタンス | 前払い | 月額 | 実効時間単価 | 年間 TB あたり実効価格 | オンデマンド比 | オンデマンド単価 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| rg.4xlarge | $0.00 | $1,829.52 | $2.506 | $171.52 | 30% | $3.5803 |
| rg.xlarge | $0.00 | $457.14 | $0.626 | $171.43 | 30% | $0.8946 |
Partial Upfront
| インスタンス | 前払い | 月額 | 実効時間単価 | 年間 TB あたり実効価格 | オンデマンド比 | オンデマンド単価 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| rg.4xlarge | $10,506.53 | $875.55 | $2.399 | $164.16 | 33% | $3.5803 |
| rg.xlarge | $2,625.35 | $218.78 | $0.599 | $164.09 | 33% | $0.8946 |
All Upfront
| インスタンス | 前払い | 月額 | 実効時間単価 | 年間 TB あたり実効価格 | オンデマンド比 | オンデマンド単価 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| rg.4xlarge | $20,699.47 | $0.00 | $2.363 | $161.71 | 34% | $3.5803 |
| rg.xlarge | $5,172.30 | $0.00 | $0.590 | $161.63 | 34% | $0.8946 |
* 月額料金 実効時間単価=(前払い+月額 × 12)÷ 8,760 時間 マネージドストレージを含む年間 TB あたり実効価格。各指標の定義は Amazon Redshift 料金ページに準拠します。料金は変更される場合があるため、購入前に必ず料金ページで最新の値をご確認ください。
対応リージョン
All Upfront / Partial Upfront 支払いオプションは、東京・大阪を含む 28 の AWS リージョンで利用可能です。米国、カナダ、南米、ヨーロッパ、アフリカ、アジアパシフィック、メキシコといった主要地域をカバーしています。
料金への影響
今回のアップデート自体による追加料金はありません。あくまで既存の予約インスタンスに支払い方式の選択肢が増えたものです。具体的な割引率や料率はリージョン・ノードタイプ・期間によって異なるため、最新の数値は Amazon Redshift 料金ページでご確認ください。
なお、予約ノードは利用の有無にかかわらず予約期間中は課金される点に注意が必要です。前払い額・月額の支払いは、対象ノードを実際に稼働させていなくても発生します。
損益分岐点の考え方
予約インスタンスは「購入したら稼働の有無にかかわらず料金が発生する」固定費型の課金です。一方、オンデマンドは稼働した時間分だけの従量課金です。そのため導入判断では、年間でどれだけ稼働させるか(稼働率) と 前払いをどこまで許容できるか の 2 点が鍵になります。
オンデマンドとの損益分岐(稼働率)
常時稼働(24 時間 365 日)させた場合のオンデマンド年間料金を基準にすると、予約が有利になる損益分岐の稼働率は「1 − 割引率」で求められます。東京リージョン・1 年契約・rg.4xlarge の場合は以下のとおりです(rg.xlarge も割引率が同じため、損益分岐の稼働率は同じになります)。
| 支払いオプション | 予約の年間料金 | 損益分岐の稼働率 | 年間稼働時間の目安 |
|---|---|---|---|
| No Upfront | $21,954.24 | 約 70% | 約 6,132 時間(約 8.4 ヶ月相当) |
| Partial Upfront | $21,013.13 | 約 67% | 約 5,869 時間 |
| All Upfront | $20,699.47 | 約 66% | 約 5,782 時間 |
※ オンデマンド年間料金(rg.4xlarge)= $3.5803 × 8,760 時間 = 約 $31,363
年間の稼働率がこの値を上回るなら、予約インスタンスの方が安くなります。常時稼働する本番クラスターであれば確実に予約が有利で、その中では All Upfront が最安です。逆に、pause / resume を多用して稼働率が 66〜70% を下回るような使い方では、オンデマンドや Amazon Redshift Serverless の方が安くなる可能性があります。
支払いオプション間の損益分岐(前払いの回収)
前払いが大きいほど総額は安くなりますが、初期のキャッシュアウトが発生します。1 年・常時稼働での年間総額(rg.4xlarge)を比較すると以下のようになります。
| 支払いオプション | 年間総額 | No Upfront との差 |
|---|---|---|
| No Upfront | $21,954.24 | 基準 |
| Partial Upfront | $21,013.13 | −$941(約 −4.3%) |
| All Upfront | $20,699.47 | −$1,255(約 −5.7%) |
All Upfront を選ぶと、No Upfront なら毎月支払うはずの $1,829.52(rg.4xlarge)が不要になります。前払い $20,699.47 をこの月額削減分で回収する期間は約 11.3 ヶ月で、1 年契約では契約終盤に回収が完了する計算です。3 年契約では割引率がさらに大きくなるため、前払いの回収はより早く、総額メリットも拡大します。
どの支払いオプションを選ぶべきか
支払いオプションは「割引率」と「キャッシュフロー(初期負担)」のトレードオフで選びます。
- コスト削減を最大化したい: 全額前払いの All Upfront が最も割引率が高くなります。長期の安定稼働が確実な本番ワークロードに向いています
- 初期負担を抑えつつ割引も得たい: Partial Upfront が中間的な選択肢です。一定の前払いで月額を下げられます
- 前払いを避けたい・予算を平準化したい: No Upfront で月額のみの支払いにできます。割引率は控えめですが、キャッシュフローへの影響を最小化できます
稼働が安定している RG インスタンスであれば、3 年 All Upfront が最も高い割引を得られます。一方、利用が不確実な場合や柔軟性を重視する場合は、Amazon Redshift Serverless など他の選択肢と併せて検討するとよいでしょう。
最後に
Amazon Redshift の RG インスタンス向け予約インスタンスに、All Upfront と Partial Upfront の支払いオプションが追加されました。既存の No Upfront と合わせて 3 種類から選べるようになり、財務状況に応じたコスト最適化の幅が広がっています。東京・大阪を含む 28 リージョンで利用可能です。東京リージョンでは 1 年契約で約 30〜34% の割引となり、年間稼働率が約 66〜70% を超える定常ワークロードであれば予約が有利になります。
RG インスタンスを定常稼働させている方は、自社のキャッシュフローと割引率のバランス、そして損益分岐となる稼働率を踏まえて、最適な支払いオプションへの切り替えを検討してみてはいかがでしょうか。









