
【セッションレポート】『ドンキーコング バナンザ』すべてが壊せる世界の構築 ~破壊を実現するボクセル技術~ #CEDEC2026
はじめに
CEDEC2026 で聴講したセッションのレポートです。『ドンキーコング バナンザ』の、地形も敵も自由に壊せる世界がどう作られているのかが、任天堂の開発者から解説されました。この破壊表現を支えているのがボクセル技術です。
セッションの概要は次の通りです。
- タイトル: 『ドンキーコング バナンザ』すべてが壊せる世界の構築 ~破壊を実現するボクセル技術~
- 登壇者: 森 洋介 氏 (グラフィックスリードプログラム) 、深山 智史 氏 (サウンドリードプログラム) 。いずれも任天堂株式会社
- 日時: 2026 年 7 月 23 日 13:20 から 14:20
- 会場: 第 1 会場

破壊を支えるボクセル技術
ボクセルとは、空間を細かな立方体の格子で表す方式です。本作では、このボクセルからゲーム内に見えるメッシュを作り出しています。各ボクセルは、中身の詰まり具合を表す密度のほか、ダメージ、マテリアル、濡れといった情報を持ちます。
メッシュの形は、密度を 0 から 255 の値で持たせ、その大きさで頂点の位置を動かして決めます。ただし密度だけだと形が丸みを帯びてしまうため、Dual Contouring という手法を採り入れ、頂点の位置を制御する情報を加えることで、角の立った形状も表現できるようにしています。
見た目の自然さのために、どの向きの面にもテクスチャがなじむ三軸投影や、異なる素材の境界をなじませるマテリアルブレンドといった工夫も紹介されました。

規模も膨大で、地形は 1 億ボクセルを超えます。そのうち中身があるのは 7% ほどです。これを扱うため、8 かける 8 かける 8 のボクセルをひとまとまりのチャンクとして管理し、中身が空のチャンクにはメモリを割り当てない仕組みにしています。さらに ROM に保存する際は、空の部分を 1 ビットで持ち、中身のある部分だけを圧縮することで、915MB のデータを 8MB (テクスチャ込みで 37MB) まで削減したとのことです。
破壊の手応えを生むエフェクトとサウンド
続いて、壊したときの手応えをどう作るかが語られました。手応えは、破壊に連動するエフェクトとサウンドの動的な制御によって生まれます。
ボクセルの破壊時には、どこをどれだけ壊したか、何の素材を壊したかといった情報を取り出し、それをもとに演出を変えます。貫通したときの手応えや、最後の一撃に合わせたドンキーコングのボイスなども、この情報を使って制御されます。
エフェクトは種類が非常に多く、800 種類を超えるマテリアルすべてに破壊エフェクトを用意する必要があります。そこで、素材の質感とテクスチャの組み合わせから破壊エフェクトを自動的に作る仕組みを用意しました。2,000 種類を超える装飾物についても、破片モデルと挙動の組み合わせで壊れる演出を作り、破片は Houdini でボロノイ分割を使って自動生成することで、その 98% を自動化したそうです。

破壊によって周囲の環境も動的に変化します。周りがどれだけ地形に囲まれているかを表す遮蔽率の計算には、キューブマップを使っています。これはもともとライティングのために使っていたものを再利用したもので、低コストで実現できたとのことです。
キャラクターへの応用と地形制作
破壊の仕組みは、地形だけでなくキャラクターにも応用されています。敵の体を部位ごとに壊す表現や、ボスが作り出す足場の生成もボクセルで実現しており、NPC にモーフィングでダンスをさせるといったユニークな使い方も紹介されました。
最後に、この世界をどう作るかというワークフローが示されました。レベルデザイナーは、ポリゴンモデルをボクセルに変換したプリミティブを、合体させたりくり抜いたりしながら地形を組み上げていきます。

感想
破壊という一見ぜいたくな仕組みが、データ構造の工夫やエフェクトの自動生成、既存資産の再利用といった地道な積み重ねで成り立っていることが伝わってきて、とても面白いセッションでした。すべてが壊せるという遊びの核が、これだけ緻密な技術に支えられているのだと知ると、実際に遊んだときの手応えの理由が腑に落ちた気がします。









