
【セッションレポート】生成AI時代の内製サービス開発 京セラロボティックサービス開発のこれまでとこれから #ClassmethodForum
はじめに
製造ビジネステクノロジー部のふじい(大)です。
2026年5月20日(水)に開催された Classmethod Forum にて京セラ株式会社のロボティクス事業部の巽様に「生成AI時代の内製サービス開発 京セラロボティックサービス開発のこれまでとこれから」という内容で登壇していただきました。
長年クラスメソッドが支援させていただいているご縁から、特別に許可をいただいたので Classmethod Forum 登壇内容についてセッションレポートを公開します。
特に支援させていただいている京セラロボティックサービスには、事例公開、Classmethod Showcase 登壇、AWS Summit パートナーセッション登壇と過去に何度もご協力いただきました。
弊社メンバーによるものづくりワールド九州2024の京セラ様ブース展示訪問レポートも含め、下記で公開しています。
今回の登壇内容についての解像度も上がるのでぜひご覧になってください。
セッション概要・要約
京セラ株式会社が提供する協働ロボットの知能化サービス「京セラロボティックサービス」を支えるクラウド基盤のこれまでの開発と、生成 AI(コーディングエージェント)を全面的に取り入れたこれからの開発体制について紹介していただきました。
これまではクラスメソッドと協業し、AWS Organizations や Amazon EKS などを活用して、生産現場から安全に接続できるセキュアなマルチテナント基盤を構築してきました。
現在では、開発スピードの向上と複雑な要件へ対応するため、クラウド開発の全メンバーにコーディングエージェント「Claude Code」を導入しており、複数領域にまたがる複雑な新機能を短期間でローンチすることに成功しました。
具体的な取り組みとして、安全な AI 活用に向けた利用環境のサンドボックス化やガイドライン策定の取り組みを紹介していただきました。また、AI 時代においても既存のソフトウェア開発のプラクティスは依然として重要であり、「エンジニアが AI の出力を自分の言葉で説明し、責任を持つ」マインドセットが最も重要であると発表していただきました。
セッションレポート
「生成AI時代の内製サービス開発 京セラロボティックサービス開発のこれまでとこれから」
会場C ものづくり・実装セッション 14:30 - 15:00
登壇者紹介
京セラ株式会社 ロボティクス事業部 商品開発センター 責任者 巽 健人 氏

会社紹介
京セラ株式会社は1959年に創立し、今年で67年目を迎える会社です。セラミックの焼成からスタートし、現在では多角経営として電子部品やソリューションなど様々な事業を展開しています。
さらには京セラ社内やグループ内の多種多様な技術を活かした新規事業にも積極的に取り組んでおり、巽氏が所属するロボティクス事業部でも、複合機の機械制御や画像処理、AI 技術、クラウド技術などを活用し新しいビジネスの立ち上げに取り組んでいると語られました。
京セラロボティックサービスについて
「ロボットの知能化」というアプローチによって環境に応じて柔軟に対応できる「AI ビジョンソリューション」、物流における荷下ろし作業などを自動化する「デパレタイズパッケージ」の2つの商品、これらの運用を支える仕組みとしてクラウドサービスを展開していると紹介されました。
今回の登壇ではクラウドサービスの内製開発についてお話ししていただきました。



京セラロボティックサービス開発のこれまで
2019年より事業開発に着手し、クラウドサービス開発は2020年から取り組み、2025年春までは R&D を含めプロダクトアウトでの開発を進めてこられました。
セキュリティやデータの保護は、エッジシステムの運用支援を提供する上で極めて重要な観点であり、生産現場から安心して接続・ご利用いただくことができるサービスであることは、必須要件であると述べられました。
このようなセキュアなサービスを実現するために、クラスメソッドが開発の初期段階から現在に至るまで5年にわたり協業してきたことが語られました。

実際に協業した開発事例として2点紹介していただきました。
1点目が AWS Organizations を活用した、システム監査やセキュリティ、CI/CD、データ分析など複数のアカウントに対する統合運用を実現するマルチアカウント運用の仕組みの構築です。

2点目がユーザー管理者向けの Web サービスの開発です。基盤に Amazon EKS を採用し、拡張性を活かしたブラウザからエッジコンピュータへのリモート接続を行う機能などを備えています。

京セラロボティックサービス開発のこれから
2025年春からは1から10のフェーズとなり、販売・導入へ大きくシフトし、顧客からの具体的な要望に応えるために速度優先での機能開発、強みの強化、不足機能のキャッチアップが求められ、それに伴うメンテナンスコストも増えていきます。
京セラロボティックサービスではクラウドだけでなくエッジ環境のシステムを伴うため、バージョンのフラグメンテーションや、様々な要件に対して構築されたシステムとの接続互換性を考慮する必要があり、リソースは減る一方で開発は難しくなるといった状況の中でも、事業として実績を作りビジネスを立ち上げていく必要性に迫られていました。
このジレンマを解決する手段として、コーディングエージェント活用の推進が挙げられていました。
一部メンバーによる Cursor 利用から始まり、2025年10月からはクラスメソッド側も含め、全クラウド開発メンバーが Claude Code を利用しています。
現在ではほとんどのコードが Claude Code によって生成されており、既存コードの調査にも活用され、エンジニアの生産性向上に大きく寄与したと話されました。

2025年12月より取り組んだ Claude Code を用いた新機能の開発事例の紹介がありました。
京セラロボティックサービスでは、京セラが AI モデルを学習してユーザーに提供していますが、「新しいワークが追加された場合に自分たちでその対応を行いたい」というニーズがありました。これを実現するには、ユーザーが AI モデルを学習・作成できる機能が必要になります。
そのユーザー学習機能では、ユーザーが 3D CAD データや少量の撮影画像とアノテーション情報をアップロードすることで、京セラが作成する AI モデルと同等品質のモデルを作成できます。ユーザー学習機能の構築を Claude Code を活用することによって実質4か月の開発期間でローンチすることができたとのことです。

ユーザー学習機能の具体的な対応もご紹介いただきました。
AWS がエッジシステムとの接続やその運用管理、Google Cloud は AI モデルの学習やそれに必要なデータ管理などいわゆる MLOps の仕組みを担っているマルチクラウド構成となっています。
Google Cloud の MLOps 機能は京セラ社内のエンジニアが利用するものとして開発しているため、機能の複雑性が高く専門知識を要する仕組みとなっており、ユーザーの利用には適していませんでした。そのためユーザー学習に最適化したパイプラインや、関連データを操作するための API の追加を行いました。
Google Cloud の機能を利用するためのユーザーインターフェースや連携機能を Amazon EKS クラスタに追加、作成したモデルをクラウドからエッジシステムにリモートインストールできる仕組みの構築も行っています。
これらの AWS、Google Cloud、さらにフロントエンド、バックエンド、インフラ、多くの要素領域にまたがる開発で、対応領域や言語もまちまちでしたが、ほとんどで Claude Code が活用されているとのことです。

コーディングエージェント活用のポイントもご紹介いただきました。
AI 利用に関するセキュリティと安全性として OWASP Top 10 for LLMs にあるようなセキュリティリスクに対応するために、独自の Claude Code 利用ガイドラインを策定したと紹介されました。
コーディングエージェントは開発環境の開発用 PC を通じて利用しますが、この PC には開発対象のコードに限らずさまざまな業務データや認証情報などの機密情報が含まれています。
プロンプトインジェクションや近年脅威が高まっているサプライチェーン攻撃を受けるリスクもあるため、ガイドラインでは Dev Container を利用したコンテナ環境で Claude Code を利用することによって影響範囲を限定することを定めています。

ソフトウェアアーキテクチャ、ドキュメント、指示、いずれもこれまでのソフトウェア開発の延長であり、他にもテストの自動化やレビュープロセスなど、コーディングエージェントを用いた開発でもこれまでのソフトウェア開発のプラクティスはそのまま活用することができたとのことです。そしてエージェントを用いた開発ではその重要性が増しているとの考えを述べられました。
その一方でコーディングエージェントはあくまでツールとして、利用するエンジニアがアウトプットに責任を持つ。AIが出力したからではなく、自分の言葉でアウトプットを説明できるようにする。 この意識付けが、チームでコーディングエージェントを活用する上で最も重要な点であると話されました。

さらに今後の展開についてもお話しいただきました。
生成 AI の進化の速度が速く、今後開発手法が大きく変わるパラダイムシフトが起きる可能性があると言います。
最低限のガードレールを引きつつ、まずは使ってみること、各チーム・各エンジニアが実務レベルで使い続け「それがどういうものか」「自分たちが自分たちのチームに活用するために何が必要か」を考え続けていくことが重要だと語られました。

クラスメソッドの関わり
ここまでが巽氏の登壇内容です。最後に、本セッションで触れられた開発について弊社(クラスメソッド)の視点から補足します。
クラスメソッドはこのクラウド基盤開発に開発初期から伴走しており、セキュアなマルチテナント基盤の構築では、インフラ、アプリケーションの領域を問わず双方から意見を出し合い、最適な構成となるように考えて構築を進めてきました。
これからの開発体制づくりにおいても、独自の Claude Code 利用ガイドラインの策定に協力しています。2025年10月からは弊社メンバーも京セラのクラウド開発チームの一員として、Claude Code を用いた開発に参画しています。
さいごに
提供しているサービスについて、これまでどのように開発してきたのか、クラスメソッドとの関わり、これからの開発について語っていただきました。
特にユーザーデータを守るためにセキュリティや安全性を考慮しつつ、AI 利用を安易に禁止せずにサンドボックス環境・ガードレールを作るといった仕組みで解決する動きは多くの方に参考になったのではないかと思います。
登壇終了後も参加者が列を作って質疑応答を求めていたのが印象的でした。
私自身もシステムエンジニアとして「AIが出力したからではなく、自分の言葉でアウトプットを説明できるようにする」という言葉に共感を覚えました。
AI の言いなりとなって作業するのではなく、自らが主体となって AI を使うマインドを大事にしていきたいです。
改めて Classmethod Forum にご登壇いただきありがとうございました。
参考











