Amazon Connectで、録音した留守番電話の内容確認してから折り返し発信する方法
はじめに
Amazon Connect のフローで顧客の伝言を録音し、翌営業日にオペレーターが発信元へ折り返し電話をかける運用を検討しています。
まず思い浮かぶ方法は次の 2 つでした。
案1:コールバック機能を利用
具体的な流れ
- フローで発信元番号をコールバック番号として登録
- 翌朝、オペレーターが CCP にログインしステータスを Available に変更
- 直後にコールバック着信があり、承諾すると自動で顧客へ発信
メリット:対応漏れが起きにくい
デメリット:録音内容を確認する前に自動発信されてしまう
案2:コンタクト検索から留守番電話を抽出
具体的な流れ
- 留守番電話フローでカスタム問い合わせ属性を保存
- 翌朝、オペレーターが管理画面へログイン
- 属性をキーにコンタクトを検索し、録音を確認してから発信
メリット:録音を確認してから発信できる
デメリット:
・管理画面での検索操作が必要
・対応済み/未対応の判断が難しく、漏れが発生しやすい
どちらにも課題があるため、今回は Amazon Connect の「タスク」機能で解決します。
案3:タスクを利用
具体的な流れ
- 留守番電話フローで、コンタクト詳細 URL を記載したタスクを自動作成
- 翌朝、オペレーターが CCP にログインし Available に変更
- すぐにタスクが着信。記載の URL から録音を確認
- 内容を把握したうえで発信元に折り返し
メリット
・録音を確認したうえで発信できる
・タスクをキューに転送するため対応漏れが起きにくい
デメリット
・タスク料金が発生する(0.04 USD/件)
本記事では、このタスクを利用した構成手順を解説します。
ルーティングプロファイル設定
エージェントに設定されているルーティングプロファイルの「チャネルの設定」と「キュー」のチャネル部分にてタスクチャネルを有効化します。
フローを作成
今回必要となるフローは 3 つです。下記の例では、あらかじめ次の名前で保存している想定です。
目的 | フロータイプ | 例の名前 |
---|---|---|
タスク用の顧客キューフロー | 顧客キューフロー | answerphone-task-2 |
生成したタスクをキューへ転送 | コンタクトフロー | answerphone-task-3 |
電話着信し、録音後タスクを発行 | コンタクトフロー | answerphone-task-1 |
1. 顧客キューフロー(answerphone-task-2)
終了フローを設定するだけです。
2. タスクをキューに転送するフロー(answerphone-task-3)
電話着信時に生成されるタスクを、任意のキューへルーティングするフローです。
「顧客キューフローの設定」ブロックでは、前項で作成した answerphone-task-2 を指定します。
3. 電話着信 → 録音 → タスク作成フロー(answerphone-task-1)
留守電として着信を受け、録音後にタスクを自動生成します。
- 「記録と分析の動作を設定」ブロックで自動インタラクション録音を有効化することで録音可能です。
- 「タスクを作成」ブロックを下記のように設定します。
項目 | 設定値 |
---|---|
タスクを実行するフロー | answerphone-task-3 |
名前 | 留守番電話 |
説明 | 以下の留守番電話のコンタクト詳細URLから、お客様の留守番電話内容を確認後、発信元電話番号に連絡してくさい。 |
リファレンスタイプ | URL |
リファレンスキー | 留守番電話のコンタクト詳細URL |
値 | https://<インスタンス名>.my.connect.aws/contact-trace-records/details/$.InitialContactId?tz=Asia/Tokyo または https://<インスタンス名>.awsapps.com/connect/contact-trace-records/details/$.InitialContactId?tz=Asia/Tokyo |
コンタクトへのリンク | 有効化 |
リファレンスの値の $.InitialContactId
はコンタクト ID に動的に置換されます。
インスタンスのドメイン名は、作成時期が2021/03/31 以前と以降で異なるためご注意ください。
顧客キューフローを必ず指定する理由
「タスク」チャネルは音声やチャットとは挙動が少し異なるため、
専用の顧客キューフロー(ループブロックと 切断ブロックを含まない最小構成)を明示的に設定しておく必要があります。
理由を 3 つに整理して解説します。
# | なぜ必要か | 具体的にどうなるか |
---|---|---|
1 | タスクもキューで待機中は顧客キューフローが適用される | 音声/チャット同様、キューに入った瞬間から「顧客キューフロー」が実行されます。 適切なフローを指定していないと、待機中に意図しないブロックが実行される可能性があります。 |
2 | ループブロックはタスクで未対応 | デフォルトの顧客キューフローにはループブロックが含まれており、そのまま使うとタスクはエラー終了します。 したがって ループブロックを含まない独自フローを用意する必要があります。 |
3 | 切断ブロックに達するとタスクそのものが終了 | 音声/チャットでは「保留メッセージを流して切断」は問題ありませんが、タスクの場合はそこで問合せが強制終了します。 終了させたくない場合は 切断ブロックを置かないフローが必須です。 |
上記 3 点を踏まえ、 「終了ブロックだけ」などのシンプルな顧客キューフローを作成し、タスク転送フローの「顧客キューフローの設定」ブロックで必ず指定してください。
試してみる
ここでは「顧客がメッセージを残す → 翌朝エージェントが折り返す」までを実際の画面で確認します。
1. 顧客側の動き
- 顧客がインスタンスの電話番号へ発信
- 留守電アナウンスが再生される
- メッセージを録音して切電
これで録音済みコンタクトとタスクが自動生成されます。
2. エージェント側の動き(エージェント1人)
翌営業日、CCP にログインしステータスを Available に変更すると、留守番電話というタスクが着信されます。
タスクを拒否すると、タスクはキューに戻り、再配信されます
連絡先を閉じると再度タスクが受信されます。
次に、タスクを承諾してみます。
留守番電話で録音されたコンタクト詳細URLが表示されます。
URL をクリックすると別タブでコンタクト詳細が開き、 コンタクト詳細から顧客の発信電話番号と録音音声が確認できます。
録音音声を確認後、先程のCCPに戻り、ダイヤルパッドから発信者番号へ折り返し電話します。
タスク受信中に留守番電話の内容を確認し、顧客に電話対応する
通話終了後、タスクタブから、終了ボタンを押します。
するとACW(After Contact Work)になります。ACW を完了すると、連絡先を閉じます。
連絡先を閉じると、通常の画面に戻りました。留守番電話のタスクが複数存在する場合、他のタスクが即着信されます。
3. エージェントが 2 名いる場合
- 2 人ともステータスを Available にすると、まず片方へタスクが着信されます。
- そのエージェントが[拒否]すると、もう一方へルーティングします。
- 双方が拒否した場合はタスクがキューに戻り、一方が[連作先を閉じる]をクリックすると、再度再配信されます。
CCP のヘッダに表示されるとおり、タスク着信中はチャネル優先度の設定を除き他チャネルを同時に受け入れられません。
タスクの有効期限
タスクは既定で 7 日後に自動終了します。
タスクテンプレートを利用すれば有効期限(最大 90 日)を簡単に変更可能です。
- 期限設定の詳細
- 有効期限は、90日まで延長可能