[アップデート]Amazon FSx for Lustre のスループット設定を構築後でも変更できるようになりました
2023 年 11 月 16 日のアップデートで Amazon FSx for Lustre のスループット設定をファイルシステム構築後でも変更できるようになりました。
3 行まとめ
- ファイルシステム構築後にストレージ単位あたりのスループット値を増減できるようになった
- 従来は構築後だとストレージ容量を増やしてスループットを稼ぐしかなかったが改善された
- スループット値を上げ下げすることでランニングコストを最適化できる
なにが嬉しいのか
従来は FSx for Lustre ファイルシステムを構築後に、ストレージ単位あたりのスループット設定は変更できませんでした。そのため、スループット不足に感じた場合は以下の 2 通りの方法で対応していました。
- FSx for Lustre ファイルシステムを新規に作り直す
- FSx for Lustre のストレージ容量を増やすことで、ファイルシステム全体のスループットを底上げする
ただし、ストレージ容量を増やすことができても、減らすことはできません。増やした分のストレージコストは今後継続して発生します。スループット性能が一時的に必要な場面では不都合な仕様でした。
ストレージ容量を増やすとスループット性能が上がる点については以下のブログをご参照ください。
今回のアップデートでストレージ単位あたりのスループット設定値を後から変更できるようになりました。これによりスループット性能が一時的に必要な場面でも気軽にスループット設定を変更し、パフォーマンスを向上できます。
スループット性能が必要充分な場合や、FSx for Lustre を未使用時は最低スループット値へ変更することで、FSx for Lustre のランニングコストを抑えられます。
制限事項
設定変更の制限事項を確認します。スループット設定変更に関するドキュメントは以下のリンクです。
Persisten SSD のみサポート
スループット設定を変更可能なストレージタイプは Persistent SSD のみとなっています。
You can modify the throughput tier of a persistent SSD-based file system by increasing or decreasing the value of the file system's throughput per unit of storage.
FSx for Lustre と S3 の連携を考えると Persistent_2 を利用するのが最近は一般的かと思います。古くから稼働している Lustre ファイルシステムでもない限りはとくに問題にはならない認識です。
設定の変更中は利用不可なタイミングあり
設定変更中(更新中)はファイルシステムを使えないタイミングが極短時間発生するとのことです。
Your file system may experience a very brief period of unavailability during the update.
連続した設定変更は 6 時間の空き時間が必要
連続した設定変更できません。最後の変更から 6 時間空ける必要があります。もしくはスループットの最適化に 6 時間以上かかった場合は、完了してから次の変更をかけることができます。
Time between increases – You can't make further throughput capacity changes on a file system until 6 hours after the last request, or until the throughput optimization process has completed, whichever time is longer.
私が検証した範囲では、スループットの設定変更完了した直後に次の設定変更を実行しても問題なく変更可能でした。スループット最適化も完了まで長くても 10 分程度でした。今現在は連続した設定変更ができるようですが、ドキュメント上はできないと明記されています。
確認してみた
検証用の FSx for Lustre ファイルシステムを作成します。スループットの初期値は 250MB/sTiB 設定で作成します。
スループットは作成後に変更可能にチェックがついています。過去にマネージメントコンソールから作成したときのキャプチャがないか探したのですが見つかりませんでした。おそらくアップデート前はここがバツマークだったと思われます。
デプロイ完了しました。スループットの値を変更できるボタンが表示されるようになっています。
スループット値を増減できるということなので下げてみます。
スループット変更中の表記に変化しました。
更新タブから確認すると保留中のステータスでした。
更新完了までの時間は約 5 分でした。
次に間を置かずしてスループット値を元に戻してみます。
6 時間間を開けなくてもすぐに元のスループットへ戻すことができました。
試しに更にスループット値を上げてみたのですが問題なく設定変更に成功しました。
250 MB/s/TiB から 500MB/s/TiB への変更はストレージの最適化のステータスから完了までの間に 10 分ほどかかりました。今回はストレージサイズ 1.2TiB 固定で検証していましたが、ストレージサイズによってはより長く時間がかかる場合もあるかもしれません。
スループット値によるランニングコストの変化
スループット設定を変更可能になったことで、FSx for Lustre ファイルシステムを利用していないときは下限値まで下げば、ランニングコストをどの程度削減できるのか気になりました。
以下の図はストレージタイプ Persistent_2 で 1.2TiB 時に 4 種類のスループット設定の 1 か月あたりの費用試算です。※執筆時点の東京リージョンの価格です。
1000 MB/s/TiB で 1 か月稼働と、使わないときは 125 MB/s/TiB まで下げるのを比較すると利用費を 8 割もお安く維持できます。
ストレージサイズは上げると下げることはできませんが、スループット値は上げ下げ自由にできるので活用できそうです。
おわりに
FSx for Lustre ファイルシステムのスループット設定を構築後でも変更できるようになりました。設定値を上げ下げできる点が魅力的ですね。Lustre ならでは性能を発揮させようとすると利用費が高くなりがちでしたが、コスト最適化手段として有用なアップデートでした。