
非エンジニアがAIで21名チームの約14,700時間の業務を入社から3ヶ月で可視化するまで(全5回:第3回)
全5回の連載内容について
このプロジェクトは以下の順で報告しております。
今回は第3回となります。第1回・第2回もよければ以下のリンク先よりご覧ください。
| 回 | 内容 |
|---|---|
| 第1回 | 入社から「悪循環」の発見まで |
| 第2回 | 可視化の土台「タスクマスター」 — タスク×工程×バリアントの設計思想 |
| 第3回 | *今回* 5つのデータソースを統合する基盤設計と実装 — 既存運用をデータ源に変える |
| 第4回 | 約14,700時間の可視化結果による事実とAIとともに策定した40課題の解決策 |
| 第5回 | 再現性の検証 — この手法はどこまで転用できるか |
前回は、全業務を「タスク種別×工程×バリアント」で定義した計測基盤「タスクマスター」(248タスク)の設計思想を報告しました。
今回は、そのタスクマスターを使って実際のデータを収集するための「5つのデータソース統合基盤」の設計と実装を報告します。
第3回:5つのデータソースを統合する基盤設計と実装 — 既存運用をデータ源に変える
第2回で設計したタスクマスターを土台に、5つの既存データソースを統合し、毎朝自動で全業務データが更新される基盤を構築しました。設計の前提は一貫して「現場への追加入力ゼロ」です。
さらに、統合データの集計結果をダッシュボードで可視化し、GAS(Google Apps Script:Googleが提供する自動化ツール)で自動要約した分析サマリーをAIに投入して真因分析・解決策策定まで行える一気通貫のパイプラインとして設計しました。
本記事では、なぜ複数のデータソースが必要だったのか、どう統合したのか、そしてAIをどう活用したのかを報告します。
なぜ1つのデータソースでは足りなかったのか
当初、チケット管理ツールの記録だけで全業務を可視化できないかを検討しました。
しかし、チケット管理ツールだけでは2つの領域が計測できないことが課題でした。
- MTG・研修・定型業務
チケットとして起票されないが、業務時間の相当な割合を占める - 計測困難な業務
Slack上の確認対応や口頭での問い合わせ対応など、どのツールにも記録が残らないが毎日一定時間を消費する
全業務を網羅するには、チームが日常的に使っている複数のツール・運用をデータ源にする必要がありました。
5つのデータソースの設計
調査の結果、以下の5つのデータソースで業務をカバーできることを確認しました。
いずれもチームがすでに使っている運用から取得するデータであり、メンバーへの追加入力は発生しません。
| データソース | 既存運用 | 取得できるデータ |
|---|---|---|
| チケット管理ツール | チームがすでにチケットでタスクを管理 | タスク種別・工程・作業者・ステータス変化のタイムスタンプ |
| カレンダー | メンバーが予定をカレンダーに登録 | MTG・研修・定型作業の予定時間 |
| 業務時間管理(2種) | 作業時間をツールで管理 | 各種タスク・作業者の作業時間 |
| 固定値マスタ | 計測困難な定型業務の標準時間を手動設定 | 計測外業務の推計時間(Slack対応・確認業務など) |
カレンダーデータの抽出ルール設計
5つの中で、カレンダーの処理が最も複雑でした。
メンバーのカレンダーにはMTGだけでなく、定型業務・業務レクチャーの時間・業務改善作業、さらには休憩・退勤・中抜けといった非業務イベントも登録されています。
これらを一律に取得すると、業務時間が過大に計測されます。
そこで、イベント名のパターンマッチングによる抽出・除外ルールを設計しました。
除外対象(休憩・退勤など)の判定、イベント名からタスクマスターへの自動紐づけ、Meet設定・参加ステータス・参加者数による条件分岐を組み合わせ、最終的に100件以上のルールを定義しました。
統合の仕組み
5つのデータソースはそれぞれ形式が異なります。チケット管理ツールはステータス変化のタイムスタンプ、カレンダーはイベントの開始・終了時刻、クラウド管理ツールは作業完了日時と対応時間——データの粒度も構造もバラバラです。
取得できる粒度にも違いがあります。
チケット管理ツールはステータスとラベルの変化から工程単位での時間を算出できます。
一方、カレンダーやその他のデータソースは業務の性質上、工程レベルの分解は行わず、担当者ごとの所要時間としてタスク単位で把握しています。
これらをGASで各ソースごとに処理し、「誰が・いつ・何のタスクを・何分実施したか」の統一形式に変換して1つの統合データシートに集約しました。
集約時にタスクマスターと照合することで、各記録にタスク種別が自動で付与されます。
例外データの自動検知
データの信頼性を担保するため、例外データを自動検知してログに記録する仕組みも組み込みました。
作業時間が極端に長いデータ、統計的に通常と大きく乖離するデータ、タスクマスターに該当タスクが見つからないデータを自動で検知・記録します。
異常値が集計結果を歪めることを防ぎつつ、タスクマスターの更新漏れや運用上の問題も早期に発見できます。
定時処理スケジュール:毎朝自動で全データ更新
データ収集から集計までを完全に自動化するため、以下のスケジュールで定時処理を設定しました。
| 時刻 | 処理内容 |
|---|---|
| 毎朝 07:00 | チケット管理ツールのデータ取得・アーカイブ |
| 毎朝 08:00 | チケット管理ツールのデータを統合データシートに変換 |
| 毎朝 08:15 | 他4ソースを統合データシートに変換 |
| 毎朝 09:00 | 統合データシートを集計して分析用シートに出力 |
毎朝09:00時点で、前日までの全業務データが自動更新されます。
データ収集・加工・集計に人手は一切かかりません。
データ収集から分析までの一気通貫設計
この基盤は「可視化して終わり」ではなく、データ収集→加工→可視化→分析→課題解決までを一気通貫で実行できる設計にしました。

毎朝の定時処理で更新された分析用シートはLooker Studioに自動連携されます。
さらに、統合データの集計結果をGASで自動要約する分析サマリー機能を構築しました。
この分析サマリーをAIに投入することで、タスク別・担当者別・ユニット別の傾向分析、属人化リスクの検出、業務量の偏りの特定といった真因分析を実行できます。
可視化基盤とAI分析が接続されたことで、データに基づく課題発見と解決策策定が可能になりました。
この分析結果の詳細は第4回で報告します。
AI活用:実装計画の策定からダッシュボード構築まで
この基盤の設計・実装は全工程でAIを活用して進めました。
① 実装計画の策定
最も大きなAI活用は、システム全体の実装計画の策定です。
「5つのデータソースを統合し、毎日自動で分析ビューを生成したい」という要件をAIに伝え、データの流れ・処理の順序・シート構成・例外処理の方針を含む実装計画を共同で策定しました。
頭の中のイメージをAIが言語化・具体化し、不備のチェックと修正を繰り返すサイクルにより、実装計画を約1日半で完成させることができました。
② カレンダー抽出ルールの設計
カレンダーの生データはそのままでは業務計測に使える状態ではありませんでした。
MTG・定型業務・休憩・プライベート予定が混在しており、どれが計測対象かを判別する情報が整理されていなかったためです。
そこで、AIにGASを生成させ、各イベントのMeet設定の有無・参加ステータス・イベント名・参加者数といった判別に必要な情報を一括で構造化しました。
その構造化されたデータを私が目視で確認し、計測対象と除外対象を仕分けしました。
仕分け結果をリーダーに確認した上で、イベント名パターンとタスクマスターの紐づけ条件をAIと相談しながら定義し、最終的な判定ロジックを構築しました。
③ GASコードの生成と検証
各データソースの取得・変換・書き込み・例外検知のロジックをAIに生成させました。
①の実装計画でデータの流れ・処理の順序・シート構成・例外処理の方針が明確になっていたからこそ、AIに対して「何を・どの順序で・どう処理するか」を正確に指示でき、結果として3,000行超のGASコードを生成することができました。
AIが生成したコードは実データで検証し、チームリーダーとともに精度を確認するサイクルで実装を進めました。
④ ダッシュボードの構築
集計結果の可視化にはGoogle提供の無料BIツール「Looker Studio」を使用しました。
使用経験がない状態から、画面のスクリーンショットをAIに貼り付け「どこにデータを入れるのか」といった初学者レベルの質問から始めました。
「このデータをどのグラフで表現すべきか」「フィルタの設定方法」「データソースの接続手順」といった操作をAIと相談しながら進め、タスク別業務量推移・担当者別負荷・難易度別業務割合など17ページ以上のダッシュボードを構築しました。

第3回 まとめ
- チケット管理ツールだけでは計測できない業務領域をカバーするため、5つの既存データソースを統合
- カレンダーデータは100件以上の抽出・除外ルールを設計し、AIによるデータ構造化→目視仕分け→リーダー確認のサイクルで構築
- データ収集→加工→可視化→分析サマリー→AI真因分析までの一気通貫パイプラインとして設計
- AIとの共同で実装計画を約1日半で策定し、3,000行超のGASコード生成からダッシュボード構築まで、全工程をAI活用で実現
次回は、この基盤で収集した9ヶ月・約14,700時間のデータから何が見えたのか、そしてAIとともに策定した40課題の解決策について報告します。
| 回 | 内容 |
|---|---|
| 第4回 | 約14,700時間の可視化結果による事実とAIとともに策定した40課題の解決策 |
| 第5回 | 再現性の検証 — この手法はどこまで転用できるか |
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