根本原因分析について考える〜テンプレスカウトの乱れ打ちが導く閑古鳥の未来

根本原因分析について考える〜テンプレスカウトの乱れ打ちが導く閑古鳥の未来

Clock Icon2022.01.05

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こんにちわ。従業員体験( EX )  の向上がミッションのエンジニアリング統括室に所属しているてぃーびーです。

組織内では様々な問題が発生します。単純な問題の場合は、単発の問題を解決する施策を実施すれば済みます。一方、複数の原因と結果が時間の経過とともに絡み合った問題の場合、表面的な問題だけに対処していても、問題は継続して発生し続けてしまいます。そのため、根本的な原因を発見し、対応をする必要があります。

そこで、根本原因の分析方法症状・根本原因それぞれへの対応、根本原因分析力を上げる方法についてまとめます。

根本原因対応(真因対応)と対症療法

問題が発生する根本的な原因に対する対応を根本原因対応と呼びます。真因対応と呼ばれる場合もあります。根本的な原因の影響で発生する症状に対応することを対症療法と呼びます。組織に根ざす問題には根本原因対応が必要なものが多くあります。

根本原因の分析方法

根本原因分析には様々な手法があります。代表例として3つほど紹介します。

Root Cause Analysis Tree

Root Cause Analysis Tree は木構造で症状から原因を遡っていく分析手法です。

 

Ishikawa Diagram

Ishikawa Diagram(特性要因図)は特性と要因を魚の骨のような見た目で線でつないでいく分析手法です。その見た目からフィッシュボーン図とも呼ばれます。

System Thinking

※システム思考のループ図の記法とは異なりますが説明のために簡略化しています

System Thinking(システム思考)は複数の要素の関わりをシステムとして捉える手法です。複数の要素の関連や時系列の中でどのようなパターンを形成しているのかに着目し、根本的な原因を見つけるのに役立ちます。

根本原因分析の例 / テンプレスカウトの乱れ打ちが導く閑古鳥の未来

昨今困難とされる「ソフトウェアエンジニアの採用におけるスカウトの苦戦」を例にとってみます。

採用競争の激しさにより候補者さんからポジティブに認識されていないとスカウトの返信を得にくい前提があります。優秀な候補者さんほど、各企業から個別にカスタマイズされた魅力的なスカウト文での声がけを多くもらっているので、当然の反応と言えるでしょう。 そんな中でテンプレメールを大量にばらまけば、「適当な採用をしている会社」という認識をされ、返信を得られないどころかマイナスの認知を強化することになります。ソフトウェアエンジニアは所属企業以外に、勉強会等コミュニティでつながっていることも多いため、噂が広まりやすい前提があります。

知られることやポジティブな関心を寄せてもらうことなしにテンプレスカウトを繰り返せば、スカウト対象はどんどん枯渇します。そのため、この状況のまま有望な候補者へのスカウトをし続けた場合、スカウトできる対象がどんどん減り、採用の成功確率がみるみる下がっていくことになります。

この問題を解消するためには、候補者さんが何を求めているかをしっかり確認した上で、自社が持つ魅力によって候補者さんが職場に求める要素を満たすことができることを伝えるようなカスタマイズされたスカウト文を送る必要があります。また、スカウト文以前に「よく見かけるいい感じのあの企業」と認識されていなければ、スカウト文を読んでもらうことすらできない可能性もあります。そのため事前の採用広報が重要になります。さらにいうなら、採用広報で伝えている組織の魅力が真実である必要があるため、よい組織を作っている必要があります。

症状・根本原因それぞれへの対応

意図的な根本原因への対応見送り

根本原因の存在がわかっているが、解決に向けた人・時間・資金などのリソース不足を理由に解決を見送る場合もあります。この場合に注意が必要なのは、見送った経緯を知らない人が「なぜこの重要な問題を放置しているのだ」と思ってしまうケースです。こういった際に、意思決定の記録である ODDR が役立つでしょう。

組織開発の意思決定透明化のために ODDR を試すことにしました

必要な応急処置

根本的な原因があることがわかっているが、解決に時間がかかる場合、症状を放置しておくわけにはいかないなら応急処置をすることになります。

布石としての応急処置

本当は最初から根本的な原因の解決をしたいが、根本的な原因の解決は複雑で時間もかかるケースが多いため、関係者にその必要性を理解してもらい、継続した協力を取り付ける必要があります。直ぐに結果がでるかどうかわからない、本当に信じられるかどうかわからない対象に長期的に協力してもらうためには信頼貯金が必要です。まずは対症療法でわかりやすく発生している問題を素早く解決することで、信頼貯金をため、それから根本原因に取組むほうが好ましいケースもあるでしょう。 逆にいうと、現時点での根本原因が「信頼貯金が不足しているため重要な問題の解決への協力が得られない」であると考えれば、実はこの対症療法は対症療法ではなく、根本原因対応だと考えることもできそうです。信頼貯金が貯まり、協力が得られるようになったら次こそ真因と言える根本原因に着手できることになります。 もちろん、信頼を貯めずとも論理で説得が可能な環境もあるでしょうから、コンテキスト次第です。

根本原因分析力を上げるためにできること

根本原因の手法を紹介しましたが、手法を知っていれば誰でも簡単に分析できるとは限りません。以下のような方法で継続的に分析力を高める必要があります。

問題への理解・視点・意識を持つこと

問題には「浅く症状への対処がすぐ根本原因にたどり着くもの」と「複雑に絡み合い根本原因を解決しないと表面的な問題が継続して再発してしまうようなもの」があるという理解が必要です。そのうえで、そういった複雑な問題が潜む可能性があるという視点が必要で、さらにその視点を必要なタイミングで意識できる必要があります。 この視点、意識を身につける方法としては、個人やチームでのふりかえりが有用です。

対象領域に詳しくなること

複雑な問題の根本原因に至るには、その対象領域に対する深い知識が必要です。ここでの知識は単に表面上の知識だけではなく、知識を持ちつつ実際に体験をし、その体験を経験として自分に蓄えられているかどうか、までを含むものです。血肉となった知識、といえます。システムの障害対応時に熟練の開発者が瞬時に根本原因を見抜くケースがあります。これは血肉となった知識に対するパターンマッチが脳内で瞬時に行われた結果でしょう。

こういった知識を深める方法としては、対象領域に対するインプットと、体験を通してそれを経験知に転換する事が必要です。なにかを体験した際に、その内容に関して経験学習のプロセスを回しておくと血肉にしやすいでしょう。

推測だけではなく、事実を集めること

複雑な問題の原因を探るにはヒントが必要です。質の高い推測には事実が必要です。必ずしも十分な事実が集まるとは限りませんが、とはいえ本来集めることができるはずの事実を集めないまま推測だけをしているケースもありがちです。まずは事実を集めましょう。

原因と結果、時系列の変化に関して考える経験を積むこと

複雑な問題の原因を探る際に、原因と結果のつながりを確認することが必要になります。 Root Cause Analysis Tree などを用いつつ、因果関係を可視化する経験を積みましょう。前述した事実を収集しておくことで、可視化が容易になります。 また、原因と結果には時間の推移があります。パターンを持った複雑な問題は時間の経過とともに継続して悪化の道をたどったり、一見改善したように見えても、一定周期で再度悪化する場合があります。そういった時系列の変化をシステム思考のループ図等でまとめる経験を積むとよいでしょう。

原因分析に長けた人の背中を見せてもらうこと

ここまで出た要素を理屈でわかっても、自分一人ではなかなかピンとこないかもしれません。原因分析に長けた人が問題を解決する場に同席し、その背中を見せてもらうとよいでしょう。この際に、考えたことを声に出しつつ問題に取り組んでもらうと、どのようなことを考えながら問題を解決しているかがわかります。達人の脳内を可視化してもらいましょう。ユーザーリサーチなどで用いられる思考発話法っぽいですね。

まとめ

複雑な問題に潜む根本原因の分析方法や、分析力の磨き方についてまとめました。ジュニアな期間においては依頼された作業を着実に遂行することの割合が多くなりがちです。そこから一歩踏み出し、自ら問題を発見し解決していくフェーズに入ると仕事の大半は問題解決になります。根本原因の解決はテコのように大きな価値を生み出します。テコを使っていきましょう。

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