ChatGPTと作ったユーザーストーリーマッピングが結構使えるかも
こんにちは。デザイナーのスギヤマです。CX事業本部に所属し、普段はモバイルアプリケーションやLINEアプリケーションの開発に従事しております。
今回はテストとして、ChatGPTを利用しユーザーストーリーマッピングを作成することを試みました。
通常、このようなユーザー体験に関する制作物はプロジェクトメンバー全員が顔を合わせて作業を行う必要があります。しかし、現実には製作時間が極端に限られていたり、メンバー全員が揃わない中で準備をする必要があるケースも存在し、様々な方法を模索することも重要だと考えました。
そこで、過去にデザイナーチームが行った勉強会のデータを活用し、ChatGPTを利用してテストをしてみることにしました。
ユーザーストーリーマッピングの製作手順おさらい
①ユーザーの目標を洗い出す
ユーザーがプロダクトを使用する目的や目標を明確化する。
②エピックストーリー(バックボーンとシーン)を定義する
大まかな機能や機能グループを定義する簡潔な文を作成する。
③ステップストーリー(タスク)を定義する
エピックストーリーを実現するために必要なタスクや機能を定義する簡潔な文を作成する。
④ユーザーストーリーマップを作成する
エピックストーリーやステップストーリーを時系列に並べ、ユーザーのフローを表現する。必要に応じて優先順位を確認する。
ChatGPTに共有する内容について
デザイナー勉強会の第5回で行ったペットケアサービスを想定したユーザーストーリーマッピングを作成します。またChatGPTの結果(緑色)と実際に行われたワークショップの結果(茶色)を照らし合わせ、比較してみます。
①ユーザーの目標を洗い出す
ユーザー像の定義をする
ユーザー像はインタビュー記録を元にした人物(ペルソナ)を使用します。
image by : AI人物素材(ベータ版)
ユーザー像 シンゴさん: シンゴは45歳のフリーランスのTVプロデューサーで、妻のマイコと2人の子供(高校生と中学生)と一緒に神奈川県藤沢市に住んでいます。一家は最近、ココアという名のゴールデンレトリバーの子犬を迎え入れました。 一家は子供たちの部活動遠征のために定期的に旅行に出かけ、シンゴは撮影の際に長時間移動することが多いです。シンゴは、家族が留守にしている間や忙しい時に、子犬のココアの面倒を見てくれる人を探したいと思っています。 シンゴさんが一番心配しているのは、自分の家に来て子犬の世話をしてくれる見知らぬ人を信用することです。シンゴさんは、子犬の適切な世話の仕方を知っていて、ココアを散歩やドッグパークに連れて行ける人を雇うのが一番安心だと考えています。
あらかじめ用意していた上記の文章を
あなたはプロの編集者です。以下の文章を、ユーザープロフィール表の形に要約、成形してください。文章のニュアンスは可能な限り残してください。
上記の指示でプロフィールを要約し、
シンゴさんの性格はどんなものでしょうか。類推してください。
上記の指示で、性格を類推してもらいました。これにより、ユーザーがより立体的になりました。
ChatGPTが成形・深堀りしたユーザー像
- 名前: シンゴ
- 年齢: 45歳
- 職業: フリーランスのTVプロデューサー
- 住所: 神奈川県藤沢市
- 家族: 妻のマイコ、高校生と中学生の2人の子供
- ペット:ゴールデンレトリバーの子犬ココア
- 要望: 子犬のココアの面倒を見てくれる人を探している。家族が留守にしている間や忙しい時に、子犬の世話をしてくれる人を探したい。シンゴが一番心配しているのは、自分の家に来て子犬の世話をしてくれる見知らぬ人を信用すること。ココアを散歩やドッグパークに連れて行ける人を雇うのが一番安心だと考えている。
- 性格: シンゴさんは繊細で注意深く、家族やペットの安全や幸福を最優先に考える傾向があるようです。仕事で長時間移動することが多いため、スケジュールをうまく調整して家族とペットの世話を行うために努力するタイプの人物かもしれません。子犬のココアの世話に関しても、慎重に考えて信頼できるドッグウォーカーを選びたいと思っていることから、責任感が強く周りへの信頼も大切にする人物だと思われます。
ペルソナの作成についてはこちらの記事も御覧ください
参考:ChatGPTにペルソナを作ってもらったら完成度が高かった
ユーザーの課題を探す
# 指示令
あなたはプロのUXデザイナーです。今度ペットの出張ケアサービスをリリースします。以下のユーザーが現在抱えている問題について箇条書きにしてください。またどんな課題をかかえているでしょうか。類推してください。
ChatGPTの回答
- 自宅に見知らぬ人を入れる不安
- 子犬の適切な世話と信頼できる人を探す必要性
- 長時間の移動や忙しい時に子犬の世話が必要
- 部活動遠征時のペット預け先探し
- 長時間の撮影で子犬が一人になることへの懸念
- 成長に伴い必要になるトレーニングや社会化のサポート
実際のワークショップで出された回答
- 知らない人に犬を預けるのは心配
- 旅行中の世話どうする問題、もしくは連れてくと制限が発生する問題
- 周りに犬を預けるのは申し訳なくて気が引ける
- 旅行に行きたいけど犬の世話を頼めない
- お金をそこまでかけられない
概ね同じような課題が出された印象です。「成長に伴い必要になるトレーニングや社会化のサポート」の視点はワークショップでは出てこなかった意見でした。
ユーザーがサービスに出会う経路
シンゴさんはどんな経路でこのサービスにたどり着いたのか考えてください
ChatGPTの回答
- インターネット検索エンジンでペットの出張ケアサービスを検索する。
- ソーシャルメディアのペット関連グループで、口コミや評判を調べる。
- 友人や家族からの口コミで情報を得る。
- ペットショップや動物病院などで、チラシやパンフレットなどの宣伝物を見て情報を得る。
実際のワークショップで出された回答
- Web(・SNS・Webサイト・app検索)
- 店舗(・ペットショップ・動物病院)
- 人から直接・ドッグコミュニティ・娘や息子(若い人)の口コミ・ドッグコミュニティ
ChatGPTの結果と実際のワークショップで出された回答にそこまで開きはありませんが、「インターネット検索エンジン」などの大きな単語のくくりであることが気になりました。実際に使用する場合は、この「検索エンジン」が具体的にどういったものなのか、調査する必要があるかもしれません。
競合について調べる
このサービスの競合について上げてください
ChatGPTの回答
- ペットホテルやペットシッターのサービス:ペットを預かることができるサービスで、犬や猫の宿泊、散歩、餌やりなどを行っています。
- ペット保険:ペットの健康に関する問題に対応するサービスで、獣医師の診療費用や治療費用を補償しています
- ペットフードの配送サービス:ペットフードやおやつを定期的に配送してくれるサービスで、飼い主の負担を軽減しています。
- ペットトレーニングサービス:ペットのしつけやトレーニングを行ってくれるサービスで、飼い主の手助けをしています。
- ペット用品の通販サービス:ペット用品を通販で販売しているサービスで、飼い主の負担を軽減しています。
実際のワークショップで出された回答
具体的なサービス名となりますのでモザイクを掛けていますが、ワークショップではより詳細な意見が交換されました。
ワークショップの意見に比べると、ChatGPTからは一般的で中庸的な回答が返ってきました。したがって出された回答をそのまま使うのではなく、この回答を元に具体的な競合相手を調べる必要がありそうです。また、競合サービスの概要文を入力してその情報を精査することで、比較や検討がしやすくなるという使い方もできそうです。
②エピックストーリー(バックボーンとシーン)を定義する
シンゴさんのユーザー層を元に、実際にサービスを利用した際のストーリーを作ってみます。
バックボーン(大きな流れ)は、以下の4つとします。
- アプリを知る前
- アプリを知ってからサービス利用に至るまで
- サービス利用中
- サービス利用後
# 指示令
あなたはプロのUXデザイナーです。ペットの出張ケアアプリサービスをリリースします。以下のユーザーの行動について、バックボーンに従いながらストーリーを作成してください。
#成約条件
・主語は全てシンゴさんにする
・全て動詞で終わらせる
・バックボーンごとに作成する
・箇条書きにする
#バックボーンの流れ
・アプリを知る
・サービスを利用し始める
・サービスを利用中
・サービス利用後
#ユーザーの詳細
名前: シンゴ
年齢: 45歳
職業: フリーランスのTVプロデューサー
住所: 神奈川県藤沢市
家族: 妻のマイコ、高校生と中学生の2人の子供
ペット:ゴールデンレトリバーの子犬ココア
要望:子犬のココアの面倒を見てくれる人を探している。家族が留守にしている間や忙しい時に、子犬の世話をしてくれる人を探したい。シンゴが一番心配しているのは、自分の家に来て子犬の世話をしてくれる見知らぬ人を信用すること。ココアを散歩やドッグパークに連れて行ける人を雇うのが一番安心だと考えている。
性格:シンゴさんは繊細で注意深く、家族やペットの安全や幸福を最優先に考える傾向があるようです。仕事で長時間移動することが多いため、スケジュールをうまく調整して家族とペットの世話を行うために努力するタイプの人物かもしれません。子犬のココアの世話に関しても、慎重に考えて信頼できるドッグウォーカーを選びたいと思っていることから、責任感が強く周りへの信頼も大切にする人物だと思われます。
ChatGPTの回答
なかなか良いのではないでしょうか。ではこの項目をエピックストーリー(シーン)とします。
③ステップストーリー(タスク)を定義する
では次に
・アプリを開き、会員登録をします。
この行動を達成するためにシンゴさんが使用するであろうアプリの機能を箇条書きで書いてください。
②で出た「シーン」をコピーペーストし、タスクを書き出してもらいます。
ChatGPTの回答
- アプリを開く
- 新規アカウント作成機能を使ってアカウントを作成する
- 氏名やメールアドレス、パスワードなどの個人情報を入力する
- ペットのプロフィールを登録する(犬種、性別、年齢、体重、性格、特徴など)
- プロフィール画像をアップロードする(もしあれば)
- サービス利用規約やプライバシーポリシーに同意する
- 登録情報を確認して、アカウントを作成する
細かく出してもらいました。この形で各シーンごとに指示を繰り返していきます。
このように「機能は必要ありません」と返されることもあります。
④ユーザーストーリーマップを作成する
シーンやタスクを付箋に起こし、優先順位付けをおこなってみました。
完成したマップがこちらになります。
・ペットのプロフィールを登録する(犬種、性別、年齢、体重、性格、特徴など)
といった回答は「犬の種類」「犬の性別」など機能として分解しながら付箋に記載をしています。
ChatGPTの回答
こちらから拡大して見ることができます
実際のワークショップで出された回答
こちらから拡大して見ることができます
全体の流れはほとんど変わりませんでした。新規会員登録のフェーズでの入力情報や、シッターとのメッセージのやり取り、チェックリストなど、基本的なフローは同じでした。主な機能を見る限り、大きな違いはありませんでした。
しかし、ワークショップでは、ペットにGoProを取り付けて散歩するなど、細かいアイデアが提案されました。これらのアイデアは、人間の発想力と独自性を反映していると言えそうです。
KeepとProblemとTry
Keep / 継続できそうなこと
- 数秒から数分でタスクが出てくるのは本当に素晴らしい。
- 従来の人力のワークショップでは出てこなかった意見も出てきました。
- このツールをたたき台として使い、アイデアを広げることができると思います。
- ストーリーを作るための第一歩として、優れています。
Problem / 課題になりそうなこと
- 「名前、メールアドレス、住所などの必要事項を入力する」といったざっくりとした情報が提供されることがあるため、人間が精査する必要があります。
- タスクが重複することもあるため、必要に応じて人間が対処する必要があります。
- 基本的に中庸な回答を提供するため、実際のユーザーの情報に即した分析が必須です。
Try / やってみたいこと
- 今回は「ユーザーの行動を書いてください」と指示するだけに留めましたが、一度出た回答を参考に、修正された行動をChatGPTに返すこともできそうです(たとえば、「後払いのフローから前払いのフローに変更し、再度作成するよう指示する」など)。その後、ChatGPTが返した答えをより精査して、より高品質な回答にしていくことができるかもしれません。
- 個人開発など、一人でサービスと向き合う必要がある場合などには、ChatGPTを良き相談相手として活用することもできそうです。
さいごに
ChatGPTを使ってユーザーストーリーマッピングを作成することは可能でした。ただし、作成したマップに対してどのように価値を見出すかについては、まだ人間の手が必要とされていると感じました。ユーザーのニーズを念頭に置きつつ、現実的な開発要件を考慮しながら、製品の価値を高めるためのアイデアを引き続き模索していきたいと考えています。
(この記事の文章のほとんどは、ChatGPTに出力してもらいました。)