サーベイの結果データを元に分析レポートの作成や組織課題の相談ができる Gemini の Gem を作成した話
こんにちは。組織開発室に所属し、組織開発を担当しているてぃーびーです。
クラスメソッドでは、2023年1月から従業員エンゲージメントパルスサーベイを実施しています。パルスサーベイは、組織課題を解決し、従業員のエンゲージメントを向上させることで、パフォーマンスの向上につなげることを目的に実施しています。
現在クラスメソッドにおけるパルスサーベイの運用は以下のような形で自動化されています。

今回は、スプレッドシートやGoogleドキュメントの結果レポートを元に、結果を更に掘り下げるために Gemini の Gem による分析ツールを作成しました。

構成
サーベイ結果を分析する Gem は以下のような構成で作成しました。
- 制御用プロンプト
- ソース情報
- パルスサーベイの基本情報
- パルスサーベイの設問情報
- パルスサーベイの各設問の解説および施策例
- パルスサーベイに関するパターンカタログ
- パルスサーベイに関する各部門のノウハウ集
- マネージャー向けのサーベイ結果の活用方法に関する資料
機能
サーベイ結果を活用するために、以下の機能を用意しました。
- 分析レポートの作成機能
- 組織課題の相談機能
1. 分析レポートの作成機能
サーベイのスコアを元に分析レポートを作成します。冒頭のサーベイの運用図にあったスプレッドシートの集計結果や Google ドキュメントの報告資料を添付しつつ、分析レポートの指示をすることで対象部門の結果に対する分析レポートを作成できます。
まず、以下の項目をまとめるようにしています。
- 対象部門の全体平均スコアと前回比
- エンゲージメント区分(高・中・低)の比率
- スコアが特に低い下位3項目
- アラート情報
※エンゲージメント区分はエンゲージメントの高さを3分類したものです
次にスコアが低い項目やアラートに対し、知識ソース(「問題の傾向ごとの施策例」、「パターンカタログ」)から最適な施策を選定させています。
- 例:設問7(心理的安全性)が低い場合 → 1on1の質・量の見直しやコーチングの活用
- 例:設問10(成長実感)が低い場合 → キャリアラダーの活用や経験機会の提供
最終的に所定のフォーマットで Canvas に結果を出力するようにしています。
Canvas の出力は Google ドキュメントとしてエクスポート可能です。
2. 組織課題の相談機能
サーベイ結果に対する相談に乗ってくれる機能です。
以下のようなプロンプトにしてあります。
指示: 「相談」というキーワード、あるいは具体的な質問(例:「部下が疲弊しているようだ」「1on1で何を話せばいい?」)が入力された場合は、以下の指針で回答してください。
1. 傾聴と確認: ユーザーの状況をヒアリングし、背景にある事実(When, Where, Who, What, How)を確認してください。
2. 知識の参照: 「エンゲージメント向上のノウハウ集」 や「テキストフィードバックの活用ガイドライン」 を参照し、過去の社内事例や推奨される手順を提示してください。
3. 具体的提案: 抽象論ではなく、「SBI法でのフィードバック」 や「ピザ2枚ルール」 など、具体的なフレームワークや行動指針を提案してください。
ポイント
- 汎用的なサーベイへの対策だけではなく、自社におけるサーベイの資料をソース情報に指定してあるため、自社のサーベイの前提に沿った分析が可能になっている
- 継続的なサーベイ活用の中で得た解決のノウハウや、元々各部が独自に取り組んできた組織づくりのノウハウを文書化することで、解決策の例として提示できる
- 組織課題に継続的に取り組んで学んだ典型的なパターンをパターンカタログとして文書化することで、解決策の例として提示できる
特に2と3の部分は各部のノウハウやそれを元にした組織課題の解決パターンが増え、文書を更新するとこの分析ツールの情報源も増えるため、組織課題に取り組み、言語化するほど分析ツールを通した問題の整理や解決策の提案の質が上がっていきます。
サンプル
相談のやりとりについて紹介します。
入力
相談
入力
パルスナビです。
組織開発アドバイザーとして、パルスサーベイの結果に基づいた状況の整理や、改善に向けた具体的なアクションの検討をサポートします。
ご相談ですね。まずは状況を詳しく伺いたいと思います。
現在、どのような課題感をお持ちでしょうか?
例えば、「特定の設問スコア(Q7など)が急落した」「部下の疲弊が心配」「1on1での具体的な話し方を知りたい」など、気になっていることを教えてください。
背景にある事実(いつからか、どの程度の規模のチームか、どのような行動が見られるか等)を教えていただければ、社内ナレッジである「エンゲージメント向上のノウハウ集」や「パターンカタログ」から、最適な解決策を提案いたします 。
どのようにお手伝いいたしましょうか?
入力
> 現在、どのような課題感をお持ちでしょうか?
期待値の把握の設問スコアが急落しました。前回のサーベイでは 4.0 だったのですが、今回は 3.2 になっていました。
ちょうどチームの方針、目標を新しくしたところです。
出力
Q1「期待の把握」のスコアが 4.0(高い)から 3.2(要注意)へ急落したとのこと、マネージャーとしては非常に驚かれたこととお察しします。
ちょうど方針や目標を新しくされたタイミングとのことですので、「新しい方針と、個人の具体的な役割の紐付け」に迷いが生じている可能性が高いです。
組織開発アドバイザーとして、社内ナレッジに基づいた分析と対策を提案します。
---
## 1. 現状の診断
* スコアの評価: 3.2 は、クラスメソッドの基準において「要注意」の入り口です。
* 急落の背景: 4.0(良好)から 3.2 への低下は、「以前はわかっていたことが、方針変更によってわからなくなった」という、新体制への移行期特有の「期待値の再構築不全」が起きています。
## 2. 推測される「問題の傾向」
「問題の傾向ごとの施策例」に照らすと、以下のいずれか、あるいは複数が起きていると考えられます。
* 傾向1:組織のビジョン・ミッションが伝わっていない
* 方針は発表されたが、なぜその方針なのか、背景や目的が腹落ちしていない。
* 傾向2:期待される責務・業務が伝わっていない
* 方針はわかったが、「結局、明日から私の仕事はどう変わるのか?」が不明確。
* 傾向4:成果の水準が伝わっていない
* 新しい目標に対して、どの程度のパフォーマンスを出せば「達成(評価)」と言えるのか、基準が不透明になった。
## 3. 具体的な改善策の提案
まずは、メンバーが何に戸惑っているのか「事実」を確認する必要があります。その上で、以下の施策を検討してください。
### ① ロールセッションの実施(推奨)
個人の責務について認識合わせを行う手法です。
> 施策例: 「プロジェクトアサイン者との期待値を揃えてみよう!ロールセッション」を参考に、1on1で以下をすり合わせてください。
> * マネージャーが期待していること(成果の質・量)
> * 本人が「自分の役割」だと思っていること
> * 新しい方針の中で、本人が「やらないこと(捨てていいこと)」の明確化
### ② 方針の「背景」を語り直す
「クラウド事業本部 大方針」の例のように、決定事項だけでなく、その意思決定のプロセスや背景を再度共有しましょう。
> アドバイス: 方針は一度伝えただけでは浸透しません。全体会で話した内容を、1on1で「個人の言葉」に翻訳してあげる作業が必要です。
### ③ グレード基準(第1層〜第3層)との紐付け
新しい目標が、現在のグレードで求められる成果水準と乖離していないか確認してください。
> アクション: 評価基準一覧を手元に置きながら、「この新目標を達成することは、グレード○のこの要件を満たすことになる」と具体的にリンクさせて伝えます。
---
## マネージャーへのアドバイス
方針を変えた直後は、メンバーは「今までのやり方が否定された」と感じたり、「正解がわからない不安」を感じたりしやすいものです。
まずは次の1on1で、「方針を変えたことで、自分の役割についてモヤモヤしている部分はないかな?」と、オープンに(WhyではなくHowで)問いかけてみることから始めてみてはいかがでしょうか。
プロンプトで利用しているテクニック
- Gemini の Gem のカスタム指示内で条件分岐を実現してみた | DevelopersIO
- Gemini の Gem で1手順ずつ受け答えを促す | DevelopersIO
- Gemini の Gem で質疑応答の結果を所定のフォーマットで Canvas に更新し、 Google Docs に出力する | DevelopersIO







