【書評】カスタマーサクセスは現代版三河屋の三平さん?「カスタマーサクセスとは何か~日本企業にこそ必要なこれからの顧客との付き合い方」
こんちわー、データアナリティクス事業本部プロダクト営業部プリセールススペシャリストの兼本でーす。(長い)
最近話題のカスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを知りたくて、弘子ラザヴィさんの「カスタマーサクセスとは何か」を拝読いたしましたが、サポートエンジニアだけではなく、ビジネスパーソンや経営者の方にもわかりやすい実例を交えた内容で、まさにカスタマーサクセスとは何かを知りたい方向けの良書でした。
「カスタマーサクセス」というと何やってるのか分かりにくい謎職種ですが、皆さんおなじみのサザエさんで「こんちわー、三河屋でーす。」という掛け声ともに磯野さん家の勝手口からスッと現れる三河屋の三平さんこそがカスタマーサクセスの本質だと説明されれば、よりイメージしやすいのではないでしょうか。
(三平さん、いまは世代交代してサブちゃん a.k.a 三郎さんなのですね。)
第1章 日本企業にこそカスタマーサクセスが必須である理由
第1章では、デジタル技術の革新をきっかけに起きている、従来の売り切り型モデルからリテンション(サブスクリプション)モデルへのシフトとカスタマーサクセスの「必然性」について説明をしています。
私自身、書籍(この本もKindle版を購入)、音楽、映画、ゲームなどに関しては、モノを購入するのではなくダウンロード版を購入することが多くなりましたし、レンタルビデオ屋さんに行く代わりに、サブスクリプションモデルのストリーミングサービスもいくつか利用しています。
また、携帯電話もかつては使いたい端末を基準に携帯電話キャリアを選択したものですが、現在では主要なスマートフォンは各キャリアから販売されており、携帯電話にあわせてキャリアを選択する時代ではなくなったことを身をもって体験しています。
従来の「モノ売り切りモデル」では販売することがゴールになりがちで「販売したあとの顧客満足度」はあまり重視されてこなかったのですが、サブスクリプションのような「リテンションモデル」の場合、モノを販売してから(あるいはモノを販売することなくサービスを提供してから)が勝負所で、まるで生き物のように商品やサービスの価値を最新化・最適化し続けることで顧客に対して常に新しい価値を提供し続け、その結果として、商品・サービスを使い続けてもらうことをゴールとしています。
つまり、顧客に「買いたい」という所有欲を促すのではなく、「使い続けたい」あるいは「これなしの生活には戻れない」という気持ちを持ってもらうことが重要になるわけです。
そしてそのためには、必然的にカスタマーサクセスという役割が重要になります。
第2章 カスタマーサクセスとはいったい何か
第2章では、リテンションモデルで成功するためのカギとして、カスタマーサクセスの「本質」があることを説明しています。
ここで出てくるのが三河屋の三平さんで、三平さんは製品を買ってくれたお客様(サザエさん一家)の購買状況などを把握しており、定期的に購入しているいつものアイテムが不足していれば追加で販売したり、家族構成や好みを熟知しており、新しいアイテムを適切なタイミングで提案することで、継続的かつ拡張的なビジネスを実現しています。
「カスタマーサクセス」は一見するとアメリカ発祥の新しい概念のようですが、実は昭和の商店街では普通に行われていたことで、同様の考え方や商習慣は日本にも昔からあるわけです。
さらに本章にはカスタマーサクセスを成功に導くための原則が紹介されています。 トピックだけを書き起こすと以下のようになります。
成功要因1:ライフタイムバリューの最大化
- 原則1-1 カスタマーの「成功」を正しく理解する
- 原則1-2 成功を届けられない相手には売らない覚悟と仕組みを持つ
- 原則1-3 成功を届けるまで責任を持って行動する
成功要因2:買ってもらってからが勝負
- 原則2-1 オンボーディングで「ワォ!」を素早く届ける
- 原則2-2 カスタマーがイライラする負荷をなくす
- 原則2-3 漏れなく確実に成功を届ける
成功要因3:手放せない・外せないプロダクト
- 原則3-1 プロダクトチームがカスタマーの声に触れる時間をサクセスチーム主導でつくる
- 原則3-2 カスタマーデータからサクセスチームが洞察を抽出しプロダクトチームヘ渡す
- 原則3-3 理想的なカスタマーの「人物像」と「成功への道のり」を一緒につくる
- 原則3-4 共有するゴール指標を最低ひとつ設定して進捗を定期的に確認しあう
成功要因4:データからカスタマーの未来を創る
- 原則4-1 データの統合・分析に投資する
- 原則4-2 組織全体でデータをフル活用する
成功要因5:スケーラビリティ構築力
- 原則5-1 自助・互助が促進される基盤を丁寧に育む
- 原則5-2 マーケティング機能をバージョンアップする
成功要因ごとの私のお気に入りは以下の通りです。
- 原則1-2 成功を届けられない相手には売らない覚悟と仕組みを持つ
- 原則2-1 オンボーディングで「ワォ!」を素早く届ける
- 原則3-3 理想的なカスタマーの「人物像」と「成功への道のり」を一緒につくる
- 原則4-1 データの統合・分析に投資する
- 原則5-1 自助・互助が促進される基盤を丁寧に育む
原則1-2なんかは、いきなりセンセーショナルな原則ですが、お客様の成功のために敢えて売らない覚悟を持つことは、長期的に考えるとより強い信頼関係を持つことができると私も信じています。
各トピックの詳細については、是非とも書籍を手に取って読んでみてください!
第3章 日本におけるカスタマーサクセスの現状
第3章では、国内のカスタマーサクセスの成功事例として、リクルートマーケティングパートナーズ社、メルカリ社、Sansan社の事例が紹介されていますが、各社で共通しているのは「お客様の成功のために」です。
ソフトウェアの世界ではライセンスを販売したお客様に対してカスタマーサポートサービスを提供するのが一般的ですが、カスタマーサポートはお客様からのお問い合わせに対応するのが主業務になるため、お問い合わせの来ないお客様との接点が弱くなりがちです。
また、すでに安定して動作しているバージョンを使い続けているお客様の中には、機能面のちょっとした不満や不便を感じているにも関わらず、実はその課題が新しいバージョンでは解消していることを知らないことがあったりします。
こういったお客様はだんだんとその製品から遠ざかるようになり、気が付けば契約更新のタイミングで別製品に切り替えてしまったりします。当然ながら、契約更新のタイミングに慌てても間に合いませんので、問い合わせが来ない理由や課題を定期的に確認し、一緒に悩むことで、お客様の成功の手助けをすることが、その製品のファンになっていただく近道と言えます。
まとめ
今回は「カスタマーサクセスとは何か」についてご紹介させていただきました。
ところで、私が所属しているプロダクト営業部ではAlteryx、Looker、Snowflake、Tableauなどの海外製ソフトウェア・サービスの取り扱いと、それに伴うカスタマーサポートやプロフェッショナルサービスを提供しています。
現在、さらなるお客様満足度の向上のためにカスタマーサクセスの導入を検討していますが、まだまだ私たちが提供できるカスタマーサクセスの形を模索している段階です。
もし、私たちと一緒にカスタマーサポートやプロフェッショナルサービスを提供しながら、お客さまの成功のお手伝いする新しい仲間を求めています。
興味のある方がいらっしゃいましたら一度お話ししませんか?オンラインでも参加可能な会社説明会などでお待ちしております!