なぜFAQボットを導入しても、電話の問い合わせは減らないのか 〜生成AIチャットボットで問い合わせ削減を実現する3分類の考え方〜

なぜFAQボットを導入しても、電話の問い合わせは減らないのか 〜生成AIチャットボットで問い合わせ削減を実現する3分類の考え方〜

FAQボットを導入しても電話の問い合わせが減らないのはなぜか。その理由と、問い合わせを3つに分類して最適な対応策を設計する考え方を紹介します。
2026.08.21

こんにちは。リテールアプリ共創部で事業企画を担当しているかめだです。

お客様との会話の中で、「FAQボットは導入したものの、電話の問い合わせが減らない」というお悩みをよく伺います。

ボットで解決できなかった方が、結局電話をかけてくる。しかも、少し不満を抱えた状態でです。これでは何のために導入したのか分からなくなってしまいますよね。

今回は、この状況を整理するために私が使っている「問い合わせを3つに分けて、分類ごとに打ち手を決める」という考え方を紹介したいと思います。

なぜFAQボットを導入しても電話は減らないのか

先に答えを書いてしまうと、シナリオ型のボットは「あらかじめ用意した答えの場所」まで案内することしかできないからです。

デパートの案内板で例えてみましょう。案内板は「この先に紳士服売り場があります」までは教えてくれます。ただ、「今日探しているものは紳士服売り場で合っているのか」までは教えてくれません。

案内板の前で立ち止まってしまった人は、最終的にコンシェルジュを探します。それが今の電話窓口です。

つまり、電話が減らないのはボットの出来が悪いからではなく、案内板では答えられない種類の問い合わせが電話に流れ続けているからなのです。

だとすると、やるべきことは「ボットのシナリオを増やす」ことではなく、「電話に流れている問い合わせの種類を見極める」ことになります。

まずやること: 問い合わせを3つに分けてみる

やり方はシンプルです。直近の電話・チャットの履歴を50〜100件ほど並べて、次の3つに仕分けてみてください。

A. 定型・手続き型

「営業時間は?」「住所変更のやり方は?」「返品の手順は?」のような、誰が聞いても答えが同じ問い合わせです。

B. 個別状況型

「私の注文はいつ届く?」「この会員ランクでこのクーポンは使える?」のような、その人のデータを見ないと答えられない問い合わせです。

C. 判断・相談型

「どのプランを選べばいい?」「この場合はどうすれば?」のような、状況を聞き取った上での判断が必要な問い合わせと、クレームのような感情面のケアが必要なものです。

仕分けてみると、電話に流れているのはBとCばかりで、Aはすでにボットが吸収できている、というケースが多いのではないかと思います。

分類ごとに打ち手は違う

なぜ電話は減らないのか
この3分類に対して、打ち手はそれぞれ違います。

Aはシナリオ型・FAQで十分です。 答えが一意に決まる問い合わせは、いまのボットの得意領域です。ここに生成AIを持ち込む必要はありませんし、既存のFAQ資産はそのまま活かせます。

Bが生成AI型の出番です。 会員情報や注文データと紐づけた上で、自然な言葉の質問に答える必要があります。シナリオの分岐では、この組み合わせ爆発に構造的に対応できません。逆に言うと、Bを従来型ボットで捌こうとし続ける限り、電話は減らないと考えています。

Cは最初から人に直結させます。 ここでボットに粘らせるのは逆効果です。判断や感情ケアが必要な問い合わせほど、早く・気持ちよく人につながる導線を用意するほうが、体験も現場の負荷も改善します。

「電話が減らない」の正体は、多くの場合、Bを捌く仕組みがなく、Cの導線も設計されていないことなのです。

生成AIチャットボットを検討するとき、発注側が確認したい設計項目

では、Bを任せられる生成AIチャットボットとはどういうものか。

morimorikochanが、実装の詳細を「生成AI(Claude)で作る顧客体験にこだわったLINEチャットボットの設計」にまとめています。ここでは事業企画の立場から、発注側・企画側が要件の場で確認したい項目としてまとめ直してみます。

  • 会員特定: 誰からの質問かを特定した上で答えられるか(これがないとBは捌けません)
  • 自然言語理解: 選択肢ではなく、お客様の言葉のままの質問を受け取れるか
  • 根拠のある回答: 自社のFAQ・規約・データを根拠に答え、根拠がないときは正直に「分からない」と言えるか
  • 文脈の保持: 会話の続きとして質問しても、前の文脈を踏まえて答えられるか
  • 聞き返し: 質問が曖昧なとき、決めつけずに聞き返せるか
  • 有人エスカレーション: 解決できないとき、それまでの会話の要約付きで人に引き継げるか

デモを見る機会があれば、「わざと曖昧に質問する」「会話の途中で前の話を持ち出す」「答えがないはずの質問をする」の3つを試してみてください。この3つへの振る舞いに、設計の思想が一番はっきり出ると思っています。

導入して終わりにしない: 答えられなかった会話を資産にする

もう1つ、生成AIを入れれば全部解決するとは思っていません。生成AIでも答えきれないケースは必ず残ります。

大事なのは、答えられなかった会話を定期的に人がレビューして、ナレッジを追加していく運用をセットで設計しておくことです。

うまく答えられなかった会話は、失敗ログではなく「お客様が本当に知りたかったことのリスト」です。ここを人が拾って育てていく前提で運用を組むと、ボットは導入した日が一番賢い状態ではなく、育っていく仕組みになります。

FAQ

既存のFAQ資産は無駄になりますか?

無駄にはなりません。Aの分類ではそのまま使い続けられますし、生成AI型でも回答の根拠として参照する材料になります。

シナリオ型は全部だめなのですか?

そうは思っていません。答えが一意に決まるAの領域では、今でもシンプルで確実な手段です。3分類のどこに使うか、という使い分けの問題です。

コールセンターの呼量削減にも同じ考え方が使えますか?

使えると思います。3分類は電話・チャット・メールを問わない整理なので、コールセンターの呼量削減やコスト削減を検討する場合も、まず入電内容をA/B/Cに仕分けるところから始められます。

LINEでやる意味はありますか?

あると思います。お客様が普段から使っている場所であることに加えて、友だち登録・会員連携を通じて「誰からの質問か」を特定しやすいことが、Bを捌く上で効いてきます。

まとめ

  • 電話が減らないのはボットの出来の問題ではなく、案内板型では答えられない問い合わせが流れ続けているから
  • 問い合わせを「定型」「個別状況」「判断・相談」に分類すると、シナリオ型で残す領域・生成AIで設計し直す領域・人に直結させる領域が見えてくる
  • 生成AI型を検討するときは、会員特定・根拠・聞き返し・要約付きエスカレーションなどの設計項目をデモで確かめ、答えられなかった会話を育てる運用までセットで設計する

まずは直近の問い合わせ履歴の仕分けから、試してみてください。
LINEを活用した顧客対応の設計についてご相談があれば、こちらからお気軽にどうぞ。

では、おつかめ!


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