設計データが盤をつくる〜EPLANの回路図からRittalの自動配線・分電配電まで #HM26

設計データが盤をつくる〜EPLANの回路図からRittalの自動配線・分電配電まで #HM26

ハノーバーメッセ2026で、Friedhelm Loh GroupのEPLANとRittalの合同ブースツアーに参加。EPLANの電気設計から、その設計データを使った自動配線、データセンター向けの分電配電・OCPラック・800V DC、そして低GWP冷媒への切り替えまで、設計から製造・運用を一気通貫で支える展示を見てきました。
2026.06.09

「回路図から盤の3D設計、自動配線、データセンター向けの分電配電、そして冷却まで入っとる!!」

ハノーバーメッセ2026で、EPLANとRittal(リタール)の合同ブースのツアーに参加してきました。両社はともにドイツのFriedhelm Loh Group(フリードヘルム・ロー・グループ)に属していて、ソフトウェア(EPLAN)とハードウェア(Rittal)の両面から、制御盤・配電盤づくりの工程を一気通貫で支えているのが特徴です。

ブースは大きく5つのエリアに分かれていました。EPLANのソフトウェアを扱う「電気設計(Electrical Engineering)」、設計データを使って配線を自動化する「オートメーション」、電源・配電とデータセンターを扱う「エナジー&IT」、保守をテーマにした「サービス」、そして今年のフォーカストピックである中央の「クーリング(冷却)」です。本記事では、まず両社の位置づけを整理したうえで、ツアーで見てきた内容を順番に紹介していきます。

ツアーを案内してくださったEPLAN/Rittalの担当者

ツアーをご案内いただいた担当の方。ブース内容は、これまで自分が主に参加してきていたIT要素が比較的多めな展示と異なって、かなり機械よりの内容が多くて非常に新鮮で面白かったです。

EPLANとRittal、そしてFriedhelm Loh Group

「Über 100 Partner」などEPLANとRittalのパートナーシップを訴求するブースパネル

今回のブースは、Friedhelm Loh Groupという同族経営のグループに属する2社の合同展示です。基本的な公開情報を整理しておきます。

  • Friedhelm Loh Group公式サイト: https://www.friedhelm-loh-group.com/en
  • グループ規模: 従業員約12,600名、売上高約31億ユーロ(2024年)
  • Rittal: 1961年設立。グループ最大の企業で、制御盤・配電盤の筐体(エンクロージャー)や電源、空調などのハードウェアを手がける
  • EPLAN: 1984年設立。電気設計・盤設計のソフトウェアを手がける

ざっくり言うと、EPLANが「設計(ソフトウェア)」、Rittalが「筐体・電源・配電・冷却・自動化(ハードウェア)」を担い、両社が組むことで、回路図の作成から盤の製造、現場での運用・保守までをグループとして通しで支えられる、という座組みです。ここから、ツアーの流れに沿って5つのエリアを見ていきます。

エリア1: 電気設計(EPLAN)

Rittalオンラインショップと連携した構成設定(コンフィギュレーター)のデモ画面

最初に案内されたのが、EPLANのソフトウェアが並ぶ電気設計のエリアです。

EPLANは、回路図(スキマティック)の作成から始まり、その回路図を使った制御盤の3D設計(デジタルツイン)、さらにハーネスの設計までをカバーするソリューションを持っています。プリプランニングのような早い段階から関与できるのも特徴とのことでした。

良い設計をするには良いデータが必要ということで紹介されたのが、 EPLAN Data Portal です。これは部品データのデータバンクのようなもので、500社を超えるメーカーの部品データが集められています。Siemens、Rockwellといった海外メーカーはもちろん、日本のメーカーのデータも含まれており、コンフィギュレーターと組み合わせると400万を超えるデータセットを設計でそのまま使えるそうです。

もう1つ紹介されたのが、 EPLAN engineering standard です。これは業種別のテンプレートを提供するもので、たとえば自動車(オートモーティブ)向けといった環境に合わせたひな形が用意されています。ユーザーがゼロからすべてを作らなくても、テンプレートを使うことで導入のハードルを下げられる、という位置づけでした。

エリア2: オートメーション(自動配線)

次に、設計フェーズで作ったデータを「製造」でどう使うかを見せてくれるエリアに移りました。

Rittal Automation Systemsの自動配線機「Wire Terminal」

ここに置かれていたのは、Rittal Automation Systemsの自動配線機 Wire Terminal です。EPLANで盤を設計すると、3Dのデジタルツインができあがり、全コンポーネントと全ワイヤーが定義された状態になります。その配線データ(ワイヤーの長さや本数など)をもとに、この機械が電線を自動で加工していく、という流れです。

担当の方が強調していたのは、ケーブルやハーネスは設置場所によって取り回しが変わるため、長さが最後の工程で決まるケースが多い、という点でした。設計データがあれば、その場で必要な長さの電線を切り出し、順番に処理していけます。

もう1つ印象的だったのが、これらのソリューションがスケーラブルである点です。ここで見せてもらったようなフル自動だけでなく、セミ自動の構成も用意されており、EPLANをフル活用する第一歩として、まず配線工程から導入する、という入り方ができるそうです。従来は熟練工に頼っていた配線作業を、経験の少ないワーカーでもこなせるようにする、という狙いが背景にありました。

エリア3: エナジー&IT(分電配電・データセンター)

RiLine Xに各社のサーキットブレーカーを取り付けた分電配電の展示

ブースの反対側に回ると、Rittalの分電配電(Power Distribution)のソリューションが壁一面に並んでいました。Rittalはもともと筐体メーカーですが、機器と機器をつなぐ配電部分のプラットフォーム(土台)を提供する事業にも取り組んでいます。

RiLine Xのバスバーシステム。中央の銅バスバーと、各社ブレーカーに対応する赤い部材

中心にあったのが、昨年(2024年)発売されたバスバーシステム RiLine X です。AC1000V、DC1500V、800Aまでに対応し、ABB、Eaton、三菱電機といったメーカーを問わずさまざまなサーキットブレーカーを取り付けられるプラットフォームになっています。特徴は工具レスの組み立てで、部材をクリックではめ込むだけで配線でき、組み立て時間を最大75%削減できるとのことでした。感電を防ぐタッチプルーフ構造で、背面は電源のみ(通信は通っていない)というシンプルな設計です。3本のバスバーを持つ構成に加えて、4本版も用意されていました。

より大容量の領域としては、最大6300Aに対応する Ri4Power も紹介されました。RiLine Xが制御盤の分電配電というより「パワー」寄り——蓄電池や再生可能エネルギー、そして大容量化が進むデータセンター向け——なのに対し、Ri4Powerはさらに上の電流域をカバーする位置づけです。

直流(DC)の遮断については、Siemensのユースケースとして半導体方式のサーキットブレーカーが展示されていました。Siemensがこの分野で投入している SENTRON 3QD2 にあたるもので、機械式の接点ではなく半導体回路でスイッチングする、いわゆるソリッドステートの遮断器です。交流は波形がゼロを通過する点で電流を切れますが、直流は電流が連続して流れ続けるため遮断が難しく、いったん半導体回路に流して高速にスイッチオフする、という仕組みでした。データセンター内の直流給電のように、DCを安全に遮断したい用途に向いています。

データセンター関連では、 OCP(Open Compute Project) の次世代サーバーラック規格に対応した21インチラックも展示されていました。OCPはデータセンター向けハードウェアの仕様をオープンに標準化する業界団体で、2011年にFacebook(現Meta)が立ち上げたものです。AIサーバーは消費電流が大きくなるため、従来のコンセントバーでは電流容量が足りず、ラック背面にバスバーを通す構成になっています。バスバーと筐体はRittalの得意領域で、RittalはこのOCPラックの認証を取得しているメーカーとのことでした。

「Industrial & IT Infrastructure Platform」のIT・蓄電向けエンクロージャー

このラックでは、入力された400Vを村田製作所のスイッチング電源で48Vに変換し、背面のバスバーを48Vで動かす構成になっていました。さらに、将来的にはこの電圧を800Vにしていく構想も語られていました。これはNVIDIAが次世代のAIサーバー向けに進めている 800V DCアーキテクチャ(Rubin Ultra世代向け)を見据えたもので、Rittal側もDC給配電ラックを想定して開発を進めているそうです。こうしたAIサーバー向けラックを冷やすダイレクト液冷については、今年のフォーカストピックである後述のクーリングエリアで詳しく見ていきます。

エリア4: サービス(予防保全とAR)

予防保全の有無を対比したチラーの展示(「Schmutz drauf? Leistung weg!」)

サービスのエリアでは、2台のチラー(冷却ユニット)が並べて置かれていました。1台はきれいで、もう1台はフィルターが汚れた状態です。この違いは予防保全(プリベンティブ・メンテナンス)の有無を示したもので、フィルターが汚れると冷却効率が落ちるため、通信を通じて状態を把握し、適切にメンテナンスしていれば右のようにきれいに保てます、という展示でした。予防保全によってサービスコストを最大30%削減できるとのことです。

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あわせて紹介されたのが、ARグラスを使った遠隔サービス支援のソリューションです。サービス技術者が現地に出向かなくても、ARグラスを通じて作業者に指示を出し、たとえば目の前のチラーの修理を遠隔でガイドできる、という仕組みです。技術者の移動が不要になる分、時間とコストを抑えられ、設備の復旧も早まります。こちらはまだ発売前で、今年中の発売を予定している新しいソリューションとのことでした。

エリア5: クーリング(今年のフォーカストピック)

ブース中央に据えられていたのが、今年のフォーカストピックである冷却ソリューションです。テーマはIT(データセンター)向けと産業向けの両面でした。

データセンター向けのダイレクト液冷

「Direct Liquid Cooling 1 MW」のAIサーバー向けラックと液冷の配管

まずはIT向けです。AIサーバーは1ラックあたりの消費電力が急激に大きくなっており、空冷だけでは追いつかなくなってきています。展示されていたのは、1MW級のラックを液体で冷やす ダイレクト液冷(Direct Liquid Cooling) の構成でした。エリア3で見たOCPラックや800V DCといった大電力化の流れと、この液冷はセットの関係にあります。

データセンター向けの冷却分配ユニット(CDU)と液冷の配管

ラックには、冷却液を各サーバーへ分配するCDU(Coolant Distribution Unit)と太い配管が組み込まれ、サーバーのチップを液体で直接冷やします。

ダイレクト液冷のポンプとホース(RittalとEPLANのロゴ)

液冷のポンプやホースには、RittalとEPLANのロゴが並んでいました。ここでも、設計(EPLAN)と筐体・配管(Rittal)をグループで一気通貫に提供する、という姿勢が表れています。

産業向けの低GWP冷媒チラー

もう一方の産業向けで紹介されていたのが、冷媒を環境負荷の低いものへ切り替えたチラーです。EUでは2027年から、12kWまでの冷却ユニット・チラーについて、冷媒のGWP(地球温暖化係数、Global Warming Potential)を150未満にすることを求める規制が適用されます。これに対応するため、RittalはBlue e+系の冷却ユニット・チラーの冷媒を R1234yf へ切り替えていくとのことでした。

興味深かったのは、このR1234yfが、実は日本では先行して使われてきた冷媒だという話です。日本からの要望が長くありながら、欧州では規制が決まるまで対応が進みにくかったものの、規制を機にRittalもグローバルにこの低GWP冷媒へ展開していく、という流れでした。日本が先行していた取り組みに、世界が規制を通じて追いついてくる構図と言えそうです。

まとめ

EPLANとRittalのブースツアーは、「設計(EPLAN)→ 製造(自動配線)→ 運用・保守(サービス・冷却)」という、制御盤・配電盤づくりのバリューチェーン全体を、1つのグループで通しで見せてくれるものでした。

通底していたのは、設計フェーズで作ったデータを製造・運用まで一貫して使い回し、工具レス化や自動化で現場の手間と熟練依存を減らす、という徹底した効率化の思想です。さらに、RiLine XやRi4Power、半導体ブレーカー、OCPラック、800V DCや液冷といった展示からは、AIサーバーの大電力・大電流という新しい需要に、電源・配電・冷却の各面でどう応えようとしているかがよく伝わってきました。冷媒の低GWP化のように、規制対応を製品ラインに織り込んでいく姿勢も印象的でした。

製造業のDXというと上位のソフトウェアに目が向きがちですが、こうした盤・電源・配電・冷却といった足元のハードウェアと、それを設計データでつなぐソフトウェアの進化は見逃せません。丁寧に案内してくださった担当の方々、そして今回のブースツアーを調整してくださった福本勲さんに感謝しつつ、来年はどんな展示が見られるのか楽しみにしたいと思います。

それでは今日はこのへんで。濱田孝治(ハマコー)でした。

参考資料


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