フェニックスコンタクトのブースツアー紹介〜工具レス接続Push-X、盤レス自動配線、ソフトウェアディファインドな仮想PLCまで〜 #HM26

フェニックスコンタクトのブースツアー紹介〜工具レス接続Push-X、盤レス自動配線、ソフトウェアディファインドな仮想PLCまで〜 #HM26

ハノーバーメッセ2026のフェニックスコンタクトのブースツアーに参加。工具レス接続Push-X、DCグリッド対応の電源、カーボンスパークギャップのサージ保護、CRA/IEC 62443対応のセキュリティ、Podman上で動く仮想PLCまで、現場の「つなぐ・電源・守る・動かす」を順に紹介します。
2026.06.08

端子台から電源、ネットワーク、セキュリティ、そしてソフトウェアディファインドな仮想PLCまで。フェニックスコンタクトのブースは、製造現場で必要な「つなぐ・電源・守る・動かす」を一気通貫で見せてくれました。

ハノーバーメッセ2026で、フェニックスコンタクト(Phoenix Contact)のブースツアーに参加してきました。

ブースは大きく5つのゾーンに分かれていました。基板用端子台・基板用コネクターを扱う「コネクティビティ」、盤製作の効率化をテーマにした「キャビネット」、中央の自動化デモ、電源やサージ保護を集めた「パワーリライアビリティ」、そしてネットワーク機器の「オートメーション」です。本記事では、まず会社の位置づけを整理したうえで、ツアーで見てきた内容を順番に紹介していきます。

フェニックスコンタクトのブース全景

フェニックスコンタクトとは

フェニックスコンタクトは、ドイツの電気接続・産業オートメーションのメーカーです。基本的な公開情報を整理しておきます。

  • 公式サイト: https://www.phoenixcontact.com/
  • 本社: ドイツ・ブロンベルク(Blomberg)
  • 設立: 1923年(創業者はHugo Knümann氏、エッセンで創業)
  • 従業員数: 約20,300名
  • 拠点: 50カ国以上に子会社を展開、100カ国以上で事業を展開するファミリー企業
  • グローバル売上高: 約29億7,000万ユーロ(2021年度)

端子台やコネクター、リレー、電源、産業用ネットワーク機器、コントローラー(PLC)まで、電気をつなぎ・分配し・制御するためのコンポーネントを幅広く手がけています。特にツールレスの接続技術 Push-in を10年以上前に世に出したパイオニアであり、今回のツアーでもその後継となる新技術が主役でした。

ここから、ツアーの流れに沿って展示を見ていきます。

Push-X — 工具レス接続の新世代

最初に案内されたのが、接続技術 Push-X です。

Push-X technologyの展示

フェニックスコンタクトは、バネ力で導体を挟み込むPush-in接続を10年以上前に開発したパイオニアです。Push-Xはその次世代にあたり、2023年に登場して以降、対応する端子台やコネクターのラインナップを広げています。ブースでは、今年初お披露目というデモとあわせて紹介してもらいました。

Push-Xの端子台

担当の方が「ねずみ取り方式」と表現していたのが印象的でした。あらかじめテンションをかけた接点バネが待ち構えていて、導体を奥まで差し込むと、ねずみ取りのようにバチッとバネが跳ね返って固定される仕組みです。差し込む際は「フィジカルに奥まで入った手応え」「奥まで届いたことの目視」「固定された音」という複数の感覚で接続を確認できるのが特徴とのこと。フェルール(圧着端子)の有無を問わず、単線・撚り線・裸線をそのまま差し込めます。

Push-Xのコネクター製品

実際に私も裸線を差し込ませてもらいましたが、思っていたより力が要り、奥までしっかり押し込むと確かに「ガチッ」と手応えがありました。抜けが心配になるくらいの保持力です。同じ技術が、コンビコンと呼ばれるコネクター型の端子台にも、盤に取り付けるDINレール用の端子台にも展開されており、ラインナップ全体で接続方式を統一していこうという思想が見えました。後ほど紹介する自動配線にも向いている、というのがこの技術のもう一つの肝です。

キャビネット — 盤製作の自動化とブラウンフィールドのデジタル化

続いて、盤製作(制御盤の組み立て)を効率化するゾーンへ。ヨーロッパ向けの長い銘板(決め板)を取り付けられる端子台や、既存設備のレタリング装置でそのまま使える銘板など、現場の事情に合わせた地道な工夫が並んでいました。「マーキング用のプリンターを別途買わなくても、今ある設備でラベルを作って貼れる」という説明が印象的でした。

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中央には2台の自動化装置が置かれていました。1台はDINレールに端子台を自動で組み付ける装置です。公式サイトから無料でダウンロードできるソフトで端子台の配置を設計し、DXFやEPLAN向けの図面に変換して読み込ませると、マスターラインで端子台を並べ、マーキング部材を取り付け、画像検査をして組み立てまで自動で進む、という流れでした。

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もう1台は、スイスのRoboWire社とコラボレーションした自動配線のデモです。ロボットが端子台に配線していくもので、ここでもPush-XやXTといった工具レス接続が効いてきます。スクリュー(ネジ)式だと締結に時間がかかり工程も複雑になりますが、Push-inやPush-Xなら裸線をそのまま差し込めるため、自動化の一手間を減らせる。「システムそのものを売りたいわけではなく、こうした自動化を実現できる接続コンポーネントを使ってほしい」という説明が、同社の立ち位置をよく表していました。

これらの装置自体にも同社の製品が多数使われており、稼働データを収集して学習させ、予知保全などに活かすデモになっていました。ソフトウェアは PLCnext Store で誰でも購入できるとのことで、「Apple Storeのように、必要なソフトを買って自社のデバイスで動かせる」という説明がわかりやすかったです。

パワーリライアビリティ — 電源とサージ保護

ここからは電源・変換器・サージ保護を集めた「パワーリライアビリティ」のゾーンです。

バッテリーストレージとDCグリッド

バッテリーエナジーストレージシステムの展示

最初はバッテリーエナジーストレージシステムを縮小再現した展示です。バッテリーそのものは作っていませんが、バッテリーを接続するコネクターや、双方向で動作する30kWのパワーサプライ(AC-DC・DC-ACの相互変換)を提供しています。この電源は単体でモニターを内蔵し、スタンドアロンでも使えるよう新しくなったとのこと。

通底していたのが DCグリッド という発想です。バッテリーもソーラーパネルも本来はDC(直流)なのに、ACに変換して送電し、また機器側でDCに戻す——という何度も変換するプロセスには損失が発生します。それなら再生可能エネルギーをそのままDCで活用しよう、という考え方です。実際、同社の本社(ブロンベルク)の工場のひとつでは、全体をDCで稼働させる取り組みを進めているそうです。

電源バリエーション — KNX、USB-PD、IP67

ビルディングオートメーション向け電源(KNX対応)

ビルディングオートメーション向けには、欧州で普及している通信規格 KNX に対応した電源が新しく登場していました。出力電流の異なる複数のバリエーションが用意されており、ホテルなどの施設で使われ始めているとのこと。日本ではこれからの市場という位置づけでした。

USB-PD対応の電源

USB給電に対応した電源も新製品です。Type-AとType-Cを備え、USB PD(Power Delivery)にも対応。AC100V/200Vを入力すると、そのままUSB給電として取り出せます。盤の前面から差せるほか、内部接続用のType-Cも上面に1口あり、シングルボードコンピューターやスマートカメラ、タブレットへの給電など、現場での使いどころが想像しやすい製品でした。

IP67対応の電源

IP67電源のラインナップ

IP67対応で盤の外にも設置できる電源も展示されていました。電源単体のもの、サーキットブレーカーを内蔵して系統分けできるもの、ACを隣の機器へデイジーチェーンで渡せるものなど、3種類が並んでいました。内蔵のサーキットブレーカーは4チャンネルでトリップ値を個別に設定でき、UL Class 2 / NEC Class 2にも対応できるとのことです。

UPSとスーパーキャパシタ一体型

無停電電源(UPS)の展示

スーパーキャパシタ一体型の新製品

電源の信頼性を支えるUPSのコーナーで紹介された新製品が、スイッチング電源とスーパーキャパシタを一体化したものです。従来はバッテリー式のUPSや、瞬停対策としてスーパーキャパシタのモジュールを別途置く構成でしたが、今回は電源の中にスーパーキャパシタを内蔵しています。

バッテリーと違って交換が不要で、廃棄や長期保管時の劣化を気にせず使える「メンテナンスフリー」が売りです。数秒から、長いもので数分〜10分程度の瞬停・停電をカバーできます。担当の方が強調していたのは、瞬停は復帰してしまうがゆえに「なぜおかしな挙動が起きたのか分からなくなる」点でした。この製品は瞬停の発生を信号で通知できるため、機器を止めずに動かし続けながら、異常があったことを記録できます。「異常気象で雷が増えていることもあり、最近とくに問い合わせが多い」とのことでした。

サージ保護 — カーボンスパークギャップ

サージ保護機器(カーボンスパークギャップ)

サージ保護のラインナップ

雷などのサージから機器を守るSPD(サージ保護デバイス)も新技術が投入されていました。IECで言うところのタイプ1、つまり建物の入り口に付けるクラスのものです。従来はバリスタやガス入り放電管といった、雷を何度か受けると劣化する素子を使っていましたが、新製品では カーボンスパークギャップ という技術を採用しています。

カーボンのプレートを積層し、サージが入ってくるとプレート間で放電して抑える仕組みです。素子の劣化がないため基本的に交換不要。さらに、放電後に通常電圧へ戻った際に放電を引きずってしまう続流(フォローカレント)を、プレートの枚数を調整することで抑え、電圧が正常に戻ったらすぐ放電をやめて復帰する。摩耗がないことから「ウェアフリー」と呼んでいるとのことでした。

電子式と熱磁気式のサーキットブレーカー

薄型サーキットブレーカーと電流計測モジュール

サーキットブレーカーの渡り配線

サーキットブレーカーのコーナーには、薄型の熱磁気式ブレーカーが登場していました。同社は電子式ブレーカーを得意としてきましたが、DCモーターのように突入電流が大きい高負荷では、敏感な電子式が意図せずトリップしてしまうことがある。そこを熱磁気式でカバーする、という棲み分けです。厚さ8mmと非常に薄く、盤内のスペースを取りません。

電流計測モジュール

端子台メーカーらしいと感じたのが、ブレーカーの下から「ブリッジ」と呼ぶ部材で渡り配線ができる点です。1つのブレーカーで保護しながら出力を分岐できるほか、プラス・マイナスの両切りが必要な国内向けにも、赤と青のブリッジを飛び飛びに挿すだけで渡り配線が組めます。配線工数を大きく減らせる工夫でした。あわせて、電流を計測できるモジュールも新登場。電流値に応じてLEDがバーグラフのように点灯し、閾値を超えるとアラーム信号を出力できます。1線式の通信で電流値を読み取ることもでき、電源や端子台と組み合わせて手軽に電流測定を追加できるモジュールでした。

オートメーション — 産業ネットワークとサイバーセキュリティ

ここからは説明者が交代し、ネットワーク機器の「オートメーション」ゾーンへ。

データを確実に伝送する

データ伝送機器(メディアコンバーター・エクステンダー)

各種コンバーター・エクステンダー

まずはメディアコンバーターやエクステンダーといった、データを確実に伝送するための機器群です。シリアルを光に変換して延長するもの、イーサネットを光に変換するもの(36種類ものラインナップがあるとのこと)が並んでいました。

面白かったのはエクステンダーです。既存の2芯配線や同軸ケーブルをレトロフィットで活かし、その上でイーサネットを通せる。たとえば同軸ケーブルを使って1kmまで延長したり、シールド付きツイストペアであれば1kmまで1Gbpsを伸ばしたりできます。「アナログカメラ用に残置されているケーブルを活かして、新しい通信に使う」といった現実的なユースケースが想像できました。片側に電源を供給するとリモート側にも給電される機能もあるそうです。

産業用スイッチ — IEC 61850、TSN

産業用スイッチも幅広く揃っていました。電力・スマートグリッド市場向けには IEC 61850 に対応したスイッチをリリースしており、時刻同期の IEEE 1588 に対応しています。日本の電力事業者も今後IEC 61850への対応が求められる方向にあるため、ラインナップを揃えているとのこと。

また TSN(Time-Sensitive Networking)対応のスイッチもあり、三菱電機のTSNに対する認証済み製品も用意されています。時刻が揃っているため、1つのネットワーク上でリアルタイム性の高い通信を確保しつつ、負荷の重い通信を流してもサイクルが乱れない、という説明でした。

サイバーセキュリティ — IEC 62443、CRA、mGuard

360度のサイバーセキュリティ

このゾーンで何度も出てきたキーワードが、欧州の CRA(Cyber Resilience Act)と IEC 62443 です。

mGuard secure cloud

産業用5Gルーター(4Gの国内対応版が近く発売予定、5Gは準備中)を使えば、出荷した工作機械にリモートメンテナンスの仕組みを仕込んでおけます。エンドユーザーの許可が前提ですが、振動の予兆を検知して必要な部品を持って現場へ向かう、といった予知保全が可能になる。「人手が足りず、空振りで現場に向かう余裕もない」という現実への解決策として説明されていました。

セキュリティ専用機としては mGuard が紹介されました。多層防御の考え方で要所に配置するもので、接点入力でルールを切り替えられるのが専用機ならではの機能です。たとえば平常運転時はあるPLCのデータを上位へ渡し、メンテナンス時はスイッチ操作で通信ルールを変えて、作業員が機械内部しか操作できないようブロックする、といった使い方ができます。

印象的だったのは、CRAやIEC 62443への対応を「製品単体の機能」ではなく「会社の仕組み」として捉えていた点です。脆弱性が見つかり次第ファームウェアをリリースし、現状では5年程度は無料でパッチを提供し続ける。そのために、開発部門から独立した PSIRT(セキュリティ専門部門)を設け、別の権限でパッチ作成や工程管理を行っている、という説明でした。「開発が忙しいから不具合を直さない、ということが起きないように、専門チームが工程管理して期限を守って出していく」——供給者責任を組織として担保する姿勢が伝わってきました。

セーフティとセキュリティの融合

さらに、CRAは機械指令とも連動していくため、セーフティ(機能安全)を含む回路もサイバーセキュリティ対策をしていかないと、今後は欧州で販売できなくなる、という説明もありました。セーフティとセキュリティが融合していく流れを示す展示です。なお、リモートメンテナンスを支えるクラウドサービスも提供しており、グローバルIPアドレスがなくてもクラウド経由でVPN接続を確立できる仕組みになっているとのことでした。

Wi-Fi 6、そして6Eへ

無線分野では、ついにWi-Fi 6対応の無線機を投入したとのこと。アンテナ内蔵タイプと外付けタイプがあり、機能制限のないフル機能のアクセスポイントも今後登場予定です。さらに6GHz帯(Wi-Fi 6E)対応の製品も近く発売していく方針で、こちらは電波法関連の手続きを終え、技適マークの印刷など最終工程に入っている段階だと説明されていました。

PLCnext Technology — ソフトウェアディファインドな仮想PLC

ツアーの締めくくりは、コントローラーの PLCnext Technology と、その仮想化の展示でした。

PLCnext Technologyの展示

PLCnextのエンジニアリング環境

PLCnextは、専用ハードウェア上でランタイムが動くコントローラーで、IEC 61131-3のような制御言語と高級言語を同じメモリエリアでシームレスに扱えるのが特徴です。プロトコル変換器のようなものも比較的簡単に作れます。

仮想PLCの展示

今回の目玉は、この専用ハードのランタイムを汎用PC上で仮想化する Virtual PLCnext Control です。汎用PC上のPodmanコンテナにPLCnextのランタイムを入れることで、専用ハードと同じソフトウェアの機能を汎用PCで使えるようになります。いわゆるソフトウェアディファインドな構成で、他社も取り組んでいる領域です。

Canonical Ubuntu上での動作

Virtual PLCnext Controlのデモ

デモではUbuntu上でPodmanコンテナとしてランタイムが動いており、画面は明らかにUbuntuのものでした。専用機がメモリ512MBや1GB程度のリソースなのに対し、PCベースなら数百GBのSSD、4コアのCPU、数GBのRAMと潤沢なリソースを使えるため、エッジでデータを貯めて処理し、結果だけを上位に渡すといった「のりしろの大きい」使い方ができます。一方で、多軸モーションのような厳密な制御は専用ハードのほうが向いており、用途に応じた使い分けになるとのことでした。

この仮想PLCも当然 IEC 62443-4-2 に対応しています。さらに興味深かったのが、PLCnextを単なる製品ではなく「共通OSプラットフォーム」として位置づけている点です。ネットワークスイッチなど他の製品も同じOSに統合していくことで、CRAや IEC 62443対応のメンテナンス——脆弱性報告やパッチ提供——を1つのストリームに集約できる。複数のOSを機種ごとにメンテナンスしていてはコストが膨れ上がるため、管理を1本化したい、というビジネス上のコミットメントが背景にありました。アドオンを追加してEtherNet/IPやModbus、OPC UAといったプロトコルに対応させられる拡張性も、PCベースならではの強みとして紹介されていました。

まとめ

今回自分が訪問させていただいていたブースツアーの中でも、特にフィジカル要素が強かったのが印象的でした。

Push-X、自動配線、電源、サージ保護、サーキットブレーカー、産業ネットワーク、サイバーセキュリティ、そして仮想PLC——振り返ると、製造現場の電気とネットワークを支えるコンポーネントを、入り口から制御まで見せてくれたツアーでした。

通底していたのは、「いかに配線と手間を減らすか」という徹底した効率化の思想と、「CRAに代表される規制対応を、製品単体ではなく組織と共通プラットフォームで担保する」という供給者責任の姿勢でした。工具レス接続のPush-X、メンテナンスフリーのスーパーキャパシタ電源、交換不要のサージ保護、共通OS化を見据えた仮想PLC——どれも、人手不足やライフサイクルコストといった現場の課題への解決策として、よく練られていると感じました。

製造業のDXに取り組むうえで、こうした足元のコンポーネントとセキュリティの進化は見逃せません。丁寧に案内してくださった担当の方々、そして今回のブースツアーを調整してくださった福本勲さんに感謝しつつ、来年はどんな展示が見られるのか楽しみにしたいと思います。

それでは今日はこのへんで。濱田孝治(ハマコー)でした。

参考資料


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