
ハノーバーメッセ2026 SAPブース訪問レポート — サプライチェーンから出荷までを一気通貫で体験 #HM26
「SAPがハノーバーメッセでここまで作り込んだ展示を展開するのか…」
ハノーバーメッセ2026の四日目、SAPブースのブースツアーに参加させていただきました。アテンドしてくれたのは、SAPジャパンで組み立て製造業の事業開発・Go-to-Marketを担当されている柳浦さん。毎年ハノーバーメッセでSAPのショーケースを紹介されているとのことで、ものすごく丁寧かつテンポよくブース全体を案内いただきました。

事前に福本さん経由でお願いしていたこともあり、ブースの設計思想から各エリアの位置付け、裏側のアーキテクチャまで、かなり踏み込んだ説明をしていただけました。本記事は、そのブースツアーの流れに沿って、自分が見聞きしてきた内容を紹介していきます。
改めて、この場をお借りして、柳浦さん、福本勲さん感謝いたします!!
SAPはなぜハノーバーメッセに本気で出展しているのか — ブース訪問の背景
私がSAPブースに足を運んだ理由は、シンプルです。
SAPって、製造業のお客様と話していると必ず名前が出てくるんですが、自分の中ではどうしても「ERPを中心とするITソリューションの会社」というイメージが強くありました。そのため、ハノーバーメッセという世界最大の製造業の祭典でどのようなブースになっているか少しイメージができていなかったというのが正直なところです。
ブース訪問した後の、率直な感想から言うと「サプライチェーン全体を俯瞰したオーケストレーション」と「現場のスマートエグゼキューション」が一本のストーリーで繋がっていて、SAPがERPだけの会社ではないということを60分で完全に上書きされて帰ってきました。本当に有用な体験でした。それだけインパクトが大きかったです。

ブースの規模もかなり大きく、コントロールセンターの大型ディスプレイから、混合プラント、梱包機、CNC工作機械、構内物流ロボットまで、左から右へ進んでいくと自然にサプライチェーンの上流から下流を辿るような動線になっています。
今回題材になっている製品はジンジャーショット — エナジードリンクの小瓶。これを実際に試飲することもできます(帰り際にブースツアー参加者向けにスタッフに声をかけるともらえます)。

このジンジャーショットをめぐって、
- 遠方の工場で原液をミキシングしてボトルに充填するプロセス製造の仮想企業
- 隣接する工場でボトルをパッケージングして出荷するディスクリート製造の仮想企業
- さらに、その包装機の補修部品を作るCNC(DMG MORI)を持つサプライヤー企業
という複数の仮想企業を横断するシナリオが構築されていて、エンドツーエンドで「サプライチェーンに何かが起きたら、企業を越えてどうオーケストレーションするか」をブース全体で表現しています。
全体テーマ — Trusted Orchestration. Smarter Execution.
ブースの正面には、紫色のキューブで構成された大きなビジュアルとともに、Trusted orchestration. Smarter execution. というテーマが掲げられています。

公式資料側で整理されている言葉を引用すると、
- Trusted Orchestration: 変化の激しいサプライチェーン環境で、部門・企業間を横断的に統合した確かなデータとプロセスに基づくAI活用が、変動対応力のある止まらないサプライチェーンを実現
- Smarter Execution: 設計、計画、製造、物流、設備保全などのすべてのバリューチェーンをシームレスに統合して、現場のフィジカルとデジタルを融合したAI活用が、さらなる柔軟性と実行力を強化
柳浦さんの言葉を借りると、メッセージはとてもシンプルで、
各部署が連携していく。その側にAIエージェントがいるので、人の代わりに色々なものを確認していただいたり、案をエージェント同士が話し合って出してくる。それに対して、出したものに対して人間が最終的に判断をしていく。判断のクライテリアにはお金の側面もあれば、リードタイムの側面もある。それらを勘案して最適な選択をし、スマートなエグゼキューションをしていく。
要は、「AIが代わりに考える」のではなく、AI同士が協調して案を出して、最後に人が判断するフローを、サプライチェーンから現場まで一気通貫で組み立てましょう、というのが今年のSAPのメッセージです。
シアターで全体観をインプット
ブースの中ほどには、半分仕切られた小さなシアターがあって、ここでショートムービーを見るところから本格的なツアーが始まります。

製造業は、あらゆるレベルで、あらゆる市場で、ひとつひとつの受注ごとに、いま再構築されつつある……。その約束の背後にあるのは、ひとつのシステムだ。サプライヤー、機械、人が、ともに動いている。多くの日々、それは機能する。何かが変わるまでは。
……トラステッド・オーケストレーション、そしてスマーター・エグゼキューション。シグナルは、ピークを迎える前に察知される。生産能力は、意思決定が切迫する前にモデリングされる。生産は、その瞬間に合わせて組み替えられ、物流は需要の一歩先を行く。
成功は、これまでも決して単一の要素の話ではなかった。すべてをオーケストレーションすることなのだ。これがモダンマニュファクチャリング。信頼に根ざし、インテリジェンスに駆動され、あなたがコントロールする。Powered by SAP.
「成功は単一の要素ではなく、すべてをオーケストレーションすることだ」という締めくくりが、これから見るブース全体のコンセプトをきれいに先出しする内容になっていて、ツアーの開幕としてとても効いていました。
サプライチェーン視点のオペレーションセンター — Operations and Insights
シアターを抜けると、最初に目に入ってくるのが Operations and Insights と書かれた大型のコントロールセンター。ジンジャーショットを作る2拠点工場(ミキシング側/パッケージング側)を一元監視するダッシュボードが、複数のディスプレイにわたって展開されています。


ここで提示されていたコントロールセンターの面白いポイントは、社外のニュース・ソーシャル情報・外部シグナルを取り込んで、自社オペレーションへのインパクトをAIが自動でスコアリングしてアラートに変換しているところ。
例えば地図上の「Production Plant Hannover」というピンに対して、右下に「Asian Shipment Delayed」というアラートが出ていて、しかも「Critical」というランキングが付与されています。これ、本来は人間が情報をかき集めて「これクリティカルだよね」と判断していたところを、システム側がデータをもとに重み付けして、優先順位を可視化してくれる仕組みです。
財務的なインパクト(売上・利益)と工場のKPI(OEEや在庫・出荷数)が同じダッシュボードに統合されているのも、いかにもSAPだなと感じたところ。「工場の操業が止まる=経営に直接効く」という前提で、現場とP/Lが一つのレイヤーで見られるようになっている。これは現場系のSCADAやMESベンダーが単独で出しにくい角度で、ERPを背骨に持つSAPらしい強みと感じました。
サプライチェーンを揺さぶる事象に、マルチエージェントで対応する
このコントロールセンターから、先ほどの「Asian Shipment Delayed」アラートを掘っていくところが、今回のSAPブースの最大の見せ場です。

シナリオはこんな感じ。
ハノーバー工場で生産するジンジャーショットの原材料が、アジアからの輸送ルートで遅延発生。シップメントが4〜6週間遅れる見込み。そのままだと作れない。どうしますか?
ここで登場するのが、SAPの会話型AIアシスタントJouleを中心とした、複数のAIエージェントが連動するマルチエージェント基盤です。

ブース全体に貼られていたカンバンに、各エージェントが何を担当するかが整理されていて、ストーリーの繋がりが視覚的に追えるようになっていました。

このアラートを画面上で開くと、影響を受けるサプライヤー、影響を受ける数量、そして「21日から28日遅れることによる経営インパクトは1,800万ドル」という計算結果まで自動で出てくる。これは受注データを裏側でサマリーして、リードタイム遅延が売上にいくら効くかを試算してくれている結果です。
ここで人間(オペレーター)が「Help me(どう対応すべき?)」と聞くと、以下のような複数のエージェントが立ち上がります。
- Inventory Balancing Agent — SAP Extended Warehouse Managementに内蔵された在庫管理エージェント
- Supplier Discovery Agent — SAP Business Networkに内蔵されたサプライヤー探索エージェント
- Trade-off Analyst — 全エージェントの出力をオーケストレーションして、最終的な代替案を統合・評価するエージェント
つまり、SAPの中核ERPであるS/4HANAだけでなく、複数のSAPアプリケーション(EWM、Business Network、etc.)にエージェントが宿っていて、それらが横断的にやり取りしながら問題に対処していく、という構造になっています。

実際に提示された代替案は、以下のような3つ。
- ブラジルから代替調達 — 別ルートから原材料を確保。ただしリードタイムとコストの影響あり
- 問題解決を待つ — そのままアジア便を待つ。売上インパクト大きめ
- ローカル調達 + レシピ変更 — 近隣サプライヤーから別配合の原材料を調達し、レシピを微調整。所要時間はプラス2週間ほど
それぞれにリスクスコア、コスト影響、売上影響が並列で出てくるので、判断軸が明確になっています。
さらに面白いのが、「シナリオ1とシナリオ3を組み合わせるとどうなる?」という追加の問いかけを自然言語で投げ込めること。ハイブリッド案として再評価してくれて、その上で「実行に必要なタスク一覧」と「タスクごとの担当者(社内のロール)」までエージェントが提案してくれます。
「Accept All Tasks」を押せば、関係者全員に通知が飛び、実際の作業がそれぞれの業務領域で動き出す、というところまで一気通貫。
AIエージェントが具体的にどのSAPプロダクトに内蔵されていて、どのデータを根拠に何を提案するか、までブース上で見せきっているのは、SAPの基盤の厚みがないと難しい。これがERP・SCM・Business Networkを単独事業者として持っているベンダーの強みだなと、改めて感じた瞬間でした。
エージェントは40近くがリリース済み、独自エージェントも作成可能
ここで私より先に質問してくれた来場者がいて、
エージェントの種類は最初から決まっているのか、ユーザーが自由に追加できるのか?
という質問をしていました。柳浦さんの回答を整理すると以下となります。
- 現時点で40近いエージェントがSAP標準でリリース済み
- 今後もSAPからどんどん新エージェントがリリースされていく
- お客様独自のエージェントは、SAP BTP(Business Technology Platform)の開発プラットフォーム上で構築可能
- エージェントは「サプライチェーンエージェント」のような粒度ではなく、「サプライチェーンプランニングエージェント」「スケジューリングエージェント」のようにドメイン単位で細かく設計されているのがポイント
「広いエージェント1つ」ではなく「狭いエージェントが多数」という設計思想は、近年のAIエージェントの構築における方向性と完全に一致していると感じました。エージェント設計のベストプラクティスとして、業界全体で同じところに収束してきている印象です。
フィジカルAI × 設備保全 — 混合プラントの4足ロボット
次のエリアは、サプライチェーンの「上流側プラント(ミキシング工場)」を模した設備保全シナリオです。
ミキシング設備にエラー傾向のシグナルが出ている、ただしクリティカルではない、という状況で、
- システム側がデータドリブンに異常傾向を検知
- AIエージェントが人間ではなくフィジカルAI(4足ロボット)に検査指示を発行
- ロボットが該当設備まで物理的に移動
- 搭載カメラで外観検査、過去データと照合して異常判定
- 必要に応じてメンテナンスオーダーが自動発行
という流れが、4足ロボットの実機を使って表現されていました。
設備が壊れる場所は工場の中で多数あるが、人がそこまで行こうとすると時間がかかる。データドリブンで異常箇所を特定して、エージェント経由でロボットに指示が出る。物理空間を理解しているフィジカルAIが現地に行き、外観検査までしてくれる。
ここでも、判断主体は人ではなくエージェント、実行主体もロボット、というところまで一気通貫で表現されています。
その後、Anaという架空のReliability Engineer(信頼性エンジニア)人格を使った設備保全の画面に切り替わって、振動データのチャートを見ながら、コンディションベースド/プレディクティブメンテナンスへの移行を解説してくれました。

公式資料側の表現を借りると、
センサー設置が追い付かない装置については、ヒトが外観検査・保全業務を行っていたが、フィジカルAIロボットが代替。ヒトが入りにくいような環境に設置されている設備でも、自然言語でフィジカルAIロボットに保全業務(点検・レポート作成)の実施を指示。
人がやる前提で立てられていた保全業務を、自然言語の指示でフィジカルAIに振り直せる、というのが新しいポイントです。ロボットが収集したサーモセンサーなどの観測データは、設備台帳・過去のメンテナンス/トラブル記録と組み合わされて、異常予兆の即時発見やリスク計算につながっていく流れになっていました。
ブース後半でも触れられていますが、保全のシナリオは「設備が壊れる前に部品を交換する」だけでは終わらず、
- 必要部品のリードタイム
- 保守作業員のアサインスケジュール
- 実際の補修作業時間
までエージェントが横断的に確認して、事前に発注をかけるところまで自動化する、というスコープで描かれています。後で出てくるDMG MORIのCNCによるスペアパーツ製造に繋がっていく重要な伏線です。
梱包工程 — Uhlmannのパッケージング機 × SAP Digital Manufacturing
ミキシング側を抜けると、SAPブースの中央には、ドイツの大手包装機メーカーUhlmann(ウルマン)の本物のパッケージング機がドンと置かれています。


ボトリングまで終わったジンジャーショットが、ここで最終的にパッキング → 梱包 → 出荷準備までされていく工程を、実機の動きとSAPのMES画面の両方で見せてくれます。

ここで私にとって一番の発見だったのが、SAPは実はMESもやっているという事実。
SAPはERPの会社というイメージが強いと思うんですけど、実はSAPはMESを20年前に買収して、長くオンプレで提供してきました。最近はそれをクラウドMESとして実装しなおして、SAP Digital Manufacturingというブランドで展開しています。
正直、ここはちょっと驚きました。日本の製造業の文脈だとSAP = ERPの印象が強くて、MESは別ベンダーで組むのが一般的だと思っていたんですが、SAPは自社でフルスタック持っていたんですね。
実機の動きを見ると、
- S/4HANAに受注 → 生産計画 → 製造指図が立つ
- 製造指図がSAP Digital Manufacturing(MES)側に渡る
- MESがショップフロアオーダーを生成し、Uhlmannのパッケージング機に対して接続・指示
- 実機が動き、進捗(OEE)がリアルタイムでMES → ERPにフィードバック
という流れが、実際にラインが動く前で説明されていました。


設備主導でものづくりがされていく時って、その設備が1箇所でも止まると何も作れない。状態監視をしながら止まらないモノづくりを実現する、というところもこの中のポイントです。
ERPとMESと現場機器の通信規格についてもよく質問をされるそうですが
各業界でPLCのところは色々ありますが、Industry 4.0で言われているように、標準通信規格であるOPC UAに揃えていただければ、SAP Digital Manufacturingからすべて繋がる形になっています。
というスタンス。OPC UAをコアにIT-OTを繋ぐ、という方針が明確に打ち出されていて、ここはAWSブースで紹介されていた5層リファレンスアーキテクチャの「Data層」と完全に同じ方向です。クラウド側のオーケストレーションは違っても、現場側の通信規格は業界として収束している、という構図がきれいに見えました。
公式資料の言葉を借りると、梱包工程のポイントはこんな感じです。
需要変動に連動して品種切り替えが発生しても、資材供給、梱包方法・印字などの工程指示、検査指示、次工程送り搬送指示など、人間の介入を必要としないきめ細かい同期を実現。
製造記録は遅延なく開示可能なトレーサビリティ情報(Digital Product Passport)へと翻訳され、梱包材へと印字。二次元コードを利用して、定められた品質基準適合の証明が可能。
Digital Product Passport(DPP)まで含めて、サプライチェーン全体のトレーサビリティの話まで踏み込んでいるのが、欧州発のソリューションらしい強さでした。
ヒューマノイドロボット × 構内物流 — 指示の透過性
パッケージング機の脇には、ヒューマノイドロボットが通い箱から製品をピックして指定の棚に置く、という構内物流のデモが設置されていました。AGV/AMRが移動した先で、Embodied AI(身体を持つAI)が人間の代わりに棚入れをする、という流れです。
ここで柳浦さんが繰り返し強調していたのが、指示の出し方は人もロボットも変わらない、というアーキテクチャの考え方。
要は指示は指示であって、受け取る方がロボットなのか人間なのか、という話。だから既存のロボットとか今のAIが難しい、というよりは、AIを経由してその先の手足とか体とかのひとつにフィジカルAIがいる、というイメージ。
昼間は人間がやって、夜はロボットがやる、というのもいいんじゃないかなと思います。
これは現場の運用設計としてかなり示唆的でした。AIエージェントが業務指示を発行する側だけを統一しておけば、その指示を実行するのが人か、AGVか、ヒューマノイドか、を後から差し替えられる。日本の製造業のお客様で「人手不足対策として段階的にロボットを導入したい」というニーズがあるときに、こういう設計をしておくと、後の自動化拡張がやりやすくなる。これはお客様の話にもそのまま流用したい考え方です。
CNCによるスペアパーツ製造 — Business Network経由で「企業を越えてオーケストレーション」
ここまでで、プロセス製造側のシナリオ(ミキシング → ボトリング → パッケージング → 出荷)が一通り終わります。SAPブースの面白さは、ここからもう一段、ディスクリート製造(サプライヤー側)まで踏み込むところ。
そのキーになるのが、ドイツの工作機械メーカーDMG MORIのCNC(CTX Beta 450 TC)が、ブース後半に堂々と置かれているエリアです。


シナリオはこんな感じです。
- Uhlmannのパッケージング機の部品が摩耗。センサーデータから予兆を検知し、新しい部品を発注する必要が出る
- Uhlmannの製品情報をAAS(Asset Administration Shell)として保持しており、その中の「該当パーツのサブモデル」をスキャン
- その設計情報(CADや仕様)を、サービスパーツメーカー側(DMG MORIのCNCを使うサプライヤー)にSAP Business Network経由で連携
- メーカー側のS/4HANAに受注伝票が立ち、製造指図 → MES(SAP Digital Manufacturing)→ DMG MORIのCNCへと展開
- CNC側のマガジンが切り替わり、該当のスペアパーツが削り出される
ここでも実機のCNCが動いていて、しかもSAP Digital Manufacturingの画面でCNCの実工程の進捗・OEEが見えている、という状態。
公式資料の表現を借りると、こうなります。
パッケージングマシンの設備状態とメンテナンス情報を企業横断で連携して、修理に必要なスペアパーツを製造。
AIが設備情報・工程実績だけに閉じないOEE低下の原因分析を実施(例:部品倉庫からの部材供給の遅れが原因など)。
PLC制御を含めた設計情報に基づくIT-OTを連携した製造プロセス。
Factory-Xに対応した企業間の情報連携によるスピーディなスペアパーツの供給とサービスレベルの向上。様々な規制対応に必要なカーボンフットプリントや品質の情報をシリアル単位に格納して納入先企業に連携。
つまりは、以下が実現されているということです。
- AAS(Asset Administration Shell)を介して、設備の構成情報・サブモデルを企業を越えて共有できる
- SAP Business Networkが、その情報の伝達経路として既存BtoBコマースの上に乗っている
- Factory-X(欧州の企業間データ連携の標準化イニシアチブ)に対応していて、Catena-XやSemicon-Xと同じ世界観で動ける
「企業の中でデータを統合してAI活用」というレイヤーから、企業を越えてデータをオーケストレーションしてAI活用というレイヤーまで、SAPがすでにビジネスとして動かしている、という事実が見える展示でした。
日本でも経済産業省がOuranos Ecosystemとして同様の動きを進めているので、Factory-X的な世界観が日本に到達したときに、SAPはすでに動ける状態にある、というのが、訪問してリアルに感じた肌感です。
SAP Digital ManufacturingのJoule — OEE低下の原因をチャットで聞ける
CNCの脇にあったSAP Digital Manufacturingのダッシュボードも、見どころが詰まっていました。
ここでJouleに対して
OEEが下がっているけど、原因は?
その改善案は?
と自然言語で問いかけると、ダウンタイムの内訳や、サプライヤーからの部品到着遅延が原因だった、といった具体的なファクトを引き出して回答してくれます。さらに「OEE改善のためのアクション案」まで提示してくれる。
ダッシュボード自体は、SAPが「Data Products」という形である程度の塊で標準提供しているそうで、ERP側もデジタルマニュファクチャリング側も、最初に見たいKPIはほぼプリセットで揃っている。そこから先のカスタムや、自然言語ベースでの分析は、Jouleで埋めていく構造です。
「ダッシュボードは標準で、深堀りは自然言語で」というアプローチは、いま製造業のお客様に提案するパターンとしてもど真ん中で、ここに乗ってくるユースケースは多そうです。
PLM領域もSAPは持っている
最後に、ブースの一番奥にPLM領域の展示もありました。

SAPは実はPLMの領域もできたりします。
ここはツアー本編から外れたコメントレベルの紹介だったので深追いはできないのですが、ERP・SCM・MES・Business Network・PLMまで、製造業のバリューチェーンに必要なピースをSAPが一通り持っている、という構図の最後のピースとして印象に残りました。
加えて、
- Manufacturing-X / Factory-X / Catena-X / Semicon-Xのデータスペース活動にSAPもメンバーとして参画
- 企業間連携シナリオは、受発注、アセットコラボレーション、サードパーティのフィールドサービスエンジニア連携など、複数用意済み
という話もあり、別ホールにあるデータスペース関連の展示にも目を向けてみてはどうか、というハノーバーメッセらしい横の繋がりまで案内してくれました。
まとめ — 「ITサービサーのSAP」のイメージが、60分で完全に上書きされた
非常に全体としてのストーリーが一貫していて、素晴らしい体験のブースツアーでした。率直な感想を箇条書きで残します。
- サプライチェーンから出荷まで、ジンジャーショットというひとつの製品を題材にして、E2Eのストーリーが一気通貫で繋がっている。ここまで「ストーリー駆動」でブースを設計している
- マルチエージェント × Jouleの見せ方が具体的。代替案の3シナリオ→ハイブリッド評価→タスク発行→担当者アサインまで、実業務の解像度で組み立てられている
- 「SAPもMESをやっている」という発見が大きい。SAP Digital Manufacturing × Uhlmann × DMG MORIの連動が動いている状態で見られたのは印象深かった
- AAS・Business Network・Factory-Xによる企業間オーケストレーションは、欧州製造業の本気度をひしひしと感じる。日本のOuranos Ecosystemと並走する話題として要追跡
- フィジカルAI(4足ロボット)、ヒューマノイド、AGV/AMRも展示にあり、AI指示→実行主体(人 or ロボット)の透過性という設計思想も興味深い
「SAP = ERP・ITサービサー」という前提でブースに入ったのですが、出てくる頃には、サプライチェーン全体のオーケストレーションを企業横断で語れる、製造業向けプラットフォーム企業、というイメージにアップデートされていました。
SAPブースは「うちのお客様には縁がないかな」と思ってスキップしてしまう人もいると思うのですが、製造業のクラウド・AI活用を提案する立場にいるなら、サプライチェーンを軸にした全体像のリファレンスとして、必ず見ておく価値があるブースだったなと、強く思いました。
最後に、60分という限られた時間で、ブース全体の設計思想から各エリアの裏側まで丁寧に案内してくださったSAPジャパンの柳浦さんと、このブースツアーのご紹介をいただいた、福本勲さんに、改めて感謝です。本当にありがとうございました。
それでは今日はこのへんで。濱田孝治(ハマコー)でした。
参考資料
ハノーバーメッセ2026 SAPブース Companion App(各ショーケースの動画と説明を、エリアごとに整理して帰国後にも振り返れるWebアプリ)
SAP Digital Manufacturing(製品ページ)
SAP Business Network(製品ページ)
SAP Joule(製品ページ)










