【Alexaデバイス祭り】沢山のAlexa製品が発表されたのに一番注目されたのが通信規格だった件 #AlexaDevs

2019.10.07

この記事は公開されてから1年以上経過しています。情報が古い可能性がありますので、ご注意ください。

せーのでございます。
今回は先日のAmazon デバイスカンファレンスとその前後にてたくさんのAlexaに関する事柄が発表されました。
色々と魅力的な製品が出たわけですが、世間が一番ざわざわしたのは付属として発表されたAmazon独自の「通信規格」でした。何がそんなに気になるのでしょう。またAlexaとどういう関わりがあるのでしょうか。深堀りしてみたいと思います。

新デバイス

まずは一気に発表されたAlexa関連製品を一気にご紹介します。

Echo Studio

僕らの骨壷が帰ってきました。

Echo StudioはDolby Atmosと連携したHi-Fiオーディオスピーカーです。以前Echo Sub(別名「骨壷」)というEcho連携のウーファーがあったのですが、今回は形は似ているもののその中身は5スピーカーを搭載する360 Reality Audio対応のデバイスです。「帰ってきた骨壷」とでもいいましょうか。大変うれしく思います。

先日Amazonは「Amazon Music HD」というハイレゾ配信サービスを発表、360 reality audioとの連携をする予定ですので、そのサービスを聴くためのデバイス、という位置づけかと思います。

Echo Buds

Echo BudsはAlexaに対応した完全ワイヤレスイヤホンです。このデバイスの最大の特徴は「Active Noise Reduction」を搭載した、という点です。これはイヤホンの周りにある音と逆位相の周波数をイヤホン内に流す事でノイズを消す、という技術で、AmazonはこのワイヤレスイヤホンのANR技術をBOSEと連携することで可能としました。
BOSEはBOSEでこのANRの進化版「Active Noise Canceling(ANC)」をハイエンド帯のヘッドホンや車などに搭載予定で、コスパのいいEcho Budsとうまく住み分けをするようです。

Echo Glow

Echo GlowはAlexaの使える「ルームランプ」です。様々な色に室内を照らす感じはPhilipsのHueに似ていますがターゲットは子供に向けられていて、声によって様々な色に変えられる魔法のような体験をより簡単に子供にしてほしい、というAmazonの狙いがあるようです。

Echo Frames

いよいよこれ系が出てきたか、とワクワクするAlexa対応メガネの登場です。ただ眼鏡にディスプレイが映るというような事はなく、音もオープンエアーなので音質を追求するものではないみたいです。それでもAmazonはこういう商品からどんどんユーザーの意見を取り入れて進化していく企業なので、期待せざるを得ません。

Echo Loop

これもEcho Framesと同じ「Day 1 Editions = 初期バージョン(ユーザーのフィードバックを受けてアップデートする前提のバージョン)」と呼ばれるカテゴリに入ります。Alexa対応の「指輪」ですね。
これはAVS、つまりこれ自体にAlexaが入っているわけではなく、スマホ内のAlexaとBluetoothで通信することによって動作する「Alexa enabled」です。例えばこれがGPSに対応してくれたら面白い使い方ができそうですね。

Echo Dot with clock

だいぶおなじみになってきたEcho Dotには時計が映るLEDが付きました。時計だけではなくタイマーなどの表示もできるようです。これがカスタムスキルに開放されると、また使い道が広がりそうです。

Echo Show 8

Echo Showは初代、二代目、5につづいて「Echo show 8」が発表されました。その名の通り8インチディスプレイ
二代目Showが10インチなので、ちょうど真ん中、といった感じでしょうか。プライバシーシャッターなどもついていて、今どきのスマートデバイス、という感じです。

最大の注目- Amaozon Sidewalk

と、ざっとデバイスを紹介してみました。他にもコンセントに直接挿せる「Echo Flex」やAlexa電子レンジの進化版「Amazon Smart Oven」など、実に17種類のデバイスが発表されたわけですが、冒頭にも書いたように、開発者が注目したのはこれらのデバイスではなく、新しいプロトコル「Amazon Sidewalk」でした。

サブギガ帯プロトコルにGAFAが襲来

Amazon Sidewalkは900MHz、いわゆる「サブギガ帯」を使用した新しいネットワーク網になります。
サブギガ帯、というのはここ数年IoT業界で注目されている周波数帯です。
Wi-FiやBluetoothは2.4GHzや5GHz帯を使用しています。帯域が高ければ高いほど沢山のデータを送れる代わりに、届く範囲が狭くなります。AMラジオよりFMラジオの方が音がいいのは、FMラジオの周波数の方が高いからです。

Bluetooth程大きなデータを送らないIoT機器は低い周波数帯にて送ることでより遠くまで運べることになりますが、その筆頭である携帯電話の帯域は950MHzとなります。この周波数帯を使いたいところですが、この帯域は総務省からの免許制となっていて、自由に使うことができません。そこで免許無しで自由に使える他の900MHz帯(日本では920MHz帯)を使って、より広い範囲でIoT機器をつないでネットワークを構築しようとしています。これを「サブギガ帯」と言います。現時点ではLTE-M、Sigfox、Lora-WANなど、様々なサブギガ帯の規格があります。

メッシュネットワークと単位容量に注目

Amazon Sidewalkはこの「サブギガ帯」に新たに登場したネットワークプロトコルになります。
AmazonはこのSidewalkの説明の際に「Wi-FiやBluetoothは届く距離が短い。一方5Gはプロビジョニングコストがかかる」という言い回しをしています。少量のデータを低コストで低電力で転送するためにサブギガ帯は使われるのですが、そこにAmazonは独自のアプローチで迫っていこうというものなのでしょうか。しかし現在LPWAと呼ばれるこの低消費電力広帯域の通信規格は既に様々なものが存在するのに、なぜ新たに開発に着手したのでしょうか。

このSidewalkですが、完成するとAlexaとの相性がとても良いのです。Alexaには「Alexa Everywhere(どこでもAlexaが使える世界)」と呼ばれるビジョンのもとにその種類がどんどん広がっています。しかし、Alexaはその本体がクラウド上にあるため、ネットワークが必須です。様々なAlexa対応デバイスが家のWi-Fiネットワークを通じてAlexaとの通信を行っていますが、Wi-Fiではどうしても距離に限界が出てきます。

そこで考えられる通信手段がサブギガ帯、というわけです。サブギガ帯を使えば家の外のポストや庭の散水機、ガレージのシャッターなど、Wi-Fiルーターから遠く離れたところにあるデバイスもつなぐことができます。これにより、より多種多様なデバイスをネットワークでつないでAlexa対応させることができれば、まさにAlexa Everywhereに一歩近づきます。Alexa Enabledの選択肢が大幅に広がるイメージです。

ただ、Alexaに対応する、ということは音声データのストリームが必要になります。Alexaの音声は48kbpsのビットレートが必要です(電話は8kbps)。通常のサブギガ帯ではそこまでの容量は確保できないので、そこをどのようにAmazonが考えるのか、とても興味があります。Alexaの音声はSidewalkのプロトコルは公開される予定なので、伝送容量に注目したいですね。

もう一つ、Sidewalkの注目点としては「メッシュネットワーク」があります。

基本サブギガ帯を含めた通信ネットワーク規格は「基地局」と呼ばれるステーションポイントが必要です。どんなに通信距離が広くても、その範囲内に基地局がなければ通信できません。LPWAの基地局となるルーティングポイントは設置が意外と簡単ではあるものの、全国をカバーするにはそれなりの数の基地局が必要となり、その設置にコストがかかります。

Sidewalkでは実験として700のSidewalkデバイスをAmazonの社員やその家族が持ち歩いた所、Los Angeles Basinの大部分をカバーすることに成功したそうです。これを可能にしたのが「メッシュネットワーク」です。つまり、Sidewalkの通信が可能であるデバイスが増えれば増えるほど、それらがアクセスポイントの役割を果たして網の目状に広がっていき、全体の通信網が強化される、という仕組みです。これはプロビジョニングコストの少ないサブギガ帯ならではの利点を活かしたものですね。通常はこのような「みんなが使えばより便利になる」という仕組みは初期投資に相当なコストを掛けないとうまくドライブしないですが、そこを世界トップの企業であるAmazonがやる、ということに説得力を感じます。

まとめ

以上、新規格「Amazon Sidewalk」について解説しました。
Amazonは今「Project Kyper」という、数千の人工衛星を地球上に飛ばす事によって地球全体でWi-Fiネットワークが使えるようにする計画が進行中です。
もしProject Kyperが進行した時にはこのSidewalkデバイスが地上のネットワークを形成し、いつでもWi-Fiポイントを通じてクラウド通信ができる世の中になりそうで、ワクワクします。