ZendeskのAI関係機能がかなり増えてきたのでまとめてみる(2023年末版)

ZendeskのAI関係機能がかなり増えてきたのでまとめてみる(2023年末版)

Clock Icon2023.12.24

こんにちは、ゲームソリューション部でZendeskのエンジニアを担当している入井です。本記事はクラスメソッドZendesk Advent Calendar 2023の24日目の記事です。

クラスメソッド Zendesk Advent Calendar 2023 の記事一覧 | DevelopersIO

クラスメソッド Zendeskのカレンダー | Advent Calendar 2023 - Qiita

今年、2023年は生成AIがIT技術分野での一大トレンドとなりました。Zendeskも、5月の自社カンファレンスにてAI関連の新機能を提供するAdvanced AIアドオンを発表し、それ以降も様々な新しいAI機能についてのリリースを行っています。

元々、Zendeskはチャットボットや機械学習を利用したFAQ記事提案機能などAIの分野に力を入れていましたが、今年はOpenAI関係の盛り上がりに影響を受けて、その取り組みを更に強化したようです。

EAP(早期アクセス)機能も含めると、ZendeskのAI機能は今年だけで一気に増えたため、混乱している方もいるかと思います。そこで今回の記事では、2023年12月現在時点でのZendesk AI機能を新旧まとめて整理し、それぞれどのようなものであるかを紹介していきたいと思います。

なお、Zendesk公式ヘルプ等を参照して可能な限り全ての機能を紹介するつもりですが、ドキュメント量が膨大なためここで紹介し切れていないAI機能も存在する可能性があります。その点、あらかじめご了承ください。

Support(チケット管理)関係

Zendeskの中心的な機能であるSupport向けには、主にチケットやマクロについてのAI機能が提供されています。

インテリジェントトリアージ(チケットへのラベル付け)

カスタマーの目的、言語、印象を自動的に検出 – Zendeskヘルプ

この機能は、AIがチケットに記載されたエンドユーザーの問い合わせ内容を自動的に分析して、そこに書かれた目的や言語とユーザーの感情を推測する機能です。推測が完了すると、その結果に基づいて目的・言語・感情の項目別に以下の画像のようにラベルが付与されます。エージェントは、このラベルをチケット詳細画面から確認することが可能です。

この機能の具体的な使用手順や動作についての検証は、過去に書いた以下の記事で行っています。

ユーザーからの問い合わせ内容をAIがラベリング! ZendeskのAdvanced AIのチケット分析機能についてまとめてみた | DevelopersIO

上記の記事内でも書いていますが、この機能はAIが自然言語を解釈できるになったという点がこれまでのAI機能と大きく異なっています。

なお、問い合わせの目的を何でもかんでも完璧に把握できるかというとそうではなく、現在では以下の業種分野の問い合わせに限られています。

  • 小売業およびeコマース企業間取引(BtoC)。メーカー、卸売、企業間取引(BtoB)、顧客間取引(CtoC)は含みません。
  • ソフトウェアプラットフォームまたはアプリケーション。BtoCのみ。ガジェットやハードウェア部品を商品化する企業は含みません。
  • 金融サービス。従来の銀行およびオンライン銀行のみ。BtoCのみ。
  • 保険。自動車保険、健康保険、火災保険、ペット保険などを含みます。

インテリジェントトリアージの使用に関する要件 – Zendeskヘルプ

対応業種については、今後のアップデートで順次増えていくことがアナウンスされています。

この機能の用途としては、以下のようなものがあります。

  • エージェントの問い合わせ内容理解サポート
  • ラベルに基づいたトリガ・自動化活用
    • 特定の目的や言語に応じて適切なエージェントへの自動割り当て
    • 目的に合致したFAQ記事の自動提案
  • Exploreを使用した分析
    • 例えば、どんな目的の問い合わせがどのような条件の時に増減するかの把握など
  • ボットビルダーでのチャットボットの制御

チケットコメントの要約と洗練化(EAP)

生成AIを活用したチケットコメントの要約と洗練化(EAP) – Zendeskヘルプ

こちらの機能は現在早期アクセス段階のもので、ドキュメントに記載の通りOpen AIのEnterprise GPTを活用しています。

具体的な機能の内容としては、主に以下の2つです。

エンドユーザーからの問い合わせ文章を要約したテキストの生成

こちらの機能についても、以下の過去の記事で具体的な使用手順や動作についての検証を行っています。

[新機能]Zendeskの生成AIによる問い合わせ内容要約、回答ブラッシュアップ機能を試してみた | DevelopersIO

類似チケットの表示(EAP)

こちらも現在早期アクセス段階の機能です。

インテリジェンスでの類似チケットの表示(EAP) – Zendeskヘルプ

この機能を有効にすると、チケット詳細画面にて現在対応しているチケットと内容が似ているチケットのリストが表示されます。

問い合わせ対応業務の際、過去の類似の問い合わせの対応内容を参考にすることはよく行われていると思いますが、似た内容のチケットを探すのに時間がかかってしまうことがあります。そこで、この機能を使うことでエージェントは過去の類似のチケットへより短い時間でアクセスすること可能となります。

なお、類似チケットと判断されるには以下の条件を満たす必要があるようです。

おすすめマクロの提案(エージェント向け)

おすすめのマクロの使用 – Zendeskヘルプ

エージェントが対応しようとしているチケットに対して、既に作成済みのマクロの中から役に立ちそうなものを提案してくれる機能です。

マクロの提案には機械学習技術が使われています。具体的には、過去9ヶ月間の類似チケットへのマクロの使用状況を分析し、その結果を基に現在のチケットへの対応に合ったマクロを選択して提案します。

マクロの提案は各チケットの詳細画面にて行われ、最大で3件までのマクロが提案されます。

マクロ作成提案(管理者向け)

管理者向けのマクロ提案からのマクロの作成 – Zendeskヘルプ

こちらは最近追加された機能です。既存のマクロではなく、新しいマクロの内容について提案する点が、おすすめマクロの提案機能とは大きく異なります。

この機能は、過去の全チケットのエージェントコメントを分析し、その内容を元によく使われる定型文を自動セットするマクロを提案します。作成される内容は定型文入力に限られており、その他の操作はマクロに含まれません。

公式ドキュメントによれば、マクロの提案を受けるためには以下の条件を満たす必要があります。

  1. アカウント内で過去3か月間に150枚以上のチケットを受け取っていること。
  2. エンドユーザーが作成した英語で書かれたチケットであること。
  3. いずれのマクロも適用されていないチケットであること。
  4. チケット内にエージェントが作成したパブリックコメントがあること。
  5. おすすめマクロと類似した既存のマクロが存在しないこと。

上記の通り、現状では英語チケットのみ対応している機能となりますが、今後のアップデートで対応言語は増えていくようです。

マクロの提案時には、マクロに付随して以下の情報も提供されます。

  • 類似のコメントがアカウント全体のエージェントによって繰り返された回数。
  • 提案と同様のコメントを使用したエージェントの数。
  • マクロの利用を可能にする推奨グループ。
  • 新しいマクロのコメント用の推奨テキスト。
  • マクロ提案のもとになるエージェントの返信を含むチケットの例。
  • アカウントでマクロが提案された日付。

これにより、提案されたマクロの有効性を検証することが可能です。

Guide(FAQサイト)関係

Guide向けには、主にFAQサイトの記事についての機能が提供されています。

FAQ記事のテキスト拡張・トーン変更

Using generative AI to expand and enhance the tone of help center content (EAP) – Zendesk help

現在早期アクセス段階の機能です。また、ヘルプ記事の日本語化対応がまだされていないようです。

OpenAIのEnterprise GPTを活用し、FAQ記事のテキストを拡張したり、トーンを変更したりすることが可能です。

各記事の拡張やトーン変更をしたいテキストを選択した状態で、専用のボタンをクリックするだけで使用が可能です。

テキストの拡張

記事の内容についての短いメモや箇条書きを用意し、それをツールに読み込ませることで記事の内容を自動生成することが可能です。また、既に存在する記事のテキストを拡張することも可能です。

どのような内容の記事にするかのテキストを用意するだけで、実際に記事化するのに必要な文章の肉付け作業をAIが代わりにやってくれます。

トーンの変更

既に書かれているテキストに対して、文章の雰囲気を自動的に変更することが可能です。

現在、フレンドリーにするかフォーマルにするかが選択できます。公式ドキュメントでは、「全力でサポートさせていただきます」というテキストが、フレンドリーにした場合は「お手伝いします!」に変更され、フォーマルにした場合は「さらにサポートが必要な場合はお気軽にお問い合わせください。」に変更される例が紹介されています。

コンテンツキュー

コンテンツキューの概要 – Zendeskヘルプ

こちらは、FAQサイトの記事で不足しているコンテンツを分析したり、記事のサポート効果について分析することが可能な機能です。

以下の2つのタイプがあります。

Supportトピック

現在存在するSupportのチケットの内容を元に、問い合わせの中で登場する頻度の高い質問やキーワードを分析し、リストアップします。

問い合わせの多い質問・キーワードがあるということは、それについてユーザーが自己解決できていないということなので、対象の質問・キーワードについてサポートする記事を増やすことで、問い合わせの量を減らせる可能性があります。

確認する記事

こちらは、FAQサイト内の記事の内、ユーザーへのサポート効果が高いものと低いものを特定します。これは、基本的にはユーザーの各記事の閲覧頻度から分析されます。

Talk(通話機能)関係

自動文字起こし、要約機能

Using generative AI to create call summaries (EAP) – Zendesk help

こちらは現在早期アクセス段階の機能です。また、ヘルプ記事の日本語化対応がまだされていないようです。

この機能を有効にすると、Zendesk Talkでのユーザーとの会話内容をAIが自動的にチケット内に文字起こしし、それを元に会話内容の簡潔な要約文も生成されます。

これにより、エージェントは会話内容を確認するために録音を確認したり、そこから会話の内容を文字起こしする作業をする必要がなくなります。つまり、電話による問い合わせもテキストによる問い合わせと同じように対応することが可能になります。

チャットボット関係

チャットボットが人間のテキストの入力内容を解釈すること自体に機械学習技術が使用されていますが、更にその挙動を強化するAI機能も提供されています。

記事の自動提案

Answer Botによるヘルプセンター記事の取り扱い – Zendeskヘルプ

こちらはチャットボットにデフォルトで備わっている機能です。

ユーザーからの問い合わせに対し、FAQサイトに存在する記事の中で関連性が高いと思われるものを自動的に提案します。

Web Widgetでのボットとの会話時だけでなく、Webフォームやメールでの問い合わせ時などの場面でも、ボットによるFAQ記事の提案を実行させることが可能です。

会話の自動生成、ペルソナ

https://support.zendesk.com/hc/en-us/articles/6138268212634-Using-AI-to-generate-replies-in-a-conversation-bot-Generative-AI-EAP-

Using bot personas to add personality to AI-generated responses (Generative AI EAP) – Zendesk help

こちらは現在早期アクセス段階の機能です。また、ヘルプ記事の日本語化対応がまだされていないようです。

こちらの機能を有効にすることで、チャットボットがユーザーと会話する際の回答テキストを生成することが可能です。

また、ペルソナというものを指定することで会話のトーンを指定することができます。

ペルソナについては、以下のようなものから選択が可能です。

  • プロフェッショナル
  • フレンドリー
  • 遊び心がある

以下のような場面で自動生成された回答を使用可能です。

  • 会話が始まったとき
  • 関連記事の提案時
  • ユーザーの質問の意図がわからなかった際のレスポンス
  • 質問に回答できないとき

一部の機能はアドオンの導入が必要

今回紹介した以下の機能については、使用にあたってAdvanced AIアドオンの追加契約が必要となります。

  • インテリジェントトリアージ
  • マクロ作成提案(管理者向け)

また、現在EAP段階の機能についても、正式公開時にAdvanced AIアドオンの導入が必要になる可能性があるようです。

まとめ

ZendeskのAI関連機能についてご紹介しました。

現在、生成AIの能力を業務の現場に取り入れるには専門的な知識やスキルが必要になることが多いですが、Zendeskのこれらの機能については比較的簡単に使用開始することが可能です。問い合わせ対応の現場にAIを取り入れてみたいと考えている方は、今回ご紹介したような機能を一度試してみてはいかがでしょうか。

Share this article

facebook logohatena logotwitter logo

© Classmethod, Inc. All rights reserved.