
ピープルマネージャー向けの情報をAI活用向けに整理して NotebookLM から利用可能にした話
こんにちは。組織開発室に所属し、組織開発を担当しているてぃーびーです。
生成AIの進化により、文書の活用の幅が広がってきました。生成AIで活用する場合、それに応じて前提となる既存の情報を必要な場所に、必要な形式で整理したうえで活用すると効果的です。
この記事では、NotebookLM でピープルマネージャー向けの情報を効果的に活用するために、前提となるソース情報を整理・整備した取り組みについてご紹介します。
全体像

情報の整理

NotebookLM の活用に向けて、 Notion で管理していたピープルマネージャー向けの文書をすべて Google Drive に移行しました。
内容に応じて Google ドキュメント・Google スプレッドシートに変更しています。
- 通常の文書 : Google ドキュメント
- Notion DB でリスト管理していたもの : Google スプレッドシート
また、ピープルマネージャー向けの情報を集約するページは Google サイトにして、ポータルサイトとして辿れるようにしています。チャットで調べる方法は、調べたいことが明確でキーワードが認識できているケースに適しています。一方で、そもそもどのような情報があるのか把握できていない場合には、ポータルサイトをスクロールしながら網羅的に探したいというニーズもあると考えたからです。
大枠の情報構成としては以下のようになっています。
- ピープルマネージャー向けの周知情報
- ピープルマネージャー向けの依頼情報
- ピープルマネージャー向けの資料
- ピープルマネジメント全般の資料
- 人事評価制度関連の資料
- エンゲージメントパルスサーベイ関連の資料
AI活用に適した文書のポイント

文書を移行する際に、AIの読み取りに適した Google ドキュメントの特徴について整理し、以下に沿って整備しました。
基本要件
- 見出しレベルを使い分け、適切に構造化されている
- 箇条書きで適切に構造化されている
- 同じ意味の言葉を統一している
- Google ドキュメントのタブは利用してもよいが、1階層までにすること
推奨要件
- 必要に応じて表でまとめられている
- 1つの文に複数の意味を持たせず、1つの意味にする
- 冗長な表現を避け、簡潔な表現にする
- できるだけ代名詞を避け、固有名詞を使っている
- できるだけ指示語を避け、固有名詞を使っている
- 主語や目的語を省略せず、明示している
その他の要素
- 検索に必要なキーワードを設定情報として保持する
- 略語がある場合、解説をする
- 社内の専門用語がある場合、解説をする
NotebookLM へのソース設定
AI活用に適した要素を踏まえつつ、Notionの文書の中身を整理しながら移行し、文書のファイル構成自体も再編成しました。
文書の整備が完了した段階で、該当するファイルを NotebookLM のソース情報として設定しました。

NotebookLM の活用サンプル
ピープルマネージャー向けの NotebookLM の活用サンプルを紹介します。
人事評価制度に関する確認例
入力
評価運用において、1on1の際の承認・称賛としてどのような点に意識するとよいでしょうか?
出力
評価運用における1on1での承認・称賛については、単に「褒める」だけでなく、具体的かつ事実に基づいたフィードバックを行うこと、そして承認の種類を意識して使い分けることが重要です。
クラスメソッドの資料に基づき、意識すべきポイントを以下に整理しました。
### 1. 「SBI型」で具体的に伝える
曖昧な賞賛(例:「すごいですね」「天才ですね」)ではなく、事実に基づいて具体的に伝えることが推奨されています。これにより、相手は何が良かったのかを正確に理解し、再現性を高めることができます。
フレームワークとしてSBI法(Situation-Behavior-Impact)が有効です。
* Situation(状況): いつ、どこでの出来事か
* Behavior(行動): どのような行動をとったか
* Impact(影響): その行動がどのような良い結果や影響をもたらしたか
> 良い例: 「先ほどのミーティングで(S)、進捗を数値で示してくれたおかげで(B)、チーム全体の状況が分かり次のアクションを決めやすくなりました(I)」
### 2. 承認の「5つの種類」を使い分ける
承認は結果だけでなく、プロセスや存在そのものに対しても行うべきです。以下のバリエーションを意識してください。
1. 結果承認: 成果そのものに対する承認(例:目標達成、売上向上)。
2. プロセス承認: 過程に対する承認(例:工夫した手順、改善の取り組み)。
3. 行動承認: 具体的な行動に対する承認(例:こぼれ球を拾う、文化を体現する行動)。
4. 意識承認: 姿勢やマインドに対する承認(例:挑戦する姿勢、他者への気遣い)。
5. 存在承認: 相手の存在そのものを認めること(例:挨拶、名前を呼ぶ、発言への反応)。
特に「存在承認」はエンゲージメントの土台となるため、日常的な挨拶やSlackでの反応なども含め、1on1でも意識的に行うことが推奨されます。
### 3. 評価運用サイクルとの連動
1on1での承認・称賛は、期末評価や中間レビューの納得感を高めるためにも重要です。
* 中間レビュー・期末評価時のフィードバック:
「改善点」だけでなく、「良かった点」を事前に記録し、面談の場でしっかりと言語化して伝えます。担当業務での活躍だけでなく、目標外であっても組織貢献や自発的な動きがあれば評価対象として伝えます。
* 成長の自覚を促す:
本人が「これくらい当たり前」と思っていて成長を自覚していない場合があります。小さな変化であっても「以前はできなかったことができるようになった」という事実を伝え、「それは成長である」と認識させることが重要です。
### 4. お世辞や建前は避ける
心にもないお世辞や建前での称賛は避けるべきです。安易に本音ではない称賛を続けると、本当に称賛すべき時にその言葉が真実として受け止められにくくなるリスクがあります。
### 5. マインドセット
ピープルマネージャーとして、「チームや仲間の力を引き出すことに強い興味がある」という姿勢を持ち、メンバーが自信を持って働けるよう支援することが求められます。承認・称賛を通じて自己効力感を高めることは、メンバーの自律的な行動を促進します。
エンゲージメントパルスサーベイに関する確認例
入力
パルスサーベイにおいて、期待の把握のスコアが低い場合、どのような原因が考えられますか?
また、原因ごとにどのような対策がありますか?
出力
パルスサーベイにおける「期待の把握(Q1)」のスコアが低い場合、従業員が「自分に求められている役割・責務・成果の水準」を明確に理解できていない状態にあると考えられます。
提供された資料に基づき、主な原因(傾向)と、それに対する具体的な対策を以下に分類して解説します。
### 1. 組織のビジョン・ミッションが伝わっていない
従業員が組織の目指す方向性を理解できておらず、自分の業務がどう貢献するのか見えていないケースです。
* 原因: 組織のビジョンやミッションが作成されていない、またはメンバーに十分に説明されていない。
* 対策:
* 組織のビジョン・ミッションを作成し、メンバーに説明する(例:事業本部の大方針などを明示する)。
* 経営理念と担当業務のつながりを伝える。
### 2. 期待される責務・業務範囲が伝わっていない
「どこからどこまでが自分の仕事なのか」が不明確なケースです。
* 原因: 個人の役割や責務(Job Description)が曖昧なままである。特に入社時、異動時、昇格時、役割変更時に認識合わせが不足していると発生しやすいです。
* 対策:
* チームでの対応: チーム全体の責務について認識合わせを実施する(例:RACI図を用いて責務を整理する)。
* 個人での対応: マネージャーと個人の責務について認識合わせを行い、その結果を JD(Job Description / 職務記述書) に明記する。
* プロジェクトアサイン時に「ロールセッション」を行い、期待値をすり合わせる。
### 3. 期待される行動指針が伝わっていない
「どのように振る舞うべきか(スタンスや価値観)」が共有されていないケースです。
* 原因: 組織として推奨される行動や価値観が明示されていない。
* 対策:
* 組織の行動指針を作成し、説明する。全社的な CLP(Classmethod Leadership Principle) や、部門独自のバリュー・行動指針を活用する。
### 4. 期待される成果の水準が伝わっていない
「どのレベルの品質やアウトプットを出せば評価されるのか」という基準において、上司と本人の認識がズレているケースです。
* 原因: 現在のグレード(等級)において求められる成果の基準が本人に伝わっていない。ここがズレると、本人は貢献しているつもりでも評価されないという不満につながります。
* 対策:
* 評価基準の活用: 全社共通の評価基準(第1層・第2層)や、職種ごとの具体的な基準(第3層)を元に、期待値の認識合わせを行う。
* 目標設定と対話: 期初の目標設定面談や、日々の1on1を通じて、「どの程度のことができるようになったら次の段階か」や「現在のグレードで求められる働き」について具体的にすり合わせる。
### 補足:期待の把握が重要な理由
期待を把握できていると、従業員は求められる領域の成果を出すことに注力できますが、把握できていない場合、求められていない領域に注力してしまったり、求められるレベル未満の成果で満足してしまったりする恐れがあります-。
改善にあたっては、マネージャーがこれらの観点でメンバーと対話し、認識のズレを解消していくことが推奨されます。







