[書評]「人材開発・組織開発コンサルティング」 – 事業成果につなげる組織改善のおとも

2023.08.18
こんにちわ。組織開発がミッションの人事グループ・組織開発室に所属しているてぃーびーです。
書籍「人材開発・組織開発コンサルティング」について紹介します。

書籍情報

対象者

  • 人事で組織開発、人材開発に関わる人
  • 各部門側で組織開発、人材開発に関わる人

書籍の対象者は上記ですが、今回の記事では組織開発のみを取り上げるので、人材開発の情報はありません。

目次

  1. 第1章 企業における人材開発・組織開発の役割
  2. 第2章 人と組織の課題解決
  3. 第3章 人材開発の理論と実践
  4. 第4章 組織開発の理論と実践
  5. 第5章 人と組織の課題解決の7つのステップ
  6. 第6章 よりよい課題解決者になるために

抜粋

私の主務が組織開発ということもあり、組織開発部分にフォーカスして紹介します。

組織開発の定義

人材開発・組織開発コンサルティング p38より

組織開発は、「人と人との関係を変える」ことを「手段」として用いることで、組織がしっかりとワークするように働きかけ、企業の戦略実現に寄与する
組織改善のための活動は何かと、経営や事業と別物として認識されることもありますが、なんのために組織改善をするかというと事業成果のためです。

組織開発の役割

社員の行動変容を導くことによって業績の向上に間接的に影響を与えるのが組織開発の役割です。

 

例えば、チームビルディングの実施によって、チーム内のコミュニケーションの質があがることによって、
  • 業務プロセスについてチーム全体で話し合うことで改善されやすくなる
  • チームに関わる問題点が共有されやすくなり、リスクが減る
  • 感情的な対立が減り、健全な意見の衝突が促進される
などの変化を起こし、結果的に業績にプラスの影響が及ぶようなケースがありえます。

組織開発が必要な理由

成果を生み出す組織の力を最大化するために組織開発が必要となります。
組織に属する集団の活動は、場合によってプラスにもマイナスにもなります。
集団の連携がうまくいかず、マイナスの側面がでて効率が落ちている状態プロセスロスと呼びます。
逆に集団でいることで個人の合計以上の成果に繋がる状態プロセスゲインと呼びます。
組織開発は、チームや人の関係性に対してアプローチすることにより「プロセスロスを減らし、プロセスゲインが得られる状態を作る活動」と言えそうです。
詳しくは以前こちらの記事にまとめました。

組織開発の課題解決プロセス

組織改善に必要となる一連のプロセスを紹介します。

1 出会う

コンサルタントとしてクライアントと出会い、課題解決のプロセスが始まります。
コンサルタントは組織の解決を支援する人。
クライアントは解決の支援を求め、支援される人です。
コンサルタントには2種類あります。
内部コンサルタント企業内に属している課題解決の担当者です。
社内の関係者ゆえに、自社内への理解度が高かったり、社内にすでに人脈があり情報収集がしやすいなどの強みがあります。
単発の課題解決支援をしたあとも、必要に応じたケアもしやすくなります。
一方で、自社を客観視したり、他社と対比することが難しい面があります。
外部コンサルタント企業外に属している課題解決の担当者です。
外部コンサルタントは様々な企業の様々な課題解決を経験しているため、多様な経験を持っています。
また、外部コンサルタントが単独ではない場合、所属する企業内での情報交換もできます。
一方で、社内の詳細の状態までは把握できないため、あくまで「一般論」としての助言をする範囲に留まることもありえます。
また、外部コンサルタントの依頼は内部コンサルタントとは異なり、別途費用が必要になります。
私自身、内部コンサルタントにあたる立ち位置で全社人事として各部門を支援する形で業務をしつつ、外部コンサルタントの方に助けてもらうこともあるため双方の長短については納得するところです。
コンサルタントとクライアントの出会いには2種類あります。
  • 1つ目はコンサルタントが問題を発見し、自発的に問題提起してクライアントに解決を提案していく能動的な出会いです
  • 2つ目はクライアントがコンサルタントに問題を持ち込み相談する受動的な出会いです
出会いについて、体験上は受動的な出会いのほうが能動的な出会いよりも解決に向けて進めやすいと考えています。
なぜかというと、能動的な出会いの場合、問題の存在や重要度についてクライアントに納得してもらうというステップが1つ増えるためです。

2 合意をつくる

課題を発見し、その課題を解決していくことに対してコンサルタントとクライアントの間で合意を取り付けます。
主に外部コンサルタントの場合の契約などを含んだ話であり、私の立場は内部コンサルタントのためここでは深掘りしません。

3 データを集める

解くべき課題を発見し、選定するために現場のデータを収集します。
データには様々なものがあります。
  • 定量データ
    • 一次情報
        • サーベイ結果
        • 任意の数値測定結果
    • 二次情報
        • 人事データベース
        • ストレスチェック
  • 定性データ
    • 一次情報
        • ヒアリング
        • 観察
    • 二次情報
        • 研修記録
        • 社内の情報共有ツール
一次情報と二次情報の違いは、コンサルタントが直接収集した情報かどうかです。
組織課題を解決するために特に重要に感じるのがこの部分です。
大雑把に物事を進めていると
  • 誰かの悩みや困りごとを伝言で聞いた
  • 特に追加で情報を集めず、すぐにそれっぽい解決策を実施してみた
のようになってしまいます。
本来、より具体的な前提情報の収集が必要で、集めた情報を元に問題を明確にすることでようやくそれに適した改善策を検討できることになります。

4 フィードバックする

フィードバックはコンサルタントが集めた情報を元に、課題に関する情報をクライアントに共有し、解決方法の検討をしていく活動です。
なお
  • 問題の明確化までをフィードバックし、解決策の検討はコンサルタントとクライアントでともにうこなう
  • 問題の明確化だけではなく、それに対する解決策の提案も含めてフィードバックする
の2パターンがありえるでしょう。
なおこの「3 データを集める」から「4 フィードバックする」の流れは、単純な一本道とは限りません。
  1. データを集める→フィードバックする→5の解決施策の実践に進む
  2. データを集める→フィードバックする→フィードバックの場で新たな情報を得て、追加でデータを集める必要がでてくる→追加で集めたデータを元にフィードバックする→5の「実践する」に進む

などのように1発で済む場合もあれば、何度も繰り返すこともあります。

5 実践する

フィードバックを元に取り扱うことを決定した問題やその解決策を実際に実践していきます。
組織に対して施策を実施していく際に、その目的・背景を伝えていく必要があります。
コンサルタントとクライアントははじめからこの問題を取り扱っていたため経緯を知っていますが、施策の段階で初めて関わるその他の社員はその目的・背景を知りません。そのため改めて目的・背景を伝えていく必要があるのです。
しっかりと目的・背景を伝えたらあとは施策を実践していきます。

6 評価する

組織改善のための施策の効果を評価します。評価には形成的評価総括的評価があります。
形成的評価進行しながら、取り組みの継続改善をするための評価です。
例えば、取り組みに関するアンケート結果を取得し、その結果を踏まえて取り組みを継続改善するようなケースです。
総括的評価取り組みの最後にその効果を総括するための評価です。
特に外部コンサルタントの場合、継続的に仕事をもらうためには一定の効果を定量的に求められやすい面があります。
実際に、社内でも2022年度に行った人事評価制度改定を元にした運用を1年度走りきり、「よかった点」「改善したい点」のフィードバック情報を各部門ごとにまとめてもらっています。これは形成的評価と総括的評価の両方にあたります。よかった点で当初解決したかった課題感が解決できたのかが総括として確認でき、さらに2023年度に改善が必要な部分を把握することができます。

7 別れる

最終的には、組織開発のクライアント自身で行えるようになるのが理想です。つまり、別れるということです。
そのためには、ここに挙げたような一連の流れをクライアント自身が実施できるようになる必要があります。
各プロセスをともに体験しながら、知識・経験を蓄えてもらい、基本的な流れは基礎知識は文書化して参照できるようにするなどして手離れできるようにしていきます。
企業の内部コンサルタントとして各部門の組織課題の解決を支援する場合、人事は少人数、各部は多数という状況になりがちです。こうなるとすべての部門にフルコミットで内部コンサルタントとして入り続けることは難しくなるため、各部門が自走していけるようにしつつ介入〜自走の促し〜別れを繰り返していく必要があります。

まとめ・感想

書籍「人材開発・組織開発コンサルティング」についてまとめました。
今回は自分の担当上、組織開発にフォーカスしてまとめました。人材開発に関する内容が気になる場合は書籍を読んでみてください。また、組織開発の内容に関してもここで取り上げたのはごく一部で、より詳しい内容は書籍を読んでみてください。
450ページをこえる分厚い書籍なのでまだまだ情報量があります。

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