【セッションレポート】成長を支えるCX基盤:日本企業が進める顧客体験のモダナイゼーション #SIGNALCONF

【セッションレポート】成長を支えるCX基盤:日本企業が進める顧客体験のモダナイゼーション #SIGNALCONF

SIGNAL World Tour Tokyo のセッションレポートです。航空や電話占い、不動産といった異なる業界の 3 社が、通信の仕組みを自前で抱えていた頃の制約、および、それを手放すことで得た変化について語ったパネルディスカッションです。
2026.10.09

はじめに

SIGNAL World Tour Tokyo で聴講したセッションのレポートです。

全日本空輸 (ANA)・エキサイト・イタンジの 3 社が登壇し、Twilio を基盤に顧客との接点を作り直してきた経験を語りました。セッションでは、各社が以前に抱えていた制約や導入後の変化、これから取り組む企業への助言について語られました。

セッションの概要は次の通りです。

  • タイトル: 成長を支えるCX基盤:日本企業が進める顧客体験のモダナイゼーション
  • 登壇者:
    • 小川 博司 氏 (全日本空輸株式会社 デジタル変革室サービスプラットフォーム部カスタマーコミュニケーションチーム・リーダー)
    • 藤田 毅 氏 (エキサイト株式会社 執行役員 CTO)
    • 永嶋 章弘 氏 (イタンジ株式会社 取締役 執行役員 CINO)
  • モデレーター: Kei Nagai 氏 (Twilio Account Executive)
  • 日時: 2026 年 10 月 8 日 17:10 から 17:30

https://signal.twilio.com/tokyo26

3 社が Twilio に任せている役割は次のとおりです。

企業 事業 Twilio が担う役割
ANA 旅客航空 搭乗客へのメールと SMS の送信
エキサイト 電話占い 占い師と相談者をつなぐ音声通話
イタンジ 不動産会社向けのシステム 空室の問い合わせに自動で答える電話

導入前の制約

ANA: 欠航や遅延を知らせきれない

ANA は 1 日あたりおよそ 850 便を飛ばし、普段でも 10 万人を超える人が搭乗します。小川氏が最初に挙げたのは、台風やシステム障害でダイヤが大きく乱れたときの連絡でした。知らせが届かないまま空港に着いた搭乗客からは、「今そんな状態になっているの」「それなら新幹線にしたのに」といった声が寄せられていたそうです。

もう 1 つは社内のシステムの事情です。予約や運航を扱う基幹システムとマーケティングのシステムが、それぞれ独自に顧客へ情報を送っており、小川氏はこれを「スパゲッティ」と表現しました。新しい連絡手段を加えようとすると、期間は月単位から年単位、費用は数千万円以上に膨らむ状況だったと振り返りました。

エキサイト: 相談者が増えるほど設備費がかさむ

藤田氏が問題にしたのは、事業が伸びるほど通話基盤の費用も膨らむ構造でした。旧基盤では、最初の投資に加えて、相談の件数に応じて設備の買い足しが続いていたそうです。

イタンジ: 電話でしか動かない商習慣

永嶋氏が紹介したのは、不動産会社どうしが「この物件はまだ空いていますか」と電話で尋ね合う物件確認の習慣です。Web で確認できるようにしても、相手は構わず電話をかけてきたそうです。当時のイタンジは、エンジニアが永嶋氏を含めて 2 人ほどのスタートアップで、フルスクラッチで電話の仕組みを作るような技術は持ちあわせていませんでした。

導入後の変化

ANA は 2018 年から 2019 年ごろにメールから Twilio を使い始め、現在はメールと SMS で搭乗客に連絡しています。小川氏は、先に挙げた 2 つの課題を解決する手段を探すなかで Twilio に出会ったと述べました。モデレーターの Nagai 氏も、天候で便が遅れた際に、食事券の案内などをすぐに受け取れて助かった自身の体験を紹介しました。

エキサイトについて、藤田氏が「我々ぐらいの規模の会社にはかなり大きなインパクト」と評したのが費用の変化です。使った分だけ支払う API に切り替えて以降、およそ 2 年間の運用で減らせた費用は約 1.8 億円にのぼりました。Nagai 氏は、着信が一度に押し寄せても利用者が意識することなく回線を増やせる点を、Twilio の特徴として補足しました。

イタンジは、物件確認に自動で答える電話の仕組みを Twilio の上に作り、会社の最初の製品として世に出しました。多い時期の処理量は月に 50 万件ほどで、1 件ごとに 1 分から 1 分半のやり取りが発生していました。これだけの電話を人が受けずに済むようになったことから、永嶋氏は、この仕組みが不動産業界全体の生産性を大きく押し上げたと自負を語りました。数字に表れない面では、問い合わせの電話に苛立ちながら応じていた担当者の気持ちを穏やかにできたことを挙げています。

これから取り組む企業への助言

最後に、DX を担う来場者に向けた助言が求められました。

小川氏は、世界の航空会社には優れた顧客対応をすでに始めている企業があり、ANA はまだ追いついていないと率直に語りました。電話がつながりにくいという指摘も利用者から受けていると明かしたうえで、すべてを一度には変えられないため、アジャイルに進めていく考えを示しました。

藤田氏が挙げたのは、公開文書の充実と、管理画面からすぐに手を動かせる手軽さです。旧システムから移る際に試作品を手がけたのは 1 人のエンジニアで、期間は 2 か月ほどでした。この話を受けて Nagai 氏が明かしたのが、Twilio の社内の習慣です。社員は入社するとまず Twilio で何かを作ることになっており、Nagai 氏自身は、スプレッドシートの文章を読み上げる仕組みを 1 日もかけずに作ったそうです。

永嶋氏の助言は「UI を殺せ」という刺激的なものでした。スマートフォンが普及したこの 10 年、用事があるたびにアプリを入れ、提供側の都合で設計された画面に利用者のほうが合わせるのが当たり前になりました。永嶋氏は、作り手の側がこの状態を利用者に強いてきたと考えています。AI の進歩と通信の基盤がそろった今なら、専用の画面を用意しなくても用件は果たせるという見立てです。作る側にとっても、画面の開発が要らなくなれば負担は軽くなると付け加えました。

感想

3 社とも通信の仕組みを自前で抱えることをやめ、その分の力を自社の業務の作り込みに振り向けていた点が共通していました。ANA が「まだ追いついていない」と自社の現状を認めたうえで、アジャイルに進めると語っていた姿勢は、大きな組織が変化に取り組むときの現実的な進め方として参考になると思いました。


Twilioの導入支援はクラスメソッドにお任せください!

クラスメソッドでは、Twilioの導入から運用までしっかりサポートいたします。
コミュニケーションツールの導入や最適化をお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

Twilioの詳細を見る

この記事をシェアする

関連記事