登壇資料「事例に見るスマートファクトリーへの道筋〜工場データをAI Readyにする実践ステップ」

登壇資料「事例に見るスマートファクトリーへの道筋〜工場データをAI Readyにする実践ステップ」

スマートファクトリー実現に向けた「AI Ready」なデータ基盤の作り方を、顧客事例をもとに解説。「小さく始めて大きく育てる」アプローチで、見える化からAI活用へ段階的に進む実践ステップを紹介します。
2026.03.09

「自社のデータ活用、いったいどこから手をつけたものか…」

先日、以下のウェビナーに登壇しました。

https://classmethod.jp/seminar/260306-aws-manufacturing-webinar/

このブログでは、上記登壇資料を紹介しつつ、関連リンクなどをまとめています。資料はSpeakerdeckにアップロード済みですが、関連情報などへのアクセスはこのブログが便利だと思いますので、ぜひこちらのブログもご参照下さい。

登壇概要

  • タイトル:事例に見るスマートファクトリーへの道筋——工場データをAI Readyにする実践ステップ
  • 概要:「スマートファクトリー実現には段階がある」 段階的なアプローチと食品メーカーでの実践事例から、「小さく始めて大きく育てる」方法を解説します。

登壇資料

事例にみるスマートファクトリーへの道筋 〜工場データをAI Readyにする実践ステップ〜

製造ビジネステクノロジー部 スマートファクトリーチームマネージャー 濱田 孝治

自己紹介

濱田孝治(ハマコー)
製造ビジネステクノロジー部 スマートファクトリーチーム マネージャー
製造業向けAI・クラウドソリューションの企画・導入支援

  • ブログ / SNS
    • 「クラスメソッド 濱田」で検索
    • はてなブックマーク累計 約15,000個
    • X アカウント:@hamako9999
  • コミュニティ運営
    • JAWS-UG コンテナ支部運営
    • Grafana Meetup Co-organizer, Grafana Champion
  • AWS認定関連
    • SAP, DOP, DBS, SOA, SAA, DVA, SCS, CLF, AIF, MLA, MLS
    • AWS APN Ambassador 2020
  • 執筆書籍
    • みんなのAWS
    • SoftwareDesign 2022年11月号 コンテナ特集

皆さん、製造業のデータ活用、進んでますか?

製造業のデータは「工場現場」だけにとどまりません。以下のように、バリューチェーン全体にわたって多種多様なデータが存在します。

カテゴリ 主なデータ
工場現場 設備稼働、温湿度・環境、品質検査、生産実績、作業日報、設備保全履歴、エネルギー消費
設計・技術 CAD / CAE、BOM(部品表)、技術仕様書・図面
SCM 受発注、在庫、物流・配送、サプライヤー評価
販売・顧客 顧客クレーム、需要予測・販売計画、アフターサービス
経営・管理 原価、人員・スキル、規制・コンプライアンス

なぜ今このテーマなのか

本テーマの背景として、AWS re:Invent 2024〜2025の潮流の変化があります。

参考ブログ:AWS re:Invent 2025のインダストリーブースで見た製造業の未来

re:Invent 2024から2025にかけて変わった点:データ活用のアプローチ「集約型から分散連携型へ」という変化がありました。

2024年(DWH集約・可視化)

  • データを全て意味づけし、物理的な一つのデータソースに集約する方向性

2025年(エージェントによる連携)

  • データを必ずしも一箇所に集めるだけでなく、エージェントに「どのデータがどこにあるか」を教えることで、分散したデータソース(サイロ化されたデータ)をAIが横断的に活用するアプローチ

生成AI・Agentic AIの進歩で、製造業のデータ活用の可能性が急拡大しています。一方で、「AI Ready」な基盤がないと恩恵を受けられないのも事実。今こそ、今後を見据えた取組を始めるタイミングです。

Agenda

  1. 実践「小さく始めて大きく育てる」
  2. 顧客事例「株式会社ロッテ 浦和工場」
  3. 現代のAI活用の方向性
  4. クラスメソッドの支援

実践:小さく始めて大きく育てる

AI Readyの3要素

「AI Ready」とは、以下の3要素がすべて揃った状態を指します。

  1. アクセス可能(Accessible):サイロ化されていない、必要なときにアクセスできる
  2. 統合済み(Integrated):異なるソースのデータが関連付けられている
  3. 品質担保(Quality):正確性・鮮度が担保され、メタデータが整備されている

ここで製造業におけるデータの一覧を確認します。

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マニュファクチャリングチェーン図(引用:日本能率協会コンサルティング)
https://www.jmac.co.jp/glossary/ma/manufacturingchain.html

製造業のデータは大きく以下の4つのチェーンに分類されます。

チェーン 役割 主なデータ例
エンジニアリングチェーン 製品の企画〜設計〜開発 CAD/CAEデータ、BOM(部品表)、技術仕様書、試験・検証データ、設計変更履歴
サプライチェーン 調達〜物流〜販売 発注・納期データ、在庫データ、物流・配送データ、需要予測、サプライヤー評価
プロダクションチェーン(製造) 生産計画〜製造〜品質管理 設備稼働データ(PLC/センサー)、生産実績、品質検査データ、作業日報、環境データ(温度・湿度)、エネルギー消費量

これら全てを一度にやるのは非現実的なため、どこから着手するかの当たりをつけることが重要です。

では、どこから着手するのが良いでしょうか?

判断軸 典型的な着手パターン
課題の緊急度 設備稼働データ → 可視化 → 予知保全
データの取得しやすさ 品質データ → 不良率改善
効果の見えやすさ エネルギーデータ → カーボンニュートラル
経営インパクト

すべてをやろうとせず、自社の課題と照らし合わせて最初の一手を決めることが重要です。

参考:IoT 7つ道具(日本能率協会)

課題の発掘手法について、現場課題の抽出だけに頼りすぎると見えているものにフォーカスする傾向が強いですが、JMACが提唱する「IoT 7つ道具」を活用することで、より網羅的に現状をチェックできるので、オススメです。

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IoT 7つ道具 活用チェックシート(引用:JMAC)

7つの視点(Location、Operation、Situation、Count、Hazard、Availability、Quality)でそれぞれ現場の可視化ニーズをチェックします。

小さく始めて大きく育てる

AI Readyなデータ基盤を作ること自体は手段です。現場が本当に価値を感じているかが重要であり、それが全てのプロジェクトの推進力となります。

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  1. スコープを絞る
  2. 現場に触ってもらう
  3. フィードバックを得る
  4. 方向を修正する
  5. 横展開

現場のフィードバックが結局は最終的な羅針盤となる

顧客事例:株式会社ロッテ 浦和工場

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ロッテ様事例|工場の設備データを「PLC Data To Cloud」で可視化。アジャイル開発により内製化のノウハウを獲得|クラスメソッド

ロッテ浦和工場の課題と取組後の姿

BEFORE(取組前の課題)

  • 生産ライン全体の可視化による意思決定の迅速化が必須
  • 紙の帳票により集計の手間や記入漏れなどが発生
  • 現場から出た要望を素早くシステムに反映させる仕組みが必要

AFTER(取組後の姿)

  • 設備データの一元集約による生産ラインの可視化が実現
  • 紙帳票の約50%を電子化し現場の作業者や管理者の負担を軽減
  • 完全アジャイルによるスクラム開発で内製化のノウハウを獲得

システム構成

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  • PLC Data to Cloud でPLCデータをAWS上に収集
  • データベース構築・Grafanaで数十個のダッシュボード構築
  • 紙帳票をデジタル化(タイムライン型UIを新規設計)
  • アジャイル開発で現場要望を迅速反映

主要コンポーネント:

  • 工場フロア:PLCガーナチョコレートライン / PLCその他ライン → ゲートウェイサーバー
  • AWS:IoT Core(データ収集)→ データウェアハウス ← 帳票アプリ タイムライン型UI
  • Grafana Cloud:設備データの可視化(数十個のダッシュボード)/ アラーム(温度異常の即時検知)/ レポート(設備別生産性評価)

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工場データを時間軸に集約

これまで非構造化データと言われていたデータを時間軸で並べ構造化データとします。これにより計画・調整・障害発生時の因果関係など様々な視点からの分析が容易となります。

  • Point1:これまで整理が難しかった非構造化データを時間軸で整理・管理することで、分析可能な構造化データに変換する。
  • Point2:すべてのデータを時系列に並べて計画・調整・障害時の因果関係など現場で分析しやすくする。

集約されるデータ:生産計画 / 在庫データ / 機器ログ / シフトスケジュール / 報告書

得られた成果(After)

  • 紙帳票の約50%を電子化
  • 設備1台単位での生産性評価が可能に
  • 温度異常を瞬時に検知するアラーム機能とスマホへのオンコール
  • 現場作業者が複数設備対応や別業務に時間配分可能に

成功要因

要因 内容
小さく始める ガーナチョコレート1ラインから開始
現場との協働 IT部門と工場担当者とオペレーターでスクラムチーム
内製化を見据える ノウハウ習得を並行で推進
迅速な意思決定 プロダクトオーナーの元、不確実性を許容・完璧を求めない

現代のAI活用の方向性

AI活用への未来展望

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蓄積されたデータ AI活用テーマ 期待される価値
PLC稼働データ(振動・電流・温度) 設備の予知保全 / 突発故障の予兆検知 → ダウンタイム削減 計画保全でコスト削減
温度データ × 生産パラメータ 品質予測・異常検知 / パターン認識による「いつもと違う」早期検知 品質向上・歩留まり改善
設備パラメータ × 品質実績 生産条件の最適化 / 品質が最安定する条件をデータで導出 品質安定化・条件の標準化
生産実績 × 季節変動 需要予測と生産計画 / 季節商品の生産計画精緻化 在庫最適化・機会損失防止
電子化帳票 × 作業記録 現場ナレッジ活用 / 生成AIによるナレッジ検索 ベテラン知見の組織知化

データ分析AIチャットボットは実装済み

データがあればこのような実装は非常に楽になってきている

生産設備ダッシュボードに格納された全データを対象に、AIチャットボットによる分析機能を提供しています。

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システム構成(分析用チャットボット追加)

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追加コンポーネント:

  • Grafana MCP Server
  • 既存APIのMCP化
  • 全体分析用チャットボット

AIの機能進化と関連ツールの充実により、応答の精度向上と共に実装難易度が劇的に下がっています。

AI Readyの前提条件にクラウド利用は必須なのか?

(改めて)AI Readyの3要素

  • アクセス可能(Accessible):サイロ化されていない、必要なときにアクセスできる
  • 統合済み(Integrated):異なるソースのデータが関連付けられている
  • 品質担保(Quality):正確性・鮮度が担保され、メタデータが整備されている

AI Ready = これら3要素がすべて揃った状態

これらの要件が満たされていれば、AI Readyと言えます。整備された業務フローで管理されたExcelも、AI Readyなデータソースとなりうるのです。

近年AI利用が拡大したユースケース(Excel)

近年AI利用が拡大したユースケース(Google Workspace)

Google Workspace CLI(gws)

  • Google公式からリリース(2026年3月4日)
  • 対応サービス:Drive, Gmail, Calendar, Sheets, Docs, Chat, Meet, Forms, Slides
  • スプレッドシートやドキュメントに保存されているデータをAIエージェントからシームレスに活用可能

Google Workspace CLI(gws)が登場!早速インストールしてClaude Codeから操作してみた

「JSONベースの入出力でAIエージェントとの連携を想定した設計になっているだけあって、Claude Codeとの相性もばっちりでした。自然言語で指示するだけでGoogle Workspaceの操作がそのまま実行できるのは便利」

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最初からAI活用を目指していたわけではなく、設備稼働の見える化と異常アラート発報、帳票記録の省力化の取組の過程で、将来的なAI活用の土台が自然にできていた、というのがロッテ事例の本質的なメッセージです。

ロードマップ:

  • 実現済み(ロッテ事例):データ収集(PLC/センサーのデータ取得)→ 可視化(ダッシュボードによる見える化)→ 異常アラート(閾値ベースのアラーム通知)
  • これから(AI活用フェーズ):予知保全(AIによる故障予兆検知)→ 最適化(AIによる生産条件最適化)→ 自律制御(AIによる自動制御)

明日からできること

まずは自社の現在地を把握するところから全てが始まります。

  1. Step 1 - 現状を棚卸しする:成熟度レベルの確認、データの所在を整理
  2. Step 2 - 課題を言語化する:活用できていないデータ、ボトルネックを特定
  3. Step 3 - 仲間を見つける:IT部門と現場の対話、経営層への説明準備

クラスメソッドの支援

PLC Data to Cloudはリニューアルします

SmartFactory AI Base として生まれ変わります。

SmartFactory AI Base
〜現場の鼓動をデータに変え、工場の未来を創ります〜

  • 工場のあらゆるデータを時間軸で一元管理し、複雑な現場を可視化
  • 現場作業員が自然言語でシステムと会話し疑問に即答するAIが現場をサポート
  • 「Factory Data Driven DX」で実現する、止まらない・迷わない・進化し続けるスマートファクトリーへ

SmartFactory AI Baseソリューション一覧

ソリューション名 カテゴリ 概要
SmartFactory Stream データ収集 ITとOTをシームレスに繋ぎ、あらゆる機器やセンサーのデータをクラウドで一元管理。工場の稼働状況をどこからでもリアルタイムに可視化し、迅速かつ的確な経営判断を実現。
SmartFactory Timeline 時間軸の帳票 機器データ・帳票・生産計画、生産スケジュール、シフトスケジュール、保全記録・在庫など、工場のあらゆる情報を時間軸で統合し、製造現場全体の動きをタイムラインで可視化。
SmartFactory DNA スキル継承・共有 帳票やマニュアルに加え、動画・音声を含む保全記録を生成AIでデータベース化。自然言語での質問にAIが即答することで、現場やコールセンターでの「情報を探す時間」をゼロに。
SmartFactory Meister FAQ・ナレッジ 収集データとAIを活用して熟練工の暗黙知を形式知化し、デジタルツイン上で再現。仮想環境でのシミュレーションを通じた検証や教育により、技術伝承を加速。
SmartFactory Sense 予兆保全・予知保全 機器やセンサーのデータをもとにAIが故障の予兆や異常を検知。学習データを日々更新して精度を高めるとともに、異常時の即時通知によってトラブルを未然に防ぎ、不良品の発生を最小限に抑える。

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SmartFactory AI Base 導入までの流れ

  1. お問い合わせ:メールフォームよりお気軽にお問い合わせください。
  2. 現地ヒアリング:工場・現場へお伺いし、設備や運用状況を丁寧に確認。課題や目的を正確に把握するため、綿密なヒアリングを行います。
  3. 提案・見積もり:ヒアリング内容をもとに、最適な構成・運用プランをご提案します。
  4. ご契約:提案内容にご納得いただいた上で、正式にご契約となります。
  5. 機器設定・クラウド構築:弊社にて機器の初期設定およびクラウド環境の構築を行います。
  6. 現地設置:現地にて機器の設置・接続・動作確認を行います。
  7. サービス運用開始:設置完了後、データ収集などサービスの運用を開始。必要に応じて運用サポートや改善提案も行います。

機器の納品後、最短で1ヶ月で構築

まとめ:「AIによるデータ活用は段階的に進めることでも十分に価値はあるし、本質的な取組となり得る」

製造業におけるデータ活用、これから非常に重要なトピックになっていくと思います。ゴールが壮大なため、非常に大掛かりな仕組みやトップダウンによる全社的なアプローチが必須かと思いがちですが、AIエージェントを活用した分散的な管理でも、十分に活用できる未来が見えてくると思います。

できるところから、現場の価値に根ざして取り組みを進めることが重要なのではないでしょうか。

  1. 段階的に進める:スマートファクトリー化は一足飛びではなく段階的に
  2. AI Readyな基盤を作る:AIの前にデータを活用できる状態を
  3. 小さく始めて大きく育てる:最初の成功体験が次の投資を生む

それでは今日はこのへんで。濱田孝治(ハマコー)でした。

資料中参考リンク一覧

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