
ロボタクシー「Zoox」がラスベガスで商用利用開始。昨年 re:Invent で無人の公道走行を体験したときを振り返ってみる
こんにちは、製造ビジネステクノロジー部の若槻です。
Amazon 傘下のロボタクシー企業 Zoox が、2026 年 8 月 10 日からラスベガスで有料サービスを開始しました。同社にとって初の有料展開です。
公式のアナウンスがこちらです(2026 年 7 月 30 日)。「乗車料金を課金するための規制上の承認を得た」という発表になっています。
実は昨年 12 月、AWS re:Invent 2025 で現地に行った際に、この Zoox に乗っています。当時はまだ無料でした。
「無料の試乗サービス」だったものが「お金を取るサービス」になるまでに何があったのか。本記事では有料化のニュースを主役に据えつつ、当時の乗車体験を裏付けとして挟みながら整理します。前記事は乗車の流れを追ったレポートなので、今回はそこには踏み込まず、制度・技術・競合の話を中心にします。
何が起きたのか — 有料化の中身
料金
基本料金に、乗車時間と距離を加味して算出されます。最適ルートをもとに計算され、予約前に最終的な料金が表示される方式です。
空港への移動や、球体シアター「Sphere」や T-Mobile アリーナでの大規模イベント時など、目的地によっては追加料金が乗る場合があります。この場合も事前に明示されます。
この料金体系は、Zoox が明らかにした内容として TechCrunch の記事(2026 年 8 月 5 日)に書かれています。Zoox の公式サイトには料金表のページが無く、実額はアプリで確認する形です(2026 年 8 月 9 日時点)。
ただし、US App Store の掲載画像には料金の表示された画面が写っています。マンダレイ・ベイからリゾーツ・ワールドまでの区間で 5.00 ドル、という表示です(US App Store の Zoox の掲載画像。v26.29.405 / 2026 年 8 月 3 日更新、2026 年 8 月 10 日確認)。ストア掲載用に作られた画像なので実勢価格を保証するものではありませんが、桁の感覚をつかむ材料にはなります。
アプリ自体は Google Play(US ストア)で公開されており、リリースは 2025 年 8 月 19 日、累計ダウンロードは 10 万回以上となっています。

Google Play(US ストア)の Zoox アプリ。リリース日は 2025 年 8 月 19 日で、累計 10 万ダウンロード超
運行エリア
アプリを開くと、まずサービス提供中の都市がピンで示された地図が出ます。北米に 4 箇所です。

アプリ起動直後の画面。ピンが立っているのがサービス提供中の都市
「Where to ride」を開くと、ラスベガスの運行エリアと運行時間が確認できます。運行時間は月曜〜日曜の 11:00〜翌 1:00、エリアはラスベガス・ストリップを中心に、西は Spring Valley 手前、東は Paradise 一帯までが囲われています。

「Where to ride」の画面。ラスベガスの運行エリアと運行時間、そして「Coming soon」の 3 都市
対象に入っている主要スポットは次のとおりです(EV CAFE の記事(2026 年 8 月 5 日)より)。
- 球体シアター Sphere
- T-Mobile アリーナ
- ラスベガス・コンベンションセンター
- MGM グランド
- リゾーツ・ワールド
re:Invent の会場周辺がまるごと入っているので、次回以降の re:Invent 参加者は普通に足として使えることになります。私が乗ったときの乗車地点は CONRAD、目的地はニューヨーク・ニューヨークでした。

アプリを操作するとドアが自動で開くので、そのまま乗り込む(写真は前記事より)
なお、乗降地点そのものの一覧は公式サイトには見当たらず、上記のとおりアプリの地図で確認する形です。公式に出ているのは Las Vegas Destinations Hours というページだけで、これは乗降地点になっている施設の一部について、その営業時間を案内するものです。2026 年 8 月 9 日時点で載っているのは、体験型エンタメ施設の AREA15、ゴルフ施設の Topgolf、ショッピングモールの Fashion Show Las Vegas の 3 つでした。ページの注記には「これらの施設では、Zoox のサービス提供時間内であればいつでも乗降をリクエストできる」とあり、施設が閉まっていても乗降自体はできるという趣旨です。
なぜ「許可」が必要だったのか — NHTSA Part 555 適用除外
有料化の前提として、2026 年 7 月 31 日に NHTSA(米道路交通安全局)から適用除外を取得しています。ここが今回のニュースの本質だと思うので、少し丁寧に書きます。
ハンドルが無い車は、そもそも基準に適合できない
米国の車両は FMVSS(連邦自動車安全基準/Federal Motor Vehicle Safety Standards) を満たす必要があります。ところが FMVSS は人間が運転することを前提に書かれているため、ハンドルもペダルも運転席も無い Zoox の車両では、そもそも「適合」しようがない条項が出てきます。
そこで使われたのが、運輸長官に一時的な適用除外の権限を与える 49 U.S.C. 30113 を根拠とする、49 CFR Part 555 の適用除外(exemption)です。
免除された 8 つの FMVSS
免除の対象は次の 8 項目でした。官報(Federal Register)の当該文書の SUMMARY に列挙されています。

8 項目の列挙は SUMMARY に、有効期間は DATES にある(赤枠と吹き出しは筆者。2026 年 8 月 9 日取得)
| FMVSS | 名称 | 人間が運転しないと何が起きるか |
|---|---|---|
| No. 103 | Windshield defrosting and defogging systems(フロントガラスの除霜・除曇) | 運転者が前を見る必要がない |
| No. 104 | Windshield wiping and washing systems(ワイパー・ウォッシャー) | 同上 |
| No. 108 | Lamps, reflective devices, and associated equipment(灯火器) | ウインカーの操作部やヘッドランプの切替スイッチを求める条項が該当 |
| No. 111 | Rear visibility(後方視界) | 室内・室外ミラーやリアビューの画像表示を求める条項が該当 |
| No. 135 | Light vehicle brake systems(軽車両のブレーキ) | 運転者がペダルを踏む前提の要件 |
| No. 201 | Occupant protection in interior impact(内装衝撃時の乗員保護) | 座席配置が前向き前提でない |
| No. 205 | Glazing materials(窓ガラス材料) | — |
| No. 208 | Occupant crash protection(衝突時の乗員保護) | 同じく前向き着座が前提 |
ミラーやウインカーレバーを「付けろ」と書いてある基準に、運転者のいない車が適合できるはずがない——という、言われてみれば当たり前の話が、制度としてはここまで手続きを踏まないと解けないわけです。
この適用除外は、アプリから読めるユーザー向けのマニュアルにも明記されています。「Zoox のロボタクシーは適用される FMVSS からの適用除外を受けており、ブレーキペダル、ウインカーやハイビームを操作する物理スイッチ、ワイパー、ミラー、サンバイザー、バックカメラの表示を備えていない」と、免除された 8 項目にほぼそのまま対応する記述が並びます。

アプリから読めるマニュアルの「Vehicle overview」。適用除外を受けている旨と、そのために備えていない装備が列挙されている
期間と台数
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 有効期間 | 2026 年 7 月 31 日 〜 2028 年 7 月 31 日(2 年間) |
| 台数 | 任意の 12 か月間に、商用展開のために流通させられるのは 2,500 台まで |
| 対象車両 | 官報上の呼称は 「Zoox sedan」 |
該当箇所はここです。直前に「for two years」と書いてあるので続けて読むと総数に見えますが、条件節は「in any 12-month period」で切られています。

「for two years」の直後に「in any 12-month period」の条件が付く(赤枠と吹き出しは筆者。2026 年 8 月 9 日取得)
課された条件
NHTSA は、免除対象の FMVSS に適合しない Zoox のロボタクシーでも「非免除車両と同等の安全水準(equivalent level of safety)を提供する」と認定したうえで、条件を付けています。
- Operational Authorization(運行認可)が別途あり、公道での運行そのものはこちらが規律する
- 車両・ADS などのデータを NHTSA に提供できる状態にしておくこと
- 各車両に、49 CFR part 567 の要件を満たすラベルを貼ること。しかもそのラベルは「〜の要件を除く。NHTSA 適用除外 No. 〜に基づき免除」という文言で終わる必要がある
- 車両の変更が「同等の安全水準」の認定に影響する場合、適用除外の変更申請が必要になりうる(パブリックコメント込み)
- リコールや報告の義務は、この適用除外によって免除されない
- 条件違反は、適用除外の取消しを含む措置の対象
つまり「基準を満たしている」のではなく、「基準の適用を免除されていることを、車体にラベルで明示して走る」という状態です。
50 万回の無料乗車からの道のり
Zoox はラスベガスで、2025 年 9 月以降に 50 万回を超える無料乗車を積み上げています。
私が乗ったのは 2025 年 12 月初旬なので、この 50 万回のうちの 1 回だったことになります。当時は「無料でいいのだろうか」と思いながら乗っていましたが、有料化に必要な実績を積むための期間だったと考えると腑に落ちます。
ラスベガス以外では、サンフランシスコ・オースティン・マイアミで無料の試乗サービスを提供中です。有料化はラスベガスが初となります。アプリ上でもこの 3 都市は「Coming soon」の扱いで、サンフランシスコにはウェイトリストがあることが分かります。
実際に乗ってどうだったか
詳細は前記事に譲りますが、有料化のニュースを踏まえて「あれは何だったのか」と思い返す点を挙げておきます。以下の写真はいずれも前記事のものです。

大通りに出た後は 50〜60km/h で走行。この速度域を無人で走ります
運転席が無いことの意味
車内は対面する 2 人掛けの椅子が 2 列で、運転席がありません。乗ったときは「広くて快適」という感想でしたが、これは内装の工夫ではなく、FMVSS の適用除外を取らないと公道に出せない構造だったわけです。

運転席が無いので、2 人掛けの椅子が 2 つ向かい合う配置になる
対面座席のためのエアバッグ
この対面座席は、安全装備の側にもそのまま跳ね返っています。マニュアルのエアバッグの節には、一般的な乗用車では見ない構成が並びます。
- Horseshoe airbags — 天井から U 字型に展開する
- Frontal airbags — 各座席の前に、天井から下りてくる
- Rear airbags — ヘッドレストの裏から出る
- Seat pan airbag — 座面から出る

マニュアルのエアバッグの節。天井から展開する Horseshoe airbags や Frontal airbags など、対面座席を前提にした構成になっている
免除された FMVSS のうち No. 201(内装衝撃時の乗員保護)と No. 208(衝突時の乗員保護)は、まさに「乗員が前を向いて座っている」ことを前提にした基準です。前向き着座を捨てた以上、基準の適用を外したうえで、別の形で同等の安全水準を作りにいくしかない、ということがこの図から伝わってきます。
前後が対称であること
外観を撮った写真を見返すと、前後がほぼ同じ形をしています。どちらが前でもよい設計で、切り返しの必要がありません。人間が運転する車を改造したのではなく、最初からロボタクシーとして設計されたことが形に出ています。

リア側。フロントとほぼ同じ形で、どちらが前でもよい設計になっている
天井の四隅
当時「天井の四隅にカメラやセンサーが付いている」と書きました。改めて調べると、Zoox のセンサー構成は次の通りです。
- LiDAR
- レーダー
- カメラ
- 長波赤外線カメラ(thermal)
- マイク
四隅に配置することで 360 度の視野を、しかも冗長性を持たせて確保するという設計です。長波赤外線カメラとマイクが入っているのが個人的には意外でした。マイクは緊急車両のサイレンを聞くためと思われます。

天井 4 隅のカメラとセンサー。ここに LiDAR・レーダー・カメラ・長波赤外線カメラ・マイクが収まっている
センサーが集めた先は AWS — re:Invent 2025 のセッション
天井四隅のセンサーが何を見ているかは外から分かりますが、そのデータがどこへ行って何になるのかは乗っているだけでは見えません。ここは AWS 側から語られていて、私が Zoox に乗ったのと同じ re:Invent 2025 で、Zoox 自身が登壇したブレイクアウトセッションがあります。
AMZ304「Zoox: Building Machine Learning Infrastructure for Autonomous Vehicles」(AWS Events チャンネル、2025 年 12 月 4 日公開、約 55 分)です。登壇は Zoox の Jim Robinson-Bohnslav 氏・Anindya Saha 氏と、AWS の Avinash Kolluri 氏。以下は英語字幕から拾った内容です。
ラスベガスで実際に出くわした状況
前半は、ロボタクシーが現実に遭遇した場面の紹介でした。ラスベガスの事例が多く、自分が走った街の話として聞けます。
- サイレンを鳴らさず点滅灯だけを点けた消防車 2 台が右車線におり、消火ホースが走行車線を横切っていた。これを検知して安全に回避する経路を立てた
- ストリップを時速 30 マイルで走行中、6 車線を横断してくる歩行者
- 工事現場の旗振り員の格好をした子ども。Zoox は旗振り員の指示に従う設計なので、従うべきかどうかの判断が要る
- ストリップを行く戦車の車列。「我々のオントロジーに戦車のクラスは無い」とのこと
- 標識の上に載せられたパイロン、炎上している車、手書きの「Keep right」の工事看板
- 観光バス半分・ショッピングカート半分の乗り物 Cartzilla
「18 年運転してきてこんなものは見たことがないが、我々のロボタクシーはこういうものを日常的に見ている」という言い方をしていて、ここが自動運転の難しさの本体なのだと思いました。
個別対応をやめて、1 つの大きなモデルに寄せる
面白かったのが方針の説明です。「旗振り員の格好をした子どもかどうかを判定する専用モデル」のような作り込みは、短期的には必ず勝つ。それでも Zoox が賭けているのは逆側で、人間の知識やバイアスをできるだけ入れず、大きなモデルを大量のデータで学習させるという長期戦です。
目指しているのは、多数のタスクとデータセットを 1 つの Multimodal Language Action Model に統合すること。中核は LLM で、出力は加速・制動・操舵といったロボット制御、それに 3D 検出、質問への回答、シーンの説明。入力はテキストのプロンプトに加え、カメラ映像と、Zoox が大量に持つ LiDAR・レーダーのデータを埋め込みにして通します。

入力(テキスト・映像・LiDAR/レーダー)を LLM に通して、ロボタクシーの動作まで出す。AMZ304 の 12:25 のスライドより
プロンプトの例としてスライドに書かれていたのは「You are the operator of a Zoox robotaxi. How should you drive in this scenario? Think step-by-step.(あなたは Zoox ロボタクシーのオペレーターです。この状況でどう運転すべきか。順を追って考えよ)」でした。あの車内で起きていたのは、こういう問いへの応答だったということになります。
狙いは zero-shot、つまり戦車を 5 台見てから対応できるようになるのではなく、初めて見た瞬間に正しく扱えることだと明言していました。
学習は、事前学習には手を出さず、Qwen3-VL のような既存の Vision-Language Model から出発します。そこから、数万時間の人間の運転データを使った大規模な教師ありファインチューニング、思考過程の学習、そして最難関のシナリオに対する強化学習(GRPO などの手法)という順です。
基盤は SageMaker HyperPod
後半は AWS 側の話で、Amazon SageMaker HyperPod に移した効果が語られていました。全体構成はこうなっています。

左が Zoox 側、右が AWS マネージドの HyperPod クラスタ。GPU は p5en と P6-200。AMZ304 の 33:05 のスライドより
データセットとチェックポイント、コードとモデルの重み、FSx は Zoox 側の VPC に置いたまま、計算だけを AWS マネージドの HyperPod クラスタに寄せる形です。実験の記録は Comet ML、メトリクスは CloudWatch という切り分けになっています。
効いていたのが、上の全体構成図で「SM Hyperpod Cluster」の枠の右上に置かれている EFA です。大量の GPU で 1 つのモデルを学習させるときは、GPU 同士がやり取りするデータ量が膨大になり、ここが遅いと GPU が通信待ちで遊んでしまいます。そこで使うのが RDMA(Remote Direct Memory Access)——OS や CPU を介さずに、相手のマシンのメモリへ直接読み書きする方式です。EFA(Elastic Fabric Adapter)は、これを AWS のネットワーク上で実現するネットワークアダプタにあたります。
- 以前は この EFA と RDMA の導入がうまくいっていなかった。EFA のインストーラ、GPU 間通信ライブラリのプラグイン、CUDA ドライバのバージョンを噛み合わせる必要があり、外す組み合わせが多い。HyperPod は最初からこれが動く状態で来る
- 結果として GPU 使用率が 95% まで上がり、複数ノードに広げてもほぼ線形にスケールするようになった
- 扱えるモデル規模が 4 億パラメータ程度から、常用で 70 億、さらに 320 億へ
- 障害の検知と自動再開。夜間にジョブが落ちると、翌朝までに P5 / P6 インスタンスの 6〜7 時間分を無駄にする。「これらのマシンは高価で、そんな余裕はない」
上に載せたスライドの画像 2 点は、いずれもこのセッション動画からの引用です(2026 年 8 月 9 日取得。© 2025 Amazon Web Services, Inc.)。
四隅のあのセンサー群は、1 台ごとの賢さのためだけに付いているのではなく、走った分だけ学習データを集めて戻すための入り口でもあるわけです。乗車中に「よくこの状況を捌けるな」と思った場面が、こういう基盤の上に乗っていたと考えると、体験の見え方が少し変わりました。
前年の re:Invent 2024 にも同じ系統のセッションがあり、こちらはラスベガスに配備した専用設計ロボタクシーを題材にしています。
55 分は長い、という場合は 2 分の概要動画もあります。
なお、AWS には Zoox の導入事例ページもあり、自社のスパコンクラスタを AWS の HPC で補うハイブリッド構成でシミュレーションを回している、という書き方がされています。
2026 年のロボタクシー勢力図
Zoox の位置づけを見るために、現在地を並べておきます。
| 企業 | 有料での提供 | 規模・展開 | アプローチ |
|---|---|---|---|
| Waymo(Alphabet) | 提供中。2026 年 7 月 8 日にはサンディエゴ・ラスベガス・タンパ・デンバーで無人の商用運行を開始 | 約 3,000 台、週あたり約 50 万回の有料乗車。米国 11 都市 | 既存車両ベース(ジャガー I-PACE 等)を自動運転化 |
| Tesla | 提供中。オースティンは 2025 年 6 月開始で、2026 年 3 月 7 日に基本料金 3.00 ドル+1.40 ドル/マイルへ改定。ただしカリフォルニアは州規制で安全ドライバーが同乗 | 2026 年上期に米国 7 都市へ展開 | 量産車をそのまま使う。カメラ中心 |
| Zoox(Amazon) | 2026 年 8 月 10 日にラスベガスで開始(本記事) | ラスベガスで有料化、他 3 都市で無料 | 専用設計車両。ハンドル無し |
| Baidu Apollo Go | 提供中。2026 年 4 月 1 日にはドバイで無人の商用配車を開始 | 中国 10 都市超 | 中国国内が主戦場 |
| May Mobility | Lyft の通常運賃で乗れる(自動運転車でも追加料金なし)。ただし当初は安全要員が同乗 | Lyft と組みアトランタで展開 | トヨタ・シエナの改造車 |
「有料」自体は Zoox が初ではない
並べてみると分かるのは、有料で人を運ぶこと自体は、すでに各社がやっているという点です。Waymo は週 50 万回を有料で回していますし、Tesla も 1 年以上前から課金しています。
Zoox が「初」なのは、ハンドルもペダルも無い専用設計の車両で、有料の商用運行が認められたという部分です。他社が使っているのは、もともと人間が運転できる車か、安全要員が同乗した状態の車です。
- Waymo — ジャガー I-PACE などの市販車ベース。運転席も操作装置もある
- Tesla — 量産の Model Y。カリフォルニアでは安全ドライバーが座っている
- May Mobility — トヨタ・シエナの改造車。当初は安全要員が同乗
- Zoox — そもそも運転席が無いので、FMVSS の適用除外を取らないと商用に出せなかった
「有料化した」というニュースの本当の中身は、料金を取り始めたことではなく、その手前の制度の壁を越えたことだと思います。
ラスベガスに Waymo が入ってきている
見逃せないのが、Waymo が 2026 年 7 月にラスベガスで運転席無人の運行を開始していることです。Zoox にとってのホームグラウンドに、最大手が入ってきたタイミングでの有料化ということになります。
Waymo は年内に週 100 万回の乗車を目標に掲げています。台数でも乗車回数でも、現時点では Waymo が大きく先行しています。
一方でテスラはラスベガスでの提供を発表していません。
アプローチの違いが効いてくる場面
- Waymo・Tesla は既存の車両をベースにするので、車両調達は比較的やりやすい
- Zoox は専用設計なので、車両そのものを作る必要があり、しかも今回のような適用除外が要る
立ち上がりは Zoox のほうが明らかに重いわけですが、乗ってみると、その重さの見返りが車内空間として返ってきているとは感じました。運転席が無いぶん、同じ全長でも人が座れる面積が広い。
楽観だけではない
書いておくべき点として、課題も指摘されています。
まず、2024 年 5 月に NHTSA が調査を開始しています。二輪車が Zoox 車両の後部に追突した事案が 2 件報告されたことを受けたものでした(CNBC、2024 年 5 月 13 日)。
リコールも複数回発生しています。いずれもソフトウェアの更新で対応するものです。
| 時期 | 台数 | 内容 |
|---|---|---|
| 2025 年 3 月 | 258 台 | 想定外の急ブレーキ。上記の NHTSA の予備調査を受けたもの(TechCrunch) |
| 2025 年 5 月 | 270 台 | ラスベガスで乗用車と衝突(4 月 8 日)。他車が垂直方向からゆっくり接近して停止する場面での予測が外れる問題(TechCrunch) |
| 2026 年 7 月 | 105 台 | ラスベガスで濃煙に覆われた消防活動中の現場に進入(6 月 20 日)。煙の検知と視界不良時の緊急事態の認識を改善(TechCrunch / CNBC) |
3 件目は有料化のわずか 2 週間前の話です。緊急車両や事故現場への対応は、適用除外が付与された時点でも未解決の課題として指摘されています(TechTimes、2026 年 7 月 31 日)。
前述の適用除外の条件に「リコールや報告の義務は免除されない」と明記されていたのは、まさにこの領域が動いている最中だからだと考えると読みやすくなります。
有料化はマイルストーンではありますが、「完成した」という話ではないという前提で見ておくのが妥当だと思います。
おわりに
昨年 12 月に乗ったときは、正直「珍しい体験ができた」くらいの感覚でした。それが 8 か月で有料サービスになったというのは、思っていたより速い展開です。
特に、ハンドルの無い車を公道で商用に走らせるために、既存の安全基準そのものを一部外すという手続きが取られた点は、日本で同じことをやろうとしたときに必ず論点になるはずです。制度が技術に追いついていない領域では、基準への適合ではなく、適用除外という形で道を開けるかどうかが効いてきます。
日本にも早く導入されることを期待したい、という前回の締めは変わりませんが、「そのためには制度側で何が要るのか」が今回で少し具体的に見えた気がします。
同じ re:Invent / AWS Summit まわりの自動運転ネタとして、以下も書いています。
以上











