【IVR から AI 会話へ】 AWS Summit Japan 2026 カスタマーサポートセッション横断レポート

【IVR から AI 会話へ】 AWS Summit Japan 2026 カスタマーサポートセッション横断レポート

AWS Summit Japan 2026で、電力・銀行・自治体の3組織によるコンタクトセンター変革のセッションに参加しました。共通していたのは、従来のボタン選択型IVRから、AIが顧客と自然に会話して用件を分類する新しい形のIVRへの移行です。各組織の実例と共通トレンドをまとめます。
2026.06.27

こんにちは、業務効率化ソリューション部の入井です。

AWS Summit Japan 2026 で、カスタマーサポート領域のセッションを 3 つ聴講しました。

  • 東京電力におけるコンタクトセンター変革 - CX 向上に向けた AI 活用の取り組み(AIM240)
  • 住信SBIネット銀行が挑む生成AIコンタクトセンター変革 (AIM263)
  • 「区民の問い合わせ、AI にどこまで任せる?」 ― 品川区 × SHIFT が挑む自治体音声 AI 実証の現在地(PRT246)

電力、銀行、自治体と業種はバラバラですが、3 セッションに共通するトレンドがありました。
それは、従来のボタン選択型 IVR (自動音声応答) が限界を迎えており、AI が顧客と自然に会話して用件を分類する新しい形の IVR へ移行するという取り組みです。

本記事では、この共通トレンドを軸に 3 つの事例を横断的にまとめます。

各組織が直面していた IVR の限界を理解する

3 つのケースすべてで、従来の IVR に課題を感じていた点が共通しています。

東京電力エナジーパートナーでは、IVR で選択された用件と実際の会話内容が合わないケースが頻発していました。結局、人手で用件を再分類する必要があり、コールリーズン分析のデータとしても信頼性に欠けていたといいます。

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住信SBIネット銀行では、顧客の目的別に窓口を用意しているにもかかわらず、目的外の入電が多数発生していたことが課題でした。たとえばクレジットカードの事故受付窓口に一般的な問い合わせが入ってきてしまうケースがあり、IVR による振り分けの限界が表れていました。

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品川区では、年間約 100 万件の電話問い合わせのうち、戸籍住民課への転送が 25% と最多でした。しかし、問い合わせ者の属性 (本人か代理人か、国内からか国外からか等) によって案内内容が変わるため、IVR の一問一答では正しい案内ができないという課題がありました。

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つまり 3 つのケースに共通していたのは、従来のボタン選択型 IVR の限界です。電話窓口は今後もなくなりませんが、単純なボタン選択では顧客の真の用件を捉えきれないという課題が長く続いていました。

各組織が AI 会話をどう導入したかを比較する

東京電力エナジーパートナー: 1 年でオンプレ 18 拠点を移行し、IVR 廃止を目指す

東京電力エナジーパートナーの取り組みは 2 フェーズに分かれています。

Phase 1 (2025 年) では、オンプレの受電システムを全 18 拠点で Amazon Connect Customer へリプレイスしました。この移行にあわせて、独自の業務基盤 SEEDS (Smart Engagement and Efficient Data System) を構築しました。会話のリアルタイムテキスト化、AI による会話要約、コールリーズン分析、法令チェックといった生成 AI 機能も導入しています。

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Phase 2 (2026 年以降) では、IVR を廃止して AI による用件振り分けへ移行する計画です。AI が会話形式で顧客の用件をヒアリングし、適切な担当へ振り分けます。従来のシナリオ型ボイスボットから、生成 AI による自然な会話への進化も予定しています。オペレータ支援の面でも、リアルタイムの会話内容から FAQ やナレッジを AI がサジェストし、後処理もサポートします。これにより、オペレータの自己完結化を目指しています。

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住信SBIネット銀行: 有人対応を 57% 削減し、AI agents でさらに深化させる

住信SBIネット銀行は、IVRではなくAIでの事前対応を導入し、またAIが直接回答文を生成するのではなく、コールリーズンを判定したうえで事前に学習済みの FAQ を提示する方式を採用しています。

本格導入後の受電内訳は、FAQ 回答が 42.1%、他チャネル誘導が 14.8%、有人対応が 43.2% です。有人対応を約 57% 削減でき、コストの削減につながりました。

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さらに、Amazon Connect AI agents の検証も進めています。従来のAIの性能ではキャンペーンというキーワードだけで複数あるキャンペーンのうちの1つを決めつけてFAQを選んでしまうケースがありました。一方今回検証しているAI agents では、どのようなキャンペーンについて知りたいかを深堀りして質問できるため、FAQ の回答精度が向上を見込んでいます。
PoC では通話・チャットの両対応で回答精度 95% 以上を達成し、現在は本格開発に向けた要件定義に入っています。

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品川区: AI に任せる業務と人が担う業務の境界線を探る

品川区では、IVRの代わりにAIが一次対応し、定型的な問い合わせには AI が回答し、個別判断が必要な場合は人へ接続する方式となっています

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特に興味深かったのは、知識や制度をどのようにAIに読ませるかのアプローチです。既存の業務マニュアルは人間が読む前提で設計されておりExcelの結合セルや空欄で意味を伝える表現は AI が正しく解釈できません。そのため、既存の業務マニュアルをそのままRAGに取り込むのではなく、決定木モデリングやセマンティックチャンキング、ガードレール実装などによって AI ネイティブな形式に変換していました。変換自体も生成 AI で自動化し、人は生成されたテキストの確認に集中する設計です。

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3つのケースから見える共通点

AI と人の役割を切り分けている

現在の AI の性能では、すべての問い合わせを自動で処理することはできません。そのため各組織は、AI が得意な領域と人が担うべき領域を切り分けています。

東京電力エナジーパートナーは、AI がナレッジをサジェストし後処理をサポートすることで、オペレータが自己完結できる環境を目指しています。住信SBIネット銀行は、FAQ 回答と他チャネル誘導を AI が担い、有人対応を 43.2% まで減らしました。品川区は、一般的な問い合わせは AI が回答し、制度解釈や個別事情の判断は人が担うという切り分けです。

いずれも、定型的な対応や機械的な情報整理はAIに任せ、初めての種類の問い合わせや高度な判断が必要なケースには人が対応するという構造です。人のリソースを本当に人手が必要な領域へ集中させることが、AI 活用の主な狙いだといえます。

一方で、カスタマーサポートは人の手で対応してほしいという顧客のニーズも依然として存在します。ただし、AI での対応であっても問題が解決できれば構わないという層もいます。コールセンターでの AI 活用が当たり前になるにつれ、この空気感は変わっていく可能性があり、今後の成り行きを見守る必要がありそうです。

プラットフォーム側の標準化も進んでいる

今回各組織が個別に構築してきたこれらの仕組みは、Amazon Connect Customer 自体のプラットフォーム機能としても提供され始めています。同じ AWS Summit の Amazon Connect Customer のセッション (BIZ326) では、AI エージェントによる自律的な用件ヒアリング、コンテキストを維持したままの人への引き継ぎ、AI エージェントのパフォーマンス評価といった機能がデモされていました。各組織が試行錯誤しながら構築してきた仕組みが、プラットフォーム標準として提供されつつあります。

https://dev.classmethod.jp/articles/aws-summit--2025-session-report-/

おわりに

3 つのセッションを通じて見えたのは、従来のボタン選択型 IVR が限界を迎え、AI による会話型の用件分類へ移行するという明確なトレンドです。今回聴講したセッション以外でもこの流れは見られ、従来型 IVR の廃止と AI 会話への置き換えは、コンタクトセンターの大きな潮流になりつつあるようです。

なお、今回紹介されているようなAI による事前ヒアリングの仕組みは、Amazon Q in Connect のセルフサービス機能を使って構築できます。具体的な設定手順については、弊社ブログのAmazon Q in Connectセルフサービスで、エージェント転送前に用件を自動ヒアリングするで詳しく解説していますので、気になった方は確認してみて下さい。

https://dev.classmethod.jp/articles/amazon-q-in-connect-pre-agent-inquiry-handoff/


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