
【セッションレポート】Wwise 2026.1における集中的かつ持続的なワークフロー / WwiseとUnrealによるWwise Acoustics活用法 #CEDEC2026
はじめに
CEDEC2026 で聴講したセッションのレポートです。オーディオミドルウェア Wwise について、二部構成で解説されました。前半は次期バージョン Wwise 2026.1 のワークフロー改善、後半は Unreal Engine と組み合わせた Wwise Acoustics の活用法です。
セッションの概要は次の通りです。
- タイトル: Wwise 2026.1における集中的かつ持続的なワークフロー / WwiseとUnrealによるWwise Acoustics活用法
- 登壇者: Damian Kastbauer 氏、合田 浩 氏 (いずれも Audiokinetic 株式会社)
- 日時: 2026 年 7 月 23 日 10:50 から 11:50
- 会場: 第 13 会場

Wwise 2026.1 の集中的なワークフロー
前半では、次期バージョン Wwise 2026.1 が目指す、集中的で継続的なオーサリング体験が紹介されました。
軸になるのは、ランタイムでの試行錯誤を速める仕組みです。ゲームを動かしながら音を編集するライブエディット、変更した素材を実行中に転送するライブメディアトランスファー、そして近日公開予定のリプレイ機能が連携し、素早く安定したイテレーションの基盤を作ります。
リプレイ機能は、2026.1 の Beta でついに搭載されます。これまでゲーム実行中に鳴っていた音を後から追うには、ログを頼りにするしかなく、問題が起きたときの状況を再現するのが困難でした。リプレイ機能があれば、そのときの音をそのまま辿り直せます。
もう一つの柱がオーサリングの刷新です。新たに統合された Segment により、複数トラックを時間軸に並べるタイムベースのキャンバスが導入され、トラックベースのサウンドや音楽のデザインに視覚的な分かりやすさをもたらします。

Wwise Acoustics による空間音響
後半は合田 浩 氏に交代し、Unreal と組み合わせた Wwise Acoustics の活用法が解説されました。昨年のセッションの続きです。
Wwise Acoustics は、空間の中で音がどう伝わるかをシミュレートする機能群です。障害物による遮蔽 (オクルージョン・オブストラクション) 、部屋と出入り口を扱うルーム・ポータル、回折や透過、そして残響を部分的に変えるリバーブゾーンなどがあります。
今年の中心である初期反射は、ランタイムプラグインの Wwise Reflect が担います。ジオメトリの形状をもとに、壁などで跳ね返る反射音を再現するもので、反射音には距離に応じた遅延やドップラー効果も加わります。壁で何回跳ね返るかを表す反射次数は最大 4 次まで対応し、次数を上げるほど表現は豊かになる一方で処理負荷も増します。

続いて、これらの機能をどんな場面で使うべきかが整理されました。部屋や洞窟のように囲まれた空間はルーム、壁や柱のように音を遮ったり反射させたりする形状はジオメトリ、といった役割分担です。初期反射の Wwise Reflect は、足音や銃声が空間の広さを感じさせる FPS やホラー、VR で効果が大きい一方、風や雨のような環境音や、モバイルで処理負荷が厳しい場面では向かないとされました。

本当にあった話
最後に、実際に顧客から寄せられた相談の事例が 3 つ共有されました。ここではそのうちの 1 つを紹介します。
L 字型の部屋で、室内では回折が起きるのに、ポータルを通り抜けると回折が起きなくなる、という相談です。検証したところ、反射音を計算するために飛ばすレイの本数を、デフォルトの 35 本から 500 本に増やすと、部屋の外に出ても回折が働くようになりました。ポータルを通るとレイがヒットしにくくなっていたことが原因で、現在は既知の問題として調査と修正が予定されている、という共有でした。

感想
ワークフローと音響表現という別々の切り口ながら、どちらもゲーム開発の現場で音を作り込むための地道な改善が語られていて、実務に根ざしたセッションだと感じました。特にリプレイ機能は、鳴ってしまった音を後から辿れなかったこれまでの苦労を思うと、デバッグの体験を大きく変えてくれそうで期待が高まりました。






