Claude Fable 5 が Amazon Bedrock で利用可能になったので試してみた

Claude Fable 5 が Amazon Bedrock で利用可能になったので試してみた

Anthropic が発表した Claude Fable 5 を Amazon Bedrock で実際に動かしました。Agreement 作成から Data Retention 設定、Converse API での推論実行までの手順と、利用時の注意点をまとめます。
2026.06.10

はじめに

2026年6月9日、AnthropicはClaude Fable 5を発表しました。4月に限定公開されたMythos Preview(Project Glasswing)の一般公開版にあたるモデルです。

https://www.anthropic.com/news/claude-fable-5-mythos-5

Fable 5とMythos 5は同一の基盤モデルで、セーフガードの有無で区別されています。名称の由来は、ラテン語の「fabula」とギリシャ語の「mythos」がいずれも「物語」に通じる語であることからとされています。Fable 5がセーフガード付き、Mythos 5がセーフガードなしのバージョンです。

Amazon Bedrockでも同日から利用可能になっており、本記事ではその手順を検証しました。

https://aws.amazon.com/jp/blogs/aws/anthropic-claude-fable-5-on-aws-mythos-class-capabilities-with-built-in-safeguards-now-available/

Bedrockモデルカタログ。Claude Fable 5が「新規」バッジ付きで表示されている

コスト比較

項目 Claude Fable 5 Opus 4.8(参考) Mythos Preview(参考)
モデルクラス Mythos Opus Mythos
API モデルID claude-fable-5 claude-opus-4-8 (限定公開)
コンテキスト 1M tokens 200K tokens 1M tokens
最大出力 128K tokens 32K tokens 128K tokens
入力料金 $10 / 1M tokens $5 / 1M tokens $25 / 1M tokens
出力料金 $50 / 1M tokens $25 / 1M tokens $125 / 1M tokens
セーフガード あり なし なし
Knowledge cutoff 2026年1月

入力・出力ともにMythos Previewの40%の価格で、Mythosクラスの能力が手頃な価格帯で利用可能になりました。一方、Opus 4.8比では入力2倍・出力2倍のコストです。

主な特徴

Anthropicのブログによると、Fable 5 / Mythos 5は以下のような性能を持ちます。

  • 長時間・複雑なタスクほど既存モデルとの差が大きい
  • SWE: Stripeが5000万行のRubyコードベースで2か月分のマイグレーションを1日で実行
  • Vision: Anthropicによるとvision性能は最高水準。ポケモンFireRedをビジョンのみでクリア
  • Long-context: 数百万トークンで集中力を維持し、自己メモにより性能向上

セーフガード構造

Fable 5には以下のセーフガードが組み込まれています。

  • 対象領域: サイバーセキュリティ / 生物学・化学 / モデル蒸留
  • 発動時の挙動: AnthropicによるとOpus 4.8にフォールバックして応答。ただしBedrock経由では空contentで content_filtered が返る(後述)
  • 発動率: 公式情報によるとセッションの5%未満
  • データ保持: セーフガード目的で30日間保持(詳細は注意事項で説明します)

検証内容: Bedrock で使ってみた

検証環境は以下のとおりです。

  • リージョン: us-east-1
  • モデルID: global.anthropic.claude-fable-5(Global cross-region inference profile)
  • 検証日時: 2026-06-10 08:45–08:47 JST
  • AWS CLI: 2.27.x / Python 3.12

Agreement 作成

Fable 5を利用するには、まずデータ保持ポリシーへの同意(Agreement)が必要です。

# 利用可能なオファーを確認
aws bedrock list-foundation-model-agreement-offers \
  --model-id anthropic.claude-fable-5 \
  --region us-east-1

# 取得した offer-token を指定して Agreement を作成
aws bedrock create-foundation-model-agreement \
  --model-id anthropic.claude-fable-5 \
  --offer-token <offer-token> \
  --region us-east-1

Data Retention API 有効化

このモデルの利用条件として、provider data shareの有効化が必要です。この設定により、推論データがAnthropicに共有されます(詳細は注意事項を参照)。

執筆時点ではマネジメントコンソールのUIからは設定できず、boto3にも対応メソッドが確認できなかったため、SigV4手動署名でAPIを直接呼び出しました。

import boto3, json
from botocore.auth import SigV4Auth
from botocore.awsrequest import AWSRequest
import requests as req

session = boto3.Session(region_name='us-east-1')
credentials = session.get_credentials().get_frozen_credentials()

url = 'https://bedrock.us-east-1.amazonaws.com/data-retention'
body = json.dumps({
    'mode': 'provider_data_share',
    'modelId': 'anthropic.claude-fable-5'
})

request = AWSRequest(method='PUT', url=url, data=body,
                     headers={'Content-Type': 'application/json'})
SigV4Auth(credentials, 'bedrock', 'us-east-1').add_auth(request)

r = req.put(url, headers=dict(request.headers), data=body)
print(r.status_code, r.json())

実行環境にはIAMロールまたはプロファイルによる認証情報が設定されている前提です。

成功すると以下のようなレスポンスが返ります。

{
  "mode": "provider_data_share",
  "updatedAt": "2026-06-09T23:46:41.595Z"
}

Converse API で推論実行

aws bedrock-runtime converse \
  --model-id "global.anthropic.claude-fable-5" \
  --messages '[{"content":[{"text":"こんにちは!あなたのモデル名を教えてください。一言で。"}],"role":"user"}]' \
  --inference-config '{"maxTokens":100}' \
  --region us-east-1
レスポンス全文
{
    "output": {
        "message": {
            "role": "assistant",
            "content": [
                {
                    "reasoningContent": {
                        "reasoningText": {
                            "text": "",
                            "signature": "CAISpwIKYAgOEAEYAipABCVa..."
                        }
                    }
                },
                {
                    "text": "こんにちは!**Claude**です。"
                }
            ]
        }
    },
    "stopReason": "end_turn",
    "usage": {
        "inputTokens": 30,
        "outputTokens": 57,
        "totalTokens": 87
    },
    "metrics": {
        "latencyMs": 5431
    }
}

この結果は、指定したinference profile IDでConverse APIの呼び出しが成功したことを示します。モデルの応答内容(「Claude」)はモデルIDの検証根拠としては扱いません。

レスポンスには reasoningContent フィールドが含まれていました。Fable 5はReasoning常時ONのため、通常このフィールドが返ると考えられます。今回は reasoningText.text が空文字でしたが signature が返っており、reasoningが無効化されたわけではないと考えられます。可視テキストが短い割に outputTokens: 57 とトークン数が多いのは、reasoning分が出力トークンに計上されているためと考えられます。

レイテンシは5,431msでした。30トークン入力の単発実行による参考値です。

注意事項

BedrockでFable 5を利用する際に把握しておくべきポイントをまとめます。以下のモデル仕様・制約は公式ブログおよびモデルカードに基づきます。今回の実行で検証した内容は、us-east-1からのConverse API呼び出し成功、レスポンス形式、usage、latencyに限られます。

https://docs.aws.amazon.com/bedrock/latest/userguide/model-card-anthropic-claude-fable-5.html

provider data share(データ共有)

このモデルの利用条件としてprovider data shareの有効化が必要です。有効化すると推論データが30日間Anthropicに共有されます。安全目的の保持であり、モデル学習には使用されないとされています(詳細は公式ドキュメントを確認してください)。本記事ではus-east-1で anthropic.claude-fable-5 に対して有効化しました。

Reasoning 常時ON

effort levelの調整は可能ですが、Reasoning自体の無効化はできません。reasoningContent が返っても reasoningText.text が空の場合がありますが、出力トークン数・コストには影響します。

temperature 1.0固定

temperatureは1.0に固定されており、ユーザーが変更することはできません。サンプリングパラメータによる出力の安定化はできません。

top_p / top_k

モデルカードによると、top_p を指定する場合は0.99以上かつ1.0未満である必要があります(1.0 は指定不可)。不要であれば未指定にしてください。top_k は非サポートです。

セーフガード発動時のハンドリング

Anthropicの発表ではセーフガード発動時にOpus 4.8へフォールバックして応答するとされています。しかしBedrock Converse API経由で検証したところ、stopReason: "content_filtered" が返り、contentは空配列でした。フォールバック応答は含まれませんでした。stopReason: "refusal" ではなく "content_filtered" である点に注意してください。また、ブロック時は inputTokens: 0 で完全に無課金でした。アプリケーション側で stopReason: "content_filtered" を正常系として処理する設計が必要です。

セーフガード発動時のレスポンス例
{
    "output": {
        "message": {
            "role": "assistant",
            "content": []
        }
    },
    "stopReason": "content_filtered",
    "usage": {
        "inputTokens": 0,
        "outputTokens": 0,
        "totalTokens": 0
    },
    "metrics": {
        "latencyMs": 5970
    }
}

リージョン制約(執筆時点: 2026-06-10)

In-Regionはus-east-1、eu-north-1のみです。東京リージョン(ap-northeast-1)はGlobal cross-region inference profile経由で利用できます。リージョンの提供状況は変動するため、最新情報は公式ドキュメントを確認してください。

Service Tier

Standardのみ対応です。Priority / Flex / Reservedは執筆時点で未対応です。

エンドポイント 2系統

bedrock-runtime はGuardrails、Knowledge Bases、Agents等のAWS機能に対応しています。bedrock-mantle はAnthropic SDK互換のエンドポイントですが、これらのAWS機能には対応していません。本記事の検証は bedrock-runtime / Converse APIで実施しました。bedrock-mantle での動作確認は検証範囲外です。

プロンプトキャッシュ

Fable 5はプロンプトキャッシュに対応していますが、自動適用ではなく明示的なcache checkpointの指定が必要です。最小1,024 tokens、最大4 checkpoints、TTL 5分/1時間です。

まとめ

Claude Fable 5はMythosクラスの能力をMythos Previewの40%のコストで利用できる一般公開モデルです。Amazon BedrockではAgreement作成、Data Retention API有効化、推論実行の3ステップで利用を開始できました。ただしprovider data shareによるデータ共有が利用条件となる点、コンソールUIから設定できない点は導入前に把握しておく必要があります。Reasoning常時ONやtemperature固定など、従来のClaudeモデルとは異なる制約もあります。既存のワークロードへの適用は仕様を確認したうえで検討してください。


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