Claude Fable 5 が Amazon Bedrock で利用可能になったので試してみた
はじめに
2026年6月9日、AnthropicはClaude Fable 5を発表しました。4月に限定公開されたMythos Preview(Project Glasswing)の一般公開版にあたるモデルです。
Fable 5とMythos 5は同一の基盤モデルで、セーフガードの有無で区別されています。名称の由来は、ラテン語の「fabula」とギリシャ語の「mythos」がいずれも「物語」に通じる語であることからとされています。Fable 5がセーフガード付き、Mythos 5がセーフガードなしのバージョンです。
Amazon Bedrockでも同日から利用可能になっており、本記事ではその手順を検証しました。

コスト比較
| 項目 | Claude Fable 5 | Opus 4.8(参考) | Mythos Preview(参考) |
|---|---|---|---|
| モデルクラス | Mythos | Opus | Mythos |
| API モデルID | claude-fable-5 |
claude-opus-4-8 |
(限定公開) |
| コンテキスト | 1M tokens | 200K tokens | 1M tokens |
| 最大出力 | 128K tokens | 32K tokens | 128K tokens |
| 入力料金 | $10 / 1M tokens | $5 / 1M tokens | $25 / 1M tokens |
| 出力料金 | $50 / 1M tokens | $25 / 1M tokens | $125 / 1M tokens |
| セーフガード | あり | なし | なし |
| Knowledge cutoff | 2026年1月 | — | — |
入力・出力ともにMythos Previewの40%の価格で、Mythosクラスの能力が手頃な価格帯で利用可能になりました。一方、Opus 4.8比では入力2倍・出力2倍のコストです。
主な特徴
Anthropicのブログによると、Fable 5 / Mythos 5は以下のような性能を持ちます。
- 長時間・複雑なタスクほど既存モデルとの差が大きい
- SWE: Stripeが5000万行のRubyコードベースで2か月分のマイグレーションを1日で実行
- Vision: Anthropicによるとvision性能は最高水準。ポケモンFireRedをビジョンのみでクリア
- Long-context: 数百万トークンで集中力を維持し、自己メモにより性能向上
セーフガード構造
Fable 5には以下のセーフガードが組み込まれています。
- 対象領域: サイバーセキュリティ / 生物学・化学 / モデル蒸留
- 発動時の挙動: AnthropicによるとOpus 4.8にフォールバックして応答。ただしBedrock経由では空contentで
content_filteredが返る(後述) - 発動率: 公式情報によるとセッションの5%未満
- データ保持: セーフガード目的で30日間保持(詳細は注意事項で説明します)
検証内容: Bedrock で使ってみた
検証環境は以下のとおりです。
- リージョン: us-east-1
- モデルID:
global.anthropic.claude-fable-5(Global cross-region inference profile) - 検証日時: 2026-06-10 08:45–08:47 JST
- AWS CLI: 2.27.x / Python 3.12
Agreement 作成
Fable 5を利用するには、まずデータ保持ポリシーへの同意(Agreement)が必要です。
# 利用可能なオファーを確認
aws bedrock list-foundation-model-agreement-offers \
--model-id anthropic.claude-fable-5 \
--region us-east-1
# 取得した offer-token を指定して Agreement を作成
aws bedrock create-foundation-model-agreement \
--model-id anthropic.claude-fable-5 \
--offer-token <offer-token> \
--region us-east-1
Data Retention API 有効化
このモデルの利用条件として、provider data shareの有効化が必要です。この設定により、推論データがAnthropicに共有されます(詳細は注意事項を参照)。
執筆時点ではマネジメントコンソールのUIからは設定できず、boto3にも対応メソッドが確認できなかったため、SigV4手動署名でAPIを直接呼び出しました。
import boto3, json
from botocore.auth import SigV4Auth
from botocore.awsrequest import AWSRequest
import requests as req
session = boto3.Session(region_name='us-east-1')
credentials = session.get_credentials().get_frozen_credentials()
url = 'https://bedrock.us-east-1.amazonaws.com/data-retention'
body = json.dumps({
'mode': 'provider_data_share',
'modelId': 'anthropic.claude-fable-5'
})
request = AWSRequest(method='PUT', url=url, data=body,
headers={'Content-Type': 'application/json'})
SigV4Auth(credentials, 'bedrock', 'us-east-1').add_auth(request)
r = req.put(url, headers=dict(request.headers), data=body)
print(r.status_code, r.json())
実行環境にはIAMロールまたはプロファイルによる認証情報が設定されている前提です。
成功すると以下のようなレスポンスが返ります。
{
"mode": "provider_data_share",
"updatedAt": "2026-06-09T23:46:41.595Z"
}
Converse API で推論実行
aws bedrock-runtime converse \
--model-id "global.anthropic.claude-fable-5" \
--messages '[{"content":[{"text":"こんにちは!あなたのモデル名を教えてください。一言で。"}],"role":"user"}]' \
--inference-config '{"maxTokens":100}' \
--region us-east-1
レスポンス全文
{
"output": {
"message": {
"role": "assistant",
"content": [
{
"reasoningContent": {
"reasoningText": {
"text": "",
"signature": "CAISpwIKYAgOEAEYAipABCVa..."
}
}
},
{
"text": "こんにちは!**Claude**です。"
}
]
}
},
"stopReason": "end_turn",
"usage": {
"inputTokens": 30,
"outputTokens": 57,
"totalTokens": 87
},
"metrics": {
"latencyMs": 5431
}
}
この結果は、指定したinference profile IDでConverse APIの呼び出しが成功したことを示します。モデルの応答内容(「Claude」)はモデルIDの検証根拠としては扱いません。
レスポンスには reasoningContent フィールドが含まれていました。Fable 5はReasoning常時ONのため、通常このフィールドが返ると考えられます。今回は reasoningText.text が空文字でしたが signature が返っており、reasoningが無効化されたわけではないと考えられます。可視テキストが短い割に outputTokens: 57 とトークン数が多いのは、reasoning分が出力トークンに計上されているためと考えられます。
レイテンシは5,431msでした。30トークン入力の単発実行による参考値です。
注意事項
BedrockでFable 5を利用する際に把握しておくべきポイントをまとめます。以下のモデル仕様・制約は公式ブログおよびモデルカードに基づきます。今回の実行で検証した内容は、us-east-1からのConverse API呼び出し成功、レスポンス形式、usage、latencyに限られます。
provider data share(データ共有)
このモデルの利用条件としてprovider data shareの有効化が必要です。有効化すると推論データが30日間Anthropicに共有されます。安全目的の保持であり、モデル学習には使用されないとされています(詳細は公式ドキュメントを確認してください)。本記事ではus-east-1で anthropic.claude-fable-5 に対して有効化しました。
Reasoning 常時ON
effort levelの調整は可能ですが、Reasoning自体の無効化はできません。reasoningContent が返っても reasoningText.text が空の場合がありますが、出力トークン数・コストには影響します。
temperature 1.0固定
temperatureは1.0に固定されており、ユーザーが変更することはできません。サンプリングパラメータによる出力の安定化はできません。
top_p / top_k
モデルカードによると、top_p を指定する場合は0.99以上かつ1.0未満である必要があります(1.0 は指定不可)。不要であれば未指定にしてください。top_k は非サポートです。
セーフガード発動時のハンドリング
Anthropicの発表ではセーフガード発動時にOpus 4.8へフォールバックして応答するとされています。しかしBedrock Converse API経由で検証したところ、stopReason: "content_filtered" が返り、contentは空配列でした。フォールバック応答は含まれませんでした。stopReason: "refusal" ではなく "content_filtered" である点に注意してください。また、ブロック時は inputTokens: 0 で完全に無課金でした。アプリケーション側で stopReason: "content_filtered" を正常系として処理する設計が必要です。
セーフガード発動時のレスポンス例
{
"output": {
"message": {
"role": "assistant",
"content": []
}
},
"stopReason": "content_filtered",
"usage": {
"inputTokens": 0,
"outputTokens": 0,
"totalTokens": 0
},
"metrics": {
"latencyMs": 5970
}
}
リージョン制約(執筆時点: 2026-06-10)
In-Regionはus-east-1、eu-north-1のみです。東京リージョン(ap-northeast-1)はGlobal cross-region inference profile経由で利用できます。リージョンの提供状況は変動するため、最新情報は公式ドキュメントを確認してください。
Service Tier
Standardのみ対応です。Priority / Flex / Reservedは執筆時点で未対応です。
エンドポイント 2系統
bedrock-runtime はGuardrails、Knowledge Bases、Agents等のAWS機能に対応しています。bedrock-mantle はAnthropic SDK互換のエンドポイントですが、これらのAWS機能には対応していません。本記事の検証は bedrock-runtime / Converse APIで実施しました。bedrock-mantle での動作確認は検証範囲外です。
プロンプトキャッシュ
Fable 5はプロンプトキャッシュに対応していますが、自動適用ではなく明示的なcache checkpointの指定が必要です。最小1,024 tokens、最大4 checkpoints、TTL 5分/1時間です。
まとめ
Claude Fable 5はMythosクラスの能力をMythos Previewの40%のコストで利用できる一般公開モデルです。Amazon BedrockではAgreement作成、Data Retention API有効化、推論実行の3ステップで利用を開始できました。ただしprovider data shareによるデータ共有が利用条件となる点、コンソールUIから設定できない点は導入前に把握しておく必要があります。Reasoning常時ONやtemperature固定など、従来のClaudeモデルとは異なる制約もあります。既存のワークロードへの適用は仕様を確認したうえで検討してください。







