
OpenAI AgentKit が分裂した — Agent Builder 終了から Workspace Agents・Claude Cowork まで、ノーコード AI エージェントの現在地を整理する
はじめに
「OpenAI の AgentKit って結局どうなったの? Agent Builder で新しいプロジェクトを始めて大丈夫?」——2026年中盤にこの疑問を持つ人は少なくないはずです。
調べてみると、AgentKit は一枚岩のプラットフォームではなく、コンポーネントごとに異なる運命をたどっていました。さらに、その移行先として登場した「Workspace Agents」と、Anthropic の「Claude Cowork」を比較すると、ノーコード AI エージェントという大きなトレンドが見えてきます。
この記事では、会話の中で湧いてきた疑問を一つずつ追いかけながら、2026年6月時点での全体像を整理します。
AgentKit は「分裂」した — コンポーネント別の生存マップ
まず最大の疑問:AgentKit 全体が終わるのか、それとも一部だけなのか?
結論から言うと、AgentKit は一枚岩ではなく、コンポーネントごとに運命が分かれました。

| コンポーネント | 状態 | 詳細 |
|---|---|---|
| Agent Builder(ビジュアルキャンバス) | 終了予定 | 2026年11月30日に完全停止 |
| Evals(評価プラットフォーム) | 終了予定 | 2026年10月31日に読み取り専用化、11月30日に完全停止 |
| Agents SDK(コードベース) | 存続・活発に開発中 | 推奨される移行先(コード派向け) |
| Workspace Agents(ノーコード) | 新規登場 | ChatGPT 内で動作するチーム向けエージェント |
重要なタイムライン

- 2026年6月3日: OpenAI が Agent Builder と Evals の wind down を発表
- 2026年10月31日: Evals が読み取り専用に
- 2026年11月30日: Agent Builder・Evals ともに完全利用不可
つまり、今から Agent Builder で新規プロジェクトを始めるのは危険です。残り約5ヶ月で使えなくなります。
移行パスの選び方
OpenAI が示す移行先は2つあり、ユーザーの性質によって分かれます。
- コードを書く人 → Agents SDK(Python SDK、MCP統合、サンドボックスエージェント、ガードレール等を備える)
- コードを書かない人 → Workspace Agents in ChatGPT(自然言語で設定、チームで共有)
Workspace Agents とは何か — Custom GPTs の進化形
次の疑問:Workspace Agents は具体的に何ができるのか?
Workspace Agents は、ChatGPT 内で動作するチーム共有型の常駐 AI エージェントです。2023年末に登場した Custom GPTs の進化形として位置づけられています。
主な特徴
- クラウドで常駐実行: ユーザーがオフラインでも動き続ける
- 外部アプリ接続: Slack、Salesforce などにコネクタ経由で接続
- チーム共有: 一度構築すれば組織全体で利用可能
- Codex モデル搭載: OpenAI の Codex モデルで駆動
- ノーコード: 自然言語で設定・構築
- 対象プラン: Business / Enterprise / Edu / Teachers
Custom GPTs との違い
Custom GPTs が「個人向けのカスタムチャットボット」だったのに対し、Workspace Agents はチーム全体で共有し、バックグラウンドで自律的に動くことを前提にしています。Slack にデプロイしてチーム全員が使う、といった運用が想定されています。
料金
2026年7月6日まで無料期間が延長されており、それ以降はクレジットベースの課金が開始される予定です。
Claude Cowork との比較 — クラウド vs ローカル、チーム vs 個人
「Workspace Agents って Claude Cowork と同じようなものでは?」——これも自然な疑問です。
両者は「非開発者にエージェント機能を提供する」という同じ問題を解決しようとしていますが、アプローチが大きく異なります。
| 観点 | Workspace Agents (OpenAI) | Claude Cowork (Anthropic) |
|---|---|---|
| 実行環境 | クラウド(OpenAI 側) | ローカルデスクトップ(macOS / Windows) |
| 共有 | チーム全体、Slack デプロイ可 | 個人単位、ユーザーごとにサイロ化 |
| ターゲット | Enterprise チーム | 個人のナレッジワーカー |
| バックグラウンド実行 | あり(クラウド) | あり(ローカルのスケジュールタスク) |
| ファイルアクセス | 外部アプリ経由(コネクタ) | ローカルファイル直接アクセス |
| 対象プラン | Business / Enterprise / Edu | Pro ($20) / Max ($100-200) / Team ($20/seat) / Enterprise |
どちらを選ぶべきか
- チームで共有して使いたい、Slack 連携したい → Workspace Agents
- 個人の PC 上で自分のファイルを扱いたい → Claude Cowork
正直なところ、両者は競合というより棲み分けに近い状態です。チーム・クラウド優先なら OpenAI、個人・ローカル優先なら Anthropic、というのが現時点での判断基準でしょう。
Promptfoo — OpenAI Evals の後継に指名された LLM 評価ツール
Evals が終了するなら、LLM の評価はどうすればいいのか?
OpenAI が推奨する移行先は Promptfoo です。そして興味深いことに、OpenAI は2026年3月に Promptfoo を買収しています。
Promptfoo とは
- オープンソースの CLI ツールで、LLM アプリケーションのテスト・評価・レッドチーミングを行う
- プロンプトを「テスト可能なコード」として扱う思想
- YAML でテストケースを定義し、任意の LLM プロバイダーに対して実行
- 50以上の脆弱性タイプに対応したレッドチーミング機能を内蔵
- CI/CD パイプラインへの統合が容易
基本的な使い方のイメージ
# promptfoo の設定例(概念的なイメージ)
prompts:
- "あなたはカスタマーサポートです。以下の質問に回答してください: {{question}}"
providers:
- openai:gpt-4o
tests:
- vars:
question: "返品ポリシーを教えてください"
assert:
- type: contains
value: "30日以内"
- type: llm-rubric
value: "丁寧で正確な回答であること"
なぜ OpenAI は Promptfoo を買収したのか
自社の Evals プラットフォームを終了しつつ、すでにデファクトスタンダードになっていた Promptfoo を取り込むことで、エコシステムの評価レイヤーを外部ツールに委ねる判断をしたと考えられます。
なぜ各社がノーコード AI エージェントに注力するのか
ここまでの流れを俯瞰すると、OpenAI も Anthropic もノーコードでエージェントを構築・運用できる方向に大きく舵を切っていることが分かります。
開発者以外への拡大
Agents SDK のような コードベースのツールは強力ですが、使えるのは開発者だけです。一方、企業の多くの業務——リード評価、レポート作成、フィードバック集約など——は非エンジニアが担っています。
ノーコードエージェントは、AI の恩恵を開発者以外に広げるためのインターフェースです。
各社のアプローチ
| ベンダー | プロダクト | ポジション |
|---|---|---|
| OpenAI | Workspace Agents | クラウド・チーム共有・Slack デプロイ |
| Anthropic | Claude Cowork | ローカルデスクトップ・個人最適化 |
| OpenAI | Agents SDK | コードベース(開発者向け) |
| Anthropic | Claude Code | コードベース(開発者向け) |
コード派にも SDK を、ノーコード派にも製品を——両社とも二刀流の戦略を取っているのが2026年中盤の現状です。
まとめ
| 学んだこと | 実務での判断基準 |
|---|---|
| Agent Builder / Evals は2026年11月30日で終了 | 新規プロジェクトでは使わない。Agents SDK か Workspace Agents に移行 |
| Workspace Agents はクラウド・チーム共有型 | チーム横断で使うなら第一候補 |
| Claude Cowork はローカル・個人型 | 個人の生産性向上、ローカルファイル操作なら強い |
| Promptfoo が LLM 評価のデファクト | Evals からの移行先として検討。OpenAI 買収済みで今後もサポートされる見込み |
| ノーコード AI エージェントは各社の注力分野 | 非エンジニアの業務自動化ニーズに合わせてツール選定する |
今回の調査で一番の収穫は、「AgentKit がどうなったのか」という一つの疑問から、ノーコード AI エージェントという業界全体のトレンドが見えてきたことです。技術選定をする際は、個々のプロダクトだけでなく、そのプロダクトが属するレイヤーの動向も把握しておくことが重要だと改めて感じました。






