OpenAI AgentKit が分裂した — Agent Builder 終了から Workspace Agents・Claude Cowork まで、ノーコード AI エージェントの現在地を整理する

OpenAI AgentKit が分裂した — Agent Builder 終了から Workspace Agents・Claude Cowork まで、ノーコード AI エージェントの現在地を整理する

AgentKit は一枚岩ではなく、コンポーネントごとに異なる運命をたどっていた。Agent Builder / Evals の終了、Workspace Agents と Claude Cowork の比較、Promptfoo への移行を整理し、2026年中盤のノーコード AI エージェントの全体像をまとめる。
2026.07.13

はじめに

「OpenAI の AgentKit って結局どうなったの? Agent Builder で新しいプロジェクトを始めて大丈夫?」——2026年中盤にこの疑問を持つ人は少なくないはずです。

調べてみると、AgentKit は一枚岩のプラットフォームではなく、コンポーネントごとに異なる運命をたどっていました。さらに、その移行先として登場した「Workspace Agents」と、Anthropic の「Claude Cowork」を比較すると、ノーコード AI エージェントという大きなトレンドが見えてきます。

この記事では、会話の中で湧いてきた疑問を一つずつ追いかけながら、2026年6月時点での全体像を整理します。

AgentKit は「分裂」した — コンポーネント別の生存マップ

まず最大の疑問:AgentKit 全体が終わるのか、それとも一部だけなのか?

結論から言うと、AgentKit は一枚岩ではなく、コンポーネントごとに運命が分かれました

openai-agentkit-workspace-agents-claude-cowork-nocode-agent-comparison-component-map

コンポーネント 状態 詳細
Agent Builder(ビジュアルキャンバス) 終了予定 2026年11月30日に完全停止
Evals(評価プラットフォーム) 終了予定 2026年10月31日に読み取り専用化、11月30日に完全停止
Agents SDK(コードベース) 存続・活発に開発中 推奨される移行先(コード派向け)
Workspace Agents(ノーコード) 新規登場 ChatGPT 内で動作するチーム向けエージェント

重要なタイムライン

openai-agentkit-workspace-agents-claude-cowork-nocode-agent-comparison-timeline

  • 2026年6月3日: OpenAI が Agent Builder と Evals の wind down を発表
  • 2026年10月31日: Evals が読み取り専用に
  • 2026年11月30日: Agent Builder・Evals ともに完全利用不可

つまり、今から Agent Builder で新規プロジェクトを始めるのは危険です。残り約5ヶ月で使えなくなります。

移行パスの選び方

OpenAI が示す移行先は2つあり、ユーザーの性質によって分かれます。

  • コードを書く人Agents SDK(Python SDK、MCP統合、サンドボックスエージェント、ガードレール等を備える)
  • コードを書かない人Workspace Agents in ChatGPT(自然言語で設定、チームで共有)

Workspace Agents とは何か — Custom GPTs の進化形

次の疑問:Workspace Agents は具体的に何ができるのか?

Workspace Agents は、ChatGPT 内で動作するチーム共有型の常駐 AI エージェントです。2023年末に登場した Custom GPTs の進化形として位置づけられています。

主な特徴

  • クラウドで常駐実行: ユーザーがオフラインでも動き続ける
  • 外部アプリ接続: Slack、Salesforce などにコネクタ経由で接続
  • チーム共有: 一度構築すれば組織全体で利用可能
  • Codex モデル搭載: OpenAI の Codex モデルで駆動
  • ノーコード: 自然言語で設定・構築
  • 対象プラン: Business / Enterprise / Edu / Teachers

Custom GPTs との違い

Custom GPTs が「個人向けのカスタムチャットボット」だったのに対し、Workspace Agents はチーム全体で共有し、バックグラウンドで自律的に動くことを前提にしています。Slack にデプロイしてチーム全員が使う、といった運用が想定されています。

料金

2026年7月6日まで無料期間が延長されており、それ以降はクレジットベースの課金が開始される予定です。

Claude Cowork との比較 — クラウド vs ローカル、チーム vs 個人

「Workspace Agents って Claude Cowork と同じようなものでは?」——これも自然な疑問です。

両者は「非開発者にエージェント機能を提供する」という同じ問題を解決しようとしていますが、アプローチが大きく異なります。

観点 Workspace Agents (OpenAI) Claude Cowork (Anthropic)
実行環境 クラウド(OpenAI 側) ローカルデスクトップ(macOS / Windows)
共有 チーム全体、Slack デプロイ可 個人単位、ユーザーごとにサイロ化
ターゲット Enterprise チーム 個人のナレッジワーカー
バックグラウンド実行 あり(クラウド) あり(ローカルのスケジュールタスク)
ファイルアクセス 外部アプリ経由(コネクタ) ローカルファイル直接アクセス
対象プラン Business / Enterprise / Edu Pro ($20) / Max ($100-200) / Team ($20/seat) / Enterprise

どちらを選ぶべきか

  • チームで共有して使いたい、Slack 連携したい → Workspace Agents
  • 個人の PC 上で自分のファイルを扱いたい → Claude Cowork

正直なところ、両者は競合というより棲み分けに近い状態です。チーム・クラウド優先なら OpenAI、個人・ローカル優先なら Anthropic、というのが現時点での判断基準でしょう。

Promptfoo — OpenAI Evals の後継に指名された LLM 評価ツール

Evals が終了するなら、LLM の評価はどうすればいいのか?

OpenAI が推奨する移行先は Promptfoo です。そして興味深いことに、OpenAI は2026年3月に Promptfoo を買収しています。

Promptfoo とは

  • オープンソースの CLI ツールで、LLM アプリケーションのテスト・評価・レッドチーミングを行う
  • プロンプトを「テスト可能なコード」として扱う思想
  • YAML でテストケースを定義し、任意の LLM プロバイダーに対して実行
  • 50以上の脆弱性タイプに対応したレッドチーミング機能を内蔵
  • CI/CD パイプラインへの統合が容易

基本的な使い方のイメージ

# promptfoo の設定例(概念的なイメージ)
prompts:
  - "あなたはカスタマーサポートです。以下の質問に回答してください: {{question}}"

providers:
  - openai:gpt-4o

tests:
  - vars:
      question: "返品ポリシーを教えてください"
    assert:
      - type: contains
        value: "30日以内"
      - type: llm-rubric
        value: "丁寧で正確な回答であること"

なぜ OpenAI は Promptfoo を買収したのか

自社の Evals プラットフォームを終了しつつ、すでにデファクトスタンダードになっていた Promptfoo を取り込むことで、エコシステムの評価レイヤーを外部ツールに委ねる判断をしたと考えられます。

なぜ各社がノーコード AI エージェントに注力するのか

ここまでの流れを俯瞰すると、OpenAI も Anthropic もノーコードでエージェントを構築・運用できる方向に大きく舵を切っていることが分かります。

開発者以外への拡大

Agents SDK のような コードベースのツールは強力ですが、使えるのは開発者だけです。一方、企業の多くの業務——リード評価、レポート作成、フィードバック集約など——は非エンジニアが担っています。

ノーコードエージェントは、AI の恩恵を開発者以外に広げるためのインターフェースです。

各社のアプローチ

ベンダー プロダクト ポジション
OpenAI Workspace Agents クラウド・チーム共有・Slack デプロイ
Anthropic Claude Cowork ローカルデスクトップ・個人最適化
OpenAI Agents SDK コードベース(開発者向け)
Anthropic Claude Code コードベース(開発者向け)

コード派にも SDK を、ノーコード派にも製品を——両社とも二刀流の戦略を取っているのが2026年中盤の現状です。

まとめ

学んだこと 実務での判断基準
Agent Builder / Evals は2026年11月30日で終了 新規プロジェクトでは使わない。Agents SDK か Workspace Agents に移行
Workspace Agents はクラウド・チーム共有型 チーム横断で使うなら第一候補
Claude Cowork はローカル・個人型 個人の生産性向上、ローカルファイル操作なら強い
Promptfoo が LLM 評価のデファクト Evals からの移行先として検討。OpenAI 買収済みで今後もサポートされる見込み
ノーコード AI エージェントは各社の注力分野 非エンジニアの業務自動化ニーズに合わせてツール選定する

今回の調査で一番の収穫は、「AgentKit がどうなったのか」という一つの疑問から、ノーコード AI エージェントという業界全体のトレンドが見えてきたことです。技術選定をする際は、個々のプロダクトだけでなく、そのプロダクトが属するレイヤーの動向も把握しておくことが重要だと改めて感じました。

参考リンク


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