ドイツの日系SMEが Personio を導入してみた ― 【第1回】導入の背景と DATEV 給与連携

ドイツの日系SMEが Personio を導入してみた ― 【第1回】導入の背景と DATEV 給与連携

ドイツ拠点の日系企業(従業員16名)が、勤怠システム Timetac から勤怠・人事を包括する Personio へ乗り換えた記録の第1回。会社の成長と組織改変を経て浮かび上がったバックオフィスの課題を整理し、最大の決め手となった DATEV(給与計算)連携を、セットアップから毎月の運用、給与明細の取り込みまで、実際の画面つきで紹介します。
2026.07.15

ベルリンから伊藤です。

クラスメソッド・ヨーロッパは、今年なんと10周年を迎えました!🎉

https://dev.classmethod.jp/articles/berlin-office-start/

そんな記念すべき今年、従業員6人の頃から使っていた勤怠システム Timetac に別れを告げ、現在の従業員16名の勤怠・人事を包括的に扱う Personio へ乗り換えました。

欧州拠点では現地の労働法や給与計算ルールに従うため、それらを適用できる勤怠システムが必要です。

このシリーズでは、日系のヨーロッパ拠点(ドイツ法人)の小規模企業が人事労務管理で実際にぶつかった課題と、それをどのツール・設定で解いたかを、画面付きの「やってみた」として共有します。

同じく欧州でビジネスを行う中小企業のご参考になれば幸いです。

Personio 導入までの背景

6人から16人で壊れたもの

6人の頃は「勤怠を正しく記録する」ことができれば十分でした。Timetac はドイツの労働法に沿った勤怠管理ツールとして、その役割を十分に果たしてくれました。

しかし人数が増えるにつれ、各社員の状況を柔軟に把握し、勤怠の入力漏れやミスをレビューするのが困難になっていきました。

前提として、弊社では次のような状況でした:

状況 課題
人事、会計、給与支払いなどバックオフィス(BO)の業務を1人が担当(+前任2人が必要時サポート) 社員数が増えて勤怠レビューが追いつかない、BO業務が1人で対応しきれない、前任は本業務に専念できない
ドイツ法人マネージングディレクター (MD) のしがひが全社員の唯一の”上司” 社員の状況を把握しきれない・業務を評価しきれない、社員はMDに相談しづらい

ほぼ全員が異なる業務を兼任しており、部署分けして評価や稼働管理を委任するのが難しい状況だったため、それまでなかなか組織改変できずにいました。

浮かび上がる人事労務の課題

そこで昨年、バックオフィス専任体制の強化に加え、勤怠レビューや状況把握までをリーダーが行うチーム制を導入しました。

チームリーダーがBO・MDのハブ機能を担ったことで問題は解決した一方、それまで後回しになっていたバックオフィス業務の課題が前面に出てきました。

少人数で勤怠管理するだけなら Timetac は申し分のないツールでしたが、それに付随する人事資料の作成、情報管理などの様々な業務は手動で行うか、別のツールや自前の自動化処理を使い、タスクが属人化・煩雑化していました。

timetac_functions

これらをまとめて解決できるとして選定されたのが Personio です。

Personio vs Timetac 比較

機能面を比較すると次の通りです。

Timetac が勤怠管理に特化している一方、Personio は勤怠+人事を包括しています。

機能 Timetac Personio
勤怠ルール違反検知 結果がレポートで明確 柔軟な通知設定・従業員への警告可(ただし11時間休息ルールは現時点で未対応)
休暇・代休 シンプルで勤怠と統合 柔軟で高度な設定・日/月割りの自動適用
DATEV への連携 連携設定は可能(後述) 勤怠+人事データをまとめて同期、給与明細の一括取得・分配
従業員データ管理 限定的・管理者のみ カスタム項目・セクション別権限で高度な管理
書類作成・電子署名 なし テンプレート+電子署名を標準搭載(DocuSign 不要)
組織・権限 部門作成は可 組織構造・Role ベース権限を柔軟に設定
その他 高度な AI アシスタント

コストについて

Timetac はユーザー単位の勤怠特化型、Personio は従業員1人あたりの月額+モジュール加算の要見積もり型で、価格体系が異なります。
単純な1人あたり単価では、勤怠のみの Timetac に対し人事全体をカバーする Personio は割高に見えます。

ただ、置き換えたツールや手作業まで含めた総コスト (TCO) を考慮すると、弊社では複数ツールの併用と毎月の手作業が減り、単価差は十分に正当化できたと言えます。

最新の料金は Personio の料金ページや見積もりで確認するのが確実です。

一番大事な DATEV 連携

弊社での給与計算は、外部の会計事務所(Steuerberater)に委託し、事務所側が DATEV Lohn & Gehalt (LuG) で処理します。

ドイツの多くの企業ではこの DATEV LuG か LODAS が利用されており、社内の必要な勤怠・人事データをスムーズに DATEV へ連携できるのは最重要事項と言えます。

Timetac 時代の連携の課題

Timetac で手軽な DATEV 自動連携が登場したのはごく最近(2026年3月以降)で、それ以前は DATEV 互換のエクスポートができるのみでした。

弊社では、必要に応じてのみ勤怠レポートや病欠・休暇のデータを PDF エクスポートして、会計事務所に提出していました。

↓休暇日数のレポート画面

absence report

さらに、Timetac は勤怠に特化しているため、扱えるのは限られた項目(住所など)で、登録できるのも管理者のみでした。

settings

その他に給与に必要な個人データは別管理となるため、変更がある際は会計事務所へ手動報告していました。

結果的に、社員数が増えるに連れてミスの温床となっていきました。

この「勤怠と人事が分かれている」点が、後述する Personio との一番の違いです。

Personio でのセットアップ

DATEV 連携のセットアップは、会計事務所の担当者と連携して DATEV/Personio の両面で設定が必要ですが、ドキュメントはよく整備されています。

Best Practice Payroll Procedure for Accountants: Setup and Payroll With the DATEV Integration – Personio

DATEV マスターデータのエクスポートファイルを Personio にインポートすることができるので、基本的な従業員データは一括で登録できます。

personio_import

従業員データのうち、「ドイツのペイロールに含めるか」と「DATEVの従業員番号」によって、マスターデータとの紐付けが可能になります。

すなわち、ドイツ給与計算とは異なる契約区分やドイツ国外の社員は対象からはずすことが可能です。

毎月の DATEV 連携作業

セットアップが完了すると、住所・振込先・口座などの従業員データの変更や、取得した病欠・休暇などは、Payroll メニューで設定した期間ごとにまとめて表示されます。

作業者は①その期間のペイロールを承認し、②DATEV 用のレポートx2 を生成し、③DATEV への送信ボタンを押す、これで提出完了です✅

personio_generate_report

personio_payroll_documents
Send to DATEV ボタンを押し、3つ目のファイルは連携済み

給与計算の完了後は、今度は給与明細などの書類が Personio に電子データとして取り込めます。

作業者は①取り込みボタンを押す、②配布ボタンを押す、これで明細は各個人フォルダに取り込まれます✅

personio_payroll_documents_distribute
同じPayrollドキュメント画面でRetrieve/Distributeを押すだけ

取り込んだ zip ファイルを解凍する必要もなく、中の各個人の明細ファイルは社員番号で紐付けられて自動的に配布されます。

誤ってユーザ側に配布した個別明細ファイルを削除してしまっても、zip ファイルはマスターとして残るので安心です。

Personio_Employee_Document

まとめ

Personio はコロナ期(5-6年前)に急成長し、「欧州・中小企業向け」の中でトップの位置付けとなっていき、近年は効率化や AI にも注力しています。

使用している中では、グローバル展開の大企業向けソフトウェアではないような、設計の積み重ねによる “漏れ” 的な機能はまだまだ見られますが、欧州の税制や法規制へきちんと準拠しながらドイツ企業に最適化された形で必要機能を揃え、さらなる新機能を開発している印象を受けました。

本シリーズでは、弊社が Personio を使って解決した人事労務課題を画面付きで紹介します。

今後は以下のようなトピックを取り扱う予定です。

  • 勤怠・休暇管理
  • 通知・自動化
  • 人事書類の作成
  • 組織・権限の設計など。

今回紹介した DATEV 連携は timetac のように他のツールでも対応しつつありますが、勤怠・人事・給与のデータが包括的に管理でき、数クリックで会計事務所と送受信できるのは、Personio の強みです。

小規模拠点のバックオフィスにとっては、この一元化が乗り換えの大きな決め手になり得ます。

一方で、セットアップの細かな項目や初期のデータ整備(マッピング)は企業・会計事務所との主体的な調整が必要です。


クラスメソッド・ヨーロッパでは、欧州拠点のバックオフィス運用・システム連携を、自社の実運用知見をもとにご支援しています。お気軽にご相談ください。

https://www.classmethod.de

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