非エンジニアがAIで21名チームの約14,700時間の業務を入社から3ヶ月で可視化するまで(全5回:第4回)

非エンジニアがAIで21名チームの約14,700時間の業務を入社から3ヶ月で可視化するまで(全5回:第4回)

2026.06.26

全5回の連載内容について

このプロジェクトは以下の順で報告しております。
今回は第4回となります。第1回〜第3回もよければ以下のリンク先よりご覧ください。

内容
第1回 入社から「悪循環」の発見まで
第2回 可視化の土台「タスクマスター」 — タスク×工程×バリアントの設計思想
第3回 5つのデータソースを統合する基盤設計と実装 — 既存運用をデータ源に変える
第4回 *今回* 約14,700時間の可視化結果による事実とAIとともに策定した40課題の解決策
第5回 再現性の検証 — この手法はどこまで転用できるか

前回は、5つの既存データソースを統合し「現場への追加入力ゼロ」で業務データを毎朝自動更新する基盤の設計と実装を報告しました。
今回は、その基盤で収集した9ヶ月・約14,700時間のデータから何が見えたのか、そしてAIとともに策定した40課題の解決策を報告します。

第4回:約14,700時間の可視化結果による事実とAIとともに策定した40課題の解決策

構築した可視化基盤によって、2025年7月から2026年3月の9ヶ月間・883,471分(約14,700時間)のデータを分析しました。着任時のヒアリングで把握した32件の課題に加え、データ分析によって8件の構造的課題が新たに浮かび上がり、合計40件へと再定義されました。

AIとの共同分析で40件の課題に対してそれぞれ3案の解決策を策定し、排除・結合・置換・簡素化フレームワークに基づく実行優先順位と段階的削減計画を策定しました。

本記事では、データが明らかにした事実、データ起点の課題発見プロセス、そしてAI活用による解決策策定の方法を報告します。

可視化が明らかにした事実

9ヶ月分のデータを分析した結果、3つの事実が初めて定量的に把握できました。

① 業務量の偏在
全担当者の実作業時間を比較すると、特定のメンバーに業務が集中している実態が数値で確認できました。
ヒアリングでは「忙しそう」という定性情報しかなかった状態から、誰が・何のタスクに・何時間費やしているかが担当者単位で把握できるようになりました。

② MTGに占める比率
業務時間全体に占めるMTG時間の割合が定量的に把握できました。これにより、MTGが感覚的に多いではなく、どのように削減するかという議論をデータに基づいて行えるようになりました。このデータを根拠にMTG自体を次のフェーズでは必要なMTGの構造化を実行し、具体的な削減計画をチーム全体で合意しました。

③ 計測外業務の実態
固定値マスタで推計していた「Slack対応・口頭確認」などの計測困難業務について、推計値と実態のギャップが確認できました。固定値を実態値に近づけることで、業務量全体の精度が向上しました。

データが「発見」した8件の構造的課題

ヒアリングで収集した32件の課題は、当事者の認識から生まれた課題です。一方、データ分析で新たに発見した8件は、当事者が認識していなかった「構造的な問題」です。

具体的には、特定タスクへの集中度・難易度分布の偏り・スキルレベルと業務量の乖離といった、データを横断的に分析することで初めて可視化できる課題です。これらはヒアリングを何度繰り返しても表出しない種類の課題であり、「まず測る」という判断の正当性をデータにより発見できた課題となります。

32件+8件で構成される40件の課題は、以下の4グループに分類されます。

グループ 内容
作業量可視化 業務量の計測・管理に関する課題
育成・スキル移管 人材育成、属人化解消に関する課題
手順・マニュアル 作業手順の整備・更新に関する課題
その他 ツール・環境・体制に関する課題

AIによる真因分析:分析サマリーを「問い」に変える

データ分析にはAIを活用しました。GAS(Google Apps Script)で自動生成した分析サマリーをAIに投入し、タスク別・担当者別・ユニット別の傾向分析を行いました。

AIの役割は「答えを出すこと」ではありませんでした。「このタスクの工数が突出している背景は何か」「この業務量の偏りの構造的原因は何か」という問いをAIと対話しながら深め、真因を特定するプロセスで活用しました。

数千行のデータを前にして、データ分析の専門家でもない担当者に「どこに問題があるか」を判断するのは困難です。AIが傾向を言語化し、私がその解釈と文脈の妥当性を判断する役割分担によって、分析の速度と深度を両立できました。

40課題×120案の解決策と段階的実行計画

真因が明確になった40件の課題に対し、それぞれ3案の解決策を策定しました。解決策の策定もAIとの対話で進め、実現可能性・工数・効果・優先度の評価軸で整理しました。

策定した解決策はECRSフレームワークで分類し、実行可能なものから順に3つのフェーズに整理しました。

フェーズ 課題数 実施時期 年間削減目標
Phase 1 11件 2026年4月 732〜1,104時間
Phase 2 13件 2026年5〜6月 Phase 1に上乗せ
Phase 3 16件 2026年7月以降 合計1,680〜3,384時間

「まず測る」という判断の意義

第1回で「悪循環を断ち切るために業務量の可視化が必要」と判断し、可視化に3ヶ月を費やしました。その判断は正しかったと、データが示しています。

ヒアリングで見えた32件に加え、データでしか見えない8件が存在したという事実は、「感覚で課題を挙げること」と「データで課題を発見すること」の違いを端的に示しています。また、120案という解決策の幅は、可視化なしには生まれませんでした。可視化は終点ではなく、改善サイクルを回すための起点です。

第4回 まとめ

  • 9ヶ月・約14,700時間のデータ分析により、業務量の偏在・MTG比率・計測外業務の実態が初めて定量的に把握できた
  • ヒアリングでは見えなかった8件の構造的課題を追加発見し、合計40件に再定義
  • AIとの対話による真因分析で40課題×3案=120案の解決策を策定し、ECRSフレームワークで段階的実行計画を整理

次回は、この手法が他の組織でどこまで転用できるかの検証について報告します。

内容
第5回 再現性の検証 — この手法はどこまで転用できるか

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