工場からデータを収集したいとき、よく聞かれること3選
はじめに
わりと現場担当の水島が札幌からお届けして参ります。
今回のテーマは製造業!ということで、工場からのデータ収集を行う際によく聞かれることを、現場に近い視点から、ポエムを交えたコラムとしてご紹介したいと思います。
Q.1 工場からのデータって、今は構内LANも引かれているでしょうしOPC-UAなどでモデル化されたデータが簡単に取れるんじゃないですか?
A.1 そうであってほしかった……のですが、きっともう少し未来の話。
実際に担当したケースや、関係者から聞く話も含め、国内の工場でOPC-UAでモデル化されたデータが取得できる状態になっているという話はほとんどありませんでした。設備屋さんにラインを構築してもらう際に納入されるものは、各ラインのPLC(制御用のシーケンサ)がそれぞれの制御を行い、操作盤と連携しているほぼスタンドアロンな構成が現在の主流のようです。
そのため、工場にあるラインのPLCや情報集約用のPLCから、どういった情報を取得する必要があるのかを調査し、それをもとに取得したデータをデータベースなどの目的地まで届けてあげる必要があります。
また、一つの工場の中で複数のメーカーのPLCが使われていることも多く、それらすべてからデータを収集するには、いろいろなプロトコルを喋ることができるゲートウェイが必要となってきます。
実証段階ではPLCの通信プロトコル用ライブラリを組み込んで通信することも試しましたが、国内で多く使われている主要な製制御機器に対応したゲートウェイソフトウェアが販売されておりますので、頼ってみることも結果への近道となるかもしれません。
Q.2 PLCからデータを集めるゲートウェイがソフトウェアで動くなら、クラウド上に置いてVPNで工場と接続すれば、エッジデバイスを管理しなくていいんじゃないですか?
A.2 理想的な回線ならば?……やっぱり、やめておきましょう。
理論上はできそうですが、実際はうまくいかないことって世の中結構あるものです。
このケースもそのひとつで、多くのPLCのネットワーク機能はUDP/IPとTCP/IPのプロトコルレベルでの対応を謳っておりますが、パケットの順序が入れ替わったり、一つのポートに複数コネクションを張ったり…といったことに対して正常な応答をしてくれるのかは、しっかり検証しないとなりません。
PLCの本分は「制御」であり、そのためのプログラムを実行すること。スペックで保証された時間内に応答しなければならないため、これが最優先で処理されます。そして、ネットワークの処理は残りの時間で行われます。忙しい同僚に、途切れ途切れの電波状況で電話したら怒られれしまいまいそうですね!
PLCのネットワーク機能が、制御機器だけを接続した構内のネットワークで通信を行う想定で設計されているケースもあり、タイムラグのある通信や、正常系でない処理を発生させたりすることは、期待通りでない結果を招く可能性があるでしょう。
抽象的な表現になってしまいますが、通信相手である制御機器の目線に合わせて通信を行う、という考慮が必要です。
Q.3 工場でPoCしたいと思います!PoCなのでデバイスはRaspberryPiでいいですよね?
A.3 いいと思います。ただし、EMC(電磁両立性)に気を付けて!
工場はモーターやインバーター、リレーの接点、溶接機のアークなどから色々な帯域のノイズが出ております。
そして実際に工場にエッジデバイスを置いてみると、本当に想像もしていなかったようなトラブルに見舞われることになります。
工業用PCは第一の選択肢となるでしょうが、それを選んでおけば安心かというと必ずしもそうとはいえず、USBラインに飛び込んだノイズでデバイスを見失ってしまったり……といったことが実際に発生します。ひとたび発生してしまったら、もうカーネルのログとにらめっこして、何が起きたのかを根掘り葉掘り調査し対策しなければなりません。
RaspberryPiグッズとしてさまざまなケースが用意されていますが、プラスチックのケースではノイズに対する防御力が"ほぼゼロ"ですから、丈夫な金属製のケースに入れて、ケーブルはできるだけ短く。これがデバイスへの無用な詮索を減らしてくれることを期待しましょう。
一方で、RaspberryPiから放射されるノイズが工場の機器に影響を及ぼすことが問題になることはあまりないでしょうが、無線機能を持っているものもありますので、こちらも念には念を入れておくことに越したことはないでしょう。
おわりに
3つ紹介させて頂きましたが、この中でひとつでも参考にしていただけることがあれば幸いです。
クラスメソッドでは、工場内などに設置されたPLCのデータを収集し、可視化・分析・通知を行うソリューション PLC Data to Cloud を提供しております。
今回の記事には書ききれなかったさまざまな現場・ネットワーク・クラウドの知見とともに、これからも製造業のお客様と課題に取り組んで参ります。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。