
【Microsoftブース訪問】安全にみんなで育てるAIエージェント #HM26
概要
こんにちは、クラスメソッド製造ビジネステクノロジー部の田中聖也です。
Microsoftブースを訪問してきました!
Microsoftブースはホール17に構えられた超巨大ブースで、製造業×AIのユースケースがこれでもかと詰め込まれた展示内容でした。

今回の記事では以下の点について書いていきます。
- フィジカルAIからサプライチェーンまで、製造業のあらゆる工程でMicrosoftエコシステムが展開されていること
- Work IQ × Copilot × Teamsで工場のシフト引き継ぎをAIが担う仕組み
- AIエージェントが組織内で野放しにならないための「Agent 365」によるガバナンス
フィジカルAIから調達まで、製造業全工程をMicrosoftエコシステムで覆う
ブース全体は以下の4つの柱で構成されていました。
- Human-agent teams(人とエージェントの協働)
- AI-powered factories(AI駆動の工場)
- Agentic supply chains(エージェント主導のサプライチェーン)
ABB、Siemens、Rockwell Automationといった産業大手との共同展示が並んでいて、「MicrosoftはOSとOfficeの会社」というイメージをいい意味でぶち壊してくれる内容でした。
フィジカルAI:ロボットをクラウドで動かす
一番派手だったのがフィジカルAIのデモです。
KUKAのロボットアームとHexagonのロボットが、Siemens NXで作ったCADデータをもとに自律的に加工・検品・組み立てをこなしていました。
ポイントはロボットの学習をAzure上で行い、推論はエッジで動かすというハイブリッド構成です。
NVIDIAのOmniverse(3Dシミュレーション)でトレーニングして、Azure IoT Operationsでエッジデータをクラウドに送る、というアーキテクチャが図解されていて非常に分かりやすかったです。
ただスタッフの方が正直に「ハードウェア側がまだ追いついていない」とおっしゃっていて、「Future Factory」という位置づけの展示でした。現場実装にはもう少し時間がかかりそうですが、方向性はめっちゃ明確でした。

Work IQ × Copilot × Teams:工場のシフト引き継ぎをAIが担う
目玉デモの一つが、Microsoft Teams上で動くコパイロット「Zava Factory Orchestrator」のデモです。

Copilot Studioで構築された架空の工場管理アシスタントで、自然言語で以下のことができます。
- シフト引き継ぎの要点サマリー
- 設備の異常アラート(例:「ライン1の機械A32の振動が上限3.0 mm/sに対し4.2 mm/sに達しています。ベアリング劣化のリスクがあります」)
- 歩留まり低下の原因分析
- チェンジオーバーの段取り確認
このデモを支えているのが「Work IQ」という仕組みです。
一言でいうと、CopilotやエージェントのAIを動かす「頭脳レイヤー」で、メール・Teams・SharePoint・会議などMicrosoft 365上の業務データを**「組織の知識」として構造化**し、AIがユーザーの業務文脈を理解できるようにします。
Work IQ自体は3つのレイヤーで構成されています。
- データ層: Outlook・Teams・OneDriveなどから情報を収集
- コンテキスト層: セマンティック検索と「メモリ」によって意味と文脈を付与(明示的メモリ=ユーザーが教えた情報、暗黙的メモリ=対話履歴から学習)
- スキル&ツール層: 理解した知識をもとに実際のアクションを実行
Microsoftは2025年11月のIgnite 2025でWork IQを発表し、以下の3つのIQエコシステムを打ち出しています。
| IQワークロード | 対象 | 役割 |
|---|---|---|
| Work IQ | Microsoft 365(メール・チャット・会議) | 業務文脈の理解 |
| Fabric IQ | データ分析基盤 | データへの意味付け |
| Foundry IQ | AI検索基盤 | ナレッジ検索・RAG |
つまり、「過去のシフト引き継ぎログ」「設備のメンテ履歴」「センサーのオントロジー(設備の従属関係・センサーとの紐付けを体系化した知識グラフ)」「デジタルツインのリアルタイムデータ」をWork IQがCopilotに一元提供することで、Teamsのチャット上でベテランエンジニア並みの精度で故障原因を絞り込んでくれるわけです。
スタッフの方が強調していたのはこのオントロジー整備の重要性です。
生成AIが工場でハルシネーションを起こさないためには、シニアエンジニアの「ここが怪しいと思ったらここを調べる」という経験的な当たりの付け方を知識グラフとして整備してAIに教え込む必要があります。
この「ナレッジエンジニアリング」こそがSIerとして介在できる最も重要なポイントだと感じました。
なおWork IQは無料のCopilot Chatには搭載されておらず、**Copilot Business($18/ユーザー/月)またはCopilot Enterprise($30/ユーザー/月)**以上で使えます。2026年5月以降はAgent 365($15/ユーザー/月アドオン)やE7 Frontier Suite($99/ユーザー/月の統合パッケージ)といった新プランも登場予定です。
クローネス社のデモ:ボトル充填機のチェンジオーバーを4時間から30分に
ドイツのKRONES(コカ・コーラやペプシのボトリングを手がける大手)の事例もインパクトがありました。
従来4時間かかっていた充填機のチェンジオーバー設定を、AnsysのCFDシミュレーション×NVIDIA GPU×Copilotエージェントの組み合わせで30分に短縮したというものです。
さらにデジタルツインでノズルの詰まりや歪みを継続監視し、Azureクラウド上のGPUでリアルタイム解析する構成でした。

Agent 365で野良エージェントが暴れないように管理する
Day4でMicrosoftのセキュリティ担当の方に見せていただいたのが「Agent 365」というガバナンス製品です。
デモ画面では組織内に59,647個ものAIエージェントが登録されていました。
そのうち141が外部パートナー製、さらに「オーナー不明」の野良エージェントも多数存在しています。

また、どのSaaSと繋がっているかを可視化できるようです。

なぜ野良エージェントが問題なのか
問題点は主に2個あると考えています。
- コストの問題: エージェントはAPIコール(トークン)のたびに費用が発生する。オーナーがいないと誰も管理しないまま無駄なコストが積み上がる
- 責任の問題: エージェントが誤った動作や機密データへの不正アクセスをした場合、オーナーがいないと誰も責任を取れない
Agent 365でできること
Agent 365は管理者がエージェント全体を一元管理するためのダッシュボードです。
- 全エージェントの可視化: 自社開発・サードパーティ製・ユーザー作成を問わず一覧管理
- オーナーアサイン: オーナー不明のエージェントを検出して担当者を割り当てる、または即座にブロック
- 権限・リスクレベルの確認: 各エージェントがどのデータソースにアクセスできるか、リスクレベルはどの程度かを確認
- コンプライアンス確認: SOC1/SOC2対応状況を一覧で把握
- 公開承認フロー: ユーザーが作ったエージェントを全社公開するには管理者の承認が必要
- ポリシーテンプレート: 「エージェント公開にはEntra IDとSharePointの設定が必須」といった社内ルールをテンプレートとして定義し、満たさないエージェントは公開不可にできる
- エージェント間連携の可視化: 2エージェントが接続している場合はライン表示でつながりを把握(今後対応予定)
対象はCopilot Studio・Azure AI Foundry・SharePoint・AI Builderで作成したエージェント全般で、AWSのSDKを経由した外部エージェントも接続可能とのことでした。
「AIはどんどん使ってほしいけど、誰も管理できない野良が組織の中で暴れ回るのは困る」という、現場の管理者が抱えているまさにその悩みに応える製品でした。
正直なところ、エージェントが組織内で5万個以上動いているという数字がリアルに想像できるかどうかはまだ怪しいですが、今後あっという間にそういう世界がやってくるんだなということは肌で感じました。
まとめ
MicrosoftブースはWork IQで「賢く育てる」×Agent 365で「安全に管理する」という両輪が揃っていて、製造業での全社AIエージェント展開に向けた本気度が伝わってくる展示でした。
オントロジー設計やナレッジエンジニアリングという「AI導入前の地道な準備」こそがSIerの腕の見せどころで、クラスメソッドとして介在できる余地はめっちゃ大きいと感じています。









