re:Invent 2024にてAWSが提示する製造業の未来 - スマートファクトリー展示から
「なんだコレ…デカすぎでは…?」
reInvent 2024のExpo,AWSインダストリーブースで眼の前にあるe-Bike工場の展示をみて、率直に自分はそう感じてました。以前、日本の幕張で開催されていたAWS Summit 2024でも「AIによるプラント保守の伝承」をテーマにミニチュアプラントが展示されていたのですが、その時とは比べものにならないくらいの大きさ。
この写真を見ていただければ、その大きさが実感していただけるかと。
「e-Bike Smart Factory Machine」とタイトルがついたこの展示は、スマートファクトリーという領域でAWSやその他の関連サービスを使うことで実現できる未来が凝縮された内容でした。現地には、AWS Japanの方もおられて、それぞれのサービスについていろいろ話を聞くことができたので、その様子をお届けします。
メインディスプレイで、設備の全体状況を集約して表示
ディスプレイだけでかなり種類があったのですが、メインのディスプレイはこちらの3種類。
左上は、設備の状態を各機器ごとに表示しており、何かアラートがあったときは、生成AIのチャット機能をつかい、今どのような状況なのか、なにが問題なのか、復旧にどういう手順が必要なのかを問い合わせできるようになっています。
右上は、デジタルツインの手法を用い、3D表現で各設備のデータと状況をリアルタイムで提示し、各生産ラインでどの機器に異常があるのかを直感的に提示しています。これは、MatterportとAWS IoT TwinMakerによって実現されているとのこと。
下のディスプレイには、一般的な工場の可視化手法に則り、生産データが集約して表示されています。
左から以下の順で、数値とメーターが表示されています。
- OEE(総合設備効率)
- Availability(時間稼働率)
- Performance(性能稼働率)
- Quality(良品率)
OEEとはなにか?と思った方は、先日自分が書いたこちらのOEEの項目を見ていただければ。OEEは、時間稼働率✕性能稼働率✕良品率で表されます。
上の写真の例だと、時間稼働率の低下に伴い、全体指標である総合設備効率が下がっていることが直感的に理解できますね。
「やっぱり、工場生産性のKPIとして代表的なのはOEEなんですか?」とAWS Japanの方に聞いてみたところ、凄く興味深い話を聞けました。
「主要指標としてよく使われるのは確かです。ただ、OEEには人の概念が含まれていないので、OEEだけを追求してしまうと、人を最大限はたらかせてしまうという力学が働きがちです。めちゃくちゃ残業させて、その人件費はかかっては居るけれど、OEEの見た目は良くなるんですよね。そのあたりも、データの可視化と活用の中で考えていく必要があります」
確かにその通りだなと。人も含めた指標だと、上の記事でも紹介したTPM(Total Productive Maintenance)の利用も視野に入ってくるのかもしれませんね。
ちなみにこのダッシュボードは、Mendix社のローコードプラットフォームで作成されてるとのことでした。
PLCからのデータ収集はWago社
各レーンの下にはこのようにPLCが設置されていて、これを通じてデータが収集されているようでした。
塗装過程の外観検査にDenali社
塗装過程の外観検査は、AWSパートナーのDenali社のソリューションが使われていました。
エッジ環境で動作するソリューションで、塗装過程を複数のカメラで読み取り、内容をチェックしている様子が展示されていました。なんかもう、これすげぇな、という小並感。
外観検査の過程もこのようにリアルタイムで表示されています。
生成AIを活用した故障箇所の特定に関するチャットボット展示
問題解決をすすめるための生成AIを活用したチャット画面。製造業における技能継承などのユースケースで、先日のAWSサミットでも展示されていた内容ですが、よりインタラクティブにチャットで、対話できるようになっていました。タッチ画面から、実際にQAを体験することもでき、今このデモ環境で発生している課題についてリアルタイムで問い合わせできる感覚は、リアリティがあって良かったです。
Grafanaによる生産設備の可視化ダッシュボード
みんな大好き(自分も大好き)Grafanaダッシュボードです。Amazon Managed Grafanaで構成されており生産設備の様々な情報を一覧でダッシュボードで可視化されています。
最近顧客と話しながらGrafanaを触っていて本当によく思うのが、Grafanaの柔軟性の高さが素晴らしいということ。ダッシュボードは一度つくって終わりではなく、それを顧客自身が継続的に業務に合わせた形で改善していくことは、製造現場のデータ可視化としてほぼ必須要件だと考えています。
そういうなかで、自分でカスタマイズできる余地が非常に大きく様々なデータ表現に対応しているGrafanaは、製造現場のデータ可視化のユースケースでも凄く相性が良いと感じているので、今後も、このあたり、深堀りできていければと思ってます。
製造業におけるクラウド活用の一つの未来形を感じることができる素晴らしい展示
最初見たときは、そのあまりのデカさに「どうなってんだこれ…」という気持ちになり、どこから聞いていこうか迷ったぐらいだったのですが、AWS Japanの方々に非常に親切に教えてもらったため、だいぶ構成のイメージがわきました。
まだまだ、弊社の製造ビジネステクノロジー部として顧客に提供できる価値を模索している最中ではありますが、製造業におけるクラウド活用の一つのゴールを示唆する具体的な展示で、自分としては本当に刺激になり興奮する内容でした。
改めて、詳細に解説頂いたAWS Japanの山本さん、村松さん、ありがとうございました。この場を借りてお礼いたします。
それでは、今日はこのへんで。濱田孝治(ハマコー)(@hamako9999)でした。