【書評】秋本治のしごと術 #ビジネス書を楽しもう

2020.12.04

はじめに

せーのでございます。

誰にも知らせずまったり始めている「ビジネス書」アドベントカレンダー、本日は4日目です。

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本日は秋本治著「秋本治の仕事術」です。

秋本治の仕事術 ~『こち亀』作者が40年間休まず週刊連載を続けられた理由~ (集英社ノンフィクション)

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週末ということで少しソフトタッチのものを選んでみました。
著者である秋本治さんは言わずと知れた漫画「こちら葛飾区亀有公園前派出所」の作者として40年もの間、週刊ジャンプに連載を続けた巨匠です。
40年という長期に渡り一度も休載することなく描きつづけられた秘訣について語っている本です。

基本このブログでは「仕事術」にフォーカスを置いて、心理学や行動経済学などの根拠に基づいたメソッドをロジックとして楽しもう、という趣旨で書いているのですが、今回の本はどちらかというと秋元先生の経験に基づく「心構え」が書かれた本なので、私のような今まで瞬発力のみで生きてきたような人間に「コツコツものごとを積み重ねるにはどうしたらよいか」という説法を受ける気持ちでご紹介したいと思います。

この本は

  • セルフマネジメント術
  • 時間術
  • コミュニケーション術
  • 発想術
  • 健康術
  • 未来術

の6章に分かれており、各章でそれぞれエッセイ形式で「教え」とも言える「長く続けるコツ」がまとめられています。
ここでは私が特に面白いと思った「時間術」「発想術」「未来術」でのトピックを中心にご紹介します。


企画は具体的に考えて形にしたうえで人に相談する

秋元先生はいわゆるブレストと呼ばれるアイデア出しを人とすることがないそうで、「次は寿司屋を舞台にこんな話をやりたいけど、どうですかね?」と自分の中で具体的に決めたことを提案して相談するのだそうです。
理由は「相手に気を使わせてしまったら悪いと思うから」だそうですが、確かに「どうしたらよいか一緒に考えて」というより「こうしたいんだけど良いと思う?悪いと思う?」の方が答える方は判断するだけなのでラクですね。

とくに私達の業界は「同じエンジニア同士で考えを揃える時」と「マネージャーや役職者と考えを揃える時」ではだいぶ勝手が違います。立場の違う人に自分の考えやアイデアを伝えるには、画像なり、動画なり、何かしらの形にして「こういうものを作りたいんです」と言うのが一番速かったりします。

似たような話でコピーライターの糸井重里さんはかつて「MOTHER」というゲームシリーズを手掛けていて、大変好評でした。MOTHERは3が出て以降続編はもう作らない、と宣言しているのですが、別の誰かが「MOTHER」シリーズを引き継いでゲームを作ることはいいこと、と仰っています。
ただその条件として「脚本を持ってくること」と糸井さんは言います。

2分のプレゼン動画なんて、誰でも作れるんですよ。
それで面白いゲームができるかどうかなんてわかるわけない。
せめて最低、シナリオくらいは見てみないと。

それで面白かったら僕から任天堂に言いますよ。

こちらの方はよりシビアな注文ですが、何かを人と話し合う時、なるべく具体的な材料を持っていく、というのは効率的な方法なんですね。


プロジェクトを終えた次の日も普通に仕事をする

これもなかなか斬新なメソッドです。
通常、大きな仕事を終えたり、イベントを一つこなしたら、休みたくなるものですが、秋元先生は次の日には別の仕事を始めるんだそうです。

集中力を切らさないようにするには、毎日何事もなかったかのように、変化なくずっと続ける。一週間も休んでしまったら、集中力を元通りに回復させるまでにロスタイムを持つことになってしまう。

これはつまり、他の仕事術で言う「習慣化」なのかもしれません。前回ご紹介した「最初の2割に全精力を注いで後は流す」という考え方の真逆ですね。ずっと同じペースを維持することで、作業が当たり前のものになっていく、という。


小さな無駄な時間を省く

秋元先生は最初「こち亀」一本に7日間かけていたそうですが、そのうちそのペースを6日、5日と上げていき、週刊の漫画家では珍しく「作品のストックがある」状態にまでいったそうです。

その時間圧縮のコツが「小さな無駄な時間を省く」というものです。
その方法がかなり独特。

たとえばアイデアを練る時、ネームを考えるとき、ゆっくりコーヒーを飲んで、「どうしようかな・・・・・・」と考えます。
この「どうしようかな・・・・・・」に2日かけているのであれば、「1日でやるぞ!」と決めてしまう。それだけで週に1日は空きます。こういう小さな”無駄な時間”を見つけてカットすれば、かけるべきところに十分な時間を充てることができるようになるのです。

「1日でやるぞ!」と思うだけで1日でできてしまうのは天才的だと思ってしまいますが、いわば「考えるより動け」ということなのかも知れませんね。
「小さな無駄な時間」を見つけるためには「トラッキング」という手法がよく使われます。全ての作業ごとに時間を測っておき、一週間でそれぞれの行動にかけた時間を集計して要らない行動を減らしていくのです。私は「Toggl」というサービスをよく使います。


定時でのスケジュール管理で想定外の事態に備える

漫画家といえばいつも締め切りに追われていて、仕事は夜中で徹夜もザラ、というイメージですが、秋元先生はなんと「起床7時半、勤務開始は9時、終了は19時」と決めているそうです。アシスタントも全員そのスケジュールで動いていて、スケジュール管理もきっちり行われているそうです。

そのおかげで予定外の出来事などもすぐにスケジューリングでき、盛り上がったアイデアをそのまま紙面に落とすことができているそうです。

打ち合わせで、沖縄のことを描くことが決まったとします。手順として次にしなければならないのは現地取材ですが、僕の場合は「じゃあ、明日行きましょう」ということができます。

これはこの仕事術シリーズではよく出てくる「スラック」という考え方ですね。普段から余白を作っておくことで、効率的に仕事を回すことができているわけです。


変化を恐れない

「こち亀」は最初「劇画風味のギャグマンガ」というコンセプトで、主人公の両津もめちゃくちゃな性格に書いていたそうですが、連載が進んでいき、そのテイストに限界を感じていたところに担当編集者の助言により現在の下町路線に一気に舵を切ったのだそうです。

もし僕が「こち亀」はハードボイルド風味のギャグマンガだという初期設定にこだわり、頑なに内容を変化させなかったとしたら、ここまで続くことにはならなかったでしょう。

変化を恐れないことが新たな化学反応を生む。なかなか覚悟がいることだと思いますが、長いスパンで考えた場合、仕事でも役に立つことでしょう。

下町路線に変更したこち亀はそれ以降もミリタリー、ゲーム、デジタル機器などをテーマとして取り入れ、少しずつ内容を変化させていったそうです。
長く続けるには時にはこういう大きな決断も必要、ということですね。


仕事でたくさんのことを抱えたら、少し寝かせる

秋元先生いわく「何かをたくさん背負い込んだ時は気持ちも昂ぶっているので、無理に処理してもあまり良い結果につながらないことが多い」ということです。

こち亀の代表作として「おばけ煙突」という、両さんの子供時代の話があるのですが、実はこのおばけ煙突、取材が細かすぎて資料が膨大になってしまって、半年以上も放置していたのだそうです。
半年寝かせていたことで、この話を両さんの子供時代にしよう、主人公を両さんではなく紅月灯(あかつきりん)という女の子にしよう、というアイデアが浮かび、現在の形として収まったのだそうです。

これは何かものを作るタイプの仕事をしている人にはいいメソッドだと思います。大量の情報に忙殺された時、整理ができないままに形にしてしまうと、結果できあがったものが凡庸で魅力にかける、というのはよくあることです。
捨てるのではなく、「寝かしておく」ことで、後になって別なアイデアとその情報が結びつく事がある、というのはとてもよくわかります。
これも結局はストックができるほどきっちり時間管理して仕事を前倒ししているからこそできる決断ですね。


正確性は置いておき、とりあえず叩き台をつくることが肝要

40年も連載をしていると、ネームの段階でセリフがかぶることもよくあるのだそう。
そんな時秋元先生は「無視してそのまま進める」のだそうです。

ネームの段階で、過去との重複を調べだしたりすると、それだけで無駄な時間を食ってしまうからです。

チェックして直すのは、後からだってできるのですから。

秋元先生も重要視するのはやはり「スピード」なのだそう。仕事ができる人は「スピード」を求める、という共通項がありますね。


年齢を重ねても発想力は問題ない

若い時の方が一般的に発想力に関しては優れているように思えますが、秋元先生によると、年を取ってからの発想は、積み重ねてきた経験に裏打ちされた深いものであるそうです。

若い時には「知識」としてしか知らなかったことが、年をとることによってそれに「体験したこと」が加わり、より正確に深い描写ができるようになるとのこと。

かといってじゃあ若者の発想はどうなのか、と言われれば若者には発想に瞬発力や勢いがあるのだそうです。
また「ものを知らない」ということが逆に斬新な発想を生む、ということです。

若いなりの発想、中年なりの発想、年寄りなりの発想、それぞれに価値がある。
そう考えれば良いのではないかと思っているのです。

クラメソにはありがたいことに10代から50代まで色々な年代、人種、背景の人が一緒に働いています。
昔では思いつかなかったような知識やバックグラウンドに裏打ちされた人たちが考える発想はとても斬新で、尊敬することも多いです。

私も気づけば40代。年をとったとめげることなく、自分の発想に自信を持っていきたいと思いました。

まとめ

ということで今日は「秋本治の仕事術」をご紹介しました。
いつもと少し毛色が違いましたが、コツコツやるためには実は「スピード」や「効率性」が重要で、時には大胆に変化しなければいけないといった考え方には驚きました。

ルキノ・ヴィスコンティは「変わらずに残るためには、変わらなければならない。」と言いました。
「長くコツコツやる」という真理を、少し学んだ気がしました。

秋本治の仕事術 ~『こち亀』作者が40年間休まず週刊連載を続けられた理由~ (集英社ノンフィクション)

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それではまた明日、お会いしましょう。