【書評】最高の体調 #ビジネス書を楽しもう

2020.12.22

はじめに

せーのでございます。

誰にも知らせずまったり始めている「ビジネス書」アドベントカレンダー、本日は19日目です。

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本日は鈴木祐著「最高の体調」です。

このアドベントカレンダーではよく「集中力を自在に操ることで高いパフォーマンスを出す」という話がありました。この「高いパフォーマンス」の根底にあるのが今回ご紹介する「体調」ということです。

体調、と言ってもごぼう茶が健康に良いとか、ビタミンDを摂ると身体が軽くなるとか、そういうお話ではありません。
現代人特有の「なんとなくだるい」「やる気がおこらない」「疲れが取れない」といった未病とも言える現象は、生活スタイルと心の状態、更にそこから脳への状態へと連携して起こるもので、それは人間が文明の進化と身体の進化がマッチングしていないことによって起こる「文明病」である、という切り口から、ベストな体調で仕事に向かえるようにするにはどうしたらよいか、原因と結論を論文や研究から導き出している本です。

このご時世、特に冬になり体調を崩すことも多いと思います。何が自分の不調の原因となっているのか、参考にしてもらえればと思います。

体調が悪いのは身体の進化が200万年前に適応しているから

この本のベースはダーウィンの進化論と最新のデータ医学をあわせた「ダーウィニアンメディスン」と呼ばれるものです。
この考え方のベースは

  • 人類はその基礎が作られた700万年前から600万年に渡って「狩猟採集生活」を続けてきた
  • 石器時代、農耕生活、近代文明と移行してきたのはこの1~2万年のこと
  • つまりヒトの脳と身体は「自然のなかで獲物を置い、太陽の運行と共に暮らし、少数の仲間と語り合うような環境のなかで最高のパフォーマンスを発揮する

ということです。人類の進化は200万年前の状態なのに、文明だけが大きく進歩してしまったために、ミスマッチが起きた結果身体が対応できなくなって警告を発する、ということです。この警告が身体的には「炎症」という現象にて現れます。

炎症、というと擦り傷がかさぶたになったり、目にばい菌が入ったりして腫れた時などに感じるものですが、炎症は実は身体の中でもあちこちで起こるものなのだそうです。炎症レベルは人によって違いますが、要は身体が異物と判断するとそれを排除するよう戦います。その際に起こる現象が「炎症」で、例えば内臓脂肪が身体にあったり、ホルモン異常などが起こっても炎症レベルが高くなるのだそうです。

炎症レベルが高いと身体の色々なところで「小さな風邪」のような状態が起こります。結果「なんとなく体調が悪い」状態に陥る、というわけです。

炎症が起きる要素としてこの本では

  • 肥満による内臓脂肪の増加
  • ストレスによる不安からくるホルモン異常、鬱病
  • 悪玉コレステロールにトランス脂肪酸の増加
  • 孤独を感じた脳が免疫システムを過剰に働かせる
  • 腸内細菌の不足によるリーキーガット(腸の細胞に細かい穴が開く現象)

が上げられています。
ここで注目するのは、肥満やコレステロール、といった「身体の不調」と、不安や孤独といった「心の不調」が体の中では同じ「炎症」という現象につながっている、ということです。

例えば鬱病は元々脳内ホルモンのバランスが崩れて精神の異常が起こる、という原因が有力視されていましたが、最近の研究で「鬱病は人体が何らかのダメージを受けてサイトカインという炎症性の物質が分泌され、脳の機能に影響を与えるという考え方が『鬱病の炎症モデル』として注目され始めている」と書かれています。

サイトカイン、という言葉はつい最近聞いたことがあります。それは、新型コロナウィルスによって重症化してしまうケースとして、炎症が進むと未知のウィルスと戦おうとして身体が必要以上のサイトカインを分泌してしまい、それが免疫細胞を暴走させ、正常な細胞までも傷つけてしまう「サイトカインストーム」という現象のために起こる、という話です。

この話を合わせると、身体の炎症が免疫細胞を暴走させると、脳機能にも影響を与えて心の病気にもなってしまう、ということになります。

炎症というのはそれだけ怖い存在ということです。

炎症が起きるのは現代習慣が扁桃体に警告を出させるから

炎症が起こるのは現代の習慣が200年前の環境に適応したままの身体に取って驚くことばかりなので、扁桃体が警戒信号を出し続けているから、とこの本では指摘します。具体的には

  • 古代には少なかったものが、現代では豊富すぎる(カロリー、人口密度、人生の価値観など)
  • 古代には豊富だったものが、現代では少なすぎる(睡眠、タンパク質、太陽光の摂取量、深い対人コミュニケーションなど)
  • 古代には存在していなかったが、近代になって現れた(人工照明、インターネット、孤独、抗生物質、仕事のプレッシャーなど)

といった違いが狩猟採集時代とは違うために、身体が不調を起こすのだそうです。

身体の不調を治すには

身体の面で特に古代と現代で違うのは「高カロリーのものが多いこと」と「腸内細菌が少なすぎること」だそうです。

現代になって現れた食事、例えばジャンクフードやスナック菓子のような加工食品、パンや白米などの生成穀物を控えて、野菜や魚の量を増やし、ゆで卵を食べ、食物繊維が豊富なさつまいもなどを主食にする。

どこまで古代に寄せるかは人それぞれですが、最近よく聞かれるマクロビオティックやオーガニック、酵素、といったキーワードはまとめて言うと「昔のヒトの食事に近づけましょう」ということです。

体調がなんとなく悪い人は、まずここを変えてみると1〜2ヶ月で目に見えて体調が変わるそうです。

体調がある程度改善したら運動を取り入れると疲労感が消えて集中力が出てきます。短時間の激しい運動ではなく、20分程度で軽く汗を書くような運動の方が、酸素が全身に行き渡るので血液内のコレステロールの改善が確認され、疲れにくくなります。

運動と食事。結局これなんですね。

心の不調を治すには

心の面で古代と現代で違うのは「ぼんやりとした不安」と「コミュニティーの広さ」です。

古代のヒトにおけるストレスとは端的に言えば「敵に襲われること」です。つまり、今日を生きられればそれは大成功で、そのために過去の経験を活かすわけです。敵がいなく慣ればその瞬間にストレスはなくなります。短期的に「死ぬかもしれない」という強大なストレスがかかります。

現代では敵に襲われることはほぼないかわりに、狩猟採集民族が考えなかった「未来のこと」を考えるようになっています。ストレスは「未来に思い描いている事と現在の自分の立ち位置が遠ければ遠いほど強くかかる」そうです。このままで大丈夫だろうか、というようなぼんやりとした不安が脳に炎症を起こし、そのせいで増強された不安がさらなる炎症の火種に変わっていく、というのが現代の心の不調の原因です。長期的にじわじわとストレスがかかるわけです。

また古代のヒトは回りの集落5人程度のコミュニティーで生きてきたので、5人を超える人間と関わり合いながら生きていくことはそれだけでストレスに繋がります。もともと人間の脳は、見知らぬ他人とうまく人間関係を作れるように設計されていないのです。脳科学的にもヒトの認知リソースは1回につき5人前後としか親密な人間関係を築けない、となっています。
親密な人間関係を心理学的に考察すると「時間」「同期」「互恵」となります。つまり

  • 同じ時間一緒にいる
  • 同じ行動をとる
  • 信頼する

という行動を5人程度に行うことで心は安定します。

また現代人への影響が大きいもう一つの要因が「自然」です。狩猟採集民族は当たり前ですが自然の中で暮らしてきました。現代人は自然に触れ合う機会は減っています。
実験と研究により自然とのふれあいにより人体の副交感神経は確実に活性化することがわかっています。副交感神経の活性レベルを上げる、というのは具体的に言うと自立訓練を行ったり、マッサージをしたりするような効果と同じ、ということです。

積極的に自然と関わる、例えば公園に行く、観葉植物を飾る、といった事が心の安定には効果があるそうです。また自然はデジタルでも一定の効果があるそうで、壁紙や写真などで緑の風景を飾るだけでも違うのだそうです。

マインドフルネスは悟りの意味を知らないと無意味

心の安定をするために有効な手段として「瞑想」が知られています。瞑想は目を閉じてリラックスして深く呼吸し、"無"に近づくことで精神が安定する、と理解している人がいますが、少し違います。

瞑想というのは「自己観察」のことです。

まず目を閉じて呼吸のような特定の対象に意識を向けることで集中力を磨き上げます。次に、その集中力を使って自分の内面をひたすら眺めて、「いま自分は退屈を感じている」「頭がかゆいと思っている」といった自分の思考と感情の変化にリアルタイムで気づく作業を何万回と繰り返していきます。

そうしていくとやがて自分の中に「いかなる現象も刻一刻とうつろうフィクションに過ぎない」という確信が生まれ、どのような欲望にも感情にも巻き込まれなくなり、人生の苦しみは消えていくのです。この状態を「悟り」と言います。

漠然とした不安や悩みが生まれた時にこのように瞑想を通じて自分を客観視できるようになると、どんな問題も実は些末で流れやすいものに過ぎないと感じて心が軽くなるわけですね。

一方こういった瞑想によって余計な考えや悩みが流れていき、今の状況に集中できるようになります。この「その時の感情を理解した上で自覚的に作業を行う」状態のことを「マインドフルネス」と言います。マインドフルネスの本質を掴むことで瞑想をしなくても常に心がマインドフルな状態になり、目の前の事に集中できることで漠然とした不安が減っていきます。

また、心理的な不安や体内の炎症レベルを抑えるには「畏敬」という感情を体験した回数が多いほうがよいという研究があります。
畏敬、とは自分の理解を超えるような対象に触れた際に湧き上がる、鳥肌が立つような感情を指します。 つまり、壮大な自然、偉大なアート、カリスマ性のある人、宇宙、音楽、などに触れ、自分の小ささを知ると、自分がより大きな存在の一部になったような感覚に陥り、外部と自分の境界が曖昧になるような意識になります。そうすると、自分が客観視され、永遠と一体化したような時間感覚を持つことで未来と自分の距離が縮まり、不安が解消されていく、という仕組みです。

つまり、体内の炎症を抑えるにはなるべく自己から離れて、一旦冷静に見つめ直す、という作業が大事なのですね。

狩猟はそれ自体が遊びだった

古代の人類は狩猟採集社会での仕事を「遊び」に近いイメージで捉えています。人類学の世界には「重労働」や「苦役」といった概念は存在しないのだそうです。

現代人との違いは「仕事、育児、勉強といった人生のあらゆる面を遊び化していくこと」にあるようです。

遊びに必要なのは「ルール」だそうです。例えば「50分仕事して10分休む」といったルールを作ってそれを守って仕事をする、といった細かいことでも幸福感が上がりやすくなるそうです。

簡単な作業を時間を決めて、ゲーム感覚でやっつけていく。この感覚を保つことで健康で元気に仕事を続ける事ができるようになります。

まとめ

以上、今日は「最高の体調」をご紹介しました。

身体と心はつながっている、という話はよく聞きますが、それが人間の進化の歴史と文明の歴史のミスマッチングによって共に歪められている、という考え方はとても面白いと思いました。

また、これまでも何回も出てきた「目の前の事に集中する」という考え方は進化論から言っても妥当性がある、ということがよくわかりましたね。

それではまた明日、お会いしましょう。