【書評】イシューからはじめよ #ビジネス書を楽しもう

2020.12.24

はじめに

せーのでございます。

誰にも知らせずまったり始めている「ビジネス書」アドベントカレンダー、本日は21日目です。

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本日は安宅和人著「イシューからはじめよ」です。

このアドベントカレンダーも最終コーナーを回ってきたので、ここらへんで「大物」にチャレンジしていきたいと思います。
この「イシューからはじめよ」は特に課題解決を仕事としているホワイトワーカー御用達の名著中の名著と言われる本で、名前だけは聞いたことがある、という方も多いのではないでしょうか。

ざっくり言うと「仕事の生産性を上げるためには」というテーマの本なのですが、細かいテクニックやツールの紹介ではなく、生産性の本質を考え抜くことにより、「素早く作業を行う」という前段階の「無駄な作業を省く」という点にポイントを置いたものです。
ここに書かれている内容を理解することで「プロとしての仕事」を考え直すきっかけになるかと思います。

構成としては

  • イシュードリブン: 「解く」前に「見極める」
  • 仮設ドリブン1: イシューを分解し、ストーリーラインを組み立てる
  • 仮設ドリブン2: ストーリーを絵コンテにする
  • アウトプットドリブン: 実際の分析を進める
  • メッセージドリブン: 「伝えるもの」をまとめる

という順番になります。このうち「メッセージドリブン」は所謂プレゼンや文章化のノウハウで、以前ご紹介した本にも重複する部分が多いです。
今回はまず「イシューからはじめる」とはどういう事なのか、イシューの見分け方、分析に至るまでのプロセスを中心にご紹介します。

バリューのある仕事=イシューの質 x 解の質

まずこの本で指摘するのは「生産性のある仕事とは何か」ということです。

生産性とは「かけた時間に対してどれだけの成果があがるか」ということを言います。なので生産性を高める仕事をするには「いかに時間をかけずに行うか」と「いかに多くの成果を上げるか」ということを考えます。
ただここで大事なのは「成果というのは対価がもらえるような仕事を指す」という前提を忘れがちになることです。

つまり徹底的な効率化を図り、短期間で大量の仕事をこなしたとしても、それが真に今、求められているものなのかどうかによって「無駄な努力」になってしまうのです。

世の中にある「問題かも知れない」と言われていることの殆どは、実はビジネス・研究上で本当に取り組む必要のある問題ではない。
世の中で「問題かも知れない」と言われていることの総数を100とすれば、今、この局面で本当に白黒をはっきりさせるべき問題はせいぜい2つか3つくらいだ。

つまり生産性を真に上げるには、効率的な仕事をする前に「本当に今答えを出す価値のあるもの(イシュー度)」を絞り込み、その中で残った課題について効率的な作業を行うことなのです。イシュー度の高い問題から手を付けていくことによって「成果」が出やすくなります。これがこの本のタイトルでもある「イシューからはじめよ」の本質です。

イシューを見極めるには

イシューの見極めは「何に答えを出す必要があるのか」という議論からはじめ「そのためには何を明らかにする必要があるのか」という流れで分析を設計していくことが必要です。このイシューの見極めができていれば、分析の結論が想定と違っても「発見」として価値のあるものがアウトプットできます。

難しいのは分析を始める前、つまり詳細がわからない状態で「この課題は今解くべき課題なのか」を見極めなくてはいけないところです。

そこでこの本ではイシューの見極め方として

  • 経験のある人、知恵のある人に相談する
  • 仮説を立てる
  • 言葉にする

という方法を推奨しています。特に「仮説を立てる」というのはイシューを深める際に重要で「常識を覆すような洞察」「新しい構造」で世の中を説明しているか、ということがポイントとなります。この仮説をしくじると、そのイシュー自体が本質的な課題解決から外れていく可能性が高いです。

よいイシューとは

よいイシューをこの本では

  • 本質的な選択肢である: それに答えが出るとそこから先の検討方向性に大きく影響を与えるものである
  • 深い仮説がある: 検証できれば価値を生むことが納得できる
  • 答えを出せる: 現代のテクノロジーなどを使えば解く方法があるもの

と定義しています。「本質的な選択肢」というのは俗に言う「そもそも論」というものですね。
「売上を上げるのに既存の商品の拡充がいいのか、新商品の開発がいいのか」というのは本質的な選択肢ではありません。その前にそもそも論として「既存の商品はこれ以上は売れないのか、やり方次第で売れるのか」という問題があり、その前には「既存の商品は販売方法に問題があるから売れていないのか」という問題が考えられます。もしこの段階で「売り方には問題がない」と結果が出たら初めて新商品を作るべきか、という選択肢が見えてくるわけです。

エンジニアの世界でも「この作業は人的リソースがかかるから自動化しよう」といった議論がよく出てきますが、イシューからはじめると「この作業は本当にビジネスに効果があるのか」という課題を分析しないと、自動化しても人手をかけても無駄に終わる可能性があったりします。

このように現在の課題に対して正しいイシューを見つける事が成果につながる仕事、生産性の高い仕事に繋がります。
なお、このイシューというのは「今」解くべき問題なのか、というもので、それは部署によっても、立場によっても、時間軸によっても変わってきます。なので、なるべく早くイシューを見つけ、最短で成果を出して、新たなイシューを見つける、というサイクルの速さが欠かせなくなります。

次に「深い仮説がある」ですが、この深い、というのは言い換えれば「つながらないと思っていた2つの事象がつながることを発見すること」となります。こういった仮説を立てるためには

  • 常識を否定する: 切り口を変えて洞察することで新しい発見を行う
  • 新しい構造で説明する: 一見別の事象の共通性や関係性、ルールなどを発見する

というアプローチで課題を見るのが良いそうです。

さきほど「この作業は人的リソースがかかるから自動化しよう」という例えで言えば

  • データ収集を工夫すればこの作業自体を削れるのではないか(常識の否定)
  • マニュアルを整理しコマンド化することで非エンジニアやアルバイトに通常作業として振れるのではないか(ルールの発見)
  • 今のワークフローに乗せてしまえば少ない工数で自動化できるのでは(共通性)

というようなイシューの立て方をするわけですね。

もちろん「仮説」なので合ってるとは限りません。そのため速いサイクルで回し、仮説を刷新していくことで生産性を上げていきます
また、精度の高い仮説を立てるためには「一次情報に触れる」のが大事なのだそうです。人的リソースがかかっている、という情報はマネージメントチームからの伝え聞きではなく、実際に作業をしているスタッフにヒアリングするべきなのです。できれば一緒に作業をしてみると、実はアドバイス一つでリソースがかからなくなることもあるかも知れないのです。他にもポイントとして

  • 基本情報をスキャンする: ある程度の固まりとして基本情報(人、金、物、技術、法制規制)を押さえる
  • 集めすぎない、知りすぎない: 情報収集はある一定を超えるとその努力に対しての情報量や知恵の効率が悪くなり、自分なりの視点が持てなくなる

があります。世の中にコンサルティングという職業があるのは、その業界にどっぷりいると見えなくなっている事が外野だからこそ見える、という点があるからなんですね。

分析は「原因側」と「結果側」の掛け算

イシューを立てたら、分析に進みます。分析までのフローとしては

  • イシューを分解しストーリーラインを組み立てる
  • ストーリーラインを元に絵コンテを作る
  • 分析する

となります。

ストーリーラインとは、分解したイシュー(サブイシュー)を仮説に基づいて順番に並べて結論までの道筋を立てることです。

先程のエンジニアの例で言えば

  • マニュアルを整理しコマンド化することで非エンジニアやアルバイトに通常作業として振れるのではないか

というイシューを立てたとします。これをサブイシューに分解します。

  1. どんなマニュアルが必要なのか
  2. 非エンジニアやアルバイトにかかるコストは
  3. コマンド化にかかる工数は
  4. 採用条件と採用方法は、アサインできる部署があるか
  5. この作業が効率化した際のビジネス価値は

これをストーリーラインとして並べます。並べたらそれぞれのサブイシューに対して分析イメージを並べます。これが絵コンテです。

絵コンテを作る時に大事なのが「2軸での整理」です。2つの軸は「原因側」と「結果側」でそれぞれ何を比べるのか考えることを指します。
上の例でいえば原因側が「マニュアルの整理」「コマンド化」で、結果側が「非エンジニアやアルバイトの採用」と「通常作業としての業務アサイン」となるわけですね。これらを例えば「マニュアルの詳細度による業務アサインにかかる工数」といった比較や構成、変化といった切り口で比べる事により分析ができます。このような思考の流れの代表的なのがマッキンゼーの「空・雨・傘」です。以前、それについてのブログを書きましたので参考にしてみてください。

答えありき、にならないためにMECEを大事にする

イシューを見極め、仮説を立てて検証する、という課題解決方法で注意しなくては行けないのは「仮説に沿ったデータだけを重視する」ことです。

たとえば、天動説が主流である時代に地動説をとなえようとすれば、地動説に都合の良い事実ばかりを挙げるのではなく、天動説の論拠となっていることですら実は地動説のほうが正しく解釈できる、ということを論証し、そうでなければ無理なり矛盾なりが起きることを示す必要がある。

そのためには検証はフェアに行わなければいけません。特定の事象に偏らずに検証を進めるためにMECE(Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive、漏れなくダブりなく、の意味)を重視する必要があります。大きな枠から考え徐々にドリルダウンすることでMECE的な思考で検証を行うことができます。

そのようにして分析が終了したら、後は絵コンテ通りにまとめて関係者に提出すればOKです。
これであなたの考えが全て伝わります。

まとめ

以上、今日は「イシューからはじめよ」をご紹介しました。

この本も内容がグッと詰まっているので、仕事をする上で大事なエッセンスを取り出してご紹介しました。
仕事を効率的にするための意志の伝え方、という感じですね。エンジニアやプログラマとしての実際の作業のノウハウとは少し離れていますが、これが出来ることによって、作業の無駄がなくなり、実際に行う作業量が元からグッと減るわけですね。根本を断つ、というべき考え方で非常に参考になりました。

それではまた明日、お会いしましょう。